TOP > 月例研究会 >  / Last update: 2008.1.1

1991年月例研究会報告

整理技術研究グループ


◎1991年1月例会
日 時:1月26日(土)
会 場:大阪市立中央図書館
テーマ:書誌ユーティリティーにおける典拠コントロール
発表者:北克一氏(摂南大学図書館)
     前川理女氏(大阪芸術大学図書館)
     三浦整氏(大阪女子大学図書館)

発表概要


◎1991年2月 第32回日本図書館研究会研究大会
グループ研究として下記の研究発表を行った。
日 時:2月25日(月)
会 場:神戸市教育会館)
テーマ:書誌ユーティリティーにおける目録:NACSIS-CATを例として
発表者:北克一氏(摂南大学図書館)

『図書館界』43巻2号, 1991.7参照


◎1991年3月例会
日 時:3月23日(土)
会 場:桃山学院大学司書講習事務室
テーマ:シソーラスの作成の理論と実践
発表者:吉田暁史氏(帝塚山学院大学)



◎1991年4月例会
日 時:1991年4月27日(土)14〜17時
会 場:大阪市立中央図書館 2階会議室
テーマ:神戸市立中央図書館における目録システム
発表者:芝勝徳氏(神戸市立中央図書館)
出 席:
安藤久美子(大阪市立中央図)、垣口弥生子(大阪府立中之島図)、北克一(摂南大図)、斉藤茂夫(茨木市立図)、田窪直規(奈良国立博)、田村俊明(大阪市立大図)、槻本正行(流通科学大図)、辻井康博(相愛大図)、埜上衛(近畿大)、野口恒雄(佛教大図)、藤井兼好(大阪府立夕陽丘図)、藤田弘(奈良女子大図)、前川和子(大谷女子大図)、松井純子(大阪芸術大)、山田道子(神戸海星女子大図)、吉田暁史(帝塚山学院大)、芝勝徳
 神戸市立図書館では、現在、中央図書館にホストコンピュータを設置、集中処理により、地域図書館 2館とのオンラインネットワークを形成している。整理業務については年間約34,000冊の図書の発注から受入までをコンピュータ処理している。書誌情報のコントロールは集中的に行なうが、請求記号等出版物理単位の情報は各館で処理している。集中処理に切り換えてから約2年であるが、この間に約 110,000件の書誌レコードを蓄積した。今後5年間で、約250,000 件の書誌レコードを遡及入力・整備する予定である。
 書誌レコードの入力には、JAPAN/MARCおよびTRC/MARCを当館のフォーマットに変換したうえで、参照MARC として利用している。参照した MARC レコードの ID番号は当館の書誌レコードの中に記録し、書誌ユーティリティの標準的な書誌データとの照合等に、将来利用できるよう配慮している。以上の業務は、既成の公共図書館向けパッケージソフトを使用しており、当館独自の方法はあまりない。
 第一線の公共図書館としては、限られたコンピュータ資源の中で、貸出・返却等、窓口業務の更新処理を最優先しなければならない。そのような状況下で目録の質を維持し、かつ処理能率をあげるため、整理業務には重いホストコンピュータを用いず、軽いパソコンを使用している。具体的には、パソコンのエディタを利用して、各作業目的に応じたユーティリティ・ソフトを館内で開発している。例えば、マニュアル入力したり、参照 MARC から入力した書誌レコードに対し、約 50 種類のチェックを行ない、診断メッセージを出力するプログラムを作成し運用している。今後はシリーズ名、著者名、件名の順に典拠辞書を整備し、書誌レコードの中の各フィールドを制御したい。この段階では、単独のパソコンによる処理は困難になるため、サーバーマシンを介して各パソコンが共有できる典拠ファイルを構築していくことになろう。利用者用目録としては、現在冊子目録を作っており、オンライン目録は実施していない。
 今後の問題点としては、目録の質をどこまで維持していくことが可能か、典拠辞書は単館で作業しうるものなのかどうか、整理業務への機械および人的資源の配分の妥当な目安はどこにあるのか、といったことがあげられる。このうち目録の質に関しては、いま既成のものを調整なしにそのまま利用したりして、手を抜こうとすればいくらでも手を抜ける環境が出来上がりつつある。それでよいのだと開き直る意見もある。しかし大量に蓄積された目録データベースの検索性能、書誌データ全体の整合性等、一定品質の維持のためには、将来にわたって各図書館が最低限の目録の作成・維持能力を保っていかなければならないと考える。
 質疑の中で、「パソコンによる分散処理の場合、パソコン上の書誌レコードとホストコンピュータ上のそれとの整合性が難しいのではないか」、「利用者用の目録として、冊子目録しかないというのはどうなのか、オンライン目録が必要ではないか」、という指摘があった。これに対し、前者についてはフロント・エディターと書誌データベースは異なること、後者は現状のマンパワーの制約であることの説明があった。


