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1993年月例研究会報告

整理技術研究グループ


◎1993年1月例会
日 時:1月23日(土)14時〜17時
会 場:桃山学院大学社会教育センター
テーマ:NDC9版(案)の検討−まとめ−
発表者:吉田暁史氏(帝塚山学院大学)
出席者:今西由実子(摂南大学図書館)、北克一(摂南大学図書館)、田窪直規(国立奈良博物館)、谷本達哉(夙川学院短期大学事務局)、田村俊明(大阪市立大学附属図書館)、西出浩二(大阪芸術大学図書館)、野口恒雄(佛教大学図書館)、前川和子(大谷女子大学図書館)、三浦整(大阪女子大学附属図書館)、吉田憲一(天理大学)、吉田暁史 12名
0.序
 整理技術研究グループは、毎年、その年度のメインテーマを決め、それを柱として月例研究会の運営を行い、そして、それに基づいて日本図書館研究会研究大会の発表を行っている。今年度のメインテーマはNDCの検討である。これは来年度のNDC改訂を見据えてのものである。今回の研究発表は、今年度の研究活動の総決算といえるもので、日本図書館研究会第34回研究大会発表のたたき台となるものである。
1.NDC検討の論点
 吉田氏がNDCを検討するにあたって設定した論点(問題点)は、次の10点である。すなわち、1)初歩的論理性に関する諸問題、2)構造の問題、3)展開の問題、4)相関係の問題、5)分類注記の問題、6)相関索引の問題、7)抜本的改訂の問題、8)維持組織の問題、9)機械可読版の問題、10)オンライン環境におけるNDCの問題、である。非常に広範に、さまざまな角度からNDCをめぐる諸問題を扱っている。
 NDCの今回の改訂は、抜本的な改訂ではなく、NDC8版の基本は維持しつつも、そのほころびを修正するという方針に基づくものである。その意味からは、1)の論点が改訂を見据えての発表としては重要である。また、時代環境を考えると、10)の論点も見過ごすことができない。それゆえ、吉田氏の発表は、1)と10)の論点に中心をおくものとなった。
2.初歩的論理性に関する諸問題
 ここでの氏の取り上げる諸問題は、NDCの明らかな矛盾点であり、今回の改訂のように抜本的な改訂でなくても、ぜひとも改訂されるべき点である。
 第一に氏が触れるのは、助記表の問題についてである。初歩的論理性に関する諸問題の中で、一番多くの問題点が指摘される。まず、これは本来、補助表と呼ばれるべきことが強調される。そして、1)共通細目と特殊細目の区別、2)地理区分は形式区分の-02の展開にすぎないこと、3)地理記号表と言語記号表の独立などが主張される。次に短縮の問題が取り上げられる。形式区分の変更というと、すぐに論理構造が破壊されるという議論がなされがちだが、これは短絡的な議論であるとして退けられる。短絡が問題となるのは、配列の一貫性が崩れるからであり、この点から短縮の諸問題が議論されるべきだとする。また、いわゆる“ヤミ短縮”を巡る諸問題にも触れ、短縮に対する方針を明確にすべきことが述べられる。その他、補助表関係では「-02」が「歴史」のみに限定されている項目があること、「歴史」における「-00-」の問題、形式区分が重複する場合の処理問題、日本時代区分の取扱の問題、形式区分変更点の明示の必要性、言語区分の曖昧性排除、補助表の充実・追加(人、民族、場所等)が説かれる。
 第二に記号が階層関係を反映しない場合の処理問題について述べられる。十進記号法を採用するNDCでは、記号法が正確に階層を反映できるとはかぎらない。それゆえ、何らかの方策を講ずる必要がある。しかしNDCでは、このための方策が講ぜられていない。このための方策としては、1)正確な項目見出しの付与、2)センタード・エントリーの採用、3)インデンションの採用などが考えられ、改訂にあたっては、これらの方策を講ずべきであるとする。
 第三に総記クラスの問題が取り上げられる。ここでは、形式クラスと主題クラスの混在が見られることが指摘される。
3.オンライン環境におけるNDCの問題
 OPACの進展にともない、これを利用しての主題検索が一般化してくるものと思われる。氏は、1985年から1992年に発表された主題検索に関する諸文献を、この観点からレビューし、その結論として、安易で機械的な索引語の付与は、戒められるべきであり、これからの索引諸言語には、ますます理論的な基礎が求められるとする。したがって、オンライン検索を考慮するなら、NDCにも明確な論理的基盤が必要であり、これに基づいた一貫性のある構造が設定されなければブラウジング機能に支障をきたし、オンライン環境下では分類表として機能しなくなるのではないかと述べる。またオンライン環境では、言葉からの検索の重要度が増すという観点から、NDCと言葉との間にどのような連係をもたすか、またそれとの関係で相関索引をどのように構成するかということについても、研究が進められねばならないとする。
4.その他の諸問題について
 氏の取り上げたその他の論点(問題点)については、以下簡単にまとめる。構造の問題や展開の問題については、ファセット的考え方の必要性、配置順や区分原理適用順の明示や一貫性の維持、展開の根拠の量から質への転換などが主張される。相関係については、このような関係を吟味することの必要性が説かれる。分類注記については、注記形式を整備し分類規定に関する公式マニュアルを準備することが説かれる。相関索引については、語源の問題、同義語・下位語の収録問題や作成手順アルゴリズムの明確化および相関索引の連鎖索引化の検討について触れられる。抜本的改訂問題については、表面的な改訂で修正不可能な箇所は抜本的に改訂されるべきであり、これはDDCではフェニックスという名のもとに実行されている旨が述べられる。維持組織の問題については、これは明確に確立されねばならないとする。機械可読版の問題については、現在オンライン化が進んでおり、これが重要な位置を占めるので、これに必要とされる諸機能を考慮して、どのような仕様にするかという検討がなされねばならないとする。
5.質疑応答
 北克一氏(摂南大学図書館)から、次の発言があった。1)区分原理適用の一貫性が守られていない例として考古学を挙げているが、ルポルタージュの例も取り上げてはどうか。2)伝記における「個人」の概念は2名までのはずであるのに、9版案によると、9類では「個人」は1名となっており、他の箇所と矛盾をきたしている。3)序説とか相関索引に関する方針が先ず明確化されるべきであるのに、それがなされていない。北氏の第3点に関連して野口恒雄氏(佛教大学図書館)から、7版から8版への改訂の際には、序説はほとんど改訂されていない旨が述べられた。


