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1992年月例研究会報告

整理技術研究グループ


◎1992年1月例会
日 時:1月25日(土)14時〜17時
会 場:大阪市立中央図書館
テーマ:公共図書館におけるOPAC:ネットワーク環境下における書誌情報の展開
発表者:芝 勝徳氏(神戸市立中央図書館)

出席者:蔭山久子(帝塚山短大図)、北克一(摂南大図)、北川美江(大阪芸術大図)、志保田務(桃山学院大)、杉本節子(大阪市立大図)、高橋成樹(大阪芸術大図)、田窪直規(奈良国立博)、西出浩二(大阪芸術大図)、野口恒雄(佛教大図)、藤井兼好(大阪府立夕陽丘図)、藤井千年(尼崎市立中央図)、前川理女(大阪芸術大図)、松井純子(大阪芸術大)、三浦整(大阪女子大図)、八木敬子(摂南大図)、吉田暁史(帝塚山学院大)、芝勝徳
 今年2月の「日図研研究大会グループ研究発表」にむけての締めくくりとの意味合いから、今回は公共図書館のOPACについて論点を網羅し、詳細に検討した上での、厚みのある発表となった。
 まず本研究の目的を「技術論ではなく、OPACを取り巻く現在の環境と潜在的問題点を明らかにし、今後の展望を書誌情報の標準化とシステム化の深化、ネットワーク化追求の方向で探る」と位置づけ、以下に述べる3つの大きな枠組みを設定した。
1)整理技術の機械化の発展段階
 1970年代以降の公共図書館でのコンピュータ導入の経緯を第1期〜第3期に分けて論じ、整理技術の機械化以前に資料の貸出・返却・所在の把握が出発点になっていたこと、整理委託と結びついいて民間MARCが派生したが、現在ではそれが「実質標準」の地位を確立し、書誌情報作成の公的機関である国立国会図書館の立場に取って代わろうとしつつあること、などが述べられた。
2)現状と問題点
 選書から除籍までの資料状態の一貫した把握、検索スピードの改善、館内検索という時空間上の制約からの解放など、OPACの特徴を確認した上で、図書館側がMARCやパッケージ・ソフトの中身を十分把握せずに利用、あるいは、民間業者へ過度に依存している、との問題点が指摘された。
3)今後の課題
 書誌情報の内容の充実、書誌レベルや最小の記述単位の標準化という基本的な環境整備をはじめとして、OPACのネットワーク展開、特に「国立国会→都道府県立→市町村立」という垂直統合型のネットワークと、そこでのナショナル・マークとしてのJAPAN MARCの意義と役割を再認識すること、さらには、それに対する民間MARCが「バッチ書誌ユーティリティ」とまで位置づけられうるような状況への批判などが、重要な問題として取り上げられた。


◎第33回日本図書館研究会研究大会
グループ研究発表として下記の研究発表を行った。
日 時:2月12日(水)
会 場:奈良市ならまちセンター
テーマ:公共図書館におけるOPAC−ネットワーク環境における書誌情報の展開
発表者:北克一氏(摂南大学図書館)、芝勝徳氏(神戸市立中央図書館)

内容については下記論文を参照。
北克一、芝勝徳 公共図書館におけるOPAC−ネットワーク環境における書誌情報の展開『図書館界』44巻2号 p.88-93, 1992.7


◎1992年3月例会
日 時:3月7日(土)14時〜17時
会 場:大阪市立中央図書館
テーマ:図書館のコンピュータと郷土資料検索手段
発表者:藤井千年氏(尼崎市立中央図書館)

