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整理技術研究グループ勉強会記録(2007年度)

「図書館目録の将来設計」第4回


日時:
2007年4月19日(木) 19:00〜
会場:
日図研事務所104号室
発表者 :
松井純子氏(大阪芸術大学)
テキスト:
Cathro, Warwick. New frameworks for resource discovery and delivery: the changing role of the catalogue
 102 SI - IFLA-CDNL Alliance for Bibliographic Standards ICABS (IFLA 2006)
 (http://www.ifla.org/IV/ifla72/papers/102-Cathro-en.pdf)
出席者:
吉田(大手前大学)、横山、松井(大阪芸術大学)、蔭山、堀池、渡邊(帝塚山学院大学)、河手(大阪樟蔭女子大学図書館)

Introduction(はじめに)

LCのレポート(2006年公表)
 「The changeing nature of hte catalog and its integration with other discovery tools」
   作成者:カレン・カルホーン (2007年5月にOCLCの副社長に就任。WorldCatとメタデータ事業を担当)
   目録への悲観的な意見…図書館目録(の利用)を回避する研究者や学生の増加
                   目録は衰退しており、その過程と構築を維持できない
   研究図書館のライフサイクルを引き伸ばす4つの提案
     ・Promote more frequent use amang existing users
     ・Develop new users amang existing users
     ・Find new users for the existing product
     ・Find new uses and new users→開かれたゆるく結びついたシステム間での情報のグローバルな発見と提供を可能にする基盤を構築する必要がある
   総合目録の役割・・・図書館統合システム(ILS)を情報提供可能な中間層として利用
 レポートに対する批判的なレビュー(トーマス・マン)
   批判点・・・「ビジネス・モデル」アプローチ・LCSHの廃止勧告・目録作業の性急な方向転換の重視

オーストラリア国立図書館(NLA)の自館の目録の将来についての検討
  情報資源の発見・提供過程における目録と個々の図書館システムの役割を重視
  出発点・・・ジュディス・ピアーズ「New Frameworks for Resource Discovery and Delivery」
          図書館システムが(目録とは対照的に)情報資源発見プロセスにおいて検索能力を欠いていることはない
          図書館目録とそれ以外の情報資源発見経路を行き来できるようにすることが重要

The role of the union catalogue (統合目録の役割)

ピアーズの論文では・・・
 図書館は、索引やデータベースを通じて世界中の雑誌文献への直接アクセスを可能にするが、図書やそれ以外の非逐次観光資料の発見・提供には自館のこれ区書運を優先させる
  ★雑誌索引は索引業者が作成し、図書は図書館しか作成しないので、図書を発見するには図書館目録しかない=図書館領域のみ
 図書館目録はまだ十分ではない。→総合目録は、図書館のコレクション中の求められた情報資源に対する最も重要なアクセス手段として促進される必要がある

総合目録についての議論・・・「ロング・テール」に関する議論とかみ合う
「発見を手助けするためのメタデータのプールは、規模の大きいほうが役に立つ」(ローカル・デンプシー)・・・総合目録は「規模の大きなプール」の候補となりえる

The NLA's review (NLAのレビュー)

 NLAが提供する目録
  ローカル・オンライン目録・・・エンデバー・ボイジャー(Endeavor Voyager)にもとづくシステム
  全国総合目録(Libraries Ausralia)・・・オーストラリアの国内図書館(800館以上)が所蔵する4000万件以上の情報資源の所在
  2006年2月に無料のWeb探索インタフェースをリリース

 明らかになった仮説
  ・NLAは、受入・目録作業や逐次刊行物の受入作業を支援するために、ボイジャーを使用し続ける。
  ・利用者は、探している情報資源がNLAのコレクションに存在しなくても、利用可能な情報資源の全てを見つけることができる
  ・利用者は、自分がNLAのコレクションだけを探索しているのか、オーストラリアの全図書館のコレクションを探索しているのかわかる必要がある。また、探索している範囲を限定したり、拡張することもできる。
  ・利用者にprimaryまたは「初期設定」による探索目標なのかを提示する必要がある=NALだけを探すのか、全ての図書館を探すのかを提示する。
  ・大抵の利用者は、Libraries Australiaが提供するグーグル・スタイルの検索インタフェースを好む
  ・利用者は、簡単なリクエスト・インタフェースを望む。

