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整理技術研究グループ勉強会記録(2007年度)

「図書館目録の将来設計」第11回


日時:
2007年10月25日(木) 19:00〜
会場:
日図研事務所104号室
発表者 :
川崎秀子氏(佛教大学)
テキスト:
林賢紀ほか, RSS(RDF Site Summary)を活用した新たな図書館サービスの展開--OPAC2.0へ向けて
情報管理, 49(1), pp.11-23, 2006
出席者:
蔭山、松井(大阪芸術大学)、堀池(摂津市施設管理公社)、渡邊(帝塚山学院大学)、安威(梅花女子大学図書館)、河手(大阪樟蔭女子大学図書館)

1. RSS概況

1.1 RSSとは
RSS…更新情報を利用者に通知するための仕組み
    XMLで記述される
1.2 RSSの歴史と経緯
1999年3月 Netscape者がWebサイトの見出し一覧を登録するための手段として開発・公開
200年以降 blogの流行→MobableType…RSS配信の代表的システム
         普及の理由…仕様がオープン・簡易なXMLによる記述・主要なスクリプト言語(Perlなど)での処理が容易
         RSS提供活用例…blogやニュースサイトの更新情報の通知、マスコミ・一般企業などのサイトの更新情報の通知
1.3 RSSの仕組み
RSSの実体=更新情報の概要(タイトル・URL・要約・更新日時など)をXMLで記述したファイル
RSSの参照…提供者:WebサイトにRSSのファイルを置く/利用者:RSSリーダなどを用いて更新情報を取得
  RSSのダウンロードの間隔…提供者:RSSの中に記述/利用者:RSSリーダで指定
    →ダウンロードは定期的・自動的に行われる…Webサーバから更新情報が定期的に利用者に送り込まれているように見える=プッシュ型サービス
  利点…能動的に最新の情報を提示し利用者を誘導する
       ほかの情報とのリンクが容易(XMLで記述されているため)→RSSを組み合わせてひとつのRSSとして提供することもできる
1.4 RSSリーダ
RSSリーダ=RSSを購読するためのソフトウェア
 利用者が登録したRSSを定期的に取得→更新情報の概要を把握→取得選択してWebサイトにアクセス
 複数のRSSを同時に取得することができる…複数のWebサイトの更新情報を一度に把握することができる
 記事の更新情報の管理が容易
 フィルタリングも可能
  →インターネット上の情報源を渡り歩いて情報の検索と収集を行う従来のスタイルに変革をもたらしている

2. 学術分野での適用事例,サービス提供の可能性

2.1 国外における利用事例
図書館・学術分野でのサービスについての可能性
 ・通知サービス…自館の休館日やサービス変更のお知らせなど
   事例)アルバータ大学図書館(カナダ)…図書館のお知らせ、新着図書
 ・速報性が重視される情報源…雑誌の目次情報や新着受入情報など
   事例)NatureやScienceなどの主要な学術雑誌の目次情報
学術雑誌のRSS配信
 名前空間の拡張(PRISM、Dublin Core、FOAF)とDOIの記載
 PubMedのサービス…データベースの検索結果をRSSで受信可能
2.2 国内図書館での利用事例
京都大学図書館機構
 XOOPSによるWebサイト構築…Webサイトの構築・管理作業の効率化とRSS配信などが提供可能
一橋大学附属図書館
 RSSによる新着図書受入情報配信の先駆
「国立国会図書館デジタルアーカイブポータルプロトタイプ」
 検索対象のデジタルアーカイブとして「新書マップ」を追加…他の情報源から取得しためたデータと同様に統合検索が可能に