出席者:家入敏光(天理大)、上田格(元大阪市立中央図)、鬼丸貞彦(金蘭短大)、垣口弥生子(大阪府立中之島図)、蔭山久子(帝塚山短大図)、柏田雅明(帝塚山学院短大図)、川上博幸(枚方市立図)、久保恭子(甲南女子大図)、光斎重治(中部大図)、寒川登(大阪教育大図)、志保田務(桃山学院大)、高橋慶男(天理大)、西田文男(帝塚山学院大)、西出浩二(大阪芸術大図)、野口恒雄(佛教大図)、藤井兼好(大阪府立夕陽丘図)、前川和子(大谷女子大図)、吉田暁史(帝塚山学院大学)、藤井千年
 郷土資料に関するレファレンスは、公共図書館においても最も基本的な業務の一つであろう。これまでこの強度に関するツールは「参考業務記録表」等カード方式によって対応してきた。この機能をコンピュータによって行う試みを尼崎私立図書館で開始した、その一端の報告である。
 この機能は「尼崎データベース」の中に位置づけされている。すなわち、生涯学習情報(イベント情報・講師の情報・会場の情報など)と同じメニュー画面に設定されている。これは、オンライン化された各公民館図書室からの検索を予定したものである。この中から「尼崎データベース検索設定」を選び、郷土に関する任意の項目(件名)をカナまたは漢字で入力して検索すれば、尼崎に関する情報(記事)が掲載されている文献が一覧画面に表示される。この「検索設定画面」では6個の〈検索資料キーワード〉(件名的名辞)のand、or、notによる論理検索が可能である。さらに、発行年による絞り込みもできる。例えば、「尼崎城」または「琴浦城」と「庄下川」についての文献(尼崎城はまたの名を琴浦城と称した)といった方法で検索する。
 入力については、どの分野においても問題を抱えているのが通例であるが、「郷土資料件名標目表」が完備されていない現状においては、その資料に現れている件名的な名辞をとりあえず検索キーにしようせざるを得ない。入力は「郷土資料 登録・修正」画面によって行うが、この欄は無限にスクロールするので、文献中のキャッチワードを数多く入力することができる。
 当日は、図書館のコンピュータはこのような機能に対応すべくシステムを備えるべき旨の論説のほか、「郷土関係新聞記事索引」も同じコンピュータシステムによって構築されている様子が紹介された。

◎例会終了後、藤井氏定年退職をねぎらって「藤井千年氏を囲む会」開催(心斎橋、東天紅)
主催:整理技術研究グループ/奉仕研究グループ
【発起人/石塚栄二、志保田務、野口恒雄、西田文男、山下信、吉田暁史】
開催:18:15〜21:00
出席者:石塚栄二(帝塚山大)、上田格(前大阪市図)、大城善盛(同志社大)、鬼丸貞彦(前芦屋市図)、蔭山久子(帝塚山短図)、柏田雅明(帝塚院短図)、川上博幸(枚方市図)、久保恭子(甲南女大図)、光斎重治(中部大図)、寒川登大教大図)、塩見昇(大教大)、志保田務(桃山学院大)、清水昭治(寝屋川市図)、杉本節子(阪市大図)、武内隆恭(京橘女大)、高橋慶男(天理大)、田窪直規(奈良博)、西田文男(帝塚院大)、西出浩二(大芸大図)、野口恒雄(佛教大図)、信田昭二(大手前女大)、馬場俊明(京産大図)、藤井収(関西大図)、前川和子(大谷女大図)、前川理女(大芸大就)、松井純子(大芸大)、三浦整(阪女大図)、向畑久仁(姫独大図)、山下信(流科大図)、山田伸枝(樟蔭女大図)、山野美贊子(阪府大図)、吉田憲一(阪府大図)、吉田暁史(帝塚院大)、渡辺信一(同志社大)


◎1992年4月例会
日 時:4月25日(土)14時〜17時
会 場:大阪市立中央図書館
テーマ:NDC9版を考える−JLA分類委員会誌上報告を中心に− T(総論)
発表者:野口恒雄氏(佛教大学図書館)

