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整理技術研究グループ勉強会記録(2006年度)
「セマンティックWebと資料組織法(続)」第2回
- 日時:
- 2006年4月7日(金) 19:00〜
- 会場:
- 日図研事務所104号室
- 発表者 :
- 河手太士氏(大阪樟蔭女子大学図書館)
- テキスト:
- Robert Fox. Cataloging our information architecture. OCLC Systems & Services. Vol.21(no.1), 2005, pp.23-29
http://www.emeraldinsight.com/Insight/viewContentItem.do?contentType=Article&contentId=1464575
- 出席者:
- 渡邊(帝塚山学院大学)、吉田(大手前大学)、蔭山、田窪(近畿大学)、松井(大阪芸術大学)横山、有信、河手(大阪樟蔭女子大学図書館)
Weaving the web of knowledge (知識網の創生)
- ランガナタンの「五原則」は、デジタル世界における知識の増殖に有効である。
- ランガナタンが強調した知識分類の本質
- 知識領域の多様化と拡大→分類体系に柔軟性と将来性が必要
- さまざまなリポジトリが蓄えている電子コンテンツが増加している。
→アクセス・検索・蓄積のための技術と利用者(学生や研究者)のための概念の枠組みが重要
先見性のある分類のアプローチが有効
- ランガナタンのアイデアはデジタルネットワークの増加と「セマンティック・ウェブ」にとって重要
- セマンティック・ウェブに関する同義語
「オントロジ(ontology)」「情報アーキテクチャ(information architecture)
「統制語彙(controlled vocabulary)」「直交分類学(orthogonal taxonomies)」
- セマンティック・ウェブ…バーナーズ=リーのアイデア
オントロジが強固(robust)でかつ柔軟であればWWWは優れたサービスとなる。
- デジタル形式の利点…迅速な再分類と多様性(diversification)
→速さだけでなく意味を考慮した(meaningfully)処理が求められる。
- アクセスビリティとリポジトリのパズルとして注目すること
・後援者(patron)の情報ニーズ
・コンテンツの異種性
・情報アーキテクチャの連続性とデザイン遠隔教育は、さまざまな人々に大学程度の教育を提供する魅力的な方法の一つである。
Anticipating information needs (情報ニーズの予測)
- 知識分類体系…主たる知的コンテンツ←統制語彙の利用
分類が有効であった分野
歴史、政治、英文学…分野の発展に時間は関係ない
分類体系を変化させる必要のある分野
量子物理学、医学生物学、有機化学…分野の発展が急速=用いられている語が急速に変化する
→分類体系中の語は後援者(patron)が必要なときに体系中に存在していなければならない
- 柔軟性と粒度を考慮した分類アプローチ…(知的)「アクセス・ポイント」
- ランガナタンの「ファセット」アプローチ…後援者(patron)の概念構造に対応するためのアプローチ
「ファセット」…基本的な区分原理によって区分したときに得られる区分肢全体 (図書館ハンドブック第6版)
- 分類体系…ユーザ起動(user-driven)である。
- 階層構造の「ブラウズ」によって必要にあったものを探すことができる
Content heterogeneity and similarity (コンテンツの異種性と類似性)
- 1995年に仮想大学(e-ラーニング)を支援するために設立
- ISIのWeb of KnowledgeのようなデータベースやSDIなどのサービスをウェブを通じて利用することができる。
アクセス方法・・・仮想キャンパスやその中の仮想教室から
目的・・・学生だけでなく教員・研究者・管理スタッフに学習・授業・研究・管理の達成に関連する情報へのアクセスを提供
ユーザ・プロファイルを作成し、利用者に適合したサービスを提供する
オントロジとセマンティック・ウェブ
- ランガナタンとバーナーズ=リーの予測の共通点
発散している概念を意味全体に連結する
人間の知識の急速な発展と多様化
コンテンツの異種性問題の解決策…コンテンツ間の関連の組織化とメタデータ(バーナーズ-リー)
利用者の検索…同じものを探している異なる人は異なる用語で検索する
(例)「犬」:「犬歯」「ジャーマン・シェパード」「4本足の毛のある哺乳類」
利用者は探しているものが何であるかについての明確な考えは持っていない。
→「書架(the shelves)」をブラウジングして偶然適当な資料を見つける場合が多い
←電子図書館ではコンテンツの異種性を利点に変える枠組みの提供が重要
- ランガナタンの「コロン分類」…それぞれの概念がコロン記号を用いて上位概念から分類される
(欠点)書架分類には扱いにくい…LCCNよりも複雑になる
- 知的な枠組み…アクセスポイントを増やすための分類名辞間の動的・同義的関係を構築
←アリストテレスの類種関係と同じ
記入ポイントの種類が指示されていない←利用者はブラウズ技術を用いて調査をはじめることができる
