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整理技術研究グループ勉強会記録(2005年度)

「セマンティックWebと資料組織法」第1回


日時:
2005年3月22日(火) 19:00〜21:00
会場:
日本図書館研究会事務所
発表者 :
河手太士氏(大阪樟蔭女子大学図書館)
テキスト:
萩野達也ほか「セマンティックWebとは」『情報処理学会誌』 43(7), p.709-717
 http://www.net.intap.or.jp/INTAP/s-web/data/ipsj_vol43-no7/ipsj1.pdf
出席者:
吉田(帝塚山学院大学)、渡邊(神戸大学附属図書館)、蔭山(帝塚山大学図書館)、戸上(帝塚山学院大学)、松井(大阪芸術大学)、田窪(近畿大学)、河手(大阪樟蔭女子大学図書館)

■背景
セマンティックWeb…Web上にある文章などの「セマンティック」(意味)を取り扱う技術
Webを使って問題解決を行うための基盤となる
エージェントソフトが人に代わってWeb上のデータを処理し様々な問題解決をWeb上で可能にする。

■全体像
RDF M&S (Resource Description Framework Model and Syntax) 層
 …HTML文章などの意味を機械が処理するためにつけられたメタデータ
 ←曖昧性がなく機械的な処理が可能
★HTMLとは人が理解するためのものなのか?
★「「意味」を記述する」とは?
 RDF…一般的なメタデータの記述方法
 URIで識別識別できるものであればどのようなものに対しても記述することが可能
RDF Schema層…RDFで記述したメタデータの意味を規定
 プロパティ、プロパティの値と型、クラス階層の指定
 1つのスキーマを決めてメタデータをつけることを想定
Ontology層…互いに独立したスキーマを関係付ける
 互いの属性値の対応、値の変換などを記述
 →スキーマの統一を行わず、自由に設計し利用する事を許し、他のスキーマとの関係を記述することによって、Web全体としてメタデータを統一して利用可能にする。
Rules層…共通基盤となる論理式を定義
Logic Framework層…個々の枠組に応じた論理式を定義
Proof層…エージェントなどが処理して結果を導いた時の履歴や処理理由を意味する

■ セマッティックWebの将来イメージ
例)「藤沢にある歯医者」
[現在] 検索エンジンで「藤沢」と「歯医者」をキーワードに検索
 ←「藤沢」が地名か人名かわからないので藤沢さんのやっている歯医者も見つかる
[セマンティックWeb]
 歯医者のWebページに所在地に関するメタデータを付与しておけば「藤沢」にある歯医者のWebページだけを捜し出すことができる。実際に予約をし、PDAの予定表に自動的に入れてくれる。

■ セマンティックWeb発展の段階
フェーズ1:メタデータ(RDF)活用の段階
・メタデータによりWebコンテンツを効果的に管理したり、コンテンツの内容を動的に構成することを実現する段階
・メタデータに意味を持たせることはできず、メタデータはデータ間の単純な対応関係・グループ関係を定義
・メタデータの意味は、そのメタデータを処理するソフトウェアが判断
 [例]PICS、CC/PP、Dublin Coreのディジタル図書館、MIReG、RSS
フェーズ2:メタデータとオントロジの活用
・利用者がある項目に関してあるWebサイトを訪れた際に、そのサイトの持つ知識をたどって異なるWebでの関連情報にもアクセスが可能
・情報取得のための情報は、メタデータもしくはオントロジ定義としてWebサイトに分散して存在するので、ソフトウェアが簡潔にできる
 [例] 仮想カタログ、サービスカタログ、概念検索、知的検索、異機種統合など
フェーズ3: メタデータとオントロジとインテリジェントエージェントの活用
・オントロジ、知識蓄積と推論機能、知的エージェントをフルに使ってコンピュータによる自律的かつ自動的処理や,異なるプロセス間の自動協調処理を実現し、サービス連繋などを可能とする
・Webを巨大な知識データベースとして活用し、Webに散在する関連情報を統合して新たな情報を導き出す事も可能になる。
 [例]企業の将来業績の予測、人物の行動の予測、景気動向の予測
 犯罪の首謀者の割り出しや将来の犯行予測(HORUS)