出席者:今西由実子(摂南大学図書館)、蔭山久子(帝塚山短期大学図書館)、北克一(摂南大学図書館)、木原通夫(椙山女子学園子短大)、河野**(龍谷大学図書館)、****(龍谷大学図書館)、田窪直規(国立奈良博物館)、竹田君代(大阪市立中央図書館)、田村俊明、(大阪市立大学附属図書館)、藤井兼好(大阪府立夕陽丘図書館)、三浦整(大阪女子大学図書館)、村岡和彦(大阪市立中央図書館)、山下信(流通科学大学図書館)、吉田憲一(天理大学)、吉田暁史(帝塚山学院大学)、****(    )、****(    )、野口恒雄 19名
 わが国の標準分類法であるNDC8版が刊行されてから、すでに14年目に入ろうとしている。この間、JLA分類委員会は、1985年11月16日以来、70数回の会合を重ね、改訂作業も最終段階に来ている。改訂版(9版)試案の説明会も、今夏に予定されている。当グループは、NDCに対し、これまでもさまざまな批判や提言を行ってきた。試案の検討が急がれている。
 試案は「国内刊行のすべての図書を網羅する全国書誌を適正に分類できること」を改訂の骨子とする。「全国書誌のデータベースに使用可能な書誌分類表」であり、「分類作業に役立つと同時にデータベースの検索に効果的な標準分類表であることを目指している。この新しい意味づけは、書架分類表としての性格を鮮明に打ち出した8版同様の誤りを犯しているようである。しかし「分類体系の継続性を考慮し、新訂8版の体系を維持」することも謳っている。したがって、記号の合成などが積極的に取り込まれているわけではない。8版の形式区分-04にあった相関係の表示(オプション)も排除する方向にある。列挙型分類表としてのNDCの構造を維持する範囲で、どのようにして書誌分類表としての充実を図ろうとするのであろうか。
 各類目を通して、1)構造の明確化と明文化、2)分類実績が大量な項目の細分、3)名辞の吟味、4)注記と参照の充実と手直し、5)当該類目の見直し充実、等が具体的に検討された内容として報告されている。
 構造の混乱する項目を是正することは、9版に強く求められているところである。結果、インデンションによって階層関係を正確に表そうとしたり、注記の充実を図っている。DDCの「センタード・エントリー」の採用も考慮されているようであるが、事例は見受けられない。これらの措置は、分類作業上で求められる適用順位の明確化と直結するものではないが、改善点ではあろう。
 しかし、示されている概要からは、構造上の明確化を強く志向している題目と、そうでないものとに分かれ、均衡を逸しているように見受けられる。こうしたことは、「分類実績が40件以上の項目を細分する」という基準にも見ることができる。この基準は、一方で“分割する”ための指針とし、他方ではこれら実績を盾に“分割は困難”とする判断として、時に使い分けられており、一貫性を欠く取扱となっている。基準となる分類実績は、NDLの分類コードにもとづくものであることにも留意する必要がある。
 個別の項目に関しては、質疑の中で以下の点などが指摘・討議された。
1) 形式区分の使用法について(優先順位、重複使用可否の明示)
2) 地理区分について(歴史の下ではなく、地理の下で展開する。地理記号表の補助表への分離。適用範囲の明示など)
3) 建築や芸術の分野で、地理による区分か様式によるものか明確でない。
4) 相関索引の充実(BSH、NDLSH件名の取り込み)
 オンラインによる目録検索が進展する中では、分類表の機械可読形式への変換が不可欠となる。すでに完成しているNDC・MRDF8の作成過程においてNDCの問題点が浮き彫りにされてことを、今回の改訂でも生かしていただきたい。今後、オンライン・システム上での分類(表)の果たす役割や、その効果的な利用法については追求すべき課題として残されているが、そうした状況においては、表構造の明確さ、区分の論理性、索引語を含む階層表現力などが、よりいっそう厳しく求められることだろう。

◎例会終了後、吉田憲一氏の天理大学就任祝賀会開催(難波)


◎1992年5月例会
日 時:5月23日(土)14時〜17時
会 場:大阪市立天王寺図書館
テーマ:『三層構造モデル理論成立の過程を検証する』
発表者:岩下康夫氏(純心女子短期大学)

出席者:伊藤順(愛知大学)、北克一(摂南大学図書館)、北川美江(大阪芸術大学図書館)、久保恭子(甲南女子大学図書館)、志保田務(桃山学院大学)、鈴木志元(近畿大学)、高橋成樹(大阪芸術大学図書館)、田窪直規(国立奈良博物館)、田村俊明(大阪市立大学附属図書館)、中島範子(大阪市立大学附属図書館)、西出浩二(大阪芸術大学図書館)、埜上衛(近畿大学)、野口恒雄(佛教大学図書館)、松井純子(大阪芸術大学)、前川和子(大谷女子大学図書館)、山下信(流通科学大学図書館)、山田道子(神戸海星女子学院大学図書館)、三浦整(大阪女子大学附属図書館)、吉田暁史(帝塚山学院大学)、岩下康夫 21名
 谷口祥一氏(図書館情報大)が「記述目録法のための三層構造モデル理論」(『図書館学会年報』36(4), 1990.12)の中で提唱した、いわゆる「三層モデル理論」の問題点を、特に、当モデルの成立根拠に的を絞り検証を試みる。この際、発表者は谷口氏が当モデルを設定するに当たって示唆を受けたとするPatrick Wilsonにできるだけ典拠を求めている。
 以下、その問題点と発表者のコメントを付す。
1.「著作単位」が“著者記入”の意で用いられている
 「著作単位」という用語を用いているが、実際は「著作記入」を指していることが読み取れる。著作そのものを記述の対象とする著作記入の方法は、記述の対象となるべき資料を著作の単位で把握しようとする著作単位の方法とは全く別のものである。したがって、従来の用語法との調整が求められるのではないだろうか。
2.タイトルが著作の成立要件として求められていない
 著作成立の要件にタイトルの存在を求めていない。これは「一般的著作」に対して言及できるものであり、必ずしも「目録法上の著作」という文脈でもう一度「著作」を捉えなおす必要がある。この際、WilsonやDomanovskyの指摘する「目録法上の著作」は特殊で、一般的な著作概念との間に大きな隔たりがあるという事実を無視することはできないだろう。
3.テキストと著作を各々異なったものと理解している
 「テキスト(=文字列)」が表明している叙述内容を指して「著作」とする。さらに「著作」とは“テキストから知的内容的なまとまりとして抽出される抽象的な存在物”という。したがって、基本的に「著作」と「テキスト」は別のものとして理解している。一方Wilsonに三層構造のプロトタイプを見取ることができると論理を組み立てている。この論理をWilsonと比較・対照して検討した。
4.Wilsonの「三段階モデル」と谷口氏の「三層構造モデル」は、提案の背景に違いがある
 Wilsonの提案した「三段階モデル」は、同一著作の諸版を整合的に解釈するという文脈においてであり、これは記述対象を構造的に把握し表現するという「三層構造モデル」提出の次元とは異なっている。また「テキスト」と「著作」を同一視することによって同一著作の諸版が整合的に解釈できることなどを指摘した。
 谷口氏の提示する「三層構造モデル」理論は、上記のような問題点が存するものの、彼の主張の眼目であるテキストを中心に据えた記述の推奨については大いに評価するところであり、今後の理論展開を見守りたいと発表を締めくくった。
参考文献
@谷口祥一“記述目録法のための三層構造モデル”『図書館学会年報』36(4):149-166, 1990.12
Aパトリック・ウィルソン;高鷲・岩下訳“目録の第2番目の目的”『整理技術研究』29:41-52, 1991.12
B Patrick Wilson "Interpreting the second objective of the catalog" Library Quarterly 59(4):339-353, 1989.10


