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整理技術研究グループ勉強会記録(2007年度)

「図書館目録の将来設計」第8回


日時:
2007年7月12日(木) 19:00〜
会場:
日図研事務所104号室
発表者 :
蔭山久子氏
テキスト:
Coyle, Karen. "The Library catalog : some possible futures"
  Journal of Academic Librarianship, 33(3) pp.414-416, 2007.
出席者:
川崎(佛教大学)、渡邊(帝塚山学院大学)、蔭山、河手(大阪樟蔭女子大学図書館)

今日起きていること…技術における変化+情報へのアプローチ法全体の再編
 図書館における利用者の基本的な質問の変化
  Q1) 「うちの図書館はこの本を所蔵していますか?」
         ↓
    「この本はどこで利用できるのか?「オンラインかオフラインか、購入、貸出、検索)」
  Q2) 「うちの図書館はこのトピックについてどんな図書を所蔵しているのか?」
         ↓
    「このトピックに関してどんなものが存在し、今すぐにそれを入手するにはどうすればよいのか?」

「情報=図書館」…成立しなくなった等式←「情報=本」が「情報=Web」という等式になってしまったため
  図書館…「Webは知識の全領域ではない」ことを知っている
  利用者…価値ある重要な情報の多くがキーボードで探せないことを知ると驚くだろう
 図書館がとるべき2つの方法(どちらか)
  1)利用者に情報を見つけるために図書館に行くように説得する
  2)オンライン世界で有益な情報を入手できると確信するのにもう10年費やす←いくつかのアイデアがある


目録がなくなるような気になっている
未来図…あらゆるリソースが相互に関連した全体的にリンクしている情報宇宙(information universe)
  図書館の役割…質の高いリソースへのアクセスサービスを提供
  個々の図書館の資料についての情報はinformation landscapeの中で拡散してしまう
     ←利用者は個々の図書館システムを意識しなければ利用しない
       →情報源のグローバルなプールを検索する利用者は、Webの他の情報から図書館の資料に行き当たる
  Webの情報(Memex宇宙) …すべてのリソースが相互に連結している
              すべての引用が他の文書へのホット・リンクになっている
     「収集(collections)から接続(connections)への変化」(DEFFが提唱)
   図書館の資料を利用する←利用者は図書館の登録利用者であるべき…認証が必要
                       ←認証については見過ごされやすいが重要…認証システムをつくるのは大変
   利用者は登録されているリソースを知らなくても検索することができる…大きなdata soup
     ←情報を探す人には人気があるが、図書館の有難味が薄れている

情報領域における図書館の情報源とサービスの分離…図書館目録の存在が全くなくなるということではない
  →利用者は図書館目録を図書館目録と意識せずに図書館の資料に行き当たる
     ↓
  利用者が目録で探索するのを待つよりも、
    ・情報空間(infomation place)に"leack out(漏れる)」べき
    ・サーチエンジンに索引付け(index)されるべき
    ・他のデータベースや情報源に含まれるように記入の書式を整える(format)べき
  図書館目録記入が現実に文献の引用となる可能性がある
    ★=リンクに目録のレコードが使われていても、図書館目録の恩恵を感じることはないのではないか?


One for All
情報宇宙(information universe)の本質(nature)…高度にネットワーク化
   →利用者とリソースの地理的隣接とローカルデータの蓄積の障壁を取り去る
  各図書館が自館の書誌データベースとユーザーインタフェースを持つ…奇妙なこと
   書誌データの重複←OCLCのようなサービス機関とローカル目録とはほぼ同じデータを保持している
    →集中目録が利用者にとって見た目がよければ、ローカル総合目録は不要(=カリフォルニア大学のタスクフォースの報告書)
      ←不要なコストを発生させる:ハードウェア、ソフトウェア、スタッフの時間

巨大な集中的なデーベース…個々の図書館の強み(strengths)を消してしまう
   書誌宇宙(bibliographic universe)が参加できる利点:同心円的に広がっている図書館の相互連結を利用できる
    →利用者はシームレスにローカル図書館からILLを通じてコンソーシアムやグループの他の図書館や州内、国際的範囲の他の図書館を利用することができる。
    →より大きな宇宙(universe)の入口をローカル図書館とし、ILLの可能性を含めることにより利用者の視野(view)を広げる


Freeing the Catalog from the ILS
 (ILS=Integrated Library System:トータル図書館システム)
トータル図書館システム…利用者のことは後回しにされがち
  →業務システムとOPACとを分離する…技術サービス活動(目録?)への効果を心配することなく開放的ユーザサービスを展開できる (EndecaやAqabrowserなど)
                    例)目録…業務システム:MARCフォーマット、ユーザサービス:XML
    ←最終結果:これまでの目録らしくない目録…語幹処理、スペル修正、革新的な表示など

