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整理技術研究グループ勉強会記録(1999年度)

『情報検索理論の基礎』輪読(12回)


『情報検索理論の基礎:批判と再検討』輪読会の記録
中村幸雄著. 共立出版, 1998


◎1998年11月12日(木)第1回勉強会
会 場:日図研事務所
出 席:蔭山、渡辺、吉田暁
テーマ:『情報検索理論の基礎:批判と再検討』本書の紹介
 次回(11/26)は、各自読んできて感想を述べ、またその後の進め方を決める
『一般用語学入門および用語辞書編集法』ヴュスター著;中村幸雄訳、情報科学技術協会, 1998、『ISO704』等についても順次読み合わせをしたい


◎1998年11月26日(木)第2回勉強会
会 場:日図研事務所
出 席:渡辺、田窪、前川、守屋祐子、吉田暁
テーマ:『情報検索の基礎理論』第1章〜第3章第4節
担 当:吉田暁史
第1章〜第3章第4節
1.1.述語→術語
I=Q・F・R
(p.7)索引を作ればQがわずか増えるとあるが、本当にわずかか。原文なみの大きさの索引は珍しくないと思えるが。
抄録作成のとき、Qが大幅に圧縮され、多数の抄録の存在のもとFは著しく増える、とあるが、原文のQと抄録のQを直接比較できるのか。
2.2では、語をwordとする。
2.5では、用語termが出てくる。
2.5.複合語の分解(p.22):スペシファイアとアイデンティファイアを含めて、統語論的複合と考えてよいのではないか。
3.2.2.上位語付加による語義の明確化
翼(BT 航空機)
翼(BT 鳥)
この例は類種関係ではないが、類種関係でこのようなことは起こりうるのか。


◎1998年12月19日(土)第3回
会 場:日本図書館研究会事務所
テーマ:『情報検索の基礎理論』第3章5節〜3章8節
第3章5節〜3章8節
3.5.(p.37)スコープノートは、自然語として存在する意味の一部を排除する、とあるが、意味を追加する場合もあるのではないか。
3.5.4.(p.37)実体、抽象体、個別体といった分け方は、いわゆる標準列挙順序のようなファセットの類型とは異なるが、前者は主題分野を意識しないファセットのようだが、この両者はどう異なるのか。一般シソーラスを作ろうとするとこの問題に突き当たる。
(p.38)前置詞句の問題
(p.41)CRANEの例が、類種関係の上位語を付加して語義を明確にするケースのようだ。
(p.48)日本では、USEを「を見よ」と置き換える傾向がある。これは「を使え」が強いからではなく、もともとSEEという単語になじんできたからであろう。
(p.50)アップポスティング
なぜ、upward postingをアップポスティングというのかな。(JICSTを初めとしてそのように呼び表す習慣があるようだ)
b3)のようなケースも、upward postingと呼ぶのか。(posingとは索引語付与のことではなかったか)
ISOでは類種関係をall-someで定義するが、これをis-aで定義すれば、類種関係の範囲がかなり変わってくる。
(p.52)c4)全体・部分関係
@物に対するもの この「物」の原語はbodyである。人体、生物体の誤訳であろう。
(p.53)c6)平行階層 「即ち一つの用語の下位用語がふた通り作れる場合である。」
ここでは、上位語がふた通りあるケースを論じており、下位語がふた通りあるというケースは、この文脈では関係ないと思われる。
(p.54)d3)派生関係のある物(原文8.4.3)→原文8.4.2.3の誤り
(p.57)3.5.7.用語の表示形式
3つの表示形式の、「できれば二つあるいは三つを備えているとよいが」とある。規格では、more than oneとあり、三つとは言っていない。A体系的表示部とB図式表示部はどちらかあればよいと思われる。
(p.62)【注】このファセット別の構成の説明は、やや的はずれであり、修正の必要があろう、とある。この詳細を知りたい。
(p.76)3.7.シソーラスにおける難点
第1:「シソーラスが語の定義をしていない」、とあるが、SN以外でも、BT,NT,RTといった関係性である程度定義されている。
第2:ディスクリプタは本来人工語であるが、ユーザは無意識的にそれを忘れ、どうしても自然言語と同じように理解しがちである。非日常化の行き着く先は、記号化であるが、これは分類記号と同じになる。
以上のシソーラスにおける問題点の指摘は重要である。