◎1991年5月例会
日 時:5月25日(土)14〜17時
会 場:大阪市立中央図書館 2階会議室
テーマ:戦後の整理技術研究の跡づけ・序説−日図研・整研グループの足跡をとおして−
発表者:志保田務氏(桃山学院大学文学部)
出 席:
北克一(摂南大図)、高橋慶男(天理大)、田窪直規(奈良国立博)、田村俊明(大阪市立大図)、西出浩二(大阪芸術大図)、野口恒雄(佛教大図)、前川和子(大谷女子大図)、前川理女(大阪芸術大図)、村岡和彦(大阪市立中央図)、森耕一(光華女子大)、山下信(流通科学大図)、吉田暁史(帝塚山学院大)、吉田真理子(大阪市立大図)、志保田務 14名
 当研究グループは戦後誕生し、35周年を迎えようとしている。これを機会にその歴史を振り返り、戦後の整理技術分野に果たした当グループの役割を跡づけたい。跡づけの資料として
1.当グループに関する報告、雑誌記事、記録。
2.当グループ名を名乗っての編著作。
 なお、上記には、当グループの前身とみなせるグループのそれを含む。
1.前史:
 日本図書館研究会の設立後、各地区研究グループが次々と結成された。即ち、1951年大阪、1952年和歌山、つづいて東京、奈良等である。大阪地区研究グループから、1955年10月整研グループの前身ともいえる目録排列法研究グループが設立された。その発足記事は、『図書館界』7(5), 1955.10, p175 に掲載された。同グループの会合は、1956年 1月21日から1957年 3月23日まで12回開かれ、発展的に解消された。
2.本史:
 時代区分については、天満隆之輔氏が『図書館界』14(1), 1962.4, p25 に、1957年〜1962年における同グループの活動を三期に分けている。これに対し志保田氏は、第T期として1957年〜1968年を以下の10に区分した。
第T期
(1) NDC3類の分類規程検討時代
 1957年10月 5日(第1回例会)〜1958年11月 8日(第12回例会)
 1958年12月13日(第13回例会)
  コロン分類法/ Ranganathan談(ランガナタン来阪)
(2) 目録の基礎考察時代
 1959年 1月 日(第14回例会)〜1959年 5月 日(第18回例会)
(3) 分類と図書記号
 1959年 6月13日(第19回例会)〜1959年10月17日(第23回例会)
(4) 実務から目録、分類、件名マニュアルへの問いかけ
 1959年11月 日(第24回例会)〜1960年 9月 3日(第33回例会)
(5) 別置
 1960年10月15日(第34回例会)〜1961年 2月25日(第38回例会)
(6) 書名冠称
 1961年 3月 日(第25回例会)〜1961年 7月15日(第43回例会)
(7) 図書の整理手順
 1961年 9月 9日(第44回例会)〜1962年 9月 日(第 回例会)
(8) NDC新訂7阪[1961年刊]の検討
 1962年10月27日〜1965年 7月28日
 1965年 8月25日(水)〜26日(木)
  目録法中級講座
(9) NCR1965年版[1965年5月刊]批判
 1965年 9月29日〜1965年12月11日
(10) 輪読第1期〈ICCP〉
 1966年 1月29日〜1968年 4月 日

 またこの間、他研究グループとの話合いにより、図書館研究グループ合同集会が始まった。1961年 1月15日第 1回から1962年 9月23日第 4回まで開かれた。その後、理事会の議を経て研究大会となり、回次を引き継ぎ現在に至っている。次回は、第U期(1968年〜)を予定。


