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整理技術研究グループ勉強会記録(2001年度)

「メディアの分析的研究」第13回


日時:
2001年11月30日(金) 19:30〜20:30
会場:
日本図書館研究会事務所
発表者 :
吉田暁史氏(帝塚山学院大学)
テキスト:
RAMAT FATTAHI's Ph D Thesis: The Relevance of cataloguing Principles to the Online Environment: An Historical and Analytical Study (1997)
(上記,ファタヒの学位論文の内,序文,4章,7章)
出席者:
吉田(帝塚山学院大)、蔭山(帝塚山大学図書館)、尾松(奈良県立図書館)、河手(大阪樟蔭女子大学図書館)、堀池(京都大学大型計算機センター)

==>FATTAHI論文はSuperworkとSuper-recordの主張に特徴がある。
==>FRBRよりは現実目録および目録規則により密着している。
==>オンライン環境下における目録の考察がもう一つの大きなポイントとなっているが、ここで分析・主張されている内容に特に見るべきものはないように思える。なぜ1997年時点で、ことさらオンライン環境という自明のことを問題にするのか。
●第1章.序文
(1)研究の目的
1.オンライン目録とマニュアル目録の基本的な相違を明らかにし、書誌レコードの生成と目録の構築のための原理に影響を及ぼすオンライン目録の特質と能力を解明する。
2.目録の概念と原理におよぼすオンライン環境のインパクトを研究、分析し、オンライン環境のもとでの書誌レコードの生成、取扱いと構成のための目録規則の設計に影響する要因を研究する。
3.図書流通業、書誌データベース、A&Iサービスといった、オンライン環境における他の書誌的機構の、目録原則におよぼす影響を研究し、そのような業界が単一の原理を持つかどうかを検討する。
●第4章.書誌的宇宙の概念的分析:実体、属性、関係およびオンライン環境におけるそれらの管理
(1)若干の定義
==> ・FRBRと異なり,実体を単に実体ではなく,書誌的実体(Bibliographic Entityとしている。
書誌的実体(Bibliographic entity)
 知的あるいは芸術的な所産からなる著作のようなもののほか、個人、団体、および主題。
書誌的宇宙(Bibliographic universe)
書誌的実体とそれらの関係性の全体。
属性(Attribute)
書誌的関係(Bibliographic relationship)
(2)E−Rモデル
(3)書誌的実体
==>・書誌的「実体」の定義はFRBRの4種類から,さらに2種類多くなっている。
 多くなった項目はCopy(コピー)とReproduction(複製物)である。
==>・記述対象をItemと見ている。
 目の前の物としてのBook(item)を記述対象と認識しているようだ。これはお粗末。
==>・コピーとはなにか? 分かりにくい。Itemのさらに個物をコピーとしている。
 何のことか不明。
 書誌的実体として、著作、表現形、実現形、アイテム、コピー(copy)、複製物(reproduction)、個人、団体を含む。
・Work
 普遍的に受け入れられる定義はない。
・Expression
 ほぼFRBRの定義(1996のdraft)どおりか。著作のedition、adaptations、ジャンルの変更、ドラマ化、小説化、翻訳等を含む。
・Manifestation
 ほぼFRBRの定義どおりか。物的な相違を表すので、versionをキャリアの変更とみなした上で、versionに関係するとする。
・Item
 やはりFRBRの定義どおり。
・コピー
 完全な個々の1点ずつの物理的存在としているふう。ではItemとは何か。学情(NII)でいうところの出版物理単位をItemとしているのか?
Reproduction
 個人、団体、の定義が続く。
Superwork
 単独では実体とはならない。著作の集合体(totality of a work)。Svenoniusは「オリジナルな著作のすべての実現形、およびそこから派生したすべての実現形の集合」と定義。Superworkはまた、レビュー、批評、索引、書誌といった同じ著作に基づくすべての新しい著作を包含する。この文脈では、多くの書誌(例えば作家や哲学者など)は、一つの著作のすべての表現形と実現形および他の関連著作を一緒に引き連れるSuperwork的なアプローチを行っている。
【注】著作自体の定義があいまいであるが、谷崎源氏や瀬戸内源氏は、源氏物語と同じ著作とは言わないだろうし、鴎外の即興詩人もアンデルセンの原作とは同じ著作とは言わないだろう。しかし、Superworkといえば、それらすべてを含むようなものとなる、ということか。文献3によれば、ポランスキーのマクベス(映画)や、オーソン・ウェルズのマクベス(映画)は、もともとShakespeareのマクベスというSuperworkから派生した2つの異なる著作である、としている。
==> ・Superworkという定義はオニール(O'Neill)が最初に提案,スーベニアス(Svenonius)らが使用したようだ。
(4)書誌的実体の属性
・オンライン環境下における書誌的実体の属性
 オンライン環境下では、マニュアル目録とはちがって、新しい属性が検索上有効となる。「アイテムの言語、読者対象、ジャンル、物理的フォーマット、地域コード、標準番号」
(5)書誌的関係
・内部的な関係
 実体の中での、属性同士の関係。例えば、「creatorと著作との関係」。
・外部的な関係
 実体同士の関係。GoossensとMazur-Rzesosは、外部的な関係を3つのカテゴリーに分けた。(1)階層的関係、(2)時代的な関係、(3)水平的な関係。Haglerは実体間の関係を5つに分けた。(1)同じ著作の諸版、(2)続編、続きもの、(3)物的および書誌的に分離してはいるが、一緒に用いるように意図されたアイテム、(4)一つの出版物に含まれているが、重要で分離して識別可能な2以上の著作、(5)同じシリーズに属するアイテム。Tillettは最も包括的に分類した。equivalence, derivative, descriptive, whole-part, accompaning, seauiential, sharedの7つ。ティレットの分類にFRBR Draftは、work relationshipsを付け加えた。FRBRの報告はTillettをもとにして、(1)work-to-work, (2)expression-to-expression, (3)expression-to-item, maaifestation-to-manifestaion, (5)manifestation-to-item, (6)item-to-itemの関係を作った。
(6)オンライン環境下における書誌的関係
 オンライン環境下では、書誌的な関係の指示が容易になり、この関係の把握と表示が重要となってきた。分担目録による統合データベースという条件の下では、膨大な書誌レコードが存在し、一つの著作の種々の現れを把握することが重要となった。例えばシリーズを全体として記述するか、その内の1点ずつを記述するかという問題もある。
 カード目録では、標目データが他のレコードと結びつけるのに用いられた。今日のシステムでは、リンキングフィールドを用いることはまれで、その代わり検索者がさらなる検索のための基礎として、関連アイテムに関する情報を用いることが期待される。しかし、より直接的なリンクのフォーマットはサポートされていない。現在の目録規則は、書誌的な関連に関するまとまった規則を用意していない。またオンライン目録における効果的なリンク手法に関しても定めていない。
 例えば、全体−部分関係を表現する手法は、オンライン目録における不可欠な問題である。
●第7章.オンライン環境下のための目録原則の発展に関する近年および将来の議論
1.記述の基礎
2.スーパーレコード
・特定の著者による異なった著作のコレクションをより完全に検索する、特定著作の種々の版と実現形の検索、そしてより意味のある配列で表示する。
 実例が掲載されている。スーパーレコードは、スーパーワークを表現するための現実的な一つの手法と位置づけているようだ。