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整理技術研究グループ勉強会記録(2001年度)

「メディアの分析的研究」第15回


日時:
2002年1月18日(金) 19:20〜21:00
会場:
日本図書館研究会事務所
発表者 :
蔭山久子氏(帝塚山大学図書館)
テキスト:
Martha M. Yee 「著作とは何か」『整理技術研究』39(1998.1)
古川肇 「目録の構造に関する試論」『資料組織化研究』44(2001.1)
出席者:
吉田(帝塚山学院大)、蔭山(帝塚山大学図書館)、村井、田窪(近畿大学)、河手(大阪樟蔭女子大図書館)、渡邊(神戸大図書館)、堀池(京都大学大型計算機センター)

●著作とは何か (Yee著)
(1) 創造性および(または)単一の個人著者という基準を用いた定義
・著者性(Authorship)に関する定義や新しい著作の定義を推定する。
・p.1の下から8行目の「書誌的資料」という表現は妙な表現である。原文にあたらないとこの訳文が適当なのかどうか。言葉のおまじないか。
・Lubetzkyは著者をもたない著作は,タイトル変更によってその同一性を維持できない。その現れは異なったタイトルのもとに目録中に散在してもよい。
・著者性は基本記入を選ぶために,著者の状態を問題にする。
・基本記入は代表的な記入の標目である。
(2) 内容という基準を用いた定義
・AACR1の著者の定義は当該著作の知的もしくは芸術的内容の創造性に主たる責任を有する個人または団体と定義。これは図書概念より著作概念を導入したことになる。
(3) テキスト列または符合列という基準を用いた定義
・SvenoniusとO'Neillは,著作は「元のテキストのすべての現れに,翻訳や改訂によって元のテキストから派生したすべての現れを加えた総体」としている。スーパーワーク(SuperWork)という表現と同じではないか。
(4) 媒体という基準を用いた定義
・著作媒体が変化した場合,結果として新しい著作が生まれたのかどうか。
 ==> ・Lubetzkyの1961年当時の定義中の訳文において,p.6の下から15行目中の「こうした資料はメッセージ(communication)を伝えるための使用される媒体にすぎず,それ自体はメッセージではないこと,また,・・・」とあるが,このメッセージ(communication)という訳語が適当なのかどうか気になるところである。
・O'Neilはスーパーワーク(superwork)という概念を提唱。これは演奏・演技や改作のような大きな変更によって派生的に生じる種々の著作のその元になった既存の著作を意味している。
(5) 所産としての著作定義
 ==> ・所産という訳語の原語は何か。productか。
・Lubetzkyは著者による著作を「精神または技術の所産」と定義した。
(6) 識別性および表示という基準を用いた定義
・著作概念に「まとまり」や「統一性」および「識別性」といった概念を表す用語を用いる。文献単位。精神的,知的または抽象的実体。記録された精神の特定のはっきりとした実体。
6-1) 名称
・名称を持つことは何かを著作とみなすための十分条件であっても必要条件ではない。
 ==>・写真などが相当するのでは。
6-2) 独立した書誌的存在
・独立した書誌的存在を有する資料とは,様々に場を変えて何度も何度も独立して刊行されてきたか,刊行される可能性のある資料である。
・wilsonは著作が実際に独立して刊行されたことがあるのかどうか(文献的根拠)という基準が,確立された個々のタイトルという基準と共に使用された場合にのみ著作であるとみなしている。
 ==>・部分 - 全体の関係。
6-3) 表示
・表題紙への記載
(7) 相互交換可能性(interchangeablity)または代替可能性(preferablity)という基準を用いた定義
・Domanovszkyは著作とは「ある特定のオリジナルなテキストやその他のドキュメント内容,あるいは,他に相当数の読者が相互交換が可能であると見なそうとしている限り,その知的子孫」である。
 ==> 全体を通じた感想
・「著作」概念をしっかりしないで著作の議論はできない。著作議論は不毛の議論ではないか。
・著作には二重性がある。
・パトリックウィルソンは表現形(expression)を意識している。
・実務レベルの目録作成と理論把握は別次元で考えないといけない。
● 「目録の構造に関する試論」 古川論文
(1) 旧稿の要旨
・なぜ記述対象の決定は,物理的な独立の有無に拘束されなければならないのか。形態の独立性に拘束されていては目録の検索効果は低下するばかりであり,物理単位を分析しても構成部分をも記述対象に含めるべきである。
 ==>・古川さんの「構成部分」の用語はISBD(CP)を意識したものである。
・ファインディングリストとしての機能(特定図書検索機能)と集中機能(同一著作の諸版を集中する機能)は目録が備えるべき機能ではないのか。
 ==>・この議論はカード目録時代のイメージを引き摺っているようである。
 一次元表示だけでなく,二次元表示が現在はコンピュータ利用で可能である。集中性は可能である。
(2) 統一タイトルの重要性
・統一タイトルは統一タイトル標目に改める。
・統一タイトルを無著者名古典に限定せず,原典と翻訳書との関係,構成部分の著作名をも典拠管理するものとして付与する。
(3) 著者基本記入標目の機能
・基本記入(main entry)は目録レコードとアクセスポイントの2つの意味に用いられているがAACR2では目録レコードに限定されている。
 ==>・基本記入標目という用語は基本標目というべきである。
・先行著作のそれと関係づけるためには,固有名(著者基本記入標目および(または)統一タイトル)とタイトルとの組み合わせ(固有名+タイトル形)をアクセス・ポイントとして仲立ちさせる他ない。
 ==>・そうは思わない。その都度リンクを張ればよいのではないか。
(4) 構成部分の記述とアクセス・ポイント
1) 著作単位
・パリ原則もルベツキーも1著作が1(または複数)物理単位に対応する単純なモデルしか考えてこなかった。
2) 記述の本体
・「著作本位の目録」はwork-identifying catalog で,これは決して著作を直接の対象とする目録,すなわち,work-based catalog と同義ではない。
・出発点はどこであろうとそれから統一タイトルにたどり着けることが眼目である。すなわち,個々の記録と統一タイトルがリンクされていなければならない。記述の本体をどこに求めるかは別問題である。
 ==>・「個々の記録」とは何をさすのか。
 ==>・著作単位/書誌単位の定義があいまいである。
(5) 著作単位の優位
・著者は自らの著作を何よりも総体として理解され享受され批判されることを望んでいるはずである。
 ==>・利用者が問題である。
(6) 用語
(7) 結び
・パリ原則における集中機能の徹底的な実現。
 ==>・何故,諸版の集中を問題にしているのかわからない。
 ==>★ パリ原則は主題検索を外しているので,記述目録法(著者,書名目録)を対象にしている。これ以外は主題で集中機能を強調しているため。