情報組織化研究グループ勉強会記録(2009年度)
「新時代の目録規則」第4回
- 日時:
- 2009年5月28日(木) 19:00〜21:00
- 会場:
- 日図研事務所104号室
- 担当者 :
- 渡邊隆弘氏(帝塚山学院大学)
- テキスト :
- RDA関係文献
- 出席者:
- 末田、杉本、堀池、松井、横谷、横山、吉田、渡邊
はじめに
RDA Prospectus Rev.6 (PDF) は以下2つのパートからなる。後者を参照しながら、主に前者を読み進める。
−The prospectus text.:内容見本テキスト
−A draft outline of the chapters in RDA.:RDAの章構成の概要(草稿)
前文
RDAは、
・デジタル世界のために
・AACRの基礎の上に築かれた、すべての種類のコンテンツとメディアをカバーする包括的な指針セットとして
・主として図書館での利用のためだが、他のコミュニティ(文書館・博物館・出版社など)のためにも
デザインされた新たな標準である。
新しいアプローチ
- デジタル技術の進展による図書館・文書館・博物館・その他情報管理機関の情報環境の変化、デジタル技術によって生み出される情報資源の急速な増加を背景に、RDAは、伝統的な資料とともにそうした情報資源のためにも、技術面・内容面の双方の記述のための柔軟で拡張性ある枠組みを提供するように設計された。
また、データベース技術の変化([組織化環境の変化])によりフィットするように、そしてデータの取得・蓄積・検索・表示に際して効率性と柔軟性を発揮するように考えられている。
- RDAのデザインにおける主要な要素は、第一に概念モデルへの準拠、第二に、データの記録(recording)と提示(presentation)の分離である。
- 概念モデル=FRBR、FRADモデル:
-
・あらゆるタイプのコンテンツとメディアを扱ううえでの
・ 新しい資源の特性に沿うための柔軟性・拡張性を確保するうえでの
・ 幅広い技術環境で機能するデータに求められる適応性のための
基本的な枠組みを示す。
- データの記録と提示の分離:
-
RDAは、FRBRとFFRADで定義される実体の属性と関連を反映するための「記録」における規定で、(データの蓄積・表示については規定しない。それらとは独立しており)データの蓄積・表示におけるどのような構造・構文にも適用できる。(ISBD形式等の提示方法は、あくまでも付録で示されるのみ。)
- RDAは、使いやすく効率的な設計となっており、簡略な方式から、詳細なものまで、幅広く対応。
すべての情報資源に対応する基本的で一般的な指示は、明確・簡潔である。必要となる場合に応じて、特定の種類の資源に必要とされる詳細な指示を提供する。それらを補うものとして、博物館・文書館など他のコミュニティの標準規格への参照も利用。
また詳細部分を「マスクアウト」することも可能。 (※web版の提供において"mask out"機能が実現されるのではないかと推測される。)
- RDAでは、これまでの標準(特にAACR)で作られたデータとの統合も重要と認識されている。遡及変換等の労力を最小にする必要性の認識にたち、AACR由来の指示をより効率的に作り直すことを意識。
アウトライン
・序論と、10セクションからなるガイドラインと指示(FRBR・FRADに規定された実体の属性・関連に沿って構成)、そして多くの付録を含む。
セクションの各章は「ユーザタスク」をサポートする要素に焦点を合わせた章立てとなっている。
ユーザータスク: 発見、識別、選択、入手
|
Introduction |
Attributes
: 属性 |
Section 1 |
Chapter 1〜4 |
Section 2 |
Chapter 5〜7 |
Section 3 |
Chapter 8〜11 |
Section 4 |
Chapter 12〜16 |
Relationships
: 関係 |
Section 5 |
Chapter 17 |
Section 6 |
Chapter 18〜22 |
Section 7 |
Chapter 23 |
Section 8 |
Chapter 24〜28 |
Section 9 |
Chapter 29〜32 |
Section 10 |
Chapter 33〜37 |
※章構成
- Chapter1〜37 が10 Sectionに分けられ、Section 1〜4 に Attributes、Section 5〜10に Relationships の見出がつき2部に分けられる。この他に「付録A〜L」と「用語集」が付く。
- 各セクションの先頭章は、「一般的ガイドライン」であり、5章と8章・12章、18章と24章のようによく似た構成となっている。
(※以下では質疑等含め言及のあった箇所を特記する。)
序論
序論では、目的、適用範囲、キー要素、他の標準との関連など、RDAの基本原則とアウトラインを明示。