◎1991年6月例会
日 時:6月29日(土)14〜17時
会 場:同志社大学司書課程資料室/新町校舎 臨光館3階
テーマ:英米目録規則』第2版1988年版−その改訂内容の紹介−
発表者:古川肇氏(中央大学図書館)
出 席:
安藤久美子(大阪市立中央図)、蔭山久子(帝塚山短大図)、北克一(摂南大図)、北川美江(大阪芸術大図)、楠本成生(相愛大図)、柴田正美(三重大)、志保田務(桃山学院大)、杉本節子(大阪市立大図)、高橋成樹(大阪芸術大図)、田窪直規(奈良国立博)、武内隆恭(京都橘女子大)、田村俊明(大阪市立大図)、中島範子(大阪市立大図)、西出浩二(大阪芸術大図)、埜上衛(近畿大)、野口恒雄(仏教大図)、藤田弘(奈良女子大図)、前川和子(大谷女子大図)、前川理女(大阪芸術大図)、村岡和彦(大阪市立中央図)、山添郷子(佛教大図)、吉田暁史(帝塚山学院大)、古川肇 23名
 近年目録のコンピュータ化に目を奪われて、目録規則そのものの読み込みがおろそかにされているのではなかろうか、との指摘が最初にあった。次に参考文献1)にほぼ沿う形で、
1.改訂の組織と方針、2.改訂の内容、の説明があり、最後に目録規則の今後の問題点の提起があった。以下重要なもののみ採録する。

1.改訂の組織と方針
 1988年版は根本的な改訂ではなく、 AACR2の基本方針に変化はない。過去3回(82,83,85年)にわたって刊行された改訂パンフレットと、それ以後の改訂の総体が含まれている。
2.改訂の内容
(1)記述
・異なる著作から成り、全体に関する主情報源がない記述対象の情報源は、諸情報源をあたかも一つの情報源であるかのように扱う。これは現実に即した適切なものである。
・総合タイトルを欠く資料については、各部分を独立の記述対象とすることが、記述総則で認められた。規則内部での整合性を満たすと同時に、構成部分重視の現れとみたい。
・非出版物の出版事項については、出版地、出版者を記述しない。
・さまざまな形のシリーズタイトルが表示されているとき、シリーズタイトルの情報源の選定が客観的、厳密になった。
・コンピュータ・ファイルに関する記述規則が大改訂された。これについては、谷口氏の論文2)に興味深い紹介と考察がある。
(2)標目
・改訂されたテキストの基本記入の標目の選択に関し、原著者ではなく改訂者やタイトルを標目とするケースが増えた。すなわち諸版の集中機能は弱くなっている。
 今後の問題点として以下のようなものがある。(1) 大量のテキストを含む媒体資料に関し、構成部分をどの程度詳細に扱うか。
(2) 複製が非常に容易になった。また複数の媒体に複製される資料も多くなった。
(3) 版と刷の区別が困難になってきている。
(4) 安定しないタイトルページが増えている。
(5) リモートアクセスのみが可能な媒体の出現。
(6) 媒体変換が容易になり、どんどん各種媒体資料が出てきた。

 これらに対し新たな記述を作るのか、あるいは単に所蔵に関する事項として処理するのか。こういう新しい資料形態や、現代の出版状況にふさわしい目録規則の構築が求められており、英米の目録法は重大な転換点にさしかかっているように思える。
[参考文献]
1)古川肇“『英米目録規則』第2版1988年版:その改訂内容の紹介”「整理技術研究」28, 1991.2, p.45-55
2)谷口祥一“記述目録法のための三層構造モデル”「図書館学会年報」36(4), 1990.12, p.149-166


◎1991年7月例会
日 時:7月27日(土)14〜17時
会 場:大阪市立中央図書館 2階会議室
テーマ:公共図書館におけるコンピュータ目録 Part2:文献から見た地平
発表者:北克一氏(摂南大学図書館)
     芝勝徳氏(神戸市立中央図書館)