1999年1月26日(火)第4回
会 場:日図研事務所
出 席:渡辺、田窪、蔭山、守屋、吉田暁
テーマ:『情報検索の基礎理論』4章
担 当:蔭山久子氏
◎4章 概念
4.1
 心像 一般には表象(representation)であろう。
p.83 5L これを概念については「名辞」と呼ぶ。→これを「名辞」と呼ぶ。
6L 英語ではdesignationと呼ぶ。designationではなくtermではないか。
4.2 概念の定義方法
 内包を「明示的な定義」「定義による説明」とし、外延を「実例による説明」とするが、外延も定義の一方法といえるのではないか。
4.6 存在論的な論理関係
 part-whole relationは、relationshipではないか。
p.100 最下行
 ISO2788に規定するアメリカ流の関係、とあるが、ISO2788は、もともとCRG、Austinの強い影響下のもとに作られたものであり、必ずしもアメリカ流とはいえないのではないか。


◎1999年2月18日(木)第5回
会 場:日図研事務所
出 席:蔭山、田窪、守屋、渡辺、吉田暁
テーマ:『情報検索の基礎理論』第5章前半
担 当:吉田暁史
第5章前半
5.1 類の概念
 「数をこなすため」つまりクラスに適当な数ずつ入れて仕分けのためにに分類が必要だとあるが、分類というのは、人間の認識の仕方を反映したもので、もっと本質的な営為ではないのか。
 対象物の入らない分類項目は意味がない、とあるが、最下位段階はともかく、中位の段階では意味のない項目(false link)をあえて設けることがあるのではないか。
5.1.2 類の表示
 「内包の代わりに外延を利用して理解」とあるが、下位項目は確かに外延かもしれないが、上位や同位列は外延とはいえない。分類の位置づけで内容が限定されるのは、結局外延によるというよりは、分類項目が上位・下位、同位列のどこに位置づけられるかという文脈的な作用のためではないか。
 p.104 下から10L(5.6.3.c参照)は、5.6.3.d参照の誤り。
 分類記号は、その項目を自然語で記載すれば長くなるので、簡単に表示するためとあるが、分類記号のもっとも本質的な機能は、配置位置の決定のためではないのか。
 分類記号(notation)とあるが、notationは記号に関するさまざまなことがらを扱う「記号法」とし、分類記号そのものはclassmarkとしたほうがよいのではないか。
 p.105 NDCやUDCの十進数を、小数という概念のもと数であるという捉え方をしているようだが、これはアルファベットや五十音と同じく、単なる記号と考えた方がよいと思われる。したがって、全体が1であるとかいった考えは持ち込まない方がよい。NDCにおいて特にこういう数としての捉え方が十進記号の理解を複雑にしてきたように思われる。
5.1.3 分類と仕分けとインデクシング
 分類作成家(classificaitonist)と分類係(classifier)の区別が指摘されているが、これは重要である。
5.3 現物分類法
 現物分類法の役割として、どうも(1)同じものは1カ所に分類する、(2)複合概念を記号の合成によって表すことはしない、という2つをあげているようであるが、前者は分かるが、後者については理由が分からない。前者は、いわゆるone place方式のことであろう。Subject Classificationのように図書館分類表でも例がないわけではない。
5.3.3 狭域分類法と広域分類法
