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整理技術研究グループ勉強会記録(2001年度)

「メディアの分析的研究」第3回


日時:
2001年5月11日(金) 19:00〜20:30
会場:
日本図書館研究会事務所
発表者 :
堀池博巳氏(京都大学大型計算機センター)p.7−p.13
太田智子氏(京都外大図書館)p.13−p.16
テキスト:
Tom Delsey. Modeling the Logic of AACR. The Principles and Future of AACR. -- Chicago : ALA, 1998.  後半
出席者:
吉田(帝塚山学院大)、田窪(近畿大学)、尾松(奈良県立図書館)、太田(元甲南学園)、渡辺(神戸大学図書館)、河手(大阪樟蔭女子大図書館)、堀池(京都大学大型計算機センター)

●《Identifying the "Work"》 著作を識別(同定)すること
・AACR2の第1部は「記述」、第2部は「標目」であり,第2部で規定する基本記入の「標目」が決定されないかぎり,第1部で規定する「記述」は成立しない。
・標目の選定の規則は著作の具象化物(physical manifestation)には適用せず,出版物に含まれる著作に対して適用することになっている。
・著作の概念と手元の資料(in hand)には乖離がある。
・記入の選択やアクセス・ポイントの選択には手元にある記述対象(item)から主要なソースの用語やレイアウトから情報を抽出し,決定しなければならない。
・それは著作に対する責任性(Responsibility)のあり方や著作の構成のあり方で区分される。
・(1)一著者による著作,(2)責任性が分担(shared)されている著作,(3)責任性の混合(Mixed)した著作、(4)異なる著作で区分できる。また構成(configuration)のあり方では(1)一著作からなる出版物,(2)コレクション/抜粋,(3)混合物(composite)から構成されるもので区分される。
・また,各々先行する著作(翻訳,改訂版,翻案)がある場合はその関連からも影響を受ける。
・基本記入の標目の実体(entity)は著作のあり方で変化する。すなわち,責任性の分担されたものは4つ(表2)で責任性の混合のものは20(表5)まで拡大する。
・著作の識別の適用範囲はマルチメディアを考慮しなければならない。
・AACRは責任性の分担(shared)と責任性の混合(mixed)との間を明確に区分しなければならないだろう。
・混合著作集(composite works)の追加形式をカバーするためのルールの拡張も必要かもしれない。
●Reflecting Change in Content and Form over Time
時間における内容と形態の変化に反映する
・電子化時代の技術革新に伴うAACRの見解と適用は他のメディアや技術の場合より複雑な問題がある。
・電子メディアの出現によって,記述の均一性の保証は従来の仮定ではできなくなってしまった。
・それはホストコンピュータに蓄積された電子文献にアクセスする時に,特に問題になり,物理的対象物(the physical object)の概念はやや弱くなる。
・規則で示す手元の記述対象物とは,物理的対象物というよりも事実的であり,物理的特性というより時間的特性と関連している。物理的対象物のこの弱まりは,目録規則に反映される論理構造とその構造方法とも関係してくる。
・デジタル資料に関する問題は,従来の資料に関する問題と類似していて,時間とともに形態や内容の変化を受けやすい。
・スナップショット(snapshot)を電子資料に適用するのは難しい。スナップショットは時間的にある断面を切り取る。電子資料の場合はその切り取った断面は元のものとは一致しない。
・論理的属性を明確にし,実体とオブジェクト間の関係のモデル化について,この問題を検討するなら,時間とともに変化しやすい属性を持っている可能性を認めることが大切。
●結論(Conclusion)
・ネットワークは拡大・発展を続け,データベース管理システムの進歩は,書誌構造を形成していく方法に影響を与え続け,書誌データを構造化する方法を考え直すように要求される。
・AACRについて,最初の原則に戻り,目録規則の根底にある論理をはっきり理解することが大切。
・目録規則の論理の包括的分析の必須項目。
 1. 理論的な土台がもっともであること。
 2. 変化への順応性があること。
 3. ユーザのニーズに敏感であり続けること。
 4. 書誌コントロールのための他のシステムと効果的に接続できること。
 5. 費用効率が高いこと。
●デスカッション(DISCUSSION)
・AACR2の第1部のclasses materials別に11章で分類しているのはやめ,Delseyは各章を記述のエリア別で取り扱うことを提案した。
・AACR1はパリ原則を受け入れているがAACR2もそうする。
討論など
・著作のコレクション(合集)の捉え方が問題になる。
・DelseyはAACRのWorkの概念と彼のWorkの概念の扱いが分からない。
・Delseyはメディア別ではなく,章を中心に考えている。
・変化層を捉えていない。
・電子メディアが変化層。
・中身と外見の捉え方。