出 席:伊賀由起子(大阪市立大図)、北川美江(大阪芸術大図)、志保田務(桃山学院大)、杉本節子(大阪市立大図)、高橋成樹(大阪芸術大図)、田窪直規(奈良国立博)、竹田君代(大阪市立中央図)、田村俊明(大阪市立大図)、槻本正行(流通科学大図)、辻井康博(相愛大図)、中島範子(大阪市立大図)、西出浩二(大阪芸術大図)、藤井兼好(大阪府立夕陽丘図)、前川理女(大阪芸術大図)、三浦整(大阪女子大図)、向畑久仁(姫路獨協大図)、村岡和彦(大阪市立中央図)、吉田暁史(帝塚山学院大)、北克一、芝勝徳 19名
 整理技術研究グループの今年度のメインテーマは、公共図書館のコンピュータ目録である。今年度第一回目の研究会では、芝氏が公共図書館における機械化担当者という立場からこの問題を論じた。今回は、文献調査による現状把握と問題点の摘出を試みた。
 発表にあたって、北氏は、1980年以降の文献で今年度のテーマに係わると思われるもの約150 件をリストアップした。この内、入手可能な文献を整理技術研究グループ有志で分読し、各文献の抄録を作成した。
 今回の研究発表は、北氏がこの抄録を参考にしつつも、自らも文献に目を通してまとめたものである。但し、北氏も含め、整理技術研究グループには公共図書館在職者はいない。そこで、芝氏が、北氏に続いて発表する事になった。
1)北氏の発表
 氏は、図書館の機能や役割を「情報の世界への案内者」という点に求め、図書館がこの様な機能や役割を果すためには目録整備が肝要とし、この様な問題意識からコンピュータ目録(以下、OPAC: Online Public Access Catalog)の技術的問題点を取上げる。氏の発表は、次の三点に集約されよう。
(1)OPACという環境を理解し、その有効利用を図るべきである。
(2)その際には様々な側面・レベルでの標準化が必要になる。
(3)OPACの世界ではブラックボックス的状況が蔓延している。
 OPACの世界はカード目録の世界と環境が大きく異なっており、それに伴って様々な事が可能になる。例えば、充実した書誌データ蓄積が可能になる。検索は多角化され、キーワード検索も可能になる。出力面では、記述の充実により、ヒットした書誌階層を優先した表示が可能になるし、ヒット部分を強調する事もできる。一方では、発注・受入や貸出・返却等の資料状態も確認可能となる。さらには、コンピュータを基礎とした有機的な図書館ネットワークも形成されうる。
 この様な可能性を持ったOPACであるが、この環境を充分に生かそうとすれば、標準化が必須となる。例えば、書誌データの充実や多角的検索のためには、データ構造や諸アクセスポイント(項目)を明確化し標準化する必要が生じるし、典拠の問題もクローズアップされる。利用面を考えると、検索手続や出力方式が標準化されねば、利用者はとまどう。
 しかしながら、現状では、OPACの世界は何重ものブラックボックスになっている。そもそも、書誌データ源と思われるMARCがブラックボックスである。書誌データを加工するシステムの処理方式もブラックボックスである。この様な下でのデータは非常に危ういものとなる。システムは更新可能であるが、データはかけがえのないものである事が喚起されるべきである。

2)芝氏の発表
 芝氏は主に公共図書館の抱える問題について述べる。氏の発表を要約すると次の三点にまとめられよう。
(1)公共図書館の機械化はハウスキーピング中心で、これにコンピュータ資源が消費されている。
(2)OPAC担当者には、目録知識、コンピュータの常識、使用機種への精通が求められるが、職場ではその様な共通認識が形成されにくい。
(3)公共図書館では相互の情報交換が少なく、各館は孤立している。

3)質疑
 質疑は、多岐に渡ったが、主なものを挙げると次の二点となろう。
(1)公共図書館の現状を認識する必要性。
(2)公共図書館の孤立問題。

 (1)に関しては、藤井兼芳氏(大阪府立夕陽丘図)から、公共図書館ではサービス対象の多様性・多量さ、人員・予算等の問題から、本格的なOPAC展開が難しく、とりわけ中小の図書館では無理があるとの指摘がなされた。これに対して、北氏は、今後のコンピュータの対性能比価格の下落、コンピュータ利用に慣れた世代の増加を指摘し、将来を見通した活動を強調した。
 また、吉田暁史氏(帝塚山学院大)からは、公共図書館の現実を見据えれば、一足飛びに北氏の論ずるレベルまでは難しいのではないかという指摘があった。
 (2)に関しては、志保田務氏(桃山学院大)から、公共図書館では、現場の図書館員は目前の仕事の処理に追われ、管理職は予算の獲得に目が向いており、この事が図書館間の相互交流を難しくしているのではないかという指摘があった。