◎1992年6月例会
日 時:6月27日(土)14時〜17時
会 場:大阪府立中之島図書館
テーマ:『NDC9版を考える−JLA分類委員会誌上報告を中心に −U(各論)』
発表者:吉田暁史氏(帝塚山学院大学)

出席者:今西由実子(摂南大学図書館)、垣口弥生子(大阪府立中之島図書館)、蔭山久子(帝塚山短期大学図書館)、北克一(摂南大学図書館)、志保田務(桃山学院大学)、杉本節子(大阪市立大学附属図書館)、鈴木志元(近畿大学)、田窪直規(国立奈良博物館)、西出浩二(大阪芸術大学図書館)、埜上衛(近畿大学)、野口恒雄(佛教大学図書館)、藤井千年(神戸大学)、前川和子(大谷女子大学図書館)、前川理女(大阪芸術大学)、三浦整(大阪女子大学附属図書館)、山田道子(神戸海星女子学院大学図書館)、吉田憲一(天理大学)、吉田暁史 18名
 日本図書館協会分類委員会が発表したNDC9版の改訂試案の概要に対し、図書館学教育と実務者の立場から疑問点を豊富な実例を挙げて指摘した。
@8版教育の経験から問題ありとする点(一例)。
 「図書館年鑑」「経済白書」のように場所と形式の二つの要素が重なる場合、図書館(経済)−日本−年鑑とするのか、図書館(経済)−年鑑−日本とするのか。「入門法学全集」は321.08とするのか320.8か。「基礎経済学全集」は331.08か330.8か。「現代社会学大系」は361.08か360.8か。「新アジア学」などの地域一般研究はどうするのか。NDCにはっきりとした指針がない。
A最低限健全な論理を満たして欲しいとする点。
 例えば、補助表における共通細目と特殊細目の関係、地理区分の位置づけ、「29地理」における09のように形式区分を変更するときの扱い、工学における「09」の適用の問題、地理区分におけるやみ短縮の問題、インデンションの明確化とCentered entryの採用、等である。
B奥行きのある問題として。
 「〜一般」を収める場所(Unique definition)を決めて欲しい。共通細目を充実させる。分類表の使命は何か(書架分類か、冊子体目録における体系的配列用か、オンライン検索用までも含むのか)。
C現在の9版案はどうか。
 40件を目安として細分をはかるとする分類委員会の方針は、例えば548.21〜548.237のように種類で分けるという方法でなら正しいが、単に文献量が多いから論理も構造も無視して分けるということでは困る。しかし表全体としては、7→8版のときのような無意味なのに大きく改変した(例えば短縮形の多用)ということがないだけに、少なくとも改悪にはなっていないと評価している。
D相関索引について
 相関索引を言葉の真の意味での「相関」索引にするべきであり、そのためには本表中のことばを拾うだけでなく、他のツールからも下位語、同義語を採録してくる必要がある。ただし同じ階層の中では大概念で代表させることがありうる。異なる主題領域、異なる階層のときには、必ず掲載しなければならないし、倒置(=上位語)や同意語への置き換えをして意識的に集中させ、ある概念は「索引になければ分類表には採用されていない」というような相関索引を作るべきである。基本的には、NDCのような分類表における原理(主題領域優先)に対し、逆の原理すなわち事象中心の原理で補うものである。「写真」を例にとると、8版の相関索引に収録されている以外に、014.76マイクロ写真、014.78写真、070.17報道写真、147.5心霊写真、[336.743広告写真]、442.7天体写真、444.8太陽の写真、446.8月の写真、454.9地形写真、498.92写真(法医学)、535.85写真機、674.3(広告)写真、740/748における写真のつくことば、というようなことばの採録が必要である。


