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整理技術研究グループ勉強会記録(2004年度)

「目録規則再構築の動向」第2回


日時:
2004年2月27日(金) 19:00〜
会場:
日本図書館研究会事務所
発表者 :
渡邊隆弘氏(神戸大学附属図書館)
テキスト:
Statement of international cataloguing principles : draft
 http://www.ddb.de/news/pdf/statement_draft.pdf
 http://www.ddb.de/news/ifla_conf_papers.htm
出席者:
田窪(近畿大学)、吉田(帝塚山大学)、蔭山(帝塚山大学図書館)、進藤(京都大学附属図書館)、渡邊(神戸大学附属図書館)、河手(大阪樟蔭女子大学図書館)

イントロダクション
 一般に「パリ原則」として知られる原則の声明は、1961年の目録原則国際会議で承認された。目録の国際的な標準化の基礎として資するという、この原則の目標は、確実に達成された。以降世界中で開発された目録規則の大部分は、パリ原則を厳密に、あるいは少なくとも高い程度で遵守している。
 40年以上が経ち、国際的な目録原則の共通セットを持つことは、カタロガー及びその顧客(世界中でOPACを使う人々)にとってより求められることにすらなってきた。21世紀を迎えた今日、パリ原則を、オンライン目録やその先のものにも適用可能になる諸目的に対応させる努力が、IFLAによってなされてきた。これらの目的のうち第一のものは、目録利用者の便宜に資するということである。
 これらの新原則は、文字作品(textual works)のみからすべての資料へと、また記入の選択と形式のみから目録で用いられる書誌・典拠レコードのすべての側面へと、パリ原則を代替・拡張するものである。
★『パリ原則』の以下の部分と対になる。
 「図書の目録における標目と記入語―つまり、記入の配列順序を決定する主たる要素―の選択と形式だけに適用される。」

このドラフトが扱っている原則は、以下の範囲に及ぶ:
1. 適用範囲
2. 実体、属性、関係 ★←FRBRが下敷きとなっている
3. 目録の機能
4. 書誌記述
5. アクセスポイント
6. 典拠レコード
7. 検索能力の基礎

 これらの新原則は、[カッター、ランガナータン、ルベツキーら]世界の偉大な目録の伝統と、一方でIFLAによる「書誌レコードの機能的要件(FRBR)」と「典拠レコードの機能的要件と典拠番号(FRANAR)」(パリ原則を主題目録の領域に拡張した)の両文章の上に建っている。
 これらの原則が、書誌・典拠データの国際的共有を増大させるとともに、目録規則作成者たちが国際目録規則を開発する努力を行う際の指針となることが望まれる。

国際目録法原則に関する声明
最終草案(2003.12.19)
1. 適用範囲
 ここに掲げる原則は、目録規則の開発の際に指針となることを意図している。書誌・典拠レコード及び現行の図書館目録に適用する。また諸原則は、図書館、文書館、博物館及び他のコミュニティによって作られる書誌やデータファイルにも適用される。
★「書誌」…パリ原則にある「目録以外のアルファベット順の図書リスト」にも対応しているのではないか。
★「データファイル」…何を指すのか?
 すべての種類の書誌的資源の記述目録作業と主題目録作業に対して、一貫したアプローチを与えることを目指す。
★「記述目録作業」…パリ原則ではこちらだけ
★「主題目録作業」…今回の拡張
 目録の構築における最高次の原則は、目録利用者の便宜でなくてはならない。

2. 実体、属性、関係
2.1. 書誌レコードにおける実体(Entities)
 書誌レコードの作成にあたって、知的芸術的努力の所産をカバーする、次の実体が考えられる。
 著作(Work)
 表現形(Expression)
 実現形(Manifestation)
 個別資料(Item)
2.1.1. 書誌レコードは典型的には実現形を反映すべきである。これらの実現形が具体化するものは、著作の集合かもしれないし、独立した著作かもしれないし、ある著作の構成要素かもしれない。
 実現形は一つもしくは複数の物理ユニットとして現れるかもしれない。
 一般に、個々の書誌レコードは、各物理フォーマット(実現形)ごとに作られるべきである。
 ★現行の目録規則通り

