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整理技術研究グループ月例研究会報告

BSH4-CFの刊行とその利用

渡邊隆弘(神戸大学図書館)


日時:
2001年9月29日(土) 14:30〜17:00
会場:
難波市民学習センター
発表者 :
渡邊隆弘氏(神戸大学図書館)
テーマ :
BSH4-CFの刊行とその利用
出席者:
藤井(大阪成蹊女子短大図書館)、木下みゆき(大阪府立女性総合センター)、中村恵信(大阪府大総合情報センター)、堀池博巳(京大大型計算機センター)、蔭山久子(帝塚山大学学園前キャンパス図書館)、村井正子、光斎重治(愛知大学)、久保恭子(大阪青山短大非常勤)、河手太士(大阪樟蔭女子大学図書館)、豊田邦雄(元島根県立図書館)、柴田正美(三重大学人文学部)、太田智子(京都外大図書館)、田窪直規(近大)、吉田暁史(帝塚山学院大学)、渡邊隆弘

1.BSH4版とその利用
 BSH4版は1997年7月に刊行され、その後2000年1月に誤植等の修正をした2刷が刊行された。刊行以来すでに4年が経過したが、BSH4がどの程度利用されているのかは、実際よく分からない。『TRCMARCニュース 第20号』(2000.11.30)によれば、4版を採用する方針のようである。

2.BSH4-CF(BSH4版Computer File=基本件名標目表第4版機械可読データファイル)データフォーマットの策定
2.1 フォーマットの諸標準
 国際標準に準拠したMARCフォーマットによる配布を考えている。国際的な標準には、GARE (Guidelines for authority and reference entries / IFLA and Institutions)(注)、UNIMARC/A (Universal format for authorities / recommended by the IFLA Steering Group on a UNIMARC Format for Authorities)、GSARE (Guidelines for subject authority and reference entries / Working Group on "Guidelines for Subject Authority Files" of the Section on Classification and Indexing of the IFLA Division of Bibliographic Control)等がある。また国内には、JP/A(JAPAN/MARC著者名典拠マニュアル / 国立国会図書館編)がある。
(注)GAREは改訂されて現在、Guidelines for Authority Records and References. 2nd ed.となっている。
2.2 BSH4-CFフォーマット策定方針
 基本的にはUNIMARC/Aに準拠するが、JP/Aにも準拠する。両者との相違は、細目と国名標目の扱いに関する拡張、関係コードを拡張して連結参照の種類を表現、参照記入の独立とそれにともなう拡張、細目・区分を示すデータサブフィールドの不採用、といった点である。
2.3 BSH4-CFの収録データ
 冊子体(2刷)の音順標目表(国名標目表を含む)データを収録する。階層構造表と分類記号順表は音順表データから自動生成が可能である。

3.BSH4-CFデータフォーマットの概略
3.1 レコードラベル
 ISO2709に従った固定長24バイトデータである。件名標目、参照語、といったレコードの種類等を記録するが、UNIMARC/Aを拡張して、細目や国名標目を表すことができるようにした。
3.2 識別ブロック(0××)
3.3 コード化情報ブロック(1××)
3.4 標目ブロック(2××)
 標目本体を記録するが、200:個人名、210:団体名、215:地名、220:家族名、230:統一タイトル、250:普通件名、の6種類のフィールド名に分けられる。各フィールドには、本来$x(主題細目)、$y(地理区分)等のサブフィールドが設けられているが、今回のBSH4-CFでは$a(記入要素)以外のサブフィールドは使用しない。
 例:250 $a 日本語−方言−近畿地方
 これは、現在のBSH4データベースの制約によるものである。その結果、地名細目、時代細目が区別されることなく納められている。
 ヨミ情報は、2××フィールドの繰り返しにより以下のように表現する。
  250△△$a貿易政策
  250△△$7dc$aボウエキ△セイサク $7dcは文字種を表すサブフィールド。
3.5 注記ブロック(3××)
 UNIMARC/Aでは、複雑な場合のみ、参照記入の独立したレコードを作成するが、BSH4-CFでは、すべての参照語について独立したレコードを作成する。これにともない310フィールド(を見よ参照注記)に、制御サブフィールド$0(指示句)、$3(レコード番号)を用いる拡張を行う。
  250△△$a回教法
  310△$0USE$3BSH400033100$6a01$aイスラム法
3.6 「を見よ」参照指示ブロック(4××)
 400は「を見よ」参照指示のうち、参照先が個人名の場合を表し、450は普通件名の場合を表す。参照先は、名辞だけでなくそのレコード識別番号も与える。
3.7 「をも見よ」参照指示ブロック(5××)
 500は「をも見よ」参照指示のうち、参照先が個人名の場合を表し、550は普通件名の場合を表す。冊子体の連結参照(BT,NT,RT,TT)を収める。
 4種類の連結参照が同じフィールド名(例えば550)となるため、その種類を制御サブフィールド$5(参照指示コントロール)を用い、$5g(上位語)、$5h(下位語)、$5i(関連語)、$5j(最上位語)とする。このうち関連語と最上位語については、UNIMARC/Aでは定義されていないので拡張した。
3.8 分類番号ブロック(6××)
3.9 出典情報ブロック(8××)