◎1992年7月例会
日 時:7月25日(土)14時〜17時
会 場:豊中市立岡町図書館
テーマ:NDC9版検討会の報告
発表者:田村俊明氏(大阪市立大学附属図書館)

出席者:田村俊明氏(大阪市立大学附属図書館)
出席者:伊藤峻(豊中市立岡町図書館)、蔭山久子(帝塚山短期大学図書館)、北川美江(大阪芸術大学図書館)、木谷真貴(豊中市立岡町図書館)、島津恵正(龍谷大学図書館)、杉本節子(大阪市立大学附属図書館)、高橋成樹(大阪芸術大学図書館)、谷本達哉(夙川学院短期大学事務局)、中島範子(大阪市立大学附属図書館)、西出浩二(大阪芸術大学図書館)、前川和子(大谷女子大学図書館)、前川理女(大阪芸術大学事務局)、三浦整(大阪女子大学附属図書館)、山田道子(神戸海星女子学院大学図書館)、吉田暁史(帝塚山学院大学)、田村俊明 15名
 田村氏は、前日日本図書館協会にて行われた分類委員会によるNDC9版検討会に出席したが、その報告である。
1.改訂案の説明
 まず石山委員長から総説の説明があった。改訂の基本方針として以下の3点がある。(1)NDC9版は、書架分類対応から書誌分類対応へ、さらに全国書誌の分類に対応できるようにすること。(2)分類表の項目は、国立国会図書館の分類実績をもとに40冊以上あれば細目化を検討した。(3)分類表の論理構造は、基本的には改変しないこと。そして、名辞の変更、補助表についての説明、見出しについての説明等があった。
 次に各論として、各類について、担当委員から変更点等の説明があった。
 0, 1類:千賀委員 2類:平野委員 3類:岩淵委員 4類:岡谷委員 5類:相原委員 6類:検討中 7類:石川委員 8, 9類:古川委員
2.代表質疑・提言
 整理技術研究グループ         吉田氏
 私立大学図書館協会分類分科会  小林氏
 整理技術研究研究会          松林氏
 索引法研究グループ          北 氏
 以上4つのグループから、NDCを国際的観点から見直す必要があること、NDCの維持管理体制と改訂情報の双方向化の必要性、論理的矛盾の解決、機械可読方式であるNDC8版(MRDF8)の構造上の問題点、相関索引用語への言及等、多数の提言がなされた。
3.代表質疑・提言および参加者アンケートに対する回答・コメント
 月例会参加者からは、検討会会場からのアンケート内容についての質問や、分類表の伝記には問題がある、との指摘などが行われた。また、当グループの代表として代表質疑・提言を行った吉田氏からは、まず検討会自体の準備に不足があったのではないか、8, 9類改訂の充実がある一方、3類についてはまだ検討の余地があるなど、各類によって改訂作業に非常にばらつきがある、という指摘があった。現在ほとんどの図書館は、NDC8版あるいいは7版を使用しているので、9版の改訂の内容は業務との関わりの中で深い関心を持つものである。さらにNDC9版の検討が深められることを望む声が強かった。
 研究会終了後、伊藤館長の案内により、改装された岡町図書館の施設を見学した。


◎1992年9月特別例会
日 時:9月16日(水)13:30〜16:30
会 場:OBP富士通ビル
テーマ: ILISX−70 システム見学・研修会



◎1992年9月例会
日 時:9月26日(土)14時〜17時
会 場:大阪市立北市民教養ルーム
テーマ:NDC9版を検討する:2類(歴史)を中心に
発表者:蔭山久子氏(帝塚山短期大学図書館)
     三浦 整氏(大阪女子大図書館)