2.2. 典拠レコードにおける実体
 典拠レコードは、名前(少なくとも個人名、家族名、団体名および主題)の統制形を記録すべきである。著作の主題となる実態には次のようなものがある。
 著作(Work)
 表現形(Expression)
 実現形(Manifestation)
 個別資料(Item)
 個人(Person)
 家族(Family)
 団体(Corporate body)
 概念(Concept)
 オブジェクト(Object)
 イベント(Event) ★←事物
 場所(Place)

2.3. 属性(Attributes)
 各実体を同定する諸属性が、書誌・典拠レコードのデータ要素として用いられるべきである。

2.4. 関係(Relationships)
 実体間の書誌的に重要な諸関係は、目録を通じて同定されるべきである。

3. 目録の機能
 目録の機能は、利用者に次のことを可能にすることである。
3.1. 資源の属性を関係を用いた検索の結果として、コレクション(実際の、あるいは仮想的な)書誌的資源を「発見(find)」すること
 ★「書誌的資源」=資料そのもの
3.1.1. 一つの資料を「捜し出す(locate)」こと
3.1.2. 以下の諸資源の集合を「捜し出す」こと
 同一著作に属するすべての資源
 同一表現形に属するすべての資源
 同一実現形に属するすべての資源
 ある個人、家族もしくは団体によるすべての著作および表現形
 ある主題に関するすべての資源
 その他の基準(言語、出版国、出版日付、物理フォーマットなどのような)に合致するすべての資料(ふつうは検索結果の二次的絞込みに用いられる)
 経済的制約により、いくつかの図書館目録では著作の構成要素や著作中の個々の著作に対応した書誌レコードが欠落するだろうことが認識される。
3.2. 書誌的資源もしくはagentを「同定(identify)」すること
 (すなわち、レコードに記述された実体と求める実体とが対応していることを確認し、もしくは類似の特徴を持つ複数の実体を識別すること)
3.3. 利用者のニーズに適合する書誌的資源を「選択(select)」すること
 (すなわち、内容や物理フォーマットなどに関して利用者の必要に合致する資源を選び、もしくはニーズに適合しないような資料を排除すること)
 ★ここでのresourceはなぜ単数形なのか?
3.4. 記述に対応する個別資料へのアクセスを「獲得(acquire or obtain)」すること
 (すなわち、利用者が購入・貸出等により個別資料を獲得するか、もしくはリモート資源へのオンライン接続を通じて電子的に個別資料にアクセスすることを可能にするだけの情報を提供すること)
もしくは典拠レコードや書誌レコードを獲得すること
3.5. 目録を「ナビゲート(navigate)」すること
 (すなわち、書誌情報の論理的配列と明快な移動方法の提示(著作・表現形・実現形・個別資料間の関係の提示を含む)を通して

4. 書誌記述
4.1. 書誌レコードの記述部分は、国際的に同意された基準に準拠すべきである。
4.2. 記述は、目録もしくは書誌ファイルの目的に応じて、いくつかの完全性のレベルを持つかもしれない。

