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整理技術研究グループ勉強会記録(2004年度)

「目録規則再構築の動向」第6回


日時:
2004年5月19日(木) 19:00〜
会場:
日本図書館研究会事務所
発表者 :
進藤達郎氏(京都大学附属図書館)
テキスト:
橋詰秋子.「米国にみる「新しい図書館目録」とその可能性:ベイツレポートを中心に」『現代の図書館』Vol.41 No.4, p.222-230 (2003)
出席者:
吉田(帝塚山学院大学)、蔭山(帝塚山大学図書館)、川崎(仏教大学)、進藤(京都大学附属図書館)、森岡(帝塚山大学図書館)、渡邊(神戸大学附属図書館)、河手(大坂樟蔭女子大学図書館)

1. 新しい目録への試み
 「利用者志向」と「電子情報資源」という2つの方向性
・書誌レコードの機能要件(FRBR)
 電子資料の出現によって再検討を迫られた目録の諸機能を、利用者の観点から、実体関連分析を用いて明確に定 義された用語によりモデル化したもの
・FRBRによるMARC向上の試み
 LCによる、MARC21の書誌フォーマットをFRBRモデルとマッピングさせ、FRBRの利用者行動累計と合致させるかたちでMARCデータの機能分析を行う試み
・LC/BEATの試み
 LCの書誌レコードを、出版社から送られてくる内容情報やオンライン学術情報システムの書評とリンクさせる試み
・RLGの新総合目録RedLightGreen
 サーチエンジンに似た検索インターフェースと結果表示、GoogleやAmazonのデータと連繋、検索結果の参照文献形式への変換、自然語に関連する統制語も検索語として提示
・電子情報資源に関するLCのアクションプラン
(1)Web情報資源のために標準化された書誌レコードの利用を進める。
(2)多様なシステムにわたってWeb情報資源レコードのアクセスと表示を強化する。
(3)Web情報資源の書誌コントロールの向上を目指して、メタデータ標準化団体と協働する。
(4)Web情報資源の書誌コントロールの向上を目指して、メタデータの抽出・作成・収集・維持を自動的に行うツールを作成する。
(5)Web情報資源の書誌コントロールの向上を目指して、適切な研修を提供する。
(6)Web情報資源の書誌コントロールの向上を目指して、メタデータの標準化にかかる研究開発を支援し相互運用の試みを進める。

2. ベイツレポートの概要
2.1 ベイツレポートとは
 LCアクションプラン中の行動課題の一つ(メタデータレコードを向上させる方法を、主題情報検索やアクセスメカニズム
(e.g. 要約表現を含む内容情報の提供や階層や版次情報を用いた画面進行)に焦点を当てて研究する)を受けたもの。

2.2 情報探索行動研究とその成果
・情報探索行動の傾向
 情報の質に関係なく、手に入れにくい情報より手に入れやすい情報が好まれる。
 最も好まれる探索方法はブラウジング。
 情報探索の計画や戦略は意識されない。
 信頼あるいは尊敬する人物の薦めにしたがうことが多い。
・OPACと主題検索
 OPACは好まれる探索方法であるが主題検索に関して問題が多い。
 主題検索の代替としてキーワード検索が用いられるようになってきている。
 検索式はあまり使われない。
  ★ヒット数が少ないのは検索語が1つか2つだからなのか?
  ★ヒット数が少ないのは件名標目の展開をしていないから?
・目録の将来
 利用者は図書館目録に対して単なる蔵書リスト以上のものを求めている。
 検索システムのパラダイムを検索式中心からブラウジング中心へと転換させるべきである。
  ★ピンポイントな検索からの脱却が必要。
  ★事前結合検索から事後結合検索へ

2.3 図書館目録への提言
(1)利用者アクセス語彙(User access vacabulary)の構築
 目録作成者ではなく利用者がアクセスの際に用いる語彙(「利用者アクセス語彙」という)を集めたデータベースを構築しそれを通して利用者に検索システムへアクセスさせる。
・スペルミス、ゼロヒット語、辞書・辞典中の語のような"雑多な"語をアクセス語彙に含める。
 ★クラスターのつくり方が明確ではない。←TF/IDFのような方式を用いることがある。
・個々の書誌レコードと結びつける必要がないように、アクセス語彙はデータベースレベルで検索システムとリンクさせる。
・複数の図書館や情報サービス機関が同一のアクセス語彙を利用しその維持管理を共同で行う。
(2)書誌ファミリーによるリンク
 関連する書誌レコード同士のリンク構造を図書館目録に実装し、リンクをたどってのブラウジングを可能にする。
・書誌ファミリーとはある一つの共通の祖から派生した関連する書誌的な著作(bibliographic works)の集まりである。
・書誌ファミリーの記述にFRBRの枠組みを用いて階層的なモデルを構築することにより、著作間・表現形間・実現形間・個別資料間にある兄弟関係(Sibiling relationship)といった、書誌レコードの間に存在する関係性の種別を明確にできる。
 ★FRBRが有用であるのは表現形を定義したことにある。…切り分けがしやすくなった。
・書誌ファミリーの規模はブラッドフォードの法則に従う。大規模なファミリーは少数しか存在しないのに対し、小規模なファミリーほど多数存在する。
(3)情報アクセスの階段化
 図書レコードに今まで以上の内容情報が要求されているが、利用者に示す内容情報には適量があるため、情報アクセスを階段化する必要がある。
・情報アクセスにおいては、1:30の比率で階段化するのが最も好まれる。
・情報システムの構造は(階層が)深いより広い方が使いやすい。

3. おわりに
 GoogleやAmazonといった商業情報サービスの機能向上は著しく、上記のような提言の多数をすでに実装している。こうした情報サービスに慣れた世代("Google世代")へアピールする図書館目録を構築するためには、こういった商業情報サービスを参考にするとよいであろう。