 通常これらは、特殊分類表(special classsification)と一般分類表(general classfication)と称される。
 狭域分類法と広域分類法の説明は、現物分類法にかぎったものではなさそうである。現物分類法の中でこれを取り上げるのがおかしいのではないか。
 p.116 自転車のランプを、自転車のもとに位置づけるか電気器具の中の携帯電灯のもとに位置づけるか、というくだりは、まさしく一物一カ所方式の例であろう。しかし、自転車の部品にしても、ハンドルやブレーキ、バックミラーなどは、自動車などでも用いられており、どこまで一物一カ所が貫かれているのか。
 p.116 「2個以上の狭域分類法をつなぎ合わせて合同分類表をつくれば、かならず重複部分がでる。」という指摘は重要である。複数の特殊分類表を単純に合わせても一般分類表にはなりえない、というのはCRGの主張であった。
5.4 概念分類法
 概念索引法(concept indexing)は、通常「個々の名辞による索引法ではなく、背景にある概念つまり統制語による索引法」とされる。しかしここでいう概念分類法はこういう用法ではなさそうである。この用法なら分類法の場合、必ず統制語であるから意味をなさない。ここでは、複合概念を個々の概念の組み合わせとして表現するような分類法(つまりファセット分類法)を意味しているようである。
5.4.4 ファセットの決定法
 ファセットの抽出源として、「資料の主題からの概念採集」が省かれている。この章では必ずしも資料分類に限られていないようであるが、これはやはり説明すべきであろう。
 p.121 土壌に関するファセットとあるが、この場合はsoilではなく、soil scienceと思われる。したがって「土壌科学」とすべき。
5.4.6 ファセットの配列順
 標準列挙順序という普及したことばについて説明すべきであろう。
 コンピュータにおいては、線形配列に必ずしもこだわる必要はない、という指摘は重要。
5.4.7 ファセットの組み合わせ
 p.127 上から9L (4.7参照)→(4.8参照)
 11L(4.8および8.6参照)→(4.5および8.6参照)
5.5.1 階層構造と記号の基数
 有限数の項目で無限に対応する。これは不可能。有限個のchainでは、有限個の項目にしか対応することは出来ないはず。
5.5.2 完全階層と半完全階層
 「上位サーチ」は用語方式では不可能である、とあるが、統制された語彙を用いる方法では、例えばシソーラスでは、上位語を用いることによって上位サーチが行える。階層型分類記号の場合ほどにはやりやすくはないが、「不可能」とはいえない。
5.5.3 平行階層 と5.5.4平行細分
 両者の「平行」は意味が違う。前者は、parallelのことであろう。シソーラスの場合は概念的論理積をきらうので、複合概念ABCを作ってしまい上位がACとBCという多階層になるが、分類では概念的論理積になるということか。後者はいわゆるintercalationであろう。ただISO2788では、ABCというA,B,C,3つの複合概念があり、AはCにかかり、BもCにかかるとき、ABCは作らず、ACとBCの概念的論理積で表すことになっているはず。AがBに、BがCにかかるときのみ、ABCを作る。
p.133 下から4L 分類表の索引では、平行細分した結果をできる限り具体的かつ個別的に、いちいち示しておく、とあるが、複合概念をすべて列挙することは事実上不可能である。分類表の索引は、個々の概念に相当する索引だけでよいはず。組み合わせは具体的な文献主題に対応して、分類目録の索引として表現できればよい。