5. アクセスポイント
5.1. 一般論
 書誌・典拠レコードを検索するためのアクセスポイントは、一般原則に従って公式化されるべきである。アクセスポイントは、統制されていることも、そうでないこともある。
 非統制のアクセスポイントは、本タイトルのように実現形に表示されてもの、もしくは書誌レコード中のどこかに現れ(または追加された)キーワードを含むかもしれない。
 統制されたアクセスポイントは資源集合を捜し出すのに必要な一貫性を与えるものであり、標準に則って正規化されていなければならない。これらの正規化された形(「典拠標目」とも呼ばれる)は、参照として用いられる異形群とともに典拠レコードに記録されていなければならない。
5.1.1 アクセスポイントの選択
5.1.1.1 書誌レコードにはアクセスポイントとして、著作・表現形のタイトル(統制)と実現形のタイトル(ふつうは非統制)、及び著作の作成者名の統制された形を含むようにせよ。
 団体名を作成者とするのは、本質的・必然的に該当団体の集団的な思想・活動の表現が必然的になされている場合(たとえ、団体の役員・従業員の資格で個人が署名していても)、もしくはタイトルの言葉づかいが著作の性質を表す語と結びついて団体が著作の内容に集団的に責任を負うことを明示している場合、に限定される。
 記述された書誌的資源の発見・同定・選択に重要だと考えられる場合には、他の個人名・家族名・団体名・主題の統制された形を、書誌レコードにアクセスポイントとして与えよ。
5.1.1.2. 典拠レコードにはアクセスポイントとして、実体に関する名前の典拠形と、その異形群を与えよ。追加的なアクセスが、関連した名称を通じてなされるかもしれない。

5.1.2. 典拠標目
 実弟に対する典拠標目は、実体を一貫した方法で同定できる名前であるべきである(実現形に顕著に表示される名前か、目録利用者に自然に受け入れられる名前(たとえば通称))
 同一の名前を持つ実体を識別する場合には、さらなる同定特性が与えられるべきである。

5.1.3. 言語
 名前が複数の言語で表現される場合には、オリジナルの言語・文字による表現形に対応する実現形に表示された情報に準拠して標目を与えることが優先されるべきである。ただし、オリジナルの言語・文字が目録上で通常用いられないものであるときには、目録利用者になじみのある言語・文字による実現形や参照資料に示された形に準拠することもありうる。
 [目録への]アクセスは、典拠標目もしくは参照を通じて、可能な限りオリジナルの言語・文字で用意されるべきである。翻字が必要な場合は、国際的な変換標準に従うべきである。

5.2. 個人名の形式
5.2.1. 個人名が複数の単語からなる場合、導入語の選択はその人が市民権を得ている国の習慣にしたがって決定されるべきである。
5.2.2. 市民権を得ている国が確定していない場合は、その人が主に居住している国での言い習わしによって決定されるべきである。
5.2.3. 居住国も決定できない場合は、その人が主に用いている言語(実現形や一般的な情報源に見られるようなもの)の言い習わしに従うべきである。

5.3. 家族名の形式
5.3.1. 家族名が複数の単語からなる場合、導入語の選択はその家族が主に関係しいる国の習慣によって決定されるべきである。
5.3.2. 主に関係している国が決定できない場合には、その家族が主に言い習わしに用いている言語(実現形や一般的な情報源に見られるようなもの)の言い言い習わしに従うべきである。

5.4. 団体名の形式
5.4.1. 法域(行政名)については、典拠標目は、目録利用者のニーズに対応した言語・文字で、当該領域名称として現在使われている形をとるべきである。
5.4.2. 団体が、引き続いた期間に(軽微なバリエーションとは見なし得ない)異なった名前を用いた場合には、重要な名前変更ごとに新しい実体と見なされるべきであり、各実体に対応する典拠レコードが「をも見よ(新旧)参照」でリンクされるべきである。

5.5. 統一タイトルの形式
 統一タイトルは、タイトルのみで独立的な場合もあるし、名前/タイトルの結合による場合、もしくは追加的な識別要素(団体名、場所、言語、日付など)によって限定される場合もある。
5.5.1. 統一タイトルは、オリジナルのタイトルもしくは実現形で最も頻繁に現れるタイトルであるべきである。ある種の限定された環境下では、目録で使われる言語・文字で一般的なタイトルが、典拠標目としてオリジナルタイトルよりも優先されることもある。

6. 典拠レコード
6.1. 典拠レコードは、各種の実体(個人、家族、団体、著作、表現形、実現形、個別資料、概念、オブジェクト、イベント、場所)に対する典拠標目と、アクセスポイントとして用いられる参照を統制するために構築されるべきである。
6.2. 個人、家族もしくは団体が複数の名前(もしくは複数の名前の形)を用いている場合には、一つの名前もしくは形を、各独立人格に対する典拠標目として選択すべきである。一つの著作に複数の異なるタイトルがある場合には、一つのタイトルが統一タイトルとして選択されるべきである。