◎1991年8月特別例会
日 時:8月28日(水)10:00〜16:30
会 場:摂南大学図書館
テーマ:書誌ユーティリティにおける目録作業の実際:NACSIS-CAT実地体験
講 師:志保田務氏(桃山学院大学文学部)、 北克一氏(摂南大学図書館)

開催趣旨:わが国で唯一の書誌ユーティリティである学術情報センターのNACSIS-CATを実際に体験することによって、オンライン目録作業の理解を深める。同時に、そこに生ずる諸問題を検討する。NACSISについては、これまで文献上において数多く報告されている。しかし、実際これを利用できる機関は、そこと接続している国立大学図書館と一部私立大学図書館のみである。短期大学図書館や公共図書館ほかの館種では、接続そのものが現在のところ閉ざされている現状である。したがって、この名称が知られているほどには、未だその拡がりは限られた段階にあるといえよう。共同目録作業を実現する書誌ユーティリティの現状を体験することによって、検討する共通の基盤が形成されることを期待している。
プログラム
 10:00 開会
 10:10 NCR 1987年版 書誌階層について
 10:40 NACSIS-CAT 目録システムについて
 12:10 質疑
 12:30 休憩 (食事は各自でお取りください)
 13:40 検索演習 (   番)書誌データ・所蔵データ・典拠データ
 14:10 質疑・休息
 14:40 登録演習
 15:10 質疑・意見交換
 16:00 閉会
参加者:大前順子(佛教大学図書館)、垣口弥生子(大阪府立中之島図書館)、嘉数周子(奈良国立博物館資料管理研究室)、芝勝徳(神戸市立中央図書館)、染野純子(大阪市立大学図書館)、槻本正行(流通科学大学図書館)、辻井康博(相愛大学図書館)、西出浩二(大阪芸術大学図書館)、橋本正志(帝塚山短期大学図書館)、畠山請子(帝塚山学院大学図書館)、正木疆子(エス・エー・データサービス)、三浦整(大阪女子大学図書館)、向畑久仁(姫路獨協大学図書館)、森川邦子(大阪府立大学図書館)、


◎1991年9月例会
日 時:9月29日(日)午後2時〜5時
会 場:尼崎市立中央図書館会議室
テーマ:公共図書館におけるコンピュータ目録 Part3:事例発表(堺市立図書館)
発表者:杉田健治氏(堺市立新金岡図書館)、長倉勉氏(富士通関西エンジニアリング)
出 席:
安達博臣(生駒市立図)、飯川大樹(西宮市立中央図)、納利徳(西宮市立中央図)、蔭山久子(帝塚山短大図)、北川美江(大阪芸術大図)、志保田務(桃山学院大)、高橋成樹(大阪芸術大図)、竹田君代(大阪市立中央図)、辰敏行(尼崎市立中央図)、西出浩二(大阪芸術大図)、野口恒雄(佛教大図)、藤井千年(尼崎市立中央図)、前川理女(大阪芸術大図)、三浦整(大阪女子大図)、村岡和彦(大阪市立中央図)、吉田暁史(帝塚山学院大)、吉田光夫(西宮市立中央図)、脇本敦子(生駒市立図)、杉田健治、長倉勉 21名
 本年度当グループの中心テーマである上記標題の第3回目として、堺市立図書館における状況を事例として発表をいただいた。
1)杉田氏からは、堺市立図書館のコンピュータ検索の現状とOPAC設置にむけての問題点が報告された。
 堺市立図書館では、1986年10月全市オンライン処理システムがスタートした。TRC/MARC全件ファイルを取り込み検索ファイルを作成する書誌データベースであるが、水平分散処理システムを採り、図書のステイタスの管理はなされていない。また、市当局の電算担当部局との調整からOPACの提供には至っていない。
 学術情報センターを介して共同分担目録を構築する大学・専門図書館と異なり、この種の書誌ユーティリティをもたない公共図書館では、MARCに頼るしかないのが現状である。現MARCには、著者の読み、漢字形の不統一など改善を要する入力ミスが数多い。そのための典拠ファイル作成の困難さが大きな問題となっている。 また、MARCの NCR1987年版への移行が不透明な現在、書誌階層を取り込んだ検索形の構築が課題となるが、様子待ちとせざるをえない。さらに、伝統的にコロケーション機能や主題集中機能が軽視されてきたため、コンピュータ導入後も依然としてファインディング・リスト以上の目録となりえていない状況にあることなどが報告された。
2)堺市立図書館のシステムを提供し、公共図書館における情報システムを専門とする長倉氏は『「情報発信基地」公共図書館の新しい姿』と題して「貸出・返却」中心機能から「情報の提供」機能への移行しつつある公共図書館の現状を述べ、OPACと公共図書館の目録構築の関係を指摘した。
 公共図書館の現状は、目録情報の中心が常にMARCであることから、MARC情報の内容に当然左右されることとなる。しかし、有効なOPAC利用を行うには公共図書館サイドでデータベースに統一性を与え、整備されていることが最も重要なことである。そして、これらデータベースへの追加・更新などのメンテナンスをタイムリーに行える体制が備わっているか、が大きな問題となってくるだろう。大半の公共図書館では、購入MARCに対して、自館で情報を付加するといった作業を行っていない。多くの館が〈貸出〉を基本として人的配置を行っており、経常的にデータベースの整備に充てる余裕がないことも事実である。しかし、公共図書館が〈情報の提供〉へシフトすることは、それだけデータベースの信頼性への期待が高められることに他ならない。いかに高品質のデータベースを維持していくかが、今後の公共図書館における利用者サービスを行っていく決めてとなるであろう。
 なお、研究会終了後に尼崎市立中央図書館のOPACを藤井館長の案内により見学する機会をいただいた。


