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整理技術研究グループ勉強会記録(2003年度)

「最近における目録規則改訂動向」第13回


日時:
2003年11月28日(金) 19:00〜
会場:
日本図書館研究会事務所
発表者 :
安威和世氏(梅花女子大学図書館)
テキスト:
「電子資料と目録規則−NCR第9章を対象に−」 『図書館界』53(2) (2001.7)
出席者:
安威(梅花女子大学図書館)、渡邊(神戸大学附属図書館)、吉田(帝塚山大学)、河手(大阪樟蔭女子大学図書館)

0. はじめに
・2000年8月『日本目録規則1987年版改訂版 第9章「電子資料」』が刊行
 (旧第9章コンピュータファイルの改訂版)
  =目的:次々に現れる新しい媒体、新しい情報環境への即時対応
・1999.11「電子資料の組織化:日本目録規則(NCR)1987年版第9章改訂とメタデータ」検討会で言及
・永田治樹氏の論文「目録規則の今後―第25期以降の目録委員会活動について―」での示唆「自体の対応しきれていない点が目立っており、NCR87Rの枠内にあっても、急ぎ手直しが必要とされていた」
 「目録規則の根本的な改訂への準備」の必要性
 9章の改訂は単に電子資料にとどまらない広範囲な問題を含む
・当論文では、第9章を軸に、図書館のとりまく環境の変化、とりわけ出んしか、ネットワーク化が現在の目録規則に与える影響と今後の方構成について考察する。

1. 図書館の環境の変化
 3つの観点から分析
1.1. 出版・流通環境の変化
・資料の多様化、デジタル化
・量的増加、返品率の漸増傾向
・流通経路の多様化・・・オンデマンド出版、電子ジャーナルの出現など
1.2. 研究環境の変化
・学問領域の専門分化と細分化
・学問領域の学際化、融合化、国際化の傾向
・"Publish or perish"の傾向→研究成果の量的増加
・STM(科学、技術、薬学)領域におけるスピード競争の激化←経済的リターンに直結
・上記の現象による研究成果の発表スタイルや出版サイドの対応の変化
 1誌当たりの購読者数の減少・出版の寡占化→価格の高騰→コピーの増大→顧客の減少
1.3. 直接的図書館環境の変化
・社会装置としての図書館の公共性が問われる
・組織化作業・・・MARC導入による作業の自動化→総合目録の形成
・検索技術・・・OPAC、横断検索→OPACインタフェースの統一、検索プロトコルの確立が課題
 →従来以上に迅速に利用者の求める情報を確実に提供していくことが求められている。

2. NCR第9章「電子資料」の課題
2.1. NCR第9章改訂の概要
 改訂点(『図書館雑誌』1999年11月号)
 「ローカルアクセスとリモートアクセス」「内部情報源の優先」「版表示の記録と範囲」
「章名の変更」「ファイルの特性」「特定資料種別」「注記」
★これまで「版」は多様なものを含んでいた。
2.2. NCR第9章「電子資料」の規定の課題
2.2.1. 逐次刊行性(逐次刊行物、特に電子ジャーナルに関する規定)
★「リモートアクセス」資料が対象
背景:電子資料として扱われる資料の大半が、現在のところ、逐次刊行性を有している状況。
 利用者の要求:情報の速報性→即時更新=ネットワーク上のホームページ
 逐次刊行性を有し、かつ電子形態である資料への目録規則の対応方法は次の2つ
・第9章では図書資料としての「電子資料」を扱い、逐次刊行性を有する電子資料は第13章との組み合わせによって対処するという方法。
・第9章単独で電子資料の図書資料、逐次刊行資料両方におおむね対応できるようにするという方法。
今回の改訂では後者の方法がとられている。
主因:電子資料に関して図書、逐次刊行物という区分が十分に機能しない点
例)随時頻繁に更新されるタイプのホームページ
 AACR2
 1997.10 国際会議で、ヒロンズ(Jean Hirons)とグラハム(Crystal Graham)が、図書資料(monograph)と逐次刊行物(serial)を再構成し、次の3つの世界に区分する方法を発表。
・確定資料(finite resources):単行書のように資料全体が出版される資料
・継続資料(continuing resources):雑誌のように継続して出版される資料
・統合資料(integrating resources):一度出版された資料の一部に後から随時修正が加えられたり、一部が削除されたりすることがある資料
 1999.4 ヒロンズは、上記をAACR改訂のための合同検討委員会への報告としてまとめ、その後何度かの修正作業を経て現在最終段階。
 2000.2.28 最終改訂案がまとまる。
 2001.4 最終決定が下される予定。
ISBD
 ISBD(S)をISBD(CR)として改訂作業中。
NCR
 「次の改訂対象は第13章」、「資料3区分への対応」
 →現在の2分法の世界から3区分の世界に円滑に移行することは、第13章のみにとどまらない問題を内包。
 第13章の中に統合資料と継続資料の規定を両方盛り込むのが、もっとも単純な改訂。
 問題点:統合資料=常に最新状態で前の状態を上書き。
 継続資料=あくまでもお互いに重なりのない部分部分がの単純累積の総和が全体。
 この2つが同じ第13章の枠内で扱われると、「第13章の逐次刊行物は、書誌記述を初号主義によって作成してきたが、上書き更新タイプのものはどの時点を初号とするのか判断できない」という問題が生じる。
 →NACSIS-CATでは、逐次刊行性を有する電子資料の書誌記述において最新号を情報源にすることが暫定的に規定に盛りこまれている。
2.2.2. 目録規則における資料種別の問題(電子資料が動画、静止画、音声など様々な資料が組み合わせられ、同時に利用される点)
 目録規則のどの章によって記述すべきか?
 現在の資料種別を主体とした目録規則の章構成は、
・刊行形態、表現形式、表現と媒体が一体化した形態等、異なる区分軸が混在しており、デジタル形式のもとに様々な表現形式のものが一元的に収録されている場合など、複雑な章適用には適していない。
・ネットワーク上では、資料種別自体が意味をなさなくなる可能性もある。