出席者:今西由実子(摂南大学図書館)、蔭山久子(帝塚山短期大学図書館)、北川美江(大阪芸術大学図書館)、志保田務(桃山学院大学)、高橋成樹(大阪芸術大学図書館)、谷本達哉(夙川学院短期大学事務局)、田村俊明(大阪市立大学附属図書館)、西出浩二(大阪芸術大学図書館)、野口恒雄(佛教大学図書館)、前川和子(大谷女子大学図書館)、松井純子(大阪芸術大学)、三浦整(大阪女子大学附属図書館)、山下信(流通科学大学図書館)、吉田憲一(天理大学)、吉田暁史(帝塚山学院大学)15名
 日本十進分類法の改訂作業も、ようやく大詰めを迎えてきた。9版改訂に対するアウトラインの検討は前2回の月例研究会ですませた。今回からは類目ごとの検討にはいる。今回の発表には、検討材料としてJLA分類委員会が『図書館雑誌』に公表してきた「試案の概要」とともに、本年7月に開催された説明会で示された「試案」も含めている。
1.2類:歴史(蔭山久子氏)
 2類の改訂案では、改訂方針の一つである「分類項目40件以上の項目の細分」によって、分類表の構造を無視、ないしは壊しているところに問題があるとし、次の4点を指摘した。
(1)時代による細分:時代区分(01/07)はどの国にも適用可能かどうか。可能と解釈できる文章が序説の中に記されていたり明確でない。実務上は各館いろいろな対応をしているようである。分類表に明示すべきである。
(2)地域による細分:特に考古学(日本)の扱いに問題がある。注記に記されている「必要に応じて日本地方区分する」は、歴史における区分特性である〈地理区分−時代区分〉の後に再度〈地理区分〉を置くことになり分類表の構造上不都合である。
(3)主題史の扱い:日本史の通史に置かれている主題史には「各時代・各地域のものは210.2/219.9に収める」としている。これらは、それぞれ助記性を持ったものとして記号展開させるのか、単に分散させるということなのか明確でない。試案でも詳細は不明だが、朝鮮史・中国史の通史にも同様の主題史が列記されているが、これらとの扱いとの関係についてもよく分からない。
(4)戦争のもとの細分:「戦争のもと」とは何かという疑問がある。「通史・戦記」が置かれているが、時代区分の1項目として妥当だろうか。
2.7類:芸術(三浦整氏)
 7類は従来から9区分の限界から、主題概念レベルと記号桁数に差異がある。これらは未解決のまま9版に引き継がれていると指摘した。ここでは分析表を用いて、芸術・美術の下位綱目(71/77)の記号展開(要目レベル)について、「歴史」「伝記」「材料・技法」等の配置を検証し、列挙の一貫性を欠いていることなど、構造面からの整合性を中心に問題点を説明した。あわせて以下の問題点も指摘した。
(1)芸術における時代区分、(2)芸術家の伝記、(3)芸術における相関係の扱い(新設)、(4)美術/工芸にみる問題点、(5)音楽・演劇にみる問題点
 討論では、個々の問題点について参加者の解釈や、業務体験からの意見がのべられた。特に分類表の論理構造に関しては、使いやすさの面から重視すべきであるが、9版改訂案では、便宜的な展開などが目立つ旨の発言が多くあった。なお、本発表は論文として『図書館界』44巻4,5号に掲載されている。


◎1992年10月例会
日 時:10月31日(土)14時〜17時
会 場:大阪市立北市民教養ルーム
テーマ:NDC9版を検討する: 4類(自然科学)を中心に
発表者:田村俊明氏(大阪市立大学附属図書館)
     谷本達哉氏(夙川学院短期大学教務課)

出席者:志保田務(桃山学院大学)、前川理女(大阪芸術大学事務局)、三浦整(大阪女子大学附属図書館)、吉田憲一(天理大学)、田村俊明、谷本達哉 6名
 先月に引き続きNDC9版案の類別検討として、4類(自然科学)を対象とする。検討資料は前回と同様「試案の概要」と「試案」を用い、次の2つの観点から報告された。
1.8版から9版への改訂項目にみられる問題点について(田村俊明氏)
(1)日本科学史の下の細区分(402.1)について
 時代区分として展開されたのは評価するが、江戸時代以前も含めて一貫したものとすべきである。
(2)新設項目:自然誌の扱い(402.9)について
 462の博物誌との区別が不明確。特にこの名辞を新設する必要性は疑問である。
(3)科学技術政策・行政(409)
 509.1との区別のための注記が必要である。
(4)同位元素の扱い変更:429.4→539.6
新設項目:遺伝子工学の扱い →4類(467.25)
バイオテクノロジー →5類(579.9)
 (3)と同様、4類と5類の区別が不明確である。
(5)凝結現象(451.6)の下の新設項目:降雪誌と降水誌
 降水一般、降雪誌、降水誌、降雪量、降水量間の区分の対応関係が不明確である。
(6)河川学(452.94)と河川誌(517.2)
 海洋学(452)の下で、河川誌だけが→517.2と5類にいくのは問題である。また、雪氷学→雪氷と変更になった理由はなにか。
(7)精神医学の扱い変更:493.7→493.709の問題