◎1991年10月特別例会
日 時:10月16日(水)13時〜17時
会 場:大阪工業大学60周年記念館
テーマ:CALISシステム見学・研修会
主 催:整理技術研究グループ、ライブラリー・オートメーション研究会
開催趣旨:
CALISシステムによる学術情報システム(NACSIS−CAT)への接続・ローカル書誌データベースの構築などを中心に導入館の事例発表、システムの説明およびデモンストレーションを行う。
内 容:
1.『CALIS』導入事例発表/大場高志氏(一橋大学附属図書館情報管理課)
 VTSS方式による「NACSIS−CAT」との接続の現状 やダウンロード・データのローカルシステムへの取り込み・索引の切り出しなどについて、一橋大学バージョンの『CALIS』を紹介する。また、構築した書誌データベースのOPAC検索機能についても触れる。さらに、書誌単位での書誌情報と物理単位データのリンク形成 の仕組みについても取り上げる。
2.VAX/VTSS機能による「NACSIS−CAT」接続について/佐藤真美氏(DEC社VTSS開発責任者)
 VTSS方式による「NACSIS−CAT」との接続においての、DEC社バージョンの特徴を中心に、そのポイント点をシステム面から概説する。
3.『CALIS』システムの概要および新機能と今後の展開について/津田好一郎氏(丸善CALISシステム開発責任者)
 書誌データベース定義の構造、索引キー切出しの自由度など『CALIS』システム の特色について述べ、併せて同システムの新機能と今後の展開について紹介する。
4.「NACSISI−CAT」接続システムのデモンストレーションほか
 実際に、「NACSIS−CAT」接続とダウンロード・データのローカルシステムへの取り込みなどについて実演を行う。また時間があれば、「NACSIS−ILL」システムとの接続実演も行う。あわせて、ローカル図書館システム『CALIS』および書誌ユーティリティ『UTLAS』との接続実演も行う。