◎第34回日本図書館研究会研究大会
グループ研究発表として下記の研究発表を行った。
日 時:3月1日(月)
会 場:大阪府立文化情報センター
テーマ:NDC9版(案)の検討
発表者:吉田暁史氏(帝塚山学院大学)

内容については下記論文を参照。
吉田暁史 NDC9版(案)の検討『図書館界』45巻4号 p.372-377, 1993.10


◎1993年3月例会
日 時:3月27日(土)14:30〜16:30
会 場:相愛学園本部(本町学舎)
テーマ:電子図書館
発表者:原田 勝氏(京都大学教育学部)

出席者:今西由実子(摂南大学図書館)、蔭山久子(帝塚山短期大学図書館)、熊本純子(摂南大学図書館)、芝勝徳(神戸市立中央図書館)、志保田務(桃山学院大学)、杉本節子(大阪市立大学附属図書館)、田窪直規(国立奈良博物館)、田村俊明(大阪市立大学附属図書館)、辻井康博(相愛大学図書館)、西出浩二(大阪芸術大学図書館)、野村薫(大阪市立中央図書館)、藤井千年(神戸大学)、前川和子(大谷女子大学図書館)、前畑典弘(朝日大学図書館)、村岡和彦(大阪市立中央図書館)、吉田憲一(天理大学)、吉田暁史(帝塚山学院大学)、原田勝 18名
 発表者の原田氏は関西文化学術研究都市の研究プロジェクトとの関係から電子図書館研究会を運営している。昨年の12月に、この研究会はテクニカルレポートを作成しており、今回の発表はこのレポートに基づくものである。
 氏は、まず電子図書館実現のためには、二次情報(資料)のみを電子化するのではなく、一次情報(資料)の電子化が図られなければならないと主張する。しかしながら、これには著作権等超えなければならない壁が多く、電子図書館研究会は、まず目次情報の電子化を模索しているという。
 電子図書館では、情報検索機能のみならず、すべての図書館機能(サービス)が電子化(コンピュータ化)されなければならないとする。例えば、レファレンス・サービスはAI技術で電子化できる可能性がある。しかしながら、このような今あるサービスを単に電子化するというのではなく、電子化という新たな環境に即した図書館業務系のあり方自体が問われなくてはならないとする。
 氏は、ついで、これからのメディアのありよう、出版のありように言及する。というのは、この点を見通さねば、電子図書館のグランドデザインが描けないからである。
 図書館のメディアは、何百年も基本的には同様のもの(“ブック”形式)であったが、今後はメディアは多様化・マルチ化する。そして、今まではメディアは、その情報部分(メッセージ)と物理部分(キャリアー)の結びつきが強かったが、今後は両者の結びつきが弱まり流動化してくるとする。また、電子メディアが一般化してくるとメディアと情報生産者はダイレクトに結びつき、出版者という仲介役は現在の形態のままでは存在しえないのではないかと述べる。
 情報検索については、従来型のキーワードマッチングではなく、“知的”な検索方式が求められるとする。そのためにシソーラスの形式も、これに堪えるものになる必要がある。情報化社会は国際化社会でもある。それゆえ電子図書館では外国人利用者や外国図書館とのネットワークを意識して、自動翻訳システムを図書館システムに組み込むべきだとする。
 最後に氏は、まもなくCD-ROM一枚に、テキストデータなら3万冊程度の分量が入る時代が到来し、高速のワークステーションが手軽に利用できる時代がくることを強調して発表を終えた。
 発表の後の質疑では、芝勝徳氏(神戸市立中央図書館)が、電子メディアの交換フォーマットの問題、電子環境における検索ツールの問題をただした。志保田務氏(桃山学院大学)は、資料の電子化は目次情報から着手するというが、なぜ抄録からではないのかという疑問が提出された。これに対して、原田氏は抄録といえども著作権の問題が絡む旨を返答した。吉田暁史氏(帝塚山学院大学)からは、1)「二次情報サービス機関はこれからは難しくなる」という発言について、2)情報検索用のシソーラスと文書理解用等のシソーラスとは同様なものになるのかどうかという2点が質問された。1)については、一次情報を保有していない二次情報のみの機関は苦しくなるという意味、2)については、かなり結びつくと思われるが、同じと言い切る材料もないという回答があった。前川和子氏(大谷女子大学図書館)は、来年度の電子図書館研究会の活動と、図書館の増築的な規模拡大の発想について質問した。前者に対しては、もうテクニカルレポートの発表ではなく、実際に実験システムを構築する予定、後者に対しては、少なくとも従来とは違う発想(例えば、本にして3万冊分になるという事態に対応できる発想)が必要であるとの回答がされた。


