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整理技術研究グループ勉強会記録(2003年度)

「最近における目録規則改訂動向」第3回


日時:
2003年5月16日(金) 19:00〜
会場:
日本図書館研究会事務所
発表者 :
渡邊隆弘氏(神戸大学附属図書館)
テキスト:
Ann Huthwaite, "AACR2 and Its Place in the Digital World : Near-Term Solutions and Long-Term Direction". Proceedings of the Bicentennial Conference on Bibliographic Control for the New Millennium, (2001).
(http://lcweb.loc.gov/catdir/bibcontrol/huthwaite_paper.html)
Comments by Lynne C. Howarth, Dean
(http://lcweb.loc.gov/catdir/bibcontrol/howarth_paper.html)
出席者:
川崎(仏教大学)、吉田(帝塚山学院大)、渡邊(神戸大学附属図書館)、蔭山(帝塚山大学図書館)、河手(大阪樟蔭女子大学図書館)

○Changes in the bibliographic universe (書誌的宇宙の変化=情勢の分析)
メディアの変化
 多様化の進展→分類困難なものがある
 刊行物と単行資料の2分法・・・ルーズリーフはむりやり単行資料の鋳型に収めてきた
  →電子出版により、新たな"hybrid beasts"が出現
     不安定・複数のバージョンが容易に存在・境界が不確定
利用者の変化
 ユーザの期待の変化→即時的要求、全文のデータを要求、情報検索技術の進化と多様性、オーバーロードの問題
図書館の経営環境の変化
 ライバル(検索エンジン、メタデータなど)の出現
 コストカットの要求(近眼的にならざるをえない)
○Perceived shortcomings of AACR2 (AACR2の既知の欠点)
規則0.24の不具合・・・「手元の資料」←リモートアクセスの電子資料にそぐわない
資料区分の破綻
 位置づけられないようなメディアが増大
 現行の資料区分には区分原理に不統一がある・・・Delseyの指摘(文献1)
時間とともに変化する資料(=更新資料)に対応できない
 電子資料の特性、"snapshot approach"の限界
マルチフォーマットの増大に対応できない
 AACRの原則は手元の資料の物理形態から出発 → 同じ著作でも複数のレコード → 電子環境下では利用者に不便
 多くの図書館では、雑誌について"single record" approach を適応している。
○Processes for change(改訂のプロセス)
JSCがCommittee of Principals of AACRの協力を得て作業
「氷河時代」との批判 ← 各構成機関の決定に左右される
 "band-aid"(まにあわせの)アプローチより、基本的・長期的アプローチが重要
○International Conference on the Principles and Future Development of AACR
1997年10月23-25日にトロントで開催、64人の招待参加者
アクションアイテム
 アクション1:AACRの原則と構造を明らかにするモデリング
 FEBRで用いられた実体関係モデルでAACRを分析(規則のおくにある原則を検証)
 ・いくらかの例外と不統一性を伴った複雑な基本構造が明らかに
 ・資料区分の概念はうまく分析できず → AACR2第1部の再構築を提言
 ・継続資料の記述能力に関する結論・・・規則改訂に大きな影響
 ・第2部の分析・・・基本概念の再検証が必要 → JSCは先送りしてより実際的なRule of Threeを扱う
 アクション2:AACR2の原則をリスト化
 JSCでリスト編集。Tillettが改善作業をして2000年秋の会議に出る予定(文献2)
 アクション3:Seriality(継続資料)に関する提言を明確化
 Bironsらの論文(文献3,4) → この提言を規則改訂提案にしていくべきだとのコンセンサス → JSCがHironsに協力依頼
 ISBD(S)及びISSNとの調和も考慮
 電子資料とも関連して規則改定提案
 ・章の対象を逐次刊行物から更新資料を含む継続資料すべてに
 ・更新資料特有のルールをもりこむ
 ・特異なリモートアクセス逐次刊行物の扱い
 ・電子的継続資料に関連した事例
 アクション4:知的内容(コンテンツ)を物理媒体(キャリヤー)より重視
 CC:DAが知的内容の優位性に関する議論(文献5) → 0.24の2つの主要な機能
 | 1)アイテムは一つの種類種別に位置づけられることを指示
 ↓ 2)(間接的に)新規書誌レコードをどういう場合に作るかのガイダンス
 3つの提言
   1)0.24の文言変更・・・記述対象となるアイテム全ての側面を取り扱う必要を強調
   2)format version もしくは multiple version の問題
    新規書誌レコードを作成する場合の明確な案内が必要 ← JSCが支持。Appendixのドラフトが進行中
    さらなる検討のためのワーキングルーブが始動
    Manifestationレベルの変化は無視するオプション → Expression(FRBR)との親和性を経慮して「版」の定義の見直し
    ↑
   2002年の改訂では見送り?
   3)introductionの拡張(serialityとも呼応)
    目録のプロセスを明確化し容易にする(原則の宣言など) → 原案を2000年秋の会議で検討
○Alignment of ISBD(ER) with AACR2(ISBD(ER)とAACR2との連携)
1998年から作業開始 → 単純な文言の置き換えの問題ではない → 2000年秋の会議で確定させたい
タスクフォースは、「完全にISBDに従うのは不可能・不適切」と結論 → 各構成機関の提言によりリファイン
主要な改訂点
 ・GMD(章名)・用語の更新・適応範囲の拡張と明確化・主情報源の新しい定義
 ・新しい付録への参照・新しい電子資料に対応した事例・Glossaryの用語をISBDにあわせて更新
2000年春の会議でLCから2つの新提案(検討中)
 1)第3エリアの除去(少なくともオプション化)→注記へ
   現在のものでは不十分、カレントに保ちがたい
 2)リモートアクセス資料における形態事項の使用を検討→重点をキャリヤーからコンテンツに移す形で再検討を提言
リモートアクセスは総て出版された(ISBD)とみなすのか?←JSCの構成機関が現在検討中

