TOP > 勉強会 > 2007年度 > / Last update: 2008.1.1

整理技術研究グループ勉強会記録(2007年度)

「図書館目録の将来設計」第2回


日時:
2007年3月9日(金) 19:00〜
会場:
日図研事務所104号室
発表者 :
堀池博巳氏
テキスト:
Rethinking how we provide bibliographic services for the University of California
The University of California Libraries, Bibliographic Services Task Force.
(http://libraries.universityofcalifornia.edu/sopag/BSTF/Final.pdf
   Executive Summary, Introduction
出席者:
多武、横山、有信、松井(大阪芸術大学)、蔭山、渡邊(帝塚山学院大学)、吉田(大手前大学)、堀池、河手(大阪樟蔭女子大学図書館)

Excective Summary

社会の状況
 情報化時代・・・コンピュータとWebの出現→想像以上の情報とそのアクセス

図書館の領域
 書誌的なシステムは変化に対応できていない
   ・・・フォーマット、ツール、サービスとその技術の激増
     Amazon、Google、iTunesといった利用者が好むサービス←単純で応答が速い
 現在の図書館目録・・・リソースの発見・探索・入手には貧弱な設計
              既知のリソースに対しては有効である
              図書館員や図書館利用者にとっては所蔵にアクセスする唯一の方法
              資料の種類ごとにバラバラのツールを提供してきた
   図書館やそのシステムではバラバラな基盤を統合し維持していく動きがある。
   適切なローカル・コントロールを維持しつつ、よりよいサービスやデータを整理し中央集権化を図る必要がある。

伝統的な情報形式は、あたらしく進化する形式とともに利用される。
  我々(図書館)の責務=・利用者が専門知識をもたずに必要なものの発見を支援
                ・さまざまな特徴をを持つ「サイロ(silo)」システムの選択を支援 

Howard Cosellの言葉
 「一般の評判がよいものが常に正しい(right)とは限らない。正しいものが常に一般の評判が良いとは限らない。」
  ←一般の評判のよいものも正しい(インターネットでは)

BSTFの中核の勧告(recommendation)←情報市場にとどまるつもりであれば保証しなければならないもの

T.探索と検索の拡張
T.1 アイテム(個別資料)への直接アクセスを利用者に提供
T.1a 異なるオプションを望むなら、メニューに戻るときにUC eLinksは論理的にデフォルトの選択に導く。
      確かな全文リンク=最初の選択←正しくユーザが欲しいすべてのサービスを予期することができたと仮定
T.1b "I-want-this"ボタンの設置・・・コンテキストが保証していることを表示←実現可能なオプションの提供が目的

T.2 おすすめ資料の提供
T.2a おすすめ資料に基づき内容やフィルターを提供する・・・書誌的な記録や所蔵情報、利用データの収集など

T.3 カスタマイズ/パーソナライズの支援
T.3a いっせいに検索したいデータベース/リソースのセットが定義できるようにする。
    (最近のメタサーチ・ツールによる支援されてものよりもより広い範囲のリソースを含む)

T.4 失敗または疑わしい検索のための代替行動の提供
T.4a ・スペル・エラーしそうな入力へのアシスト
   ・検索結果が0や少数の場合での選択肢の提供←Googleのような一般的な英語のシステムで提供されているサービス
T.4b 検索結果が0件のときに常に建設的な提案の提示
    ←より広い範囲のオプション…代わりの検索語、関連語など+他の目録やWorldCatへの検索、AmazonやWebへの検索の提示
    ←図書館員の援助というオプションの提示

T.5 大量の検索結果のよりよいナビゲーションの提供
T.5a FRBRの実装・・・関連する著作階層の表示
             個々の著作に関連する全レコードの抽出(pulling)
             著作の多様な表現、異版、特定の個別資料の抽出(pulling)
T.5b "family tree"を用いた様々なタイトル変遷が生じた逐次刊行物のレコードの追求
T.5c レコードの内容分析に基づくファセット・ブラウジングの実装

T.6 利用者のいるところに書誌サービスを届ける
T.6a キャンパスの仮想学習環境(VLS)やコース管理システム(CMS)と図書館のサービスを統合
T.6b 学内ポータルに図書館サービスを埋め込む
T.6c 学外に向けたUC独自のデジタル・コレクションの提供

T.7 レレバンス・ランキングとレバレッジ・フルテキストの提供
T.7a 関連性が高いであろう検索結果を検索集合の最初に表示するようなレレバンス・ランキングの提供
T.7b 発見(discovery)とレレバンス・ランキングのためのフルテキストの利用

T.8 非ローマ字資料へのよりよい検索の提供
T.8a 非ローマ字資料へのよりよい検索の提供
    ・・・ローマ字と非ローマ字の両方での検索
      言語に適した検索結果の並び替え
      ローマ字の検索結果と非ローマ字の検索結果の同時表示


U. OPACの再構築
U.1 単一の目録インタフェースの作成(UCで共通したインタフェースの構築)
U.1a ローカルとシステム・ワイドなコレクションに共通の目録インタフェースの作成←実装したシステムを計画

U.2 書誌的情報空間の横断検索を支援
U.2a 外部のメタデータの導入=一次資料とともに一次資料の作成者の入力データを収集
U.2b さまざまな検索結果の提供・・・形態による配列、用語によるグルーピングなど←利用者が再配列できるオプションも必要