◎1999年3月18日(木)第6回
会 場:日図研事務所
出 席:蔭山、田窪、守屋、渡辺
担 当:渡辺隆弘氏
5章6-7「概念分類法としてのUDC」「図書分類法とは何か」
出席:蔭山、田窪、守屋、渡辺(担当)
●誤植と思われる個所
p134 8行目 さらに各分野ごとに決める「固有補助分類」 → 「固有補助標数」?
p144「ピン」の例 2行目 621.885.1 → 621.886.1
p153 候補例1)の最後のカンマは不要
●主な意見、疑問
5.6.2.
・「十進数を含む個々のものを標数」と呼ぶとあるが、コロン等で結合された全体にも「標数」の語を使うのかどうかよくわからない
・「番号とは自然数である」から「分類番号」と呼ばないとあるが、番号=自然数とは限らないのでは?
・p137主標数の説明が、主類の構成について述べられており、主標数というものの構造に触れられていない
・p138共通補助標数のうち、*(標数以外の文字・数字)と.00(観点の区別)は他と性格が異なるが、この列挙だけではよく理解できない。特に前者は後にも全く説明がない。
・p142平行細分の説明がこの位置にある理由が説明されていない。
(「補助標数」として独立表にしなかったもの、という意味だと思われるが)
5.6.3.
5.6.4.
・p.147「コロンと順序入れ替えの自由性」はその根拠を示そうとしていると思われるが、
2番めの「複出の自動化」は記号として入れ替え自由である(どれを先行させるか
決めない)こととは直接つながらないのではないか。
・p148「二重コロン」は各機関担当者の判断で使用するものなのか?
使用法がもう一つよくわからない
・p149スラッシュの使用はNDC等の「センタードエントリー」に通じるが、932/935等が実際の付与標数として用いられるところが異なる。
表中にある「メラネシア」のような例と、「53/54 物理学ならびに化学」のようなものを同一の/記号で表すべきなのか?
5.6.5.
5.6.6.
・例が、一見しただけではよくわからない
3)の621.31が何なのか説明がない
2)は-835まで展開されないのか(誤植か?)
・優先順序の理由が説明されていない。
共通的なものより固有的標数を優先ということで「主>補助」「固有補助>共通補助」
「テンゼロ>ハイフン」なのだと思われる。
5.6.7.
・p155「二三の特定部門を主にして使う人や機関が多い」と言ってしまうと、全分野にわたる一般分類表を維持していく意味が問われるのではないか
5.7.
・最後に「UDCは§5.6で説明したように、現物分類法的な部分も残している」とあるが、どのレベルの問題を指しているのか今一つよくわからない。
・「本になるような事柄だけ」を扱う(レベルが浅い)ことと、「物の形態にこだわる」
(一個所に分類する書架分類)ということは直接連関しないように思われるが...


◎1999年6月16日(水)第7回
担 当:前川和子氏
出 席:前川、渡辺、田窪、吉田暁
第6章インデクシング
p.158 6.1.2インデクシングとは
「対象の内容を表し」とあるが、インデクスの示すものは内容とは限らない、著者、ページ数等の書誌的事項もある。
p.158 6.1.3インデクシング言語
「個々のインデクス相互間の配置関係(自然言語の統語論に相当する)とを備える」とあるが、シソーラスでは通常統語論は含まないのではないか。
「後はこれらの結合(普通、論理積)を考えるに過ぎないもの(unitermシステム)がある。」インデクシング言語の満たすべき最低条件として、意味の体系が必要とあるのに、意味の体系すら備えないunitermをあげることは矛盾している。またunitermはインデクシング言語というよりは、semantic factoring的手法を用いる索引語付与方式ととらえるべきではないか。
p.159 6.2インデクスの指し示すもの
【実例1】「このために本の内容を表すのは件名標目である」とあるが、件名標目は内容を表すものすべてではない(例えば分類記号がある)。
p.160 6.3インデクスの各種形態 1)番号法
ここでは職業分類を例にして、記号を与える手法が紹介されている。しかしここの説明内容だけでは、なぜ番号(分類記号)が必要かという必然性がみえてこない。記号が必要なのは、@階層関係を記号の長短によって明らかにする、A何らかの有意な線形的配列を実現する、の場合であろうが、こういう説明が必要ではなかったか。
p.163 3)分類法によるインデクシング
「水」一般とか」産業」一般とかいう概念を納めるクラスの問題を扱っている。こういう問題に関しては、例えばBC2で設けたような事象クラスに関する考え方や扱いに触れるべきではないか。
p.163 殺虫剤一般に関する扱い。
CRGがいうところの、Place of unique definition(唯一定義箇所)が一応こういう問題に関して指針を与えている。このことに言及すべきではなかったか。
p.169 階層関係
BSHがNDCの分類記号を付与したのは、件名作業および分類作業のときの省力化のためであって、「階層関係を与えようとした」結果ではない、ことはおそらく明かである。しかし、BSHに対してこういう発想をすることは非常に興味深い。LCSHでもsee alsoは、上位から下位へ、あるいは関連する標目へ、という原則がある。またCutter自身が、上位への案内は必要ない、としている。このようにアメリカの件名標目表で階層関係を考慮する必要はない、というように考えたというのは少し違うのではないか。
p.169 完全階層表示の形式の分類法 完全階層型の分類法は無理だとするのが現在の一般的な考え方ではないか。
p.170 A従属関係
階層関係と関連関係以外の新たな枠組みとして非常に興味はあるが、現実のZDEシソーラスの実例では、はなはだあいまいである。この実例は、電気工学という分野からはほど遠い図書や文献に関する部門なので、こうなったものか。
p.177「役割表示符号」の利用
いわゆるロールオペレータのことであろう。