○Reorganisation of part I of AACR2 according to ISBD areas of description(第1章の再構成)
Delseyの提言→JSCが検討
 JohnsonとEwaldがプロトタイプ作成(文献6)
 全構成機関が提言を支援したわけではない
 結果は複雑・・・一つ以上の資料区分の特徴を持つ資料に関わる困難を完全に解決はしない
 →単純な再構成では資料区分概念が残る→情報源を決定するためにもっとも重要な資料区分を選択しなければならない
 →そのうえで関係条項を探し出さなくてはならない。
CC:DA Task Force on Rule 0.24の指摘
 GMDはコンテンツ対キャリヤーを考えるときにやっかいな問題を残す→いくつかの意見
  2000年秋の会議までにLCがこの問題のディスカッションペーパーを作成(文献7,8)
JSCはプロトタイプを2000年春の会議で検討
 記述総則(第1章)を強化する作業を行う
 各章の規則で記述総則に一般化できるものがないかを検討
AACR電子化版の可能性(オーストラリア協会)
 カタロガーが再構成・カスタマイズできるようなものが理想

○Additional issues associated with the cataloguing of electronic resources(伝支障の目録に関するさらなる問題)
原則をリスト化する過程でいくつかの未解決問題が判明(著者の見解)
 1)電子ドキュメントの境界の定義
  実体は物理的に独立した対象であることが前提(Delseyの指摘) → 物理的に定義できない文章の境界線は決めがたい
   → 対象がハイパーリンクで結ばれた文章を含むのかどうか
 2)提示バリエーションとともに電子ドキュメントを記述
  リモートアクセス資料では表示に使われるソフトウェアによって変化しうる
  →スタイルの変化だけではなく内容の変化を伴うことも
  現行ルールではあるアイテムコピーは互いに等価だとの前提に立つ
 3)時間とともに変化する電子ドキュメントの記述・・・Delseyが現行規則の欠点として注目
  "snapshot"アプローチは電子媒体では適用困難 ← いつどのように変わったのかの痕跡が残らない
  違ったときに目録をとると同じ文章でも全く違った記述ができる
  変化する場合には、一つの属性に複数の複数の値を許容するというDelseyの提言
   ← どのように表現するのか
  ★時間軸はどうとらえるのか?

○JSC's program of work(JSCの作業プロがラム)
改訂作業はどんどん複雑化
 4つのエリア(9,12章、序論、新しいAppendix)が同時進行
  9章は近く決定するが、12章はまだそこまでいっていない
  年末には改訂パッケージをまとめたい(構成機関の同意が必要)
 JSCのメンバーは本務多忙で大きな変化を迅速に行うのは難しい←次の5年間で更なる改訂をきたい

○Long-term direction for AACR(AACRの長期展望)
10年後の想像
シナリオ1:現在の延長線上
 印刷媒体が依然として出版産業の主流。図書館も現在と同じ。
 AACR2も現在と同じでAACR4かAACR5になっている。
  電子版が広く使われているが印刷版も依然ポピューラ
  現在と同じ構成で第1部各章は異なったタイプの資料を扱っている。
  資料区分の概念は困難だが簡単な代替案は見つからず目録作成者の努力に依存する
  MARCフォーマットは限界を感じながらも使われている。
シナリオ2:ハイブリッド
 印刷や他の有形の媒体も広く使われているが電子出版が優勢に。
 AACRは電子媒体のみ発行
  もはやAACRとはよばれず「情報センターのための国際メタデータ標準」などとよばれる
  直感的インタフェースによる柔軟性と使いやすさを持つ
  基本的な論理と構造は残っているが資料区分の概念はもはや存在しない
  →主情報源やGMDなどの約束事は全タイプの資料に適用できるよう一般化
  目録の重点は物理的Manifestaionではなく知的内容(Work or Expression)に
  MARCフォーマットはマルチフォーマットに対応したマルチレベル記述を許容
  目録は専門家が必要とされる蒙一つの黄金時代に
  →複雑で無秩序な情報宇宙から価値ある資源をフィルタリング
シナリオ3:ポストモダン・カオス
 図書館は仮想的に消滅。人々は自宅から情報資源にアクセス
 印刷や有形メディアは例外的なものに
 AACRは絶版のままでだれも電子版を作ろうとはしない
 精細さを要求される分野ではメタデータ標準が存在
 →公共や大学生レベルの利用者はリモートで得られるもので満足している
JSCにとってはチャレンジグな時代
 短期的なニーズと長期的視野のバランスをとる
 広く館界の意見を聞きながら優柔不断の麻痺に陥らないように注意する
メタデータと比較して歴史の蓄積による制約
 大きな変化は既存システムに大きな影響を与える。
 論理的に望ましい発展は実相に多大なコスト