■標準化動向
セマンティックWebの標準は、W3Cの仕様書によって定められる。
現在公開されている仕様書(1は勧告文書、2は勧告候補文書、3〜7は作業文書)
1)「Resource Description Framework Model and Syntax Specification」…RDFのモデルと構文規則を規定
2)「Resource Description Framework Schema」…RDFの基本語彙の定義とその他の語彙をいかにRDF記述したらよいかを規定
3)「RDF Model Theory」…RDFおよびRDF Schemaのモデル論的意味論を規定
4)「RDF/XML Syntax Specification(Revised)」…RDF用のXML構文を規定
5)「RDF Test Cases」…RDF記述の正しい例や誤った例を規定
6)「RDF Primer」…RDFの利用を検討している人にRDFの基礎知識を提供する
7)「Requirements for a Web Ontology Language」
  …検討中のWebオントロジ言語の想定される利用例と当該言語に関する必要要件を規定
オントロジ記述言語(OWL=Ontology Web Language)
 オントロジ…ある特定の領域の情報を記述したり規定するのに用いられる用語集合の形式定義
より正確なWeb検索やインテリジェントエージェントなどで使われる
DAML(DARPA)とOIL(EU)を統合したDAML+OILをベースとし拡張した新たな言語
OWLの利用イメージ
1)Webポータル…分類規則による検索機能の強化
2)マルチメディアの集合…非テキストデータの内容検索
3)企業のWebサイトの管理…文書の組織に従った分類・部門間のマッピング
4)設計文書…組み立て手順の記述・規則の明示的管理
5)インテリジェントエージェント…ユーザの好み/ユーザの興味・内容マッピング
6)ユビキタスコンピューティング…Webサービスの検索と構築・権利管理とアクセス制御・文脈に応じたコンテキストの再構成
OWLの標準仕様書
・基本言語(Language Core)
・テストケース
・モデルセオリ
・利用の手引き

■セマンティックWebとAI
AIではないか?
 セマンティックWebの実現にはAI技術が不可欠
AIから踏み出していないのか?
 扱われる知識や理論の量がAIが扱ってきた量とは比較にならないほど莫大
 →AI技術だけでは対応できないセマンティックWebならではの課題が存在
 [例]オントロジの多様性とそれに伴うオントロジ間の論理的不整合の問題

■セマンティックWebとWebサービス
Webサービス…「Web技術を用いてWeb上にあるサービス・コンポーネントを利用するための仕組み」
 XML、SOAP、UDDI、WSDLなどをベースとするアプリケーション(XML Web Services)
 ※SOAP …XMLとHTTPなどをベースとした他のコンピュータにあるデータやサービスを呼び出すためのプロトコル
 ※UDDI…XMLを応用した、インターネット上に存在するWebサービスの検索・照会システム
※WSDL…Webサービスを記述するための、XMLをベースとした言語仕様

セマンティックWeb
・リソース間の知的な関係付けを実現する仕組み
・エージェントなどのプログラムによる自動処理
・特定のアプリケーションやビジネス・フレームワークに依存しない
・機械可読なリソースの記述が重点
・スキーマやオントロジの整備
Webサービス
・単純なハイパーリンクによるリソース間の関連付け
・個々にサービス機能を持つリソース間を結びつけることで、Web上の複数のサービス・コンポーネントからなるビジネスロジックを容易に構築する ←IBMやMicrosoftを中心とした少数のメーカ主導
・サービスの記述、メッセージング・プロトコル格標準化されている

RDF/RDFスキーマとSOAP/WSDLとは記述言語として全く異なるもののように見えるが、実際にはRDFでサービスやメッセージを記述することが可能
WSDLでさまざまなリソースを自由に述することは困難→RDFが汎用性の面で優れている
セマンティックWebがWebサービスの規格や技術を利用…実用的なアプリケーションが効率的に構築可能に
 [例]標準メッセージング・プロトコルにSOAPを採用
 UUDIレジストリやサービスプローカとしてのUDDIサーバの利用
セマンティックWebを基盤としたWebサービス
 …より広範囲なリソースを対象とした相互運用性+利用者への容易かつ適切なサービスの提供