Expanding the Catalog Universe
目録…その図書館が所蔵している全ての物理的資料のデータベース
 ←多くの情報リソースの一つにすぎない
情報探索者は、図書や雑誌などのさまざまな情報リソースにアクセスするために別々のサイロ(silos)を探索するよう導かれる。
 (図書は図書のデータベース、学術論文は学術論文のデータベースに誘導されるということ)
   理由:断片的な状況下にある資料の多くは十分に使われることがないから
      利用者がどこで情報や資料を探すのかわからないから
      利用者はって意的な探索をあまりやりたくないから など
 ←部分的な解決法:メタサーチ・エンジン…独立したデータベースやリソースの蓄積を探索し、その結果を一つの画面に表示する
                         ←検索結果は貧弱なものになりやすい…データベース間のデータの相違などが理由
   index layerの作成…メタサーチ・エンジンの検索結果を改善する方法の一つ
     WebサーチエンジンがWebをインデックスする方法で行う。
      →1回の探索ですべての研究機関内の資料にアクセスできる
       例) 教員に関する情報…オフィス・アワー、担当している科目、執筆論文の書誌など
      →目録は、もはや図書館目録ではなく広範囲の豊な情報の入り口となる←利用者は意識せずに図書館を利用する


Foucus on the User
目録の将来の研究…利用者に焦点を置く
 これまでの研究:図書館目録=図書館
           目録の目的=図書館の蔵書を定義すること
 将来成功する目録:利用者中心
             利用者の情報ニーズが構築原理 (図書館目録の利用だけではなく)
   専門職の意見…フルテキスト・インデックスに基づく新たな主題検索が重要となることを予測
             大量生産の資料よりも原資料に時間を取るべきという意見

利用者中心という考え方→図書や論文の提供だけなく、リソースの利用・再利用へとつなげるサービスを提供          
 図書館…文献の提供以外のサービスを提供
 図書館システム…仮想的学習空間・グループ活動・読書グループ・研究援助を提供←物理的もしくは仮想的に教室とリンク

Goal
・新たな目録は書誌レコードだけで構成されない。
  レビュー、表紙の画像、著作中の引用、検索可能な本文、利用者からのコメントを含む
・利用者の作業量を減らす
  検索前に選択肢の提示、実際のリソースの表示の前にレイヤーを提示
・目録が推薦するようになる。
  ランキング形式で表示
  人気度、科目での利用、他の利用者の好みなどのオプション
・双方向性
  読者と著者の間の対話が速くなってきている
  利用者が情報の利用を作る…データ・マップ、リソース間のリンクなど
・参加型の目録
  ブログやWikiの提供やユーザプロファイルの構築
  利用者が図書館目録を変更できるようにしてもよいと考える人は小数
   WorldCat…利用者はレビューを追加できる ←Amazonのようなコミュニティを形成するには長い道のりが必要
・目録には異種性が必要…1種類以上のデータを収容する
  図書館の外にあるリソースからの情報だけではなく、WikipediaやGoogle Book Searchのような非図書館データともリンク

Starting Pints fo Change
現在のシステム…柔軟性がない
 図書館目録の見え方…AACR、MARC21、ベンダーの図書館システムから構成される
                  ←それぞれ変更するには時間がかかる=変化の選択肢とはならない
大きな変化…躓きの石(stumbling blocks)になりやすい
 MARCレコードを現代的な形式に変更する…現在存在している何億ものMARCレコードが議論の対象となる
                             ←目録を変えない理由にはならない…変換は難しい問題ではない
 大量生産の資料の書誌コントロールに労力をかけすぎている→所蔵しているユニークな資料への整理に労力を集中すべき
  ↓                                      (カルホーンのレポート)
 図書館は経済的な考え方に慣れておらず、選択を避ける→情報リソースがあふれている世界では何らかの選択が必要 
  「図書館だけが質の高いデータを作成している」…俗物根性←やめるべき
  しなければならないこと…情報検索システムの構築のためにベンダーと利用者とパートナーを組む
    出版社はAACRの名前の形式を決して使わない…帯やカバーなどの情報は図書館の転居ファイルよりもユーザーフレンドリー

「目録」という言葉を消すという提案…代わりになる語は提案されていない
  →ユーザーとわれわれ自身のために大きなヴィジョンを持つ語を受け入れる日が来る