整理技術研究グループ勉強会記録(2006年度)
「セマンティックWebと資料組織法(続)」第13回
- 日時:
- 2006年12月15日(金) 19:00〜
- 会場:
- 日本図書館研究会事務所
- 発表者 :
- 河手太士氏
- テキスト:
- "Representing Classes As Property Values on the Semantic
Web"
http://www.w3.org/TR/swbp-classes-as-values/
- 出席者:
- 渡邊(帝塚山学院大学)、堀池、蔭山、川崎(佛教大学)、吉田(大手前大学)、河手(大阪樟蔭女子大学図書館)
General issues
オントロジを構築する際、プロパティ値としてクラスを使うのは都合が良い。
↓
OWL Full、RDFスキーマ…全く制限しない
OWL DL、OWL Lite…クラスをプロパティ値にできない。
Use case example
(1)"Lions : Life in the Pride"…ライオンという種についての図書
(ライオンの身体的特徴や生息地、子、えさ、捕食者、人間との関係を紹介)
(2)"The African Lion"…アフリカ・ライオンという種についての図書
(アフリカ・ライオンの身体的特徴や、生息地、行動が書いてある)
「アフリカ・ライオン」についての検索の時だけではなく「ライオン」についての検索の時も、
結果に後者の図書が含まれているようにする。
既存のオントロジの利用→もともとの関係を保たなければならない
↓
関係が変われば他のアプリケーションに不都合な影響を与える
アプリケーション間の相互運用性が保てない
検討:OWLとRDFスキーマにおける情報の表現
提案:OWL DLやOWL Liteで情報の表現する方法
対象外:セマンティックウェブにおける主題階層やターミノロジーの表現方法
Other use case scenarios
ターミノロジーとしてそのクラス階層を用いる…クラス階層の維持についての問題が生じやすい
検討・異なったジャンルの階層構造を用いる方法すること
クラスや個物と標準的なターミノロジーで一致する用語をリンクすること
プロパティの値としてクラスを用いるという利用法…システム間の意味的な相互運用性やメタモデリングも含む
Approach 1:プロパティ値として直接的なクラスの使用)
[図1]
[考察]
・RDFスキーマ、OWL Full…○ OWL DL、OWL Lite…×
・簡潔で直観的にわかりやすい。
・この表現を用いるアプリケーションは、Lion(個物LionLifeInthePrideBookの主題)がAnimalクラスのサブクラスであるとか、AfricanLion(個物TheAfiricanLionBookの主題)がLionのサブクラスであるということを結論付ける情報に直接アクセスすることができる。
・プロパティdc:subjectの値の範囲を制限する必要があるならば、その制限のための付加的なクラスをつくる必要がある。
[結論]
このアプローチは、単純さを気にするならばよいが、OWL DLに適合していないし、プロパティdc:subjectの値の制限やその制限を実装するためのクラスを使うことを気にすることもない。
Approach 2:プロパティの値として必要なクラスの特別なインスタンスの作成
[図2]
[考察]
・RDFスキーマ、OWL Full・・・○ OWL DL、OWL Lite…○
・LionクラスのインスタンスとしてのLionSubjectというインスタンスに、動物園のある特定のライオンを表すインスタンスが混在するので矛盾している。(=ライオンとライオンsubjectが同じクラスとなるので矛盾が生じる)ただし、相互運用性が問題でない時には問題ではない。
・明確な直接的関係性(すなわち万能の推論で容易に特定することができる関係)はない。
・維持に関する不便性:
主題の階層とそれに対応するインスタンスの組を維持
互いが一致する2つの組(主題を表すクラスと対応する個物)を保障することが必要
↓
自動的に一貫性をメンテナンスするツールで解決できる
単純なタスクを処理するために手間をかけることは「乱暴すぎる」と考えられることもある。
・クラスのプロパティdc:subjectの値の制約を定義することは容易
[結論]
このアプローチによりOWL DLオントロジを作ることができる。オントロジがOWL
DLであることが重要であるならば、このアプローチを使用するのがよいかもしれない。しかし、例えば主題が「アフリカライオン」の図書を主題が「ライオン」の図書に関連付けるように推論をすることはできない。さらに、動物の階層構造に実際の動物を表した階層を使う場合、その解釈に矛盾が生じる。また、主題を表現するクラスと個物間の関係の一貫性を維持する必要がある。
Approach 3:プロパティ値としてインスタンスの並列階層を作成
[図3]
[考察]
・RDFスキーマ…△ OWL Lite、OWL DL…○
RDFスキーマではプロパティの推移性を表現することはできない。
・DL推論機構のうち主題間の推移的な関係を推論することができるものとできないものがある。
・主題階層は、同じトピックスを表すクラス階層に独立または関連がない。
・同じ情報を表す並列な階層構造を人間が気をつけて維持することは複雑で難しい。
・適合するオントロジから主題の用語を分離する。
・主題Lionのセマンティクスはライオンのクラスのセマンティクスと異なる。
・適合するオントロジからの主題用語の分離は維持に手間がかかる。
すべての主題に対し主題の階層構造に加えてそのインスタンスの組を維持
主題クラス-対応する個物、個物-プロパティ値が互いに一致していることを確保
→自動的に一貫性を維持するツールで解決
・BookAboutAnimalsクラスのプロパティdc:subjectの値の制限の定義は容易である。
[結論]
このアプローチは、OWL DLであることが重要であるならば、良い方法である。主題間の推移的な関係を推論するのにDL推論を用いることができるが、並列な階層構造が必要という欠点がある。
Approach 4:特定の値を用いる代わりに特別な制限を設ける
BookAboutLionsクラスの定義
:BookAboutLions
a owl:Class ;
owl:equivalentClass
[ a owl:Class ;
owl:intersectionOf ([ a owl:Restriction ;
owl:onProperty dc:subject ;
owl:someValuesFrom :Lion
]
:Book)
] .