Enablers(できていること)

  利用者が検索する最初のデータベースとしてオーストラリア総合目録(Libraries Australia)を
  ・利用者は、オーストラリアの情報資源コレクションを含む図書館情報資源の大きなたまり場(pool)にアクセスすることができる
  ・オーストラリア総合目録は、無料の探索対象として利用可能
  ・参加館の全目録レコードは、総合目録に存在する
  ・総合目録は、各館の目録よりも機能性(探索の容易さ、パーソナライズ化、アラートなど)を備えている
  ・NLAは総合目録の機能性を発展させることが可能
  ・NLAは総合目録インターフェースと他の発見サービスとの統合を通じて利用者の経験を高める

Inhibitors (障害となるもの)

  ・総合目録と(または他のウェブサービス)と各館の図書館システムの情報の不完全な相互運用性
    総合目録の利用者が、関心のある情報資源を発見して、それが実際に利用できるかどうかを知ることができるか?
      ・総合目録から各館の目録へ「直接リンク(deep link)」をつける方法=総合目録のレコードから各館の目録システムの同一レコーへ利用者を導く
        やや不細工なインタフェースの移動
        WorldCatやRedLightGreen、Libraries Australiaで実現されている
        総合目録と他のサービスがこのような「deep catalogue links」を構築・維持するには多くの作業が必要
      ・標準的なWebサービスプロトコルを開発し、標準的なフォーマットで受付ける←各館のシステムがプロトコルとスキーマを備えてる必要がある
        Z39.50所蔵スキーマ・・・この目的のために開発されたプロトコルとスキーマ
        XML所蔵スキーマ・・・ISO TC46で開発されたプロトコルとスキーマ
     資料をリクエストしたり予約したり、リクエストの状況をチェックする機能・・・OpenURLなどのウェブサービスで実現できる
  ・利用者が検索結果に混乱する可能性
    総合目録のインタフェースは、検索結果がオーストラリアの全図書館を検索した結果なのか、「利用できる図書館(my local library)」を検索した結果なのかを明確に示す必要がある
    大量の検索結果やうりふたつのレコードの出現←総合目録の品質管理を通じて、検索結果をクラスタリングする
  ・総合目録には各館の目録に含まれている重要なデータの欠如の可能性
    コレクションについての複製特殊情報(図書の注記)
    ライセンス条件(電子ブックの利用条件)、URL指定よって特定の図書館からしか提供できない電子情報←リンク先の資料の利用について、総合目録がその使用を制限する必要がある

The future (将来)

NLAが目指すもの
・(ISOなどの)標準化機構や各館システムのベンダーがサポートする標準のプロトコルの開発・実装を促進(encourage)
  a)所蔵詳細情報の交換
  b)リクエストやリクエスト状況情報の交換
・オーストラリア総合目録に各館独自のデータを蓄積・管理できるメカニズムの検討と可能ならば実装
・総合目録にURL指定されたライセンスが必要な資料を含めることができる柔軟性の検討(ただしアクセス制限を伴う)
・利用者が全国の図書館を対象に検索しているのか、NLAの蔵書だけを対象に検索しているかがはっきりわかるように「Catalog」のインタフェースを変える
・レレヴァンス・ランキングやクラスタリングを用いて総合目録の検索結果の表示の改善
・総合目録データの質の改善

Conculutions

オーストラリア国立図書館は目録の未来をここ数年考えてきた。
 焦点・・・情報資源の発見と提供プロセスにおける各館の図書館システムと総合目録の役割
中期プロジェクト(NLAのコレクションと国全体のコレクション(蔵書)を探索する方法について)
 動機・・・利用者が目録以外で図書館の情報資源をさがすようになったという傾向
      発見と入手機能の結合と使いやすいインタフェースをもつオーストラリア総合目録の再開発
  NLAは総合目録が情報資源発見プロセスの重要な部分となればよいと考えている。

「利用者が最初に検索するデータベースとしてNLAをオーストラリア総合目録に変えること」についてできることと障害となるものの検討を行った。
分析の結果、NLAはローカルな目録よりもオーストラリア総合目録を優先させるプロジェクトを作成した。