◎1999年7月2日(金)第8回
担 当:前川和子氏
出 席:蔭山、前川、渡辺、田窪、吉田暁
第7章主題
7.1主題とは何か
 subject, thema, topicはそれぞれ異なると思うが、そのあたりの説明がひつようではないか。
p.188
 主題と要約作業(summarization)と主題との関係も述べる必要があると思われる。
p.189
 「主題分析とインデクシング言語は、理論的には別個の存在として考え、両者の調和はシステム設計者の行う問題と割り切る」とあるが、システム設計者とはどういうものかが明記されていない。例えば何らかのインデクシング言語を前提に検索システムだけを考えるのか、インデクシング言語自体も考えるのか。このところは、1〜2行目の「主題分析は情報システムの目的・狙いと密接に関係していて」というくだりと矛盾するようにも思える。
 現在の一般的理解では、主題分析は中立的な段階であり、それをどれだけインデクシング言語が表現できるかということだと思われる。
 「従来多くの本では、主題とインデクシング言語とは関連が強いので、大した区別なしに、まぜこぜにして、論じている」とあるが、一部にはこの関係を区別して論じている教科書もある。
p.190〜191
 ここの4つの分け方は、一様な原理で分けているのではない。1と2は統語論の有無を論じているし、2と3はインデクシング言語の能力が劣っているときの問題を論じている。特に4はインデクシング言語の能力が劣っているとき(特定性が不足)するときの、作業的な対応方法を論じている。
p.191 7.2主題が含む概念とその表示(1)
 「民法総論」がもし「民法総則」のことであるなら、BSHでは、民法のほかに、民法−総則という件名標目が用意されている。
 BSHは「基本件名標目」ではなく、「基本件名標目表」である。
p.192-193
 ここでは、syntaxとsemanticsとに分けて解説されている。しかし、その前にsemanticsとsyntagmaticsの相違をまず説明すべきではないか。
p.193-203 7.3〜7.4
 ここでは、中井浩の関係分析を中心として、主題表現の統語論が展開されている。しかし、統語論についてはFarradane, Coates, Austin等々多くの論がある。中井浩もその一つだと思われるが、なぜ中井浩を選択したのかが述べられていない。
p.196 「酸化鉄を還元して鉄を作る」の分析図について
 以下が正しいのではないか。

        (m)ナシ
          ∨
 (o)酸化鉄→(a)還元→(p)鉄
         ||
        (c)ナシ

p.195 表7.1のうち、A→BとB→Cとは、論理レベルの関係性は同じことではないのか。
p.198 【実例1】
 switchesとreliability, performanceとの関係は、対象(o)と性質(p)の関係とも考えられるのではないか。
p.199 【実例2】
 図の中における「解造度」は「解像度」の誤植
p.203 最後の2行
 「このように主題分析においては、環状になった論理式が現れ得ることは、従来注意を引いていなかった」とあるが、環状になることが、具体的にどういう問題をはらんでいるかを知りたい。


