TOP > 勉強会 > 2007年度 > / Last update: 2008.1.1

整理技術研究グループ勉強会記録(2007年度)

「図書館目録の将来設計」第3回


日時:
2007年3月28日(水) 19:00〜
会場:
日図研事務所104号室
発表者 :
河手太士氏(大阪樟蔭女子大学図書館)
テキスト:
Danskin, Alan. Tomorrow never knows: the end of cataloguing?
 (http://www.ifla.org/IV/ifla72/papers/102-Danskin-en.pdf
出席者:
田窪(近畿大学)、渡邊(帝塚山学院大学)、吉田(大手前大学)、横山、松井(大阪芸術大学)、蔭山、堀池、河手(大阪樟蔭女子大学図書館)

この論文(paper)の目的

 ・目録作業が直面している問題の概説(review)
 ・どのように問題と直面し乗り越えることができるかを検討すること

目録作業」(cataloging)とは

 ・識別と類似するリソースとの区別のための記述
 ・アクセスポイントの識別とコントロール
 ・他のリソースとの関係の識別とコントロール
 ・リソースの主題分析
 ・主題索引語の付与
 ・分類番号の付与

目録作業が直面している主な問題

 ・入力の増大…2004年のイギリスでは16万冊の本が新たに出版されている。
 ・新たな種類の情報リソース
    Webの出現…出版(publishing)の本質を根本的に変化させる
               =誰でも「出版者」(publisher)になれる
    リソースの膨大な増加…伝統的な目録作業プロセスが困難に
 ・他の(仲介)サービスとの競合
    情報を探している人と情報を結びつける役割…図書館からGoogleなどのサーチエンジンやサービスへ
    使いやすいAmazonのインタフェースと使いにくい目録(OPAC)…目録作業(cataloging)の正当化が困難
 ・目録作業は費用対効果が悪いという認識
 ・財政的制約
   目録作業は高価なものである
     アメリカの研究図書館:約2億3900万ドル(約345億円) 2004年
     アメリカ議会図書館:毎年約4400万ドル(約52億円)
     英国図書館:約580万ポンド(約14億円)=予算の約5%
 ・労働力の減退…2010年には目録作成者の33%が退職(アメリカ)
          図書館学教育における目録(cataloging)教育の縮小と教員の高齢化

できることは何か?

 2つの疑問
  1)目録作業(cataloging)はWeb環境に適しており、長い期間適切なメディアとして残るか?
  2)もし目録作業が適切なものであれば、問題に適合するためにどのような変化が必要か?

「目録作業はWeb環境に適しているか?」( 疑問1)の前半)

  答は「Yes」
  理由:Webはキャリアーとして印刷物に取って代わっていない
       図書の出版は減っていない
       新たなマーケットの出現…中国・インド・ブラジル・東ヨーロッパなど→新たな出版物の目録をとる必要がある

「目録作業は長期間に長い期間適切なメディアとして残るか?」( 疑問1)の後半)

  答は「執行猶予中」(=はっきりとわかっていない)
  技術の著しい陳腐化・・・図書もソノシート(レコード盤)やCDと同じようになるかもしれない
  Lord Young of Graffham(英国サッチャー政権の元大臣)の予測・・・だれもがウェブからi-bookをダウンロードするようになる
         →コンテンツのデジタル化=キーワードによる直接アクセスが可能に
         →目録作業は余計なものととらえられるようになるかもしれない

コンテンツが電子形態に移行したとき目録作業に未来はあるのか?→答は不明

  しばらくの間は、コレクションの中に印刷形式のリソースが残っていく
    主たる印刷形態のコレクションを電子化するためには莫大な費用と20年以上の年月か必要(カルホーンの予測)
  (仮定)世界の知識がデジタル化されWebを通して利用可能である
       ←リソースへのアクセスはどうのように実現するのか?キーワード検索とランキング表示で十分か?
          Googleもマイクロソフトもそのようには考えない
          巨大電子化プロジェクトではオリジナル(印刷形態)のために作成した目録を再利用している

目録作業

 ・リソースを記述する以上の意味がある=リソースのコンテキストを確立する
 ・リソース間の関係を確立する・・・異版、翻訳、同一著者の異なる作品間の関係 ←利用者にとっては重要
 ・人類に記録された知識と知的な業績の地図 ★他のサービス(GoogleやAmazon)でもやっている

OPAC

ナビゲーション機能を完全には利用していない
  帳簿型目録やカード目録…リソース間の関係の効率的な提示の方を優先
  OPAC…アクセスポイントの数を増やすことを優先
    Web技術とOPACの統合→世界中の知識をナビゲートするための強力なツールとなる

目録作業の目的=コレクションの利用者の時間と費用を節約すること

 コレクションを利用しない人にも情報を提供→目録は公共財(public good)となりえる
 ただしその利便性を測定するのは直接的でないので難しい…現在英国図書館が研究中

Web上の利用可能な情報量の増加

→リソースを発見する機会やコストが増大
  「Webの目録をとることは不可能→目録をとる必要がない→目録をとるものを選択すべきだ」という考え方
  正式に出版された資料・・・識別するのは容易←標準的な識別子を持ち印刷物と同じように扱われる
   Web上のかなりの資料・・・未来の学者にとって興味のあるものかもしれないし資料の製作者以外には興味を持つ人がいないかもしれない
  図書館がアーカイブのようになる→大部分のWebリソースが書誌的リソースとしてよりもアーカイブ・リソースとして扱われる
                 →既存のアーカイブ・コレクションのように記述をとることは例外になる

より従来の意味で目録作業を正当化する多くのサイトとWebリソースの存在(=アーカイブとビブリオグラフィの間にあるサイト)

LC…”description-lite”というアクセスレベル・レコードの提案
IFLA…介入(intervention)を保障(warrant)する識別リソースの選択評価基準を作成中

目録リソースへの要求の増加

目録作業の対象範囲を広げる=資料が増える→目録をとるものが増える
 図書館以外の機関との相互協力体制の確立が必要
  JSCとONIXの共同イニシアティブ
  「RDAとONIXの両方がそれぞれのコミュニティに適切なリソースカテゴリの開発の基盤として用いることができ、またリソースの記述の相互運用性の基盤となる共通の枠組み」

目録の未来

プロセスを”craft”(手作業)から”industry”(組織的作業)に変える
 異なる段階で作成されたメタデータの再利用を容易にするための粒度の異なる同定が必要←これまでの習慣で役に立たないものが出てくるかもしれない

目録作業のプロセス

絶えず変化するドキュメントの膨大な量によって維持
           多くの規則・解釈・例外は効率の悪化を招く。

AACRからRDAへの変化

原則を明らかにしてアプリケーション・プロファイルによって記述する

目録の中心(core)サービス

 ・共通の属性を共有するリソースを集中させる装置としての役割
 ・個々の利用者の特定のニーズによって類似のリソースを見分ける能力

"listen to colour of our dreams"

我々の義務

 Webには目録が必要
  ・オンラインショップには商品の販売を促進する目録がある。
  ・もっとも人気のあるオンラインリソースは強力な書誌的基盤をもつ。

ある日、我々はみな目録作成者になるだろう。“It is not dying, it is not dying.”