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整理技術研究グループ勉強会記録(2005年度)

「セマンティックWebと資料組織法」第13回


日時:
:2006年1月26日(木) 19:00〜
会場:
日本図書館研究会事務所
発表者 :
河手太士(大阪樟蔭女子大学図書館)
テキスト:
D. Grant Campbell and Karl V. Fast. Academic Libraries and the Ssemantic Web : What the Future May Hold for Research-Supporting Library Catalogues. Journal of Academic Librarianship. 30(5), pp.382-390, 2004
出席者:
蔭山、川崎(佛教大学)、田窪(近畿大学)、吉田(帝塚山学院大学)、渡邊(神戸大学附属図書館)、河手(大阪樟蔭女子大学図書館)

この論文での提案
目録の役割の向上…単なる場所表示デバイスから探索ツールへ←セマンティックWebを利用
★"machine readabel"から"machine understandable"へ

Traditional metadata architecture

Dublin Core における"minimalists" vs "structuralists"の論争
メタデータについての並列的・相補的な2つの視点
・記述に使われるメターデータ 例)MOS
・異なる知識領域のリソースを横断的に探すためのメタデータ 例) OAI-PMH
 →詳細な記述よりも相互運用性が必要とされる
 この2つのカテゴリーから離れてメタデータの原則を用いたメタデータ利用の仕組み…GEMやOAIsterなど
WWWにおける情報提供者に関する2つの仮定
・複雑な記述にするかどうかは、リソースを作成・利用する機関による
・Webは灌漑用水路のようなネットワークである

Academic libraries and the traditional metadata architecure

Webが灌漑用水のようなものであるというパラダイム←学術図書館にとって魅力的
理由1) 複雑さはソースにより発生するという仮定
 →利用者を知り情報記述の複雑さを理解出来る人が作成した目録が最も良いものだという一般通念に適合

理由2)図書館の基盤部分である記述基準を犠牲にせずに、リソースとコレクションをWebを通して利用可能にできる
このパラダイムの問題点
・高度な記述を作成することができない図書館には選択可能なものがわずかしかない。
・伝統的な図書館では役に立つ記述の作成や資源的制約・専門的知識などのために挫折する。

RDF and Semantic Web
 セマンティックWebの仕組みは技術的および社会的な有益性をもたらす。
  技術的…URIによるアクセス
  社会的…情報を作成してWebに載せるという容易さ

What might the new academic library catalog look like?
Basic Framework(基本的枠組み)
新しい学術図書館の目録を構成する3つの要素
・URIで識別された内部記述
・RDFでエンコード化されたWebの情報リソース
・知的エージェント

内部記述
 リソースを保持する組織が作成すべき基本的記述要素
 ・識別子としてまたリソースの所在を示すためのURI
 ・組織内部で作成されたあらゆる情報

RDFでエンコード化された情報
 (例) 稀覯本 非図書資料

Webベースのリソースで必要とされる要件
・エージェントが読める異なるデータエレメント間の関連を容易にする機械可読タグによるエンコード
・目録作成機関による信頼性と有益性を考慮したソース

ソフトウェア・ツール
 エージェント技術によるソフトウェア
 ・利用者の興味の追跡
 ・Webの事前探索
 ・利用者とのインタラクションを通じた学習
 ・個人向けのデータやサービスの提供
  →目録作成者の知的選択を可能にするWebのセマンティックメタデータの利用
  知的選択…適切な情報の発見・登録、他の書誌レコードに含まれる情報の抽出

Basci Process(基本処理)
3つのエンティティ
・基本的枠組みで構成された書誌レコード
  多様なカテゴリーの情報が詰まっている
 ・著作の様式
 ・著作の歴史的背景
 ・著作の知的内容
 ・著者の伝記と全著作
 ・書誌的特徴(図表、索引、文献一覧)
  Web上のRDFでエンコードされたリソースからエージョントにより収集
効果的な機能を持つ目録システムに必要な条件
・URIの一般的な利用
・学部(faculty)専門家との協調
・RDF形式のWebソースの存在
注目すべきこと
 学術図書館の目録は、目録中の情報が非伝統的方法により再表現できるので、RDFの一部を形成できる
例えば
・学術図書館はエージェントが探索できるように、書誌レコードや典拠レコードをRDF形式のDublin Coreや MODSでエンコードする。
・典拠レコードの相互参照の著者名別名リストへの利用
 もし適切なURIが割り当てられていれば、著者や主題の典拠ファイルをほかのエージェントも利用することができる。

Example : Bleak House (1853 edition)
スケルトン・レコード(図2)…この資料を表す単一の識別子で構成
書誌情報(図3)…既存のXML形式の書誌レコードから流用することができる
伝記情報(図4)…他のサイトから容易に入手できる
著作情報(図5)…目録の利用者によって様々
 [社会的背景の概要・著作の様式・序文などの著作研究に関する導入情報]
関連著作(図6)
★これらの情報がRDFでコード化されていればエージョントが収集してくることになるのではないか。

Implication for the academic library
図書館における資料目録作成法に著しい変化
・オンライン書誌ユーティリティや目録コンソーシアム、国際標準書誌記述をもたらした分担目録作業の専門知識の伝統と一致
・特定の主題専門知識を持つ目録作成者を雇うという図書館の傾向に一致

学術図書館の目録作成者は、以下の活動もに時間を費やすことになる。
・専門主題に関するRDFでエンコードされた情報の所在を見つけ、その信頼性を精査し、有用性を評価する。
・目録に記載する特定のアイテムのためのRDFリソースの選択
・特定の知識領域におけるプロジェクトへの参加と、領域特有のメタデータのオープンアクセスの発展を促進
 →目録作成者は、情報の専門知識を用いて情報仲介者としての活動を行う。

Conclusion
メタデータ収集プロジェクトでのメタデータの共同利用の必要性はたいへん重要である。しかし、ここで提案したモデルは、Webが複雑な記述の転送のための媒体以上であることを示している。多くの領域で異なる情報の発展の支援に伴い、Webは豊かさを運ぶ単なる媒体というよりも豊かさの源となっている。また、もしセマンティックWebができれば、異なる領域の人々の熱意と専門的知識により、この豊かさを利用する実用的な手段を持つことになるだろう。学術図書館は、この情報の豊かな「海」から利益を受け、その発展に重要な役割を果たすことになる。