- 現在の分類体系…知識のカプセルである個々のオブジェクトを分析して記述する
ランガナタンのアプローチ
利点…拡張しやすく柔軟性がある・多くの階層構造と観点に対応できる
欠点…「本質的な」ファセットの修正とファセット巻の関連の作成が困難←デジタル技術によって解消できる
- 現在の状況…急速に変化している
・研究ニーズの変化による利用者の期待
・デジタル・リポジトリに追加されるコンテンツの質と量←対応できる手法を発見しなければならない
Information architecture continuity and design (情報構造の連続性と設計)
- デジタル・コレクションの成長と研究状況の変化に対応した分類体系の構築←OOPやOODなどの技術的促進が解決策として役立つ
データベース・スキーマの設計…ランガタナンの「知識の一般理論」と比較されてきた
現代のデジタル・コンテンツの分類とランガナタンの理論は関連がある
- DSpace…デジタル・オブジェクトの収集を考慮
MITとH.P.による合同事業
開発言語はJava
全てのデジタル・オブジェクトを透過性高く扱う
コミュニティのニーズによってコンテンツ管理者が自由にコンテンツを組織化できる
- デジタル・オブジェクトを記述し関連付けるオントロジの促進…ランガナタンの理論が重要な役割を果たす
デジタル・アーカイプやリポジトリにおけるリソースや分類システムにはオブジェクト指向設計・分析が適切
- 情報の再組織化…何千もの項目を操作する必要がある
アナログ世界…ほとんど不可能
デジタル世界…記述的オントロジにより動的に変更できる
- ファセット分類のアプローチ…コンテンツのアクセスを必要とするコミュニティを形成する利用者のニーズに適合した粒度の相違点の作成に利用できる
- ファセット分類の利用…entityの包括的理解や記述に用いられるオントロジ用語間の関係を保持する必要がない
→オブジェクト間の思いがけない関係がつくりだされるかもしれない
強固なオントロジ+同義語の輪を持つシソーラス→情報の構造がグローバルになる
★オントロジとシソーラスは二本立てで同じものではない
- デジタル・リポジトリに必要な能力…コンテンツの入手容易さ・コンテンツの質と量・コンテンツの陳列
動的で強固なオントロジを実現してデジタル情報リポジトリに実装する技術が必要
ランガナタンのファセット分類…デジタル・コンテンツのための分類体系のモデルorプロトタイプとなる
personalizationシステムの機能性の特定
- 望ましい機能
利用者のプロファイル
利用者の行動から収集される情報
- 利用者のプロファイル
利用者モデルを構築するための基本的な属性(表1)
ナビゲーション履歴と利用者の嗜好・・・オントロジによって有効
- ナビゲーションに基づく利用者の行動
探求的ナビゲーション(exploatory navigation)・・・(例)図書館にどんな資料があるか調べる
目標志向ナビゲーション(goal-oriented navigation)・・・(例)特定の資料が図書館にあるか調べる
- 電子図書館における基本的な利用者の行動と情報源(表2)
インターネットの無料情報源・・・協調フィルタリング・システムなどによる正当性の付与
独占的コンテンツ(有料データベースや所蔵目録)の提供
- オントロジの作成
各主題についての非構造的な情報を構造的に表現できる
- 電子資料の拡大
DCメタデータやMARCフォーマットによる目録化
オントロジによる利用者が有用と考える情報(利用者の評価など)の追加情報
プライバシー問題
- 利用者プロファイルの作成→利用者の行動が全て監視され登録されている
プロファイルを作成するにあたって明確にしておくべきこと
利用者は全ての行動が記録されていることを知っていること
プロファイルへの参加が非強制的であること・・・利用者がプロファイルへの参加を最小にすることができるなど
利用者の参加が匿名であること
商業的目的で利用しないこと
電子図書館オントロジの構築
- ここでの「オントロジ」・・・コンテンツを記述するオントロジではなく、利用者がコンテンツを検索する方法を記述するオントロジである
- 予定しているオントロジの基本ステップ(表3)
電子図書館オントロジの構成
- オントロジの構築・・・表1と表2の要素が交錯しているところ、マイクロ・シナリオの記述
- オントロジの利用・・・プロファイルを別のサービス(データベースや他の電子図書館)に拡張利用
他のデータベースに移植することが容易
- オントロジ実装・・・RDFやOWL←XMLと標準言語の使用はオントロジーの向上を保障する
結論
- 電子図書館のpersonalizationシステムの基本的機能性と利用のシナリオを記述すオントロジ
- オントロジの記述要素・・・利用者プロファイル、ナビゲーション・プロファイル、利用者行動、これら各要素間の関連
- オントロジの使用によりもたらされるもの
新たなサービスと既存のサービスの統合
セマンティック・ウェブによる他システムとの相互運用性の促進
- 今後の課題
電子図書館のpersonalizationサービスと仮想キャンパスにおける他のpersonalization機構との統合
オントロジの要素や要素間の関連性の正当性に関連する新しいコンセプトについての議論
適正評価アルゴリズムと適正評価体系(validation rating system)の定義