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整理技術研究グループ勉強会記録(2006年度)
「セマンティックWebと資料組織法(続)」第5回
- 日時:
- 2006年6月2日(金) 19:00〜
- 会場:
- 日図研事務所104号室
- 発表者 :
- 河手太士氏(大阪樟蔭女子大学図書館)
- テキスト:
- 溝口理一郎『オントロジー工学』 オーム社, 2005 (ISBN 4-274-20017-5)
3.2(タスクオントロジーとドメインオントロジー)、4章(FAQ)、5.6(オントロジーの応用)
- 出席者:
- 渡邊(帝塚山学院大学)、有信、守屋(近畿大学)、横山、蔭山、松井(大阪芸術大学)、川崎(佛教大学)田窪(近畿大学)、吉田(大手前大学)、河手(大阪樟蔭女子大学図書館)
3.2 タスクオントロジーとドメインオントロジー
- オントロジー
(哲学) 「存在に関する体系的な理論(存在論)」
(人工知能)「概念化の明示的な規約」
(知識ベース)「人口システムを構築する際にビルディングブロックとして用いられる基本概念/語彙の体系(理論)」
(武田)「ある目的のための世界の認識に関する共通の合意」
(グルーバー)「複数人の間で共有される合意内容」
(溝口)「対象とする世界に「何が存在している」かを考えて情報処理的モデルを構築したかを明示したもの」
- 構成物
(1) 対象世界から基本概念を切り出した結果としての「概念」の集合
(2) 概念のis-a関係による階層化
(3) is-a関係以外で必要となる概念間の関係 (part-of関係など)
(4) 抽出した概念と関係の定義、あるいは意味制約の公理化
★シソーラスでは(2)がBT,NT、(3)がRT
- ライトウェイトオントロジー
メタデータ関連の語彙集合や概念階層を代表例とするオントロジー
ウェブドキュメントの検索などの具体的な目標に対して必要な情報の効率的な記述とその有効利用が優先される
- へヴィウェイトオントロジー
知識ベースのオントロジー=概念間の関係のセマンティクスの厳密性や意味の明確性などが必要
- ドメインオントロジー
タスクが実行される領域(ドメイン)にかかわるオントロジー=通常、オントロジーと呼ばれているもの
- タスクオントロジー
問題解決過程自体を対象としてみて構築されたオントロジー
「問題解決家庭に存在する概念と関係を領域独立に抽出し、組織化したもの(とその理論)」
トップカテゴリー
(1)タスクロール:ドメインオブジェクトがタスクコンテキストにおいて果たすべき役割
例)スケジュールの受け手、スケジュール、ゴール、優先度 など
★ロール=固有基礎概念
(2)タスク行為:問題解決においてなされる基本動作
例)分類する、取り上げる、選択する など
(3)オブジェクトや問題解決の状態
例) 最後の、アイドル など
(4)その他(制約など)
例) 制約充足、属性 など
4. FAQ
- オントロジーは何でないか
- オントロジーは単なる語彙集合ではない
概念間のis-a関係が不可欠
語彙は概念のラベルにすぎない→自然語依存、同義語や別名などの問題に敏感
オントロジーは語彙ラベルが指す「概念」の体系
- へヴィウェイトオントロジーは単なる概念階層でない
分類階層(Taxonomy)を包含する=分類階層自体がヘヴィウェイトオントロジーでない
★例4.1の(b)オントロジーはランガナタンのファセットの考え方とよく似ている。
=図書館における整理技術と親和性が高そう。
★例4.1の(a)単純な階層関係はシソーラス、(b)オントロジーは分類(ファセット)としてみることができる。
- オントロジーは知識表現ではない
オントロジーは対象をモデル化するためのガイドラインを提供する
=トップ概念の設定、「もの」を構成する部分の同定、同定された概念間の関係の同定などが重要
- オントロジーの効用 ★タスクオントロジーには当てはまらないかもしれない
- 合意を得る手段 合意形成のプロセス(≠オントロジー構築プロセス)
1)合意を得る部分を探すことに「合意」する
2)参加者全員が知識でなく、オントロジーを出し合う
3)上位のオントロジーから比較・検討を始める
4)互いのオントロジーを分析・比較して、共通点・相違点などを抽出
5)観点や立場の相違に注意しつつ、互いの相違点を認識
6)抽象度を上下しながら合意できる部分を探す
7)各自が討論を反映したオントロジーの修正版を出し合う
8)観点独立なオントロジーを見つけるとともに、相違点については観点の相違で吸収できる部分を探す
9)合意の成果としてのオントロジーを得る
10)知識はオントロジーに含まれる概念で記述する
- 暗黙情報を明文化
無意識のうちに仮定し、前提としている概念を明示化する…対象世界の「概念化」
- 再利用と共有
知識を構成する基本概念に立ち戻って、知識の元となる世界を客観的な存在として考察し、その知識を構成する
基本概念を同定
↓
知識の抽象度に応じた階層性、知識分解可能性、コンテキスト依存概念の同定と除去など
↓
物事や対象の成り立ちを基本から検討し、共有・利用可能な知識を見いだす糸口となる
- 知識の体系化
オントロジーの役割…関係する対象世界を支配する概念の明確化と記述するための共通言語をさだめる
→コンピュータ上での知識の体系化=コンピュータが処理可能
- 標準化
オントロジーに含まれる語彙と概念は共通性が高い→標準化への第一歩
- メタモデル的機能
モデル構築に必要な基本概念とガイドラインを提供
- 総合的効用
- オントロジーとモデル
「クラス」=オントロジーが提供する概念←オントロジーが提供する「概念」自体が不安定になることはない
「インスタンス」=モデルに使われるもの
- オントロジー=「知識一般の」モデル
モデル=「ある特定の概念の」モデル…クラスレベルでのpart-of階層の定義に対応
オントロジーでもpart-of関係を記述するので紛らわしい
5.6 オントロジーの応用
・オントロジー応用の分類
- タイプ1:共通語語彙としてのオントロジー
- 語彙の統一(遺伝子オントロジーや癌オントロジーなど)
知識の体系まで意識されている例はない
- タイプ2:情報アクセスのためのオントロジー
- WWW上の情報資源にアノテーション(注釈)するためのメタデータ要素と語彙の提供
★ダブリン・コアなどが例になる。
メタデータを解釈する際に用いられるクラス階層やクラス間の関係を提供すること
例)ウェブサービスオントロジー、LOM(e-ラーニング)
★項目値となるもの(語)を提供することか
- タイプ3:相互理解のための媒体としてのオントロジー
- 人間同士、人とエージェント、エージェント同士が相互理解するためにオントロジーの利用や変換などによる意味解釈機能が求められる
例) メタデータと意味的運用可能性(セマンティックウェブ)
- タイプ4:規約としてのオントロジー
- どのようなインスタンスがありえるかということを規定するメタモデル
例)オントロジー指向オーサリングシステム(e-ラーニング)
- タイプ5:知識の体系化の基礎としてのオントロジー
- 組織化された知識の核となる概念構造を提供
例)EPISTLE