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整理技術研究グループ勉強会記録(2001年度)

「メディアの分析的研究」第4回


日時:
2001年5月30日(水) 19:00〜20:50
会場:
日本図書館研究会事務所
発表者 :
吉田暁史氏(帝塚山学院大学)
テキスト:
FRBRの輪読(第1章−第2章,p.1-p.11)
Functional Requirements for Bibliographic records : Fianl Report / IFLA Study Group on the Functional Requirements for Bibliographic Records. -- Munchen: K. G. Saur,1998.
およびhttp://www.ifla.org/VII/s13/frbr/frbr.htm
出席者:
吉田(帝塚山学院大)、田窪(近畿大学)、尾松(奈良県立図書館)、太田(京都外大図書館)、河手(大阪樟蔭女子大図書館)、蔭山(帝塚山大学図書館)、堀池(京都大学大型計算機センター)

●1章 序論
・IFLAにおける目録理論の検討の経過(40年前から)が述べられている。
<<パリ原則>>
・1961年のパリで開催されたIFLA主催の国際会議で標目に関する国際原則(パリ原則)が12項目の合意あった。特に英米系と独系の目録規則において,団体名記入の在り方に双方の歩みよりがあり,目録規則の国際的統一が前進した。日本もこのパリ原則を受け入れて,『日本目録規則1965年版』が制定された。
<<国際目録専門家会議>>
・1969年に国際目録専門家会議が開催され,その後,ISBDが制定された。1974年に単行書用のISDB(M)が発表され,以後,逐次刊行物ISBD(S),資料種別によらず全体の枠組みを示したISBD(G),古書ISBD(A),コンピュータファイルISBD(CF),地図資料ISBD(CM),非図書資料ISBD(NBM),印刷楽譜ISBD(PM)など公表されている。5年ごとの見直しも行われている。
<<目録界に大きな変化>>
・書誌データの作成とその処理の自動化
・大規模データベースの成長
・多くの図書館による分担目録の進展
・目録作成コストの低減化と,さらなるコスト削減要請 --> minimal levelの目録
・電子出版物とネットワーク情報資源の出現
・広範な情報への利用者の要求が強まる
1990年,「Stockholm Seminar on Bibliographic Records, sponsored by the IFLA Unversal Bibliographic Control and International MARC(UBCIM) Programme and the IFLA Division of Bibliographic Control」において,目録作成のコストをいかに削減するか検討され,minimal level cataloguing の9つの決議が行われ,このうちの一つはこの研究に引き継がれている。
<<研究の目的>>
・記述だけでなく,アクセスポイントやorganizing element と注釈も視野に入れ,書誌レコードのあらゆる機能をカバーする
・書誌レコードが情報提供する,目的とするものは何か
・利用者要求に応える立場から,書誌レコードに期待されるものは何か
・明白,正確に表現された共通の了解事項として提供する枠組みを作ること
1992年,目録委員会常任委員会 + 分類部会の合同で研究メンバーを発足
1995年秋,ドラフトレポートを提出
1997年9月,IFLAの目録部会常任委員会に最終レポートを提出
(討論)記述目録法と主題目録法に分かれているのはメリットがあるからではないか。
 organizing element もアクセスポイントの一部である。
 利用者ニーズにどう応えていくかがFRBRの特徴。
● 研究のアプローチ
・書誌レコードの検討。書誌レコードの中で利用者にとって関心のある諸実体と属性およびその相互間の関係を明確に定義をすること。
・この研究で用いられるモデルは広範で普遍的なものであるが,モデルが定義する実体,属性,関連に関しては網羅的ではない。
・実体,属性,関連は書誌レコードに典型的に含まれるデータの論理的な分析から引き出される。
・この研究のために開発されたモデルは,典拠レコード中に普通に含まれる属性や関連の拡大範囲はカバーしていない。
・このモデルは典拠レコード(個人,団体,概念など)の焦点となる実体を定義し,そして,これら実体間および書誌レコード中で記述された実体間の関連を表現する。
(討論)
・研究は書誌レコードについて,中身についても,構造についても,アプリオリに何らの仮定ももうけていないが,アプリオリはどこまでアプリオリか疑問ではないか。
●さらなる研究のための領域
・典拠レコードに通常記録される付加的データをカバーすることが期待される。将来的に,シソーラスや分類表のような主題典拠類に対して焦点となる諸実体,およびそういった実体間の関連について,分析することが必要。
・MARCレコードフォーマットを再構成する実際的な作業で必要
・また,multiple versions 論争に対する新しいアプローチを提供する
(討論)
・(典拠レコードに通常記録される)付加的データとは分野によって異なるがはっきりわからない。ISBD以外のものか,書誌的レコード以外のものか。
・典拠レコード(著者系)は書誌レコード中に現れた範囲内で取り上げている。
●2章 目的,範囲,および方法論
<<目的>>
・書誌レコードにおいて,必要とする利用者ニーズに適応して,記録されるデータを関連づけるための,明確に定義された構造的な枠組みを提供する。
・全国書誌作成機関によって作成されるレコードに対し,機能性の基本的なレベルを勧告する。
<<範囲>>
・この研究は,資料の多様性に関しては広範囲に扱おうとし,対象データはテキスト,音楽,地図,視聴覚,グラフィック,および3次元資料に関連する。このデータは書誌レコードにおいて記述される物理的媒体すべてや形態のすべてやすべての記録された情報のモードをカバーする。
・利用者の一般的行為に対する機能的要件は(1)find, (2)identify, (3)select, (4)obtain である。
(討論)
・捉え方として,目録機能はコレクション機能とインデックス機能がある。書誌情報はコレクション機能のみであることに注意。
<<方法論>>
・方法論は関係データベースシステムのための概念モデルである実体分析手法(E-R:Entity-Relationshipモデル)に基づく。
・この研究は書誌データベース設計のための基礎として,直接役立つようには意図されていない。
・最初の分析は個々のデータではなく,データを記述する「事物」に焦点を合わせること。
・次に,各実体の重要な特性(characteristics)や属性(attributtes)を定義すること。
・そして,本手法の特徴である実体(事物)と属性間の関連を定義する。
・実体-関連構造と,属性および関連の利用者タスクへのマッピングは,全国書誌作成機関によって作られる基礎レベルのレコードの機能性に対して,研究グループによる勧告の基礎として使用される。
(討論)
・現在はE-Rモデルよりもデータベースの世界ではオブジェクト指向データベースがよく利用されている。
・インスタンス(instance)がよくわからない。
<<この研究の構成>>
・書誌的情報の利用者ニーズに役立つことを意図するレコードに対するこの研究のデータ要件の評価および,全国書誌レコードにおいて含まれる基本的なデータに対する研究グループの勧告に対して枠組みを与える。
・他に実体関連モデルを試み,次に基礎レベルの全国書誌レコードに対する当研究グループの勧告を提供する。