4.BSH4-CFの利用とOPAC
4.1 OPACにおける件名標目の利用−プロトタイプ研究
 現行OPACの件名検索に関しては、件名の完全一致検索と、単語に分解してキーワード検索を行うかあるいは全文検索を行う、といった2方向がある。また画面上で音順件名標目表の提示を行ったり、採用された件名一覧の提示を行ったりする方式がある。しかし、BSHシソーラス構造化をよりよく生かすためには、標目間の関係構造の提示が必要である。これはOPACでなくてはできないことである。
 現実の件名標目を利用したOPAC検索に関する研究には、DravenstottとVizine-GoetzによるLCSHを用いた検索システム、発表者によるBSH-OPACの研究、村上晴美ほかによるSubject Worldなどがある。これらのうち、村上らによる研究は、件名標目の共出現を利用して、異なる概念体系を統合する試みであり興味深い。
 村上晴美ほか Subject World:主題の世界−異なる概念体系の結合に基づく主題検索を目指して−『情報処理学会第62回全国大会講演論文集』3, p.211-212, 2001.3
4.2 件名典拠管理システム
 個々のOPACにおいては、件名標目表データそのものを利用するだけでは不十分であり、件名典拠管理システムを構築する必要がある。そして細目つき件名や固有名件名をカバーして、例えばある件名とそのもとにSAとして与えた固有名とを関係づけるといったことを行うわけである。また書誌レコードとの明示的リンクも行う必要がある。
4.3 件名標目の関係構造
・標目・参照語関係(USE,UF)
 BSH4を含めて既存件名標目表では参照語が不足する。文献的根拠による増強が必要。
・階層関係(BT,NT)
 BSH4では関係性の設定が広範すぎる。しかしこれを類種関係などに絞り込んだ場合、幅広い関連標目への案内機能をどうするかという問題が起こる。これは分類の役割であろう。
・連想関係(RT)
 BSH4では設定が非常に少ない。しかし階層関係に比べれば有効な提示が難しい。種類分け等が必要か。
・細目つき標目
 事前結合か事後結合かという問題である。事前結合系には、利用者に対するそれなりの案内機能があると思われる。典拠管理システムに組み込んで、関係構造の管理を行う必要がある。
・固有名標目
 普通件名との間に、事例関係という位置付けで階層関係を組み込むことになろう。
4.4 BSH4-CFの今後(件名委員会の課題)
・新件名の追加とメンテナンス
 具体的な方針は未定であるが、更新レコードの配布方法、採録原則の明確化などの問題を検討する必要がある。更新レコードの配布については、書誌レコードや著者名典拠レコードのように、追加レコードを配布するだけではすまない。既存の件名レコードに対する参照構造をどのようにフォローしていくかという難問がある。
・他のツールとの連携
 NDLSHとのリンクが最大の問題である。改訂過程でNDLSHを取り込み整合性をはかっているが、明示的なリンク関係がないと連携には限界がある。