情報組織化研究グループ勉強会記録(2008年度)
「図書館目録の将来設計(続)」第3回
- 日時:
- 2008年2月20日(水) 19:00〜
- 会場:
- 日図研事務所104号室
- 発表者 :
- 蔭山久子氏
- テキスト:
- 谷口祥一, 緑川信之『知識資源のメタデータ』 東京 : 勁草書房, 2007.5 (ISBN:9784326000319) 2-2(レコード設計とデータ項目の選定と定義)
- 出席者:
- 吉田(大手前大学)、横山、猪俣(ナカバヤシ)、堀池(摂津市施設管理公社)、蔭山、尾松(奈良県立図書館)、田窪(近畿大学)、渡邊(帝塚山学院大学)、河手(大阪樟蔭女子大学図書館)
第2章 メタデータの設計
2.2 レコード設計とデータ項目の選定と定義
・概念設計…概念モデル構築
↓
レコード設計…メタデータの種類とデータ項目(データ要素)を定義
2.2.1 レコード設計
・レコードの種類と単位…レコード間の関連づけの有無とその範囲
・概念モデルに依拠したレコード設計とはどのように実行されるべきか。
a)概念モデルで定義された実体クラスごとに異なるレコードを定義する
(それぞれの実体クラスをレコードに写像する)
b)複数の実体クラスにたいして一つのレコードを定義する
(一つの実体クラスを複数のレコードに分割して定義することは原則から外れる
→実体を適切に分割するなりして概念モデル自体を修正すべき)
・国際目録法原則(パリ原則)に対応する概念モデル( 図2-1)に即したレコード設計 図2-5
パリ原則とは異なり4つの実体クラスが定義されていたが、現行のレコード設計を踏襲して次のように規定する
2.1. 書誌レコードの実体:書誌レコードの作成にあたっては、実体(著作、表現形、体現形、個別資料)を考慮する
2.1.1. 書誌レコードは一般的に体現形を反映するものとする。
2.2. 典拠レコードにおける実体:少なくとも個人、家族、団体、および主題の名称の統制形を示すものとする
著作の主題として機能する実体…著作、表現形、体現形、個別資料、個人、家族、概念、物、出来事、場所
書誌レコードが反映する<体現形>以外の<著作>と<表現形>は、統一タイトル典拠レコードに対応する
<個別資料>については所蔵レコードの作成を前提とすれば、書誌レコードではなく所蔵レコードが対応する。
著者名典拠レコードは、個人、家族、団体に対応
件名典拠レコードは、第3グループの実体群(概念、物、出来事、場所)、
第1グループの実体群(著作、表現形、体現形、個別資料)、
第2グループの実体群(個人、家族、団体)を含めて対応する。
・JST Plusのレコード設計 (図2-6)
論文・記事レコード:実体<論文・記事>
雑誌・会議録等レコード:それら論文・記事を収録する雑誌・会議録等
団体名典拠レコード:団体著者と個人著者の両者を担う実体<団体>
シソーラスレコード:主題概念
(他に主題表現と索引づけのための大規模な辞書ファイルを備えている)
★論文・記事の属性として"著者"を持つことは正しいのか?←不明
・国文学研究資料館の古典籍総合目録データベースのレコード設計
書誌的実体である<著作>を目録より重視したレコード設計
著作典拠レコードと著者名典拠レコードが書誌レコードに加えて定義され、包括的に典拠コントロールが適用される。
★著作と著者がリンク。著作と個別資料がリンク。
2.2.2 データ項目の選定と定義
・データ項目(データ要素):基本的にデータ管理の単位。これが集まってレコードを構成。
選定と定義:いかなる単位でデータ操作や管理を行う必要があるのかという観点から始まる。
・概念モデルにおける実態の属性に対応してデータ項目が定義される
実体の属性とデータ項目:一対一(方式A)、複数対一、一対複数(方式B) (図2-7)
・概念モデルにおいて定義されて実体クラス間の関連および同一実体クラスの実現値間や関連も対応するレコードにおける
データ項目として定義
・データ項目を定義 (データ項目自体のメタデータ属性)
a) データ項目の名称と定義
b) 出現レベル:必須 or 準必須 or 任意 など
c) 繰り返しの有無:繰り返しを認めるか、認めないか、最大許容回数
d) データの表現形式:文字種、コード化の有無 など
e) データの長さ:固定長 or 可変長 最大の長さ
f) 入力方式・形式:入力文字列の構文的書式、特定のレコード表からの選定 など