◎1999年7月17日(土)第9回
担 当:吉田暁史
出 席:蔭山、前川、山本(神大院生)、田窪、守屋、吉田暁
第8章検索
8.1 検索とは
サーチ(search)と検索(retrieve)を分けている。『図書館情報学用語辞典』によれば、retrievalは2次資料特にデータベースを用いて体系的に情報を探す行為を、searchはより広く情報を探す行為一般を指し示すとする。しかしConcise Dictionary of Library and Information Scienceによれば、前者はニーズに合う情報を特定する行為をいい、後者は情報を探して取り出す行為までを言う。当書ではsearchは蓄積とは無関係に情報を取り出す行為をいい、retrievalは蓄積と検索を一体化したときの蓄積・検索過程をいう、とする。この意味では、p.222の「コンピュータによるサーチにおける分類法」は、まさしくsearchではなく、retrievalではなかろうか。
p.205 L.10 技術の範囲内に はいっている。→1字つめ
「課題」と「検索式」は100%一致するとは限らない、とあり、この原因はインデクシング言語の問題とインデクシング操作の不十分さによるとするが、もう一つユーザーの質問自体があいまいな場合もあるのではないか。現にp.226下段では、ユーザー側の問題に言及している。またさまざまな論理演算を用意しているかどうかといった検索インターフェースの問題もあるのではないか。
p.206 転置ファイルということばが出てくるが、この説明はp.214で行われる。この段階で何らか説明か後で説明ありという言及が必要ではないか。
p.211 C 二語間の位置関係に関するマッチング
「統辞論的のマッチング」とあるが、他の箇所では「統語論」となっている。
p.212 8.2.3 意味によるサーチ
 UDCを例にして、「比較的簡単に実現できる」とあるが、具体的にどうするのか知りたい。
p.216 事後組み合わせ検索に転置ファイルが必須のような印象を受けるが、例えばパンチカードの場合、順次ファイルだけで事後組み合わせ検索が行える。事後組み合わせ検索の本質は、ディスクリプタの相互独立性ということだけではないのか。
p.218 光り孔カード
通常は、ピーカブーと呼ぶのではないか。ピーカブーによる論理和という特殊なケースの図があるが、ごく通常の論理積の方の図もほしい。
p.220 8.3.5 アップポスティング
シソーラスの構造を内蔵して、自動的に下位語を含めた商業システムはない、とあるが、民博における検索システムはこれを実現しているので参考にしてほしい(輪読会のメンバーが設計した)。
〔§3・5・6b3)〕も参照〕とあるが、〔§3・5・6b3)も参照〕の誤植ではないか。
p.221 8.4 分類法によるサーチ
8.4.1 カード検索の場合
分類カード目録も、転置ファイルというのか。転置ファイルの定義のしかたの問題であるが、順次ファイルをterm on item、転置ファイルをitem on termとするなら、少し違う。
p.222 【例2】実例2ではなく、実例3の誤植
p.223 「図書館学では、1資料を代表するインデクスは、1個であり、それは直線上に一体として表示したものでなければならないと、考える」とあるが、1個の方式をsingle entry system、線形ではなく複数個与える方式をmultiple entry systemと呼ぶことばも存在するように、必ずしも1個で線形的に表現することにこだわるとはいえない。
p.225 L.2 繰り返すはかない。→繰り返すほかない。
 ここでピーカブー考案者としてBattenの名前が出てくるが、p.218で紹介してほしかった。
p.228 8.6 共出現と検索
この章はp.89から95までの部分を、検索の側から説いたものであり、本書の中心的部分である。
office managementを統語論的複合、management officeを意味論的複合とする立場(ISO 2788)がある。当書では両方とも異なる前置詞を用いる統語論的な関係とみなしているが、このずれの問題は難しい。またsemantic factoringも考えないといけない。
p.229 A複合語の扱いついて→複合語の扱いについて
p.230 L.4 分類法においいては→分類法においては
p.232 L.3 (§6.6.2参照)→(§6.7.3参照)
8.6.3 複合語に関する階層的上下関係
office managementをofficeとmanagementの共出現的論理積とするのは、主にディスクリプタの数を制限したいから、とあるが、少なくともISO 2788では、数を制限したいからではなく、この複合語が統語論的複合語であるとみなすからである。
事後結合検索における事前結合利用とでもいうべき手法であろう。