2.NDCが、8版以前から引き継いでもつ問題点について(谷本達哉氏)
(1)生物学の下の「採集」の分類記号の相違
 460.78, 470.73, 480.73
 同様に「実験法」:-07、-072および形式区分:-075
(2)医学(490)における体の器官等の流用問題
 491.22/.28および492.432/.438は、宗教のように、分類表中に別表を用意し、合成方法を明記すべきである。
(3)化学(430)における交叉分類的展開
 実験化学(432)と実験法(435.07あるいは -072)
 交叉分類を避ける注記が必要

 報告のあと、参加者からの質問や問題点の指摘がなされた。それらの論議を以下に簡単にまとめる。
(1) 科学と、その応用としての技術との区分が不明確な箇所が多い。それぞれの箇所に適切に分類項目を置き、その区別を注記すべきである。
(2) 化学(特に分析化学)に代表されるように、1つの区分に複数の区分原理が使用され、交叉分類に陥っている箇所が見られる。これらの箇所では、注記類を駆使して交叉分類を避ける手だてが容易されねばならない。
(3) 分類桁数は同じだが、階層構造上は上下関係を生じている箇所では、上下関係の表現をインデンションだけでカバーするには無理がある。直上の項目との階層構造は表現できても、全体としてみると誤った階層構造となる場合がでてくる。等(文責:吉田憲一)


◎1992年11月例会
日 時:11月28日(土)14時〜17時
会 場:大阪市立北市民教養ルーム
テーマ:NDC9版を検討する:その5-オンライン時代のNDC
発表者:吉田暁史氏(帝塚山学院大学)

出席者:蔭山久子(帝塚山短期大学図書館)、北克一(摂南大学図書館)、北川美江(大阪芸術大学図書館)、鈴木志元(近畿大学)、高橋成樹(大阪芸術大学図書館)、高畑悦子(追手門学院大学図書館)、田窪直規(国立奈良博物館)、辻井康博(相愛大学図書館)、西出浩二(大阪芸術大学図書館)、野口恒雄(佛教大学図書館)、前川和子(大谷女子大学図書館)、前川理女(大阪芸術大学事務局)、三浦整(大阪女子大学附属図書館)、山下信(流通科学大学図書館)、吉田暁史
 タイトルとはやや異なり、オンライン時代の分類利用に関する外国文献の紹介を中心とする内容であった。
1.オンライン目録による分類検索の要件は次の通り。
(1)ブラウジング機能(分類表の体系性を利用)
(2)検索の幅を広げたり狭めたりの調整がしやすい。ただしこの機能は、Svenoniusがパースペクティヴ分類(perspective classification)と呼ぶような、文脈的な広がりを調整できるということである。すなわち知識ベースの体系にしたがって広げたり、狭めたりできるということである。
(3)分類検索を始めるにあたって、本表中や相関索引中の名辞によって、ことばから記号を探し出せるような機能が絶対に必要である。
(4)件名標目による検索へとスムーズに移行できること。
 件名標目による特定事象の検索との連携がうまくはかられること。
2.Svenoniusの論考1)
 分類表には、taxonomic classificationとperspective classificationがある。前者は自然現象などのように、概念の階層がはっきりしている部分である。後者はそのような単純な階層にはならないところである。perspective classificationは、概念を文脈によって関係づける。オンライン目録では、体系性にしたがってブラウジングしたり、perspective classificationを利用して検索を広げたり狭めたり出来るところに、分類の利用価値がある。このような利用を考えると、オンライン目録に適した分類表はむしろ列挙型分類表の方である。
3.DORS (DDC online retrieval system)の紹介。
 Svenoniusの理論的考察を、UCLAで実験的に試したシステムである2)。DDC分類の7類(芸術)を実験分野とし、この分野の分類表をシステムに組み込んで実験した。当システムの最大の特徴は、連鎖索引法によって本表中の分類記号に対する索引が作られていることである。これはコンピュータによって自動生成され、名辞としては、本表中および相関索引の用語が用いられている。分類による検索には、まずことばから入るが、このとき連鎖索引の左側すなわち、もっとも文脈の狭い語からの検索と、右側すなわち文脈の広い語からの検索との2通りが用意されている。前者によれば特定的な語によって検索でき、そのことがらの属する種々の観点(分散関連事項)が集中的に集められ、その中から適当な観点のものを選ぶことになる。後者によれば、ある特定の文脈の組み合わせが一覧されることになり、そこから特定の概念の組み合わせを選択する。
 またこのシステムでは、分類記号と件名標目との間にスムーズな移行ができるようになっている。
4.新しい分類用US MARCフォーマット3)の紹介。
 個々の分類記号すべてに階層関係を順になぞった名辞がついているなど、興味深いフォーマットになっている。
 発表後の質疑の中で、DORSに関して、これはプロ級でなければ使えないだろうという指摘があった。
参考文献
1) Svenonius, Elaine. Use of classification in online retrieval. Library Resources & Technical Services. 27(1) 1983, p.76-93.
2) Liu, Songquiao and Svenonius, Elaine. DORS : DDC online retrieval system. Library Resources & Technical Services. 35(4) 1991, p.359-375.
3) Guenther, Rebecca S. The development and inplementation of the USMARC format for classification data. Information Technology and Libraries. 11(2) 1992, p.120-131.