○Relationship between AACR2 and metadata schemes(AACRとメタデータスキーマとの関係)
目録とメタデータの区別は恣意的なものであり複雑さと特定性の違いがあるだけだという指摘
 →目録はメタデータだが狭義でのメタデータは目録ではない。
ダブリンコアの進化過程
 著者に付与から専門家によって使われるよりフォーマルな標準になりつつある。
 MinimalistsとStructuralistsの争いは後者の勝利になりつつある。
 標準を洗練する傾向にあるが結果として当初目指したものから隔たりつつある。
図書館関係の中にもメタデータが新標準になるという意見がある
 より簡単で職業的なカタロガーを要しない←魅力的な提案
 メタデータ標準の発展←精細さを求めるようになってきた
 →AACR2と同じ問題
一般的なレベルではAACR2とメタデータとの対応は図れる(コンバート可能)
 AACR2をメタデータにコンバートすれば情報が失われる。
 メタデータをAACR2にコンバートすれば完全なデータではなくなる。

○Integrated approach to accessing bibliographic resources(書誌的資源にアクセスする統合的アプローチ)
情報源へのアクセスの準備・・・レファレンスもしくはシステム担当者の仕事
 図書館WWWサイトに掲載された様々な電子資源のリスト
 →記述の詳細さは様々。多くの場合整理部門と別に管理。完全な目録データではなく非標準的な取り扱い。
 →結果として利用者は統合的アクセスを拒否されている。←統合・連動が望ましい

○The way forward
Michael Gorman の問題提起(文献9)
 →ネットワーク情報資源の目録のアプローチ
 1)AACR2/MARC 2)豊かなダブリンコア 3)ミニマムのダブリンコア 4)構造化されないキーワード検索に依存
目録のレベルは資源の相対的価値に依存する・・・電子資源の価値を検定することは容易ではないが必要
「どのように(How)にインターネット資源の目録をとるか」ではなく「なに(What)の目録をとるか」
 問題は目録というより蔵書構成←蔵書構成方針が資源同定のための基準を決める
コストの問題・・・目録には熟練と時間を要する→共同・分担が必要

○Recommendations(勧告)
1)JSCは情報環境の変化に対応して規則改訂をすすめる
2)JSCは規則の背後にある原則を再検証する
3)JSCは規則改訂過程の迅速化を図る
4)より柔軟で使いやすい電子版を開発する
5)図書館専門職はAACRの維持開発を十分に支援する
6)図書館はインターネット資源に対する蔵書構築方針を確立する
7)電子情報資源の共同目録を促進する
8)電子情報資源と旧来の情報資源との統合アクセスを実現する

<参考文献>
(文献1) Delsey, Tom "Modelling the Logic of AACR"
 http://collection.nlc-bnc.ca/100/200/300/jsc_aacr/modeling\r-bibun.pdf
(文献2) Tillett, Barbara B. "Principles of AACR"
 http://www.nil-bnc.ca/jsc/prin2001.pdf
(文献3) Hirons, Jean "Revising AACR2 to accomodeate seriality : report to the Joint Steering Committee on the Revision of AACR", 1999.4
 http://www.nlc-bnc.ca/jsc/ser-rep.pdf
(文献4) Hirons, Jean "Revising AACR2 to Accomodate Seriality : Rule Revision Proposals", 2002.2
 http://www.nlc-bnc.ca/jsc/cha12.pdf
(文献5) ALCTS CCS Committee on Cagaloging : Description & Access "Overview and Recommendations concerning Revision of Rule 0.24", 1999.8
 http://www.libraries.psu.edu/iasweb/personal/jca/ccda/tf-024h.pdf
(文献6) CC:DA Task Force on Alpha Prototye of Reorganized Part One "Report", 2001.8
 http://www.libraries.psu.edu/iasweb/personal/jca/ccda/tf-alpha.pdf
(文献7) Tillett, Barbara B. "General Material Designations (GMDs)", 2001.5
 http://www.nlc-bnc.ca/jsc/gmd.pdf
(文献8) "General Material Deignation in the Twenty-First Century : Results on a Survey by Jean Weihs", 2001.6
 http://ublib.buffalo.edu/libraries/units/cts/olac/capc/gmd.html
(文献9) Gorman, Michael "Metadata or cataloguing? : a false chice". Journal of internet cagaloging 2(1) pp.5-22, 1999