※OWLにおいてsomeValuesFrom制約を用いるクラスにはインスタンスの作成は不要
LionsLifeInThePrideBookクラスの特定のインスタンスの定義
:LionsLifeInThePrideBook
a :BookAboutLions ;
rdfs:seeAlso <http://isbn.nu/0736809643> ;
:bookTitle "Lions: Life in the Pride" .
名前を持つクラス(BookAboutLions)を作成し、このクラスのインスタンスを作成する代わりに、owl:Restrictionタイプのanonymousクラスを作りインスタンスを作成する。
:LionsLifeInThePrideBook
a :Book;
[ a owl:Restriction ;
owl:onProperty dc:subject ;
owl:someValuesFrom :Lion ];
];
rdfs:seeAlso <http://isbn.nu/0736809643> ;
:bookTitle "Lions: Life in the Pride" .
[考察]
・・RDFスキーマ…× OWL DL…○ OWL Lite…?
・DL推論機構は、BookAblutAnimalsクラスのインスタンスとしてLionLifeInThePrideBookを分類できる。
・特定の主題に基づく図書のクラス階層と主題として用いている種のクラス階層とは一致している。
・図書の階層構造は、それぞれの主題に対応する図書クラスがある必要はないが、本質的には主題の階層構造に対応している。図書クラスが定義されれば、DL推論機構は主題階層に基づき自動的に図書クラスの階層を推論することができる。
・このパターンのかぎは、新たな図書クラスの作成新たなクラスが特定の主題に関するあらゆる図書を表わすので、定義で対象を入れるだけですむ。
・主題に基づき図書を分類するためにDL推論機構を用いる最も簡単な方法である。
DL推論機能は、BookBoutLionsクラスとBookAboutAnimalsクラスの両方のインスタンスとしてその主題として
Lionクラスのインスタンスを持つ個物LionsLifeInThePrideBookを自動的に分類することができる。
[結論]
このアプローチはDL推論機構を最大限に利用する。主題に基づいて個物を分類するためにDL推論機能を用いる場合には良いかもしれない。
Approach 5:注釈プロパティの値としてクラスを直接用いる
[図5]
[考察]
・Approach 1と類似
・OWL DLにおいて、注釈型プロパティはオブジェクト・プロパティやデータタイプ・プロパティとして同時に定義できない。
↓
注釈プロパティがどこかでオブジェクト・プロパティやデータタイプ・プロパティとして定義されていれば用いることができない。
・OWL DLにおいて、注釈プロパティはカーディナリティやドメイン/レンジ制約やサブ・プロパティのような制約を設けることができない。
・たとえオントロジがOWL DLの範囲であっても、DL推論機能は、推論に注釈型プロパティの情報を用いることはない。
⇒ 注釈型プロパティを用いて推論ができる特殊な推論を用いる必要がある。
結論
このアプローチは、OWL DLの範囲ではあるが、プロパティ値として直接クラスを用いることを許している。しかし、クラスを値とするプロパティは注釈として定義され、さらに定義された追加制限をもつことができない(他の場所でオブジェクト・プロパティやデータタイプ・プロパティとしてはいけない)。さらに、DL推論機能は注釈型プロパティの値を使用して推論をしない。