3. RSSによるサービス提供の実際とその手法

3.1 農林水産研究情報センターにおける事例
「図書資料管理システム」(ALIS)…全国56研究拠点で所蔵する図書資料類の書誌及び所蔵情報を一元管理
  2003年初頭からRSSを利用した情報サービスを試行
   ALISで処理している図書・雑誌の新着情報の提供
   雑誌名・所蔵機関と最新10件の受け入れ巻号を提供(雑誌)
 機能の実装
  ALISサーバ…新着図書・雑誌受け入れ情報の出力(1日ごと)
  RSS配信サーバ…ALISが出力した情報をRSSに変換(1日1回)してデータベースに格納
 RSSで配信される情報
   多方面で利用
    例)MAFFIN News Feeds Center
      情報センターホームページでの参照
   他の情報源との組み合わせ
    例)「購入洋雑誌新着目次/到着状況配信サービス」…洋雑誌目次提供サービスと雑誌の受け入れ状況の組み合わせ
3.2 スクリプト言語によるRSSへのデータ変換
図書館における新着図書情報のRSS配信を想定
RSSの作成方法
 (1) 配信したい情報を含むデータを準備する
 (2) データから必要な情報を抽出・再構成する
 (3) RSSを書き出す
RSS作成に関する注意点
 文字コード…UTF-8が望ましい
 XMLの文法に誤りが無いか確認することが必要
OPACなどからのRSS作成
 自機関図書館の所蔵情報をWebに公開している場合は、権利上の問題がなければ、現在提供しているOPACにRSS配信機能を追加することが可能
3.3 アプリケーションによるRSS出力
 WikiEngine…WebブラウザからWebページの発行・編集などが行えるCMS
       複数人が共同でWebサイトを構築していく利用法を想定
       RSSリーダの機能はコマンドを本文に記述するだけで利用できる
 Headline-Editor…RSS作成の専用エディタ
          既に整理されたデータがある場合や、更新頻度やデータ量が少ない場合に有効なツール
3.4 RSSを発見してもらうために
RSSを発見してもらう方法
 ページ中に表記しアイコンとともにRSSへのリンクを張る
 AutdiscoveryリンクによりRSSの場所をHTMLファイル上に記述する←自動的に発見してもらうために

4. まとめと今後に向けて―OPAC2.0の提案

Webをヴラットフォームとしたサービスの展開→Web2.0
 例)GoogleMaps…地図検索・表示サービス+外部から利用するための仕様を公開→地図上での求人検索などのサービスへ
Web2.0の主なポイント
 (1) ユーザーがサービスに組み込まれる
    ベンダから提供されたプラットフォームを元にユーザが参加する形でコンテンツを形成・利用
 (2) 蓄積されたデータの開放とサービス連携
    外部から利用するための仕様を公開し蓄積されたデータを外部に開放提供
    提供されたデータにより新たなサービスやソフトウェアが開発され、XMLをベースに連携
     →RSSの役割…サービスやデータベース間のスムーズな連携をサポートし有機的なサービスが行われる基盤を形成
RSSと図書館(特にOPAC)
従来のOPAC…館内提供→WebOPAC
          インタフェースに変化がなかった「キーワードを入力し検索結果としての書誌データ」
インターネットサービスの変化の状況(Web2.0)
 従来のOPACに欠けている視点
  利用者に書誌データを開放し再利用可能とする
  他のデータと統合し利用する
   EndNote(文献管理ソフトウェア)の存在やSFX(リンクリゾルバ)による連携←利用が研究者に限られる
RSS…情報センターでは着目
    書誌データのRSS…一般の利用者がURLで簡易に指定し自由にダウンロードできる
                 →他のデータと組み合わせての再構築・再利用が容易
                   →一般利用者による多様な情報利用が促進されるのではないか(例、amazon)
OPAC2.0…次世代のOPAC(特定のインターフェイスに依存しない情報提供、進化した形での利活用が可能なOPAC)
       コントロール及びメンテナンスされた信頼のある書誌データ→ネットワーク上のデータサービスの基盤を成す公共財として利用される
        書誌データの開放=図書館のとしての新たな公共サービス
   情報センターの「購入用雑誌新着目次/到着状況サービス」…OPAC2.0のプロトタイプを提示
横断検索の実装(RSS2.0ベース)…a9.com  ←RSSの次世代的な利用方法
現行のRSS1.0に標準の要素では不十分
 →RSSにPRIMSやMODSなどによるより詳細な記述が可能なメタデータ標準を使用する必要がある