V 新たな目録作業の適応
V.1 目録作業のワークフローを再構築
V.1a (全学共通の)単一の事業として目録作業をとらえる→実装したシステムを計画
     ・ローカルな慣習と繰り返しの除去
     ・単一のポリシーで一致
     ・効果の最大化
V.1b 単一の(共通の)データベースの導入 ←目録データをILS(Integrated Library System)に入力する
V.2 適切なメタデータ・スキーマの選択
V2a リソースに適した記述レベルやスキーマ(DCやLOW、VRA Coreなど)を利用→すべてをMARCやAACR2、LCSHに統一しない
V.2b FASTの実装の有用性を検討・・・「場所(place)」や「時代(time periods)」によるファセット・ブラウジングの支援
V.2c 人名・統一タイトル・時代・場所の統制後の使用・・・LCSHやMESHなどを利用しない
    検索においてTOCのような自動的に作成されたメタデータや索引が分類や件名の代わりになるかどうかの検討
V.2d メタデータなしでは完全に探索できないもの(音楽や数値データベースなど)に優先的にメタデータを付与することを検討
   メタデータの自動作成技術がすべての文字資料に適応できるかどうかの検討
V.3 重要な分野には豊なメタデータに労力をさく
V.3a 人名、メインタ・イトル、シリーズ・タイトル、統一タイトルの充実←多作の著者で音楽・文学・特別コレクションの分野
V.3b 雑誌所蔵フォーマットの構造化を実装
V4 メタデータの自動作成
V4a ベンダーによるメタデータ作成の促進と図書館目録への取り込み
V4b ベンダーなどからのメタデータをどこからでもいつでも取り込む機能の実装
V4c 既存のサービスと今後出てくるサービスを支援するための目録データへの地理データの自動付与
V4d 「書架においてから目録を作成する」から「書架におくと同時にメタデータがある」へと作業の流れを変える
     ←メタデータ・ソースへの自動照会をくりかえすことによりメタデータの増進を図る
V4e 目次やカバー、帯、抜粋などの情報の取り込み→検索や適合性判定、ナビゲーションサービスに用いる

W. 絶え間のない改善支援
Wa 書誌的サービスの改良を識別し優先順位を付けていくプロセスの組織化
Wb ちゃんとしたレポート能力の提供

Introduction

利用者が望むもの(What Users Want)・・・単純で満足できる検索
  Amazonで注文するのに50分の利用指導は必要としない。←図書館での利用指導にはそれくらいの時間がかかる。
  なぜ図書館は、利用者がマスターするのを困難にし続けているのだろうか?
 例:
  ・利用者は広い情報空間をカバーするシステムや検索を期待している。(GoogleやAmazon.com
  ・豊かなメタデータ(ONIXや目次、表紙など)
  ・フルテキストの利用性
  ・アイテムについての情報からアイテム自身への容易でシームレスな移動を望む。→発見だけでは不十分。
  ・利用者はシステムの知的な支援を期待している。
    ・スペルエラーの修正
    ・質問式との妥当性順による並び替え
    ・トピック・マップやトピック階層、論理的サブセットを用いたナビゲーション支援
    ・(能力が)同等の人や専門家からのコメントなどの付与やレレバンス・ランキングを通して最適なものの選択を支援
    ・カスタマイズとパーソナライズ
  ・シングルサイトオン
  ・セキュリティーとプライバシー
  ・コミュニケーションとコラボレーション
  ・利用可能な様々なフォーマット・・・e-book,mpeg,jpegなどと伝統的・確実なフォーマット
  ・E-malやインスタントメッセージへの直接リンクと共有
  ・研究や教育のためのオンライン仮想コミュニティへの参加
  ・利用者が図書館に来ることなしに必要なものを入手できることを期待している

図書館が必要とするもの(What Libraries Need)
 UCに最もよいサービスと最も質の高い情報へのアクセスを提供する
  ←UCの図書館は蔵書や目録、検索補助資料(finding aids)のエントリーポイントどのように管理すべきか調査する必要がある
 図書館管理に必要な時間とエネルギーには限りがある。
  さまざまな目録やコンテンツ管理システム、異なる標準→共有することができない。
  書誌的なサービスのコストが維持できない←解決策は見つけていない
 情報市場(marketplace)にとどまり続けるために・・・メタデータを獲得・作成・送り出す効率的な方法を組み込む必要がある
   要求=データを豊富にする、値を追加する、利用者にユニークなサービスを提供する
       ←資金を消耗せずに
   現在・未来に役に立つであろうメタデータの作成に資金を集中すべき
                              →利用者にユニークで効率的かつ必要なサービスを提供できる
    メタデータの入手・・自館で作成したメタデータ
                外部(ベンダーや出版社)で作成されたメタデータ
                利用者が入力したメタデータ
    既存のメタデータの積極的な利用と情報へのルートの開発→探索可能なアクセスポイントを増やす
  しなければならないこと・・・「利益のため(for profit)」に注目し優先順位をつける
   例:
    ・一つの仮想システム
     ・目録作成の効率化
     ・drill-down(掘り下げること)可能な書誌階層
     ・システム内外の情報共有機能の構築
    ・分析のためのツールとデータの構築
     ・各キャンパスでの詳細な所蔵情報の規定
     ・蔵書の管理と収集
     ・共同書庫(shared print)や共同書庫アーカイブ(shared print archive)
    ・書誌の統合
     ・授業支援サービス(cource reserves)に統合
     ・レポジトリに統合
     ・各館(local)向けのデータ管理ツール
    ・非MARCメタデータ・スキーマの取り込み
     ・既存のメタデータの利用・・・目次、表紙(カバーなど
     ・他の組織との協力
     ・存在する情報発見プロセスの単純化
 書誌的サービスの活性化←利用者や利用者のニーズの把握と新たな発想に基づく業務の再構築