◎1999年8月4日(木)第10回
担 当:蔭山久子
出 席:蔭山、前川、田窪、渡辺、吉田暁
第9章9.1〜9.2
p.236 「これは分類法における構造と選ぶところがない」とあるが、選ぶところがないという表現には違和感を感じる。
p.237 「テキストからの自動切り出しだけに頼る場合や、自由キーワードの利用であれば、A,Bのうち一方だけを使うことになる、明らかに呼出率の低下を引き起こすという困難がある。」
 A,Bのうち一方だけを使うことになる。自動切り出しだけに頼る場合などは、通常は「原子力潜水艦」自体が索引語として採用されると思うが、ここでは前段の用語Aだけしか資料中に現れないということがまだ前提となっているのだろうか。またたとえAだけしか採用されなかったとして、「明らかに呼出率の低下」を引き起こすのだろうか。
p.238 L.9〜11 従来の分類法専門家の中には、索引法を軽視する人がある、という文章があるが、少なくとも図書館学・分類法の教科書では、「索引が大事だ」ということになっている。こういう指摘が具体的に見受けられるのだろうか。
p.239 L.14 「現物の配列からスタートした分類法も、・・・補助用具を拡大する必要に迫られている」とあるが、現在の図書館界では分類法の基本は書誌分類法であるという基本認識があるように思われる。必ずしも現物の配列だけを強調しているのではない。
p.239 下からL4の「第三の方向」
 第一と第二では、ファセット分析を施して概念の構造を明らかにして初めて分類法とシソーラスの融合が可能になると考えているのではないか。UDCではそこまでの分析が施されているのか。
p.241 L.6〜7 アドレス記号の割り当ては、かなり飛び飛びにしてある。
 これから判断すると、Aichisonは記号法の階層性をかなり重視していると考えられる。
p.243 表9.6
 **A=→は、**A→の誤り。
 この表に=**も必要では。
p.244 L.2これはまた「平行階層」とも違うのである。平行階層とはpolyhierarchyのことであっったが、異なる系列の上位語を2つ持つというのもやはりpolyhierarchyの一種ではないのか。
p.244 L.6〜7 「従って同じ語(概念)が、複数の系列のもとに重複して出ることはない。」とある。ROOTのような主題分野優先型の一般分類表において、同じ概念が1カ所にしか現れないということは驚くべきことである。またその概念の上位や下位は別の系列に属することがしばしばある。このあたりの処理も目を見張るものがある。こういうあたりの説明がもう少し必要だったのではないか。
p.245 記号+の意味の段落のL.5 複出カードとあるが、複出は、「副出」の誤りではないか。またA+BとB+Aの双方をカードに記載するようなケースでは、図書館では「重出」というと思われる。
p.247 独和辞典の例。LBB.MEB’MOJとしても矛盾は起こらないとあるが、retroactive notationでも使うのでないかぎり、MOJとMEBが対応するという判断が必ず行えるとはかぎらないはず。列挙順序という概念がなく、従ってretroactive notationも使用していない。
p.247 カンマ関数表の例。LBH.IとLBM.Iは、LBM.Lの誤り。