Section 1:体現形・個別資料の属性
- 2章:体現形・個別資料の識別
識別のために最もよく使われるエレメント群(タイトル、責任表示、版表示…)
求めるものとの同定識別、類似のものとの区別するための情報
- 3章:キャリアの記述
典型的には、選択に使われるエレメント群(※形態事項)
Section 2:著作・表現形の属性
- 5章:一般的ガイドライン
優先・異形アクセスポイント構築の指示、データ認証のレベル(5.7)、参考情報源、注記なども含む
- 6章:著作・表現形の識別
識別のために最もよく使われるエレメント群(優先・異形タイトル、日付、発生地…)
アクセスポイント構築に関わるルール、特定の資料(音楽、法律、宗教、公式通達)に関するルールも扱う
- 7章:内容の記述
典型的には、選択に使われるエレメント群
※従来注記だったものも多く含まれる。また、カラーや再生時間などがここで扱われる。
Section 3:個人・家族・団体の属性
- 9章〜11章:個人/家族/団体の識別
それぞれを識別するエレメント群。アクセスポイント構築に関わるルールも扱う。
※9.3〜 はこれまででいえば付記事項となっていたものなどで、典拠レコードの識別に必要なエレメントが扱われる。9.4 は称号。9.6 の Other designation とは 9.7〜9.9 の項目。
11.10 に Corporate history とあるが、団体と団体の統合等は関連で扱われる。
Section 4:概念・物・出来事・場所の属性
※主題になりうる、FRBRの第3のグループの実体を扱う。刊行時にできているのは16章(Place)のみで、AACRで既に存在している事項がここへ収められている。
Section 5:著作・表現形・体現形・個別資料の主要な関連
※現行の統一タイトル標目がこれの一部に当たる。Section19〜23は、FRBRで "high level" と呼ばれる関連を扱う。
※17章(一般的ガイドライン)のみからなり、著作一表現形一体現形一個別資料、の階層構造の表現を示す。
Section 6:情報資源と個人・家族・団体の関連
- 18章:一般的ガイドライン
識別子・優先アクセスポイントの利用についてのルール、relationship designator(※関連指示子とでもいうべき、関連の種類を表すリストが付録I。(18.5) 種々の役割等、関連の多様な種類を階層化したもの)の使用についても扱う。
- 19章〜22章:著作〜個別資料と個人・家族・団体の関連
著作の作成者、表現形の編者・翻訳者、体現形の制作者・出版者、個別資料の所有者・管理者(22.3 Custodian)、など。19章は、法律・宗教著作に関する特定的な指示も示す。
(※従来の著者標目)
Section 7:主題の関連
※23章のみからなるが未完である。主題とリソースの関連はこれも"high level"の関連
Section 8:著作・表現形・体現形・個別資料の間の関連
- 24章:一般的ガイドライン (※18章と似た構造。relationship designator[関連指示子]も扱う。→付録J)
- 25〜28章:関連する著作/表現形/体現形/個別資料 (※派生や複製などを扱う)
※著作―著作、表現形―表現形…の間の関連、全体と部分の関連など、いわゆる「書誌的関係」
Section 9:個人・家族・団体の間の関連
- 30〜32章:関連する個人/家族/団体
※個人間、家族間、団体間、個人―団体、個人―家族の関連。をも見よ参照の他、個人が団体を創設したといった関連も扱う。relationship designator[関連指示子]は付録K。
Section 1O :概念・物・出来事・場所の間の関連
- 33〜37章: 未刊 (※relationship designator[関連指示子]は付録L)
付録
- A(大文字使用法)、 B(略語)、 C(冒頭冠詞)
- D(記述データのレコード構文)、 E(典拠データのレコード構文)
- ⇒※ISBD等とのマッピング。構文規定をRDA本体は持たない為
- F(個人名に関する追加指示)、 G(貴族の称号など) ⇒※特定の言語、法域に関わるルールも扱う
- H(西暦の目付) ⇒※目録作成機関の用いる暦での日付で扱う、ということで変換に関する情報を提示する。
- I(個人・家族・団体と情報資源の間の関連指示子) ⇒※役割表示(Section 6で使用)の種類を表すリスト
- J(著作間・表現形間・体現形間・個別資料間の関連指示子)
- ⇒※書誌的関係の種類(Section 8で使用)の種類を表すリスト
- K(個人・家族・団体の間の関連指示子) ⇒※個人間の関連など(Section 9で使用)の種類を表すリスト
- L(概念・物・出来事・場所の間の関連指示子) ⇒※未刊(Section 10で使うはず)
※付録は、これまでの草案では13種あり、その内、M=実例集がここには含まれていない。