 章構成自体を見直す動き
・AACR2・・・Tom Delseyは目録規則全体としての理論的整合性保持を目指してAACR2改訂の基礎となる論理モデルをJSCに提出。
・NCR・・・各章で相互に矛盾する点、条項がずれている部分の調整を早急に実施しておかなければ、章の再構成も難しい。
2.2.3. 版(別書誌を作成する判断基準)
第9章の改訂及びISBDの改訂の際にも最も対応がゆれた部分。
・従来の電子資料以外の資料において、「版が異なる」とは電子資料の内容の追加または削除を表す特定の名称の違いを指し、その他のものとして外装の違い、主たる利用者の違い、を示す名称が含められている程度。
・電子資料では、利用条件の違いが「版の違い」として採用。
 理由:「外装」や「利用対象」の情報が、利用者にとって自分が利用したい資料であるかどうかを判断する重要な情報であると判断されたため。
・目録規則における版の概念
・「同一著者の異版の識別」機能=知的・芸術的内容の変更、改変の第一義
・同一の知的・芸術的内容の異なる表われとしての所蔵資料のファインディング・リスト機能が付加
 ↓
 この異なる2つの機能が、版という1つのエリア内に押し込められ、従来例外的であった第2の機能がデジタル資料[電子資料]においては種類もケースも増大していることが問題をより複雑化している。
 こうした識別要素の一部は、一般誌料表示(GMD)、特殊資料種別(SMD)にも分担されている。
・随時更新型のリモートアクセス資料については「版」の概念を適用せず、最終アクセス日時を注記
 →現在自分がアクセスしているページと、目録に記録されてものとが同じものであるか否かを判断することは困難。一方、ホームページの修正プロセスを逐一追いかけることは非現実的
・ルーズリーフ式の資料とインターネット上のホームページの相違
 ルーズリーフ式の資料・・・常に最新状態が参照できると同時に各改訂段階での静的な情報も図書の形で改訂版として、比較的安定的に残されてきた。更新頻度も低い。
 インターネット上のホームページ・・・簡単に修正することが可能。一定段階で静的に残すという制度的仕組みが確立されていない。
・目録規則は、図書館に限定せず、あらゆる資料の目録を作成できることを目指す。
 しかし、図書館は、アクセスを含む所蔵資料の目録を作成し、最終的には利用者に資料を届ける方策を確保しなければならない。
 →図書館は様々な問題に直面。→図書館がどのような資料を保存し、後々の利用を保証していくのかという大きな課題と結びつく。

3. おわりに
メタデータ・・・ネットワーク上の情報識別するための試みとして、目録規則の範疇をこえた世界からの提案。
メタデータと目録の関係
目録
・目録もメタデータのひとつ、という言及。
・目録には、タイトル、著者、等々の記録順序だけではなく、意味論の部分をマニュアルとして持つ。さらにそれらマニュアルの背後には、共通言語世界に基づいた標準目録規則(AACR,NCR)が存在し、さらにそれらの大元としてのISBDおよびパリ原則が維持されてきたという経緯がある。
 多種多様な資料を扱ってきた図書館の多くの実績、経験に基づいて、徐々に築かれたものである。
 →資料種別に関する知識は、ネットワーク上の情報源にも十分通じるもの。
メタデータ
・主題別に多種提案されているが、現時点では共通のマニュアルのようなものは存在しない。
・情報の生産者サイドで機械的に付与することが前提。奥付に近いもの。
 →情報の生産者に余分の仕事を新たに負担させるためには、何らかの誘引が必要。
 ウェッブの世界にメタデータのインセンティブが生産者側に働く余地はある。
 例1)それがなければブラウザでうまく表示できないというような事態が生じる場合
 例2)生産者側の経済的利益と直接結びつく場合
 →しかし、利用者(検索者)の便宜を考慮しつつ、マニュアルを参照して正確に入力されるかどうかは別問題。
 メタデータが機械的な変換・生成を目的としているのに対して、図書館の目録は本来、選書というプロセスと典拠コントロールを通じて、単なるデータを作成する以上のものを目指している。
  →図書館におけるネットワーク情報源の目録策瀬への取り組みは今後も緊急かつ重要な問題のひとつ。