◎1991年10月例会
日 時:10月26日(土)14時〜17時
会 場:大阪市立中央図書館会議室
テーマ:BNBの新主題索引COMPASS−オンライン環境下の主題索引を考える−
発表者:北克一氏(摂南大学図書館)
出 席:
蔭山久子(帝塚山短大図)、北川美江(大阪芸術大図)、光斎重治(中部大図)、芝勝徳(神戸市立中央図)、志保田務(桃山学院大)、高橋成樹(大阪芸術大図)、田窪直規(奈良国立博)、竹田君代(大阪市立中央図)、槻本正行(流通科学大図)、辻井康博(相愛大図)、豊田邦雄(島根県立図)、長岡優子(流通科学大図)、西出浩二(大阪芸術大図)、埜上衛(近畿大)、前川和子(大谷女子大図)、前川理女(大阪芸術大図)、三浦整(大阪女子大図)、北克一 16名
 発表は、まず BNB(British National Bibl-iograpy)が 1991年より新たに採用した主題索引体系 COMPASS(COMPuter Aided bibliograpySubject System)について、次に主題と主題索引、最後にオンライン環境下の主題索引という内容である。
 COMPASS については、まだ詳細なマニュアル等が発行されておらず、その全貌は明からとはいえないが、BL の“News Letter”の記事等を手掛かりとして、検討を加えた。
COMPASS 開発の前提認識は、オンライン検索では書誌レコードの全てのデータ要素が直接検索可能ということである。
 PRECISは、1990年まで主に冊子体の索引として使われたが、1991年 1月より始まった COMPASS は PRECIS から次の3つの機能を引き継いでいる。
1. オープンーエンドな、しかし、統制され構 築された語彙(語彙に制限を加えない)
2. PRECISの概念である文脈依存とロールオペ レーターにより組織された主題ストリング中の語彙のアレンジメント
3. 主題による(書誌レコードの)集中機能のため、すでに引用された主題ストリングの再 使用(主題ストリングの典拠コントロール機能)

 このように COMPASS String で使用される語彙の Citation orderは、PRECIS と同じく文脈依存の概念にしたがっているとはいえ、観点、スタディ・サンプル、形式、利用対象といった Extracore concepts にあたるものは除かれ、 文法的には簡単になった。何よりも PRECIS との大きな違いは、 Location の扱いである。例えば“a serial title concerning the edu-cation of pre-school children in GreatBritain” といった主題の場合 “Pre-school children. Education”と“Great Britain”というふうに、別途割り付けられた地理的語彙により記述される。
 なお、PRECIS から COMPASS への変更に伴い、冊子体 BNB は KWOCタイプの出力となった。
 次に、主題についていくつかの面によって検証がなされ、最後にオンライン環境下における主題検索としての COMPASS が説明された。UK/MARCでは主題索引本体(2種の subject headings)のみが主題検索を担うのではなく、件名標目や、書誌的要素をコード化することによりアクセスポイントとしている。新しい BNBの索引法は大きな関心を呼び、News letter 等の翻訳希望の声もでた。


◎1991年11月例会
日 時:11月16日(土)午後2時〜5時
会 場:大阪市立中央図書館会議室
テーマ:整理技術研究史と整研グループ その2:展開期(1965〜1975)の活動
発表者:志保田務氏(桃山学院大学文学部)
出 席:
蔭山久子(帝塚山短大図)、田窪直規(奈良国立博)、西出浩二(大阪芸術大図)、野口恒雄(佛教大図)、前川和子(大谷女子大図)、前川理女(大阪芸術大図)、松井純子(大阪芸術大)、三浦整(大阪女子大図)、森耕一(光華女子大)、山下信(流通科学大図)、志保田務 11名
 本年 5月に発表したテーマの“その 2”。
 前回の草創期に位置づけた後半部分の一部を、今回の「展開期」に移し、時代区分を調整した。
 「展開期」は NCR1965年版策定によって幕開ける。本グループもその検討に入る。同時に同版の基盤とする IFLA の ICCP (パリ原則会議<1961>)議事録を講読・検討し、それに加えてわが国の目録思想の検証を行う。これらの研究を基礎にして、記述独立方式による新目録規則を検討することになり、1974年には『図書館目録規則案』を発表した。これは非基本記入方式の標準目録規則『NCR 新版予備版』に多大の影響を及ぼした。また、これら研究活動だけでなく整理技術の講習会を開催するなど図書館界に寄与している。

