整理技術研究グループ勉強会記録(2001年度)
「メディアの分析的研究」第2回
- 日時:
- 2001年4月20日(金) 19:00〜20:50
- 会場:
- 日本図書館研究会事務所
- 発表者 :
- 尾松謙一氏(奈良県立図書館)p.1-p.4
蔭山久子氏(帝塚山大学図書館)p.4-p.7
- テキスト:
- Tom Delsey. Modeling the Logic of AACR. The Principles and Future of AACR. -- Chicago : ALA, 1998. 前半
- 出席者:
- 吉田(帝塚山学院大)、田窪(近畿大学)、光斎(愛知大学)、蔭山(帝塚山大学図書館)、尾松(奈良県立図書館)、太田(元甲南学園)、河手(大阪樟蔭女子大図書館)、堀池(京都大学大型計算機センター)
・また,田窪氏より次の資料配布があった。
(1)TP & D フォーラムシリーズ2:日本目録規則(NCR)1987年版の規則構造,p.25-p.37.
(2)アート・アーカイヴブ/ドキュメンテーション ― アート資料の宇宙,慶応義塾大学アート・センター/ブックレット 07,p.16-p.31.(2001.03)
●AACR2を取り巻く状況とIFLAの取り組み
・AACR2が1978年に出版されて20年が立ち,規則が機能する状況は大きく変化した。
・技術革新による新しいメディア・出版形態の出現により,AACRの基礎的原則の再検討が求められている。
・研究者などからは書誌データの構造をオブジェクト指向分析による再構築化やEntity-Relationship(E-R,実体-関連)分析法を用いた分析が行われた。
・IFLAの研究グループからは利用者ニーズと書誌データを関係づける枠組み分析にE-Rモデルを用いて分析がなされた。(FRBR)
・図書館における"collection"はインターネットの進展で変わる。つまり,従来は館内に資料があったが,今後は館内とは限らないし,"collection"の概念も変わるだろう。
●AACRと分析モデル
・AACRの論理的なモデルを検討するための分析手法にEntity-RelationshipモデルやObject-Orientedモデルが使われている。これは実体と関や実体とオブジェクトおよび,それらの実体とオブジェクト間の論理的関係を明確するための手段として用いられる。
・これを用いてAACRの論理構造をモデル化することを検討する。
●知的な内容 対 物理的形態
・目録作成過程は目録規則において第1部(記述)と第2部(標目など)の関連が問題になる。目録を作成する対象物の物理的性質と内容の知的な性質の間に存在する関係の複雑さからくる「内容とキャリアー」の問題である。
●「記述」におけるアイテム(Item)とキャリアー(carrier)の扱いと適用基準
・AACR2の第1部において目録規則を適用するための基本原則は,「記述の出発点は手元にあるItem(資料)の物的形態であって,その著作が出版されたもとの形態でも,以前にあったどのような形態でもない」(0.24)
・キャリアーの物的形態はitemが属する資料種別決定のための第一基準であるとしているが,第1部の構造と各資料種別がどのように定義されているかを見ると,物的形態はすべての種別において第1基準であるとはいえず,複数の基準があり,キャリアーの物的形態はその定義基準の一つである。
・AACR2の第1部の資料種別(class)の概念は表面に現れているより複雑であり,0.24の原則に反して,item(記述対象)が属するclass(資料種別)を決定することはitemの物的形態を決定することと同義語ではない。
・目録規則(code)に反する「class」の概念の複雑さは一貫性のために規則を見直すや,規則を新しいメディアや新しい知的,芸術的表現に適用するために拡張しようとすると多くの問題が出てくる。例えば,正確なclass定義ができるterms(用語)が取り入れられるのかどうか。また,適用基準はどうするのか。
・結局,中身と外見の問題。
・著者責任表示のレイアウトの問題で著作に影響する。
・文章中に出てくる語句は不明なものは無理に日本語に訳さず,英語表記のままの方が言葉の意味が振れないのでいいのではないか。
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(注:参考)
・E-Rモデル
実世界の「もの」は,一般に実体(entity)あるいは対象(object)という言葉で表現される。E-Rモデルは実体・関連モデルあるいは主体・関連モデルと訳される。E-Rモデルは「もの」を直観的かつトップダウン的に,実体,あるいは実体間の関連として理解し,これらを組み合わせて複雑な世界をモデル化していく。ものを実体,関連として捉えることは,人間本来の持つ感性あるいは世界観によく適合している。E-Rモデルの表現能力は実体,関連の抽象化概念の導入によって向上し,抽象化概念には正規化,汎化,集約化,類型化がある。正規化は実体や関連を,それらがただ一つの事実を表すものに限定する操作である。もし,一つの実体あるいは関連の中に派生的な事実がいくつも混在している場合は実体や関連を分割すべきである。
E-Rモデルでのデータ構造表現例
患者と医師の表現は
実体 関連 実体
(患者) - <診療> - (医師)
と捉えることができる。
(参考資料:情報資源管理の技法 - ERモデルによるデータベース設計-酒井博敬著,オーム社,1987)
・オブジェクト指向
(抽象データ型と継承という考え方が中心)
・抽象データ型とは世の中にあるいろいろな事物を,データとそれに対する手続きで表そうとする考え方と継承という考え方を持ったもの。
・人が『これとこれは共通の性質を持っているからひとまとまりとして考えると扱いやすい』と思うものをクラス(class)と定義する。クラス定義では共通するデータ構造とそのデータに対する操作を決めます。クラスに属している個々のインスタンス(instance:事実,例)のことをオブジェクト(object)といいます。クラスは階層構造をなしていて,上位のクラス(スーパクラス)からその性質を継承することができる。