整理技術研究グループ勉強会記録(2001年度)
「メディアの分析的研究」第14回
- 日時:
- 2001年12月14日(金) 19:40〜21:20
- 会場:
- 日本図書館研究会事務所
- 発表者 :
- 堀池博巳氏(京都大学大型計算機センター)
- テキスト:
- パトリック・ウィルソン:「目録の第2番目の目的」
『整理技術研究』29,p.41-52.(1991.12)
パトリック・ウィルソン:「目録の第2番目の目的を解釈する」
『整理技術研究』30,p.7-20.(1992.6)
- 出席者:
- 吉田(帝塚山学院大)、蔭山(帝塚山大学図書館)、村井、河手(大阪樟蔭女子大学図書館)、堀池(京都大学大型計算機センター)
1.「目録の第2番目の目的」
● 1961年 IFLA目録原則国際会議(ICCP) パリで開催
パリ会議の目録原則は著者書名目録に限定したもの。(主題目録は対象範囲外)
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目録は,以下の事柄を確認するための有効な道具でなければならい。
(1) 当該図書館に
(a) その著者と書名によって,または
(b) 著者が図書に表示されていない場合には,書名だけによって,もしくは
(c) 著者や書名が識別に不適当または不十分である場合には,適当な書名の代替物によって,指定される特定の図書が所蔵されているかどうか,および
(2)
(a) 当該図書館には,特定の著者のどの著作が,また
(b) 特定の著作のどの版が所蔵されているのか。
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前記の(1)の部分が「目録の第1番目の目的」,(2)の部分が「目録の第2番目の目的」となっている。
・(1)を特定の既知の図書を検索する機能ということでファインディング・リスト機能と呼ばれている。
・(2)は特定の未知の著作を発見する機能ということでコロケーション機能と呼ばれている。
● Lubetzky ルベツキーの公式の2つの目的(1953)
1) 第1番目の目的
「利用者の要求する図書を,図書館が所蔵しているかどうかを素早く決定することを可能にする」こと。
2) 第2番目の目的
「図書館がある著者のどの著作を,また,ある著作のどの版や翻訳を所蔵していりのかを明らかにする」ことである。
・1)はそのままの形では受け入れられない。
2)がなぜ,1)より2)の位置にこなければならないのか。
● 第1番目と第2番目の優位性を変更すると
(1) 各館の目録と総合目録との違いを解消する方向に進む。
(2) 目録と索引との違いも解消する
(3) 目録と書誌の間の違いもぬぐう方向に進む。
==> 版の区別の問題,図書レベルと著作レベルの相違の扱いになる。
● 優位性の変更は目録の性質を変更することになる。
==> ウィルソンは著作を媒体の変化である集合体と著作そのものの変化を混同している。
● Elaine Svenoniusのコメント
(1)図書館目録は,実際に所蔵する資料だけでなくて,実質的に所蔵する資料にもアクセスを保証するものでなければならない。
(2)目録の第2番目の目的は,第1番目よりも優先されるべきである。
(3)順次形を変えていくテキスト上の状態が,書誌記述の中で認知される必要がある。
==> (3)は逐次刊行物のことを言っている。
2.「目録の第2番目の目的を解釈する」
● 1961年 IFLAのパリ会議で合意された「特定の著作のどの版が図書館にあるのかを示すことである」には解釈が必要である。
● 二様の解釈を対比的に提示
(1)エイコス・ダマノフスキー(Akos Domanovszky)の解釈
(2)新しい「3段階」の解釈
●パリ合意の目的
・第1番目はほぼ満足させている
==> ・第2番目は満足させているわけではない。
すなわち,現代の目録がどの著作のどの版が図書館コレクション中にあるのかを示しているとは思えない。
● ダマノフスキーは「テキスト」と「内容」はほぼ同一のものとして扱っている
==> 第2番目の機能の対象物の定義は版の定義である。
● 「著作」という用語を捨てる。
著作についての一般的な概念とその「目録上の」使用法の間に相違があるのであれば,私たちはこの「著作」という用語を捨て,「文献単位」を使用することを提案している。
==> リテラリーユニットのことである。
● この定義も問題がある。
この定義には「オリジナル」という語に一切依存していないように思われる。
(公式)を書き換えることができる。
問題がある。
「あるテキストの改訂版は同一著作の別のテキストなのか,あるいは新しい関連著作のテキストなのか」
「著作を変形したものは当該著作のある版なのか,あるいは新しい,異なった関連著作のある版なのか」
「テキストの変形は,旧著作の新しいテキストに帰着するのか,あるいは新しい著作に帰着するのか,どちらなのか」
「もし,新しい著作に帰着するのなら,文献単位を用いるようにするためのもう一つの理由を持つことになる」
==> 著作(work)を狭く解釈している。
●「ひとまとめに集中させるものは,同一著作の諸版ではなくて,関連はしているが異なった著作の諸版であることが明白になっている」
新しい著作の原文学者や思想家の意見
「各著作はただ1つのテキストしかない」
「たった一語だけが異なる版も別の著作である」
==> まさに表現形(expression)ではないか。
● 解釈を比較する: インデックス目録 p.17
・パリ合意について容認された解釈はダマノフスキーの公式である。
・パトリック・ウィルソンの解釈と3つの点で異なる。
その内容は
1) 第1段階の多くを無視している
2) 第2段階を明確な業務として認識していない。
==> テキストの同一性がある。
3) それはまた「ある著作のすべての版」を揃えることを,テキスト相互間の関係に基づいた分類としてではなく,単に著作の現れを認知すること、と見ている。
==> テキストの同一性を越えた関係となっている。
==> まとめとして,
著作をテキスト(内容)と見るならば,テキストの同一性の問題とテキストの同一性を越えた場合の関係を検討して行くことが必要であるということが述べられていたのではないか。