◎1999年8月11日(水)第11回
担 当:吉田暁史
出 席:蔭山、前川、守屋、渡辺、吉田暁
第9章9.3
p.249 下から4L「分散定義」とあるが、具体的にどのようなものを指すのだろうか。
p.250 分類記号に対する名辞と索引における名辞とを、マスタファイルで同時に扱うことのメリットは一体何か。分類記号をキーとして別ファイルにしてもよかったと思われるが。特にp.252の629.421.1のような複雑な処理まで行うのはなぜか。当時のコンピュータ能力と関係があるのだろうか。
p.251 the home(家庭)とあるが、この場合のhomeは住居ではないのか。
p.251 下からL.4〜2 複雑な表現による分類項目がありうるとの立場だが、完全にファセット化するような分類表にあっては、各分類項目は、いわばユニターム式に短くなるという可能性は考えなくてもよいのか。
p.252 Locomotives for passenger trainsをそのまま索引記入とせず、Passenger train locomotivesの方がふさわしいというのは、前者の表現ならLocomotives単体と同じところに集中し、分類表における並びと同じになり、索引としての効果が落ちるということか。しかしLocomotives for passenger trainsに関しては、この語と語順を変えたPassenger trains, Locomotives forの2つをいずれにせよ索引として採用する必要があるのではないのか。あるいはKWOC式に、語順は同じで以下のような索引を作成する方法もあろうが。
  Passenger trains
  Locomotives for passenger trains   629.421.1
p.253 補充語句を自動的に与える方法があればよいのだが。現在ならUSMARC Format for Classification Dataがあり、分類表がこれに基づいて作られていれば、補充語句は自動的に与えられるであろう。
p.253 印刷書式までがファイル中に混在している。例えば、分類記号、名辞、さまざまな注記、といったものが分析され、構造化されて作られておれば、印刷書式は個別に指定する必要はなかったのではないだろうか。これも当時のコンピュータ能力と関係あるのかもしれない。
p.257 639.2  Fishing. Fisheries という記入がある。これはSファイル中の記入だと思われるが、なぜFisheriesが現れるのか。
p.258 EXPANDコマンドとFINDコマンドとはどのように違うのか。例えばp.259の例でFIND Pricesとすれば、PricesとPrices(Management)の2行しか検索しないということか。ただFINDには前方一致検索機能があるので、FIND Prices$とすれば同じ検索が行えるのだろうか。あるいは、Prices, retailという語順をinverseしたようなものは探せないということか。
p.262 概念ファイルの構造がよく分からない。
p.262 ケーススタディ
PRISMをオンラインで使用する際の目的がよく分からない。ケーススタディをみるかぎり、分類作業者が分類記号付与を支援するための自動化システムに思えるが。利用者が使うという目的もあるのだろうか。
p.268 結果として生まれた655.421:655.54.035.2という分類記号を保存している。この途中経過で、655.54.035.2も保存している。後者の保存は分かる。前者の保存の目的は何か。UDCでは、655.421:655.54.035.2と655.54.035.2:655.421とは同値であると思われる。とすれば前者だけ保存する狙いは何か。またDEFINEコマンドで定義したものは後にマスタファイルに書き込まれるが、その狙いは何か。UDC以外の列挙順序を指定した分類表なら、本来「分類表の索引」と「分類ファイル(分類目録)に対する索引」とを分けて考える。UDCでは少なくとも主標数に関しては列挙順序という概念がないから、個々の分類記号に対する索引(すなわちほぼ分類表に対する索引と同じになる)だけあればよいことになる。ならば655.54.035.2だけでなく、655.421:655.54.035.2をもマスタファイルに書き込む理由は何か。


◎1999年8月30日(月)第12回
担 当:吉田暁史
出 席:蔭山、前川、守屋、渡辺、吉田暁
第10〜11章(最終回)
第11章p.277-278 Themaと概念の相違がよく分からぬ。
p.278 分類法における階層関係には、純粋な類種関係だけでなく、存在論的な「全体・部分関係」も含める。これは「資料の取り扱いのために便利だから」とあるが、これでは説明したことにならないのでは。
p.279 「資料による保証」
literary warrantを特定性の限界を見極めるための方法と規定し、さらにこれを「独立した刊行単位」の存在と結びつけている。そうなのか。literary warrantは論文レベルでも適用されるのではないか。またliterary warrantをほとんどterminological warrantの意味で用いることもある。