7. 検索能力に基礎(Foundations for Search Capabilities)
7.1. 探索(Search)と検索(Retrieval)
 アクセスポイントは、(1)書誌・典拠レコードと関係する書誌的資源への信頼性のある検索を与え、(2)探索結果を限定する書誌レコードの要素群のことである。

7.1.1. 探索デバイス
 名前、タイトル及び主題は、図書館目録や書誌ファイル中で利用できるいかなるデバイスによっても、探索・検索可能でなくてはならない(例えば、名前の完全形、キーワード、フレーズ、トランケーション等によって)。
7.1.2 不可欠なアクセスポイントは、書誌・典拠レコード中の各実体の主要な属性と関係に基づいたアクセスポイント群である。
7.1.2.1. 書誌レコードのための不可欠なアクセスポイントとは:
 作成者名、または最初の作成者名(複数あるとき)
 実現形における本タイトルもしくは補完されたタイトル
 出版もしくは発行の年
 著作や表現形における統一タイトル
 件名標目、主題語
 分類番号
 記述される実体の標準番号、識別子、キータイトル
7.1.2.2. 典拠レコードのための不可欠なアクセスポイントとは:
 実体の、オーソライズざれた名前もしくはタイトル
 実体の、名前もしくはタイトルの異形
7.1.3. 追加されるアクセスポイント
 書誌記述や典拠レコードのその他のエリアの諸属性が、オプショナルなアクセスポイントとして、あるいはヒット数が多すぎた場合のフィルタリング(もしくは限定)デバイスとして、提供されることもある。
 書誌レコード中に以下のような属性が含まれる(ただし、これに限定されない)
  二番目以降の作成者の名前
  実演社もしくは作成者以外の役割を果たす個人・家族・団体の名前
  並列タイトル、見出しタイトルなど
  シリーズの統一タイトル
  書誌レコード識別子
  言語
  出版国
  物理媒体
 典拠レコードに以下のような属性が含まれる(ただし、これに限定されない)
  関連する実体の名前もしくはタイトル
  典拠レコード識別子

付録:目録規則構築の目的
 目録規則の構築に向けていくつかの目的がある。最高次のものは利用者の便宜である。
・利用者の便宜(Convenience of the user of the catalogue)
 記述や、アクセスのための名前の統制形をつくるにあたっての決定は、利用者を心に描いてなされなければならない。
・共通の語法(Common usage)
 記述やアクセスで用いられる正規化された語彙は、利用者の多数派の語彙に対応しているべきである。
・代表性(Representation)
 記述やアクセスのための名前の統制形における実体は、記述される実体それ自体を基盤としているべきである。
・正確性(Accuracy)
 記述される実体は、信頼性を保って描かれるべきである。
・十分性と必要性(Sufficiency and necessity)
 記述やアクセスのための名前の統制形においては、ユーザタスクを満たすのに必要でかつ実体をユニークに同定するのに必要な諸要素だけが含まれているべきである。
・意味性(Significance)
 要素は書誌的に意味のあるものでなくてはならない。
・経済性(Economy)
 目録達成に複数の方法があるとき、経済性に最もすぐれた方法(つまり最も低コストもしくは最も単純なアプローチ)が優先されるべきである。
・標準化(Standardization)
 記述やアクセスポイントの構築は、可能な限りの程度・レベルで標準化されているべきである。このことは、一貫性を実現する一方、書誌・典拠レコードの共有可能性を増大させる。
・統合化(Integration)
 すべての種類の資料の記述と実体の名前の統制形は、可能な限り共通のルールセットに基づくべきである。

 目録規則におけるルールは、「妥当にして恣意的でない」ものであるべきである。
 時にはこれらの目標は相矛盾する場合があることがわかる。妥当で実際的な解決がなされるであろう。
 [主題シソーラスに関しては、この声明で述べられていない目標が他にもある]