[1] NCR 1965年版批判(65.9〜65.12)
 NCR 1965年版についてはその成立前から、本グループ関係者は批判を投じている。その批判点は以下のようなところにあった。
・標目と記述の間の相対性に欠けていること
・標目の形が非合理
 (日図研第7回研究大会<1965>)
・規定の表現が分かりにくいこと
・中小図書館に不向きなこと
[2] 目録思想の研究と ICCP 議事録の講読(66.1〜68.4)
 この時期 ICCP や NCR1965といった重厚な規定類が整えられる。他方、館界は1963年に『中小レポート』を完成させ、1965年には日野市立図書館の実践を見る。特に『中小レポート』は公共図書館における整理偏重の旧態に厳しい批判を投じた。「貸出か整理か」という極端な議論もあって、整理業務の簡略化という現実的な課題と、そこにおいて残る整理技術の検討がなされた。
[3] 記述独立方式の規則化への取組み(68.5〜74)
 関係論文の検討を1970年代の初めまで続け、規則策定の下地とする。

 本グループの歩みは、日本の目録界の動向に対処し、リードしていたと言えよう。「パリ原則」の検討や NCR1965年批判がそれにあたる。これらの大元は先の「記述独立方式」にあるのは言うまでもない。世界最初の非基本記入の目録規則となった NCR新版予備版(1977)の成立には当グループ成員による『整理技術テキスト』や「図書館目録規則案」の影響があったことは否定できない。

質疑:
@当時、主題関係テーマの研究が殆どなされていないのはなぜか:時期的に NDC新訂 7版(1961)と同 8版(1978)の間隙にあったこと。整理技術関係の研究は国際的な動向や、改訂などとの関係が強いからであろうか。
A基本記入標目の選定が中心のパリ原則を、非基本記入の記述独立方式に立つ本グループは、どんな角度で受け止めたのか:同国際原則がベローナ等によって図書単位へ傾斜を見せた点を注視していたところが認められる。


◎1991年12月例会
日 時:1991年12月14日(土)14時〜17時
会 場:大阪市立中央図書館会議室
テーマ:サイエンス・パークの情報システム
発表者:原田勝氏(京都大学教育学部)
出 席:
蔭山久子(帝塚山短大図)、柏田雅明(帝塚山学院短大図)、北克一(摂南大図)、芝勝徳(神戸市立中央図)、志保田務(桃山学院大)、田窪直規(奈良国立博)、田村俊明(大阪市立大図)、中島範子(大阪市立大図)、西出浩二(大阪芸術大図)、野口恒雄(佛教大図)、藤井兼好(大阪府立夕陽丘図)、藤井千年(尼崎市立中央図)、前川和子(大谷女子大図)、前川理女(大阪芸術大図)、松井純子(大阪芸術大)、三浦整(大阪女子大図)、村岡和彦(大阪市立中央図)、八木敬子(摂南大学図)、吉田暁史(帝塚山学院大)、原田勝 21名
 原田氏は、最近欧米のサイエンス・パーク(関西学研都市もその一つ)を約 3週間に渡って実地調査を行ってきた。これらの現状報告を交えながら、「学術情報システムを考える一番いい単位」としての、サイエンス・パークのインフラストラクチャーについて発表された。
 サイエンス・パークには似て非なる類似の呼称がたくさんあり、例えばリサーチ・パーク、イノベーション・パーク、インキュベータ・パークなどがそれである。また、管理主体を見ても、大学、特定企業、地方自治体、国などさまざまなレベルが存在する。
 また、その内実機能を見ても、場所貸しから研究・経営支援機能まで、幅の広いものがある。サイエンス・パークを抽象的実態として見るならば、次のようなキーワード群が浮かび上がってくる。high technology, high valued-added,technology transfer, leading-edge reserach,etc.いずれにせよ、居住空間に隣接した空間に、研究者の集いの場を形成することによって、情報の集積効果と研究情報の流動の増大を企てるものであり、科学技術の推進と共にその企業化も合わせて視野にいれたものである。基盤としての高速通信網の上に、各種仕掛けを運営すると共に、研究者の face to face を考えている。
 コンピュータ・ネットワークの発展は、時間と空間の壁を徐々に無くしつつあるが、一方で、こうしたサイエンス・パークが多く企画・運営される背理には、研究者の研究を支援する仕掛けはどうあるのかが望ましいのか、を考えていく上で貴重な鍵が示されている。

 原田氏は、本年10月に開催された第39回日本図書館学会研究大会において『図書館/情報ネットワーク論(勁草書房 1990.5刊)』の業績に対して、学会賞を授与されました。本月例研究会のテーマは、その延長線上にあるものです。

◎月例研究会終了後、上六ロンドン亭で忘年会を開催した。
参加17名