分類に関する節である。この部分の著者は緑川氏であり、1996年刊『本を分類する』以来、分類の基本を「階層構造と多次元構造」および「列挙表示と合成表示」とに分けることを主張している。本節における解説もその立場を基本に展開されている。分類表には、まず階層構造型の分類表と多次元型の分類表の2種類があり、それぞれごとに体系の具体的な表示として、列挙表示と合成表示とに分かれるとする。従来いわれてきた「列挙型分類」と「ファセット分類」という分け方は、上記2軸を混同しているというわけである。組み合わせの種類として、階層構造−列挙表示、階層構造−合成表示、多次元構造−列挙表示、多次元構造−合成表示、という4パターンがあるとし、それぞれのモデルを示している。
区分の体系としては、DCCが例として取り上げられ、まず最初に学問分野が区分原理として採用されているとする。しかし学問分野という区分原理はかなりあいまいだとも指摘する。
*確かにあいまいだと思われる。しかし学問分野で区分されるのは、最初の100区分程度であろう。その後の段階に関する区分原理に関しては触れられていない。「人間」や「小説」といった名詞型の単純事物を区分するのでないかぎり、どの段階もすっきりしないと思われるが、このあたりも解
説してほしかった。
164ページ以下では、DDCにおける“0”の問題が取り上げられている。昔から論争の絶えない問題である。従来の単純な見解では、1桁目の0は総記、2,3桁目の0あるいは00は埋め草とし、これらは例外扱いとする。しかし両者以外の0に関しては、特にいわゆるファセット分類の立場からは、基本的に共通ファセット導入記号とみなされてきた。このような見解に対して緑川氏は上記『本を分類する』で、それほど単純なことではない、と詳細な検討を加えたわけであるが、今回もそのような立場で説明する。
「4.1.5記号」では、DDCにおいては3桁目の後に小数点を置くが、これは見やすくするためだけの目的であるとする。つまり小数点はなくても論理的な問題は起こらないというわけである。さらに184ページ以下では、LCCで使われる数字を整数型(例外的に小数型もあり)、DDCで使われる数字を小数型と対比している。
*DDCにおける数字は、アルファベットでも2進数でも16進数でもなく、0から9までの十進数字で表されるが、実質は左詰の文字型記号であろう。左から順に桁が展開される。それに対し、LCCにおける数字は1から9999までの通常右詰で表される数値型記号であろう(四則演算には用いないが)。DDC記号を小数型として表現するのは、どうなのか。小数型があたかも数値型として誤解されないだろうか(実際よく誤解される)。DDCにおける小数点は単に桁数を見やすくするためとしている。そのとおりである。ピリオドでも@でも\でもよかった。ならば単に「点」であって、小数点と呼ばない方がよいのではないか。