◎1992年12月例会
日 時:12月19日(土)14時〜17時
会 場:尼崎市立北図書館
テーマ:整理技術と森耕一氏−整理技術研究グループの活動から−
発表者:小野泰昭氏(元大阪教育大学図書館)
     志保田務氏(桃山学院大学)

出席者:今西由実子(摂南大学図書館)、蔭山久子(帝塚山短期大学図書館)、北克一(摂南大学図書館)、久保恭子(甲南女子大学図書館)、田窪直規(国立奈良博物館)、田村俊明(大阪市立大学附属図書館)、野村薫(大阪市立中央図書館)、野口恒雄(佛教大学図書館)、藤井千年(神戸大学)、前川和子(大谷女子大図書館)、前川理女(大阪芸術大学事務局)、松井純子(大阪芸術大学)、向畑久仁(姫路独協大学図書館)、村岡和彦(大阪市立中央図書館)、山下信(流通科学大学図書館)、吉田暁史(帝塚山学院大学)、小野泰昭氏、志保田務 18名
 1992年11月5日逝去した森耕一氏の整理技術関係の業績を、整理技術研究グループ(整研)の1969年から1974年の世話人・小野泰昭と志保田務の発表を軸に偲んだ。
 森は1951年鹿児島県立医大予科物理学教授から和歌山県立理科短大(のち医大進学課程)に講師で移り、ここで図書館を兼務。日図研に入会し、程なく図書館研究界の中心となり、1955年10月「目録排列法研究グループ」を結成、『基本件名標目表』(JLA 1956)、『目録編成規則』(日図研 1961)の作成に参画した。この間1955年『分類作業 : NDCのつかい方を中心に』(図書館界シリーズ ; 2 びぶりおそさいえて)を著した。
 上記グループの後身が整研で、1957年8月、森、藤田善一の発起で発足した。小野までの世話人は天満隆之輔、前畑典弘、拝田顕(真紹)、上田格、藤沢徳男である。整研ではICCPを軸に研究を主導した。前畑の「国際目録原則の研究」(図書館界 19(6):233-237, 1968.3)はその系脈にある。1964年、森は同天王寺図書館長就任。「中小レポート」(1963)、日野市立図書館の創設(1965)と館界中興のときだった。目録界も重厚さからの解放を求めた。森は1964年、69年の二度『整理技術テキスト』(JLA)に簡易目録法を執筆した。
 整研ではNCR1965年版の批判、昭和期の目録思想の研究などが続いた。小野「目録思想史:目録機能論の時代」(図書館界 21(5):163-168, 1970.1)はその一所産だが、集大成は記述独立方式を規則化した「図書館目録規則案」(図書館界 26(4):109-117, 1974.12)である。石塚栄二、天満、埜上衛、森らの指導で浅野十糸子、岡崎すばる、小野、光斎重治、坂田摩耶子、志保田、武内隆恭、西田道子、拝田、藤井千年、藤沢、前畑、湊邦子、山下信などが策定し、NCR新版予備版に先駆けた。
 森は天王寺図書館が主担のBMをめぐる議論に傾注。さらに中央館長となる1971年以降は政策論、自由論などに進み、目録分類研究から離れた。だが、整理分野への自信は終生四囲を圧倒した。

◎例会終了後、忘年会を梅田で開催