g) 他のデータ項目との関係
2.2.3 書誌レコードのデータ項目
・パリ原則に対応する概念モデルの実体<資料>、FRBRの<体現形>に対応させたレコードを想定
(1) 対象とする知識資源の区分:データ項目の共通性と個別性
すべての知識資源に適用できる一組のデータ項目群を設定
複数の資料区分(種別)を設け、それそれに対応する特有のデータ項目群を設定
ISBD:すべての対象資源に対して基本的には同一のデータ項目群を適用
UNIMARC:部分的に資源区分に合致した特有のデータ項目を追加して定義
SIST04:共通して適用する一組のデータ項目群を定義
(2) データ項目の網羅性と特定性
データ項目の設定:包括する範囲が大きい項目 or 特定性の高い項目
「タイトル」 or 「本タイトル」「並列タイトル」「タイトル関連情報」に細分
データ項目の決定には、レコード交換や共有のための標準化にも配慮
標準化:利用者の便宜を図る、レコード交換や共有によるレコード作成処理の効率性・経済性の追求
2.2.4 目録における書誌レコード
(1) 書誌記述
書誌レコードの構成:書誌記述、各種標目・アクセスポイント、所蔵事項
国際図書館連盟(IFLA)が定める国際標準書誌記述(ISBD):テータ項目の定義、資料種別ことのデータ項目の
記述処理規則について規定
各国または各言語圏の標準目録規則はISBNが規定したデータ項目群を基本的にそのまま採用
日本:日本目録規則 英語圏:英米目録規則
書誌記述のデータ項目の構成:エリアと書誌要素の2階層
記述の詳細のレベル(第1〜3水準)がある 例)表2-2
(2) 標目・アクセスポイント
標目:書誌レコードの検索用に設定された項目
典拠レコードにおいて確立された名称などの統一形(典拠形)を対応する書誌レコードのその検索用として
付与し記録したもの
著者標目、タイトル標目、件名標目、分類標目
アクセスポイント:標目に加えて検索用の各種コード化情報をさす
★「書誌記録の検索と識別の手掛かりとなる名称、名辞、略号(コード)等」(AACR2)『最新図書館用語大辞典』
刊行年、刊行国、言語コード、各種の識別子(標準番号) など
(3) 書誌レコードの事例 (図2-8, 図2-9)
(4) MARCレコードの事例
ISBDとそれに依拠した目録規則が規定したデータ項目定義を踏まえ、最終的にはここのレコード作成機関がデータ項目を決定
MARCフォーマットの標準化 UNIMARC(国際図書館連盟)
英語圏 MARC21フォーマット
日本 Japan-MARCフォーマット (国立国会図書館)、TRC-MARCフォーマット(図書館流通センター)、
NACSIS-CATフォーマット(国立情報学研究所)
2.2.5 目録以外のメタデータにおける書誌レコード
・JST Plusメタデータ・データベース
データ項目(表2-3) レコード例(図2-12)
論文・記事レコードと雑誌・会議録等レコードは異なるシステムで管理しているがリンクはしている。
和文表題のない論文・記事は日本語によるタイトルを新たに付与して記録(必須)
個人著者名が漢字形でないときは、漢字形・かな読みなし。
個人著者名の典拠コントロールなし
団体が論文・記事の著者であるときは所属機関名(団体著作名)の項目に記録。
団体著作名が国内機関のときは典拠コントロールをし、統制形を記録。海外機関の場合は典拠コントロールはなし。
作成抄録(日本語)を新たに作成する。
・雑誌記事索引メタデータ・データベース(国立国会図書館)
データ項目(表2-4) レコード例(図2-13)
2.2.6 典拠レコード
・書誌レコードの他に各種の典拠レコードを作成し、それにより著者・著作・主題概念による知識資源の集中を図る。
(1) 典拠コントロールと典拠レコード (図2-14、 図2-15)
('2) 典拠レコードのデータ項目
国際図書館連盟の定めるガイドライン
著者と著作:GARR(Guidelines for Authority Records and References)
主題概念(件名):GSARE(Guidelines for Subjects authority and References Entries)
(3) MARC典拠レコードの事例 (図2-17、図2-18)
(4) 目録以外のメタデータにおける典拠レコードの例
JST Plus団体名典拠レコード例 (図2-19)