◎1993年4月例会
日 時:5月1日(土)14時〜17時
会 場:市立天王寺図書館
テーマ:整理技術研究史と整理技術研究グループ その3:記述独立方式目録規則の策定へ
発表者:志保田務氏(桃山学院大学文学部)

出席者:18名
 1991年5月と11月に引き続く本テーマの第3回目、今回は「記述独立方式目録規則策定」をメインテーマとし、期間としては前回と重複する部分もあるが、1970-1977年を対象とする。
 NCR1965年版は基本記入方式を採用したが、その刊行の時期と前後して、すでに記述独立方式によるカード事例が森耕一によって「整理技術テキスト」(日本図書館協会)に記されている。そこでは、基本記入標目の省略に加えて出版地・大きさの省略という形が採られており、「中小レポート」以降の目録の簡略化の流れを受け継いでいるものと考えられる。整理技術研究グループは、NCR1965年版の批判とともに、ICCPや昭和期の目録思想の研究、記述独立方式と基本記入方式の比較検討等の活動をこの時期行っている。
 その後「整理技術通信No.13」(1970年5月)では、「標目未記載記述ユニットカードの検討について」が報告され、また同年6月に開催された第1回整理技術全国会議では、「日本目録規則新版予備版(案)」が提案され、多くの支持する発言が会議を支配した。この会議に出席した石塚栄二は、その報告を例会で行っており、その後の研究例会では、記述独立方式による目録が中心的なテーマとして取り上げられるようになる。これらの活動を反映して、1971年から1976年に至る6回の日図研研究大会では、整理技術研究グループは記述独立方式による目録およびそのもとにおける標目・図書記号をテーマとして発表を行っている。
 日本目録規則新版予備版は1977年12月に刊行されたが、刊行に至るまでの期間、整理技術研究グループが目録委員会に与えた影響は少なからずあったものと推察される。森耕一による記述独立方式による目録規則が策定されたことは、活動の一つの成果として位置づけられるものであろう。

◎例会終了後、難波・飛鳥で三浦氏と西出氏の転任、昇任祝いを開催


◎1993年5月例会
日 時:5月22日(土)14:30〜17時
会 場:相愛学園本部(本町学舎)
テーマ:整理技術史と整理技術研究グループ
その4:NCR新版予備版批判の展開
発表者:志保田務氏(桃山学院大学文学部)

出席者:14名
 1977年を起点とする考察である。この年12月『日本目録規則新版予備版』(以下NCR77)が発行された。整研はNCR77が依拠する「記述ユニットカード方式」を、自らが主張した非基本記入方式を取り入れた規則と評価した。公刊前の11月「日本目録規則新版予備版(案)における用語及び用語解説について」を、『界』29巻4号に寄せ、この規則の完成に助力した。
 翌1978年2月、日図研第19回研究大会で、「目録情報サービス発展のために:印刷カードを中心に」なるシンポジウムがあった。JLA理事長・高橋徳太郎を囲み、石塚栄二、志保田務、光斎重治等が参加論述した(『界』30(1), 1978.5)。そして6月、「国立国会図書館への要望書:国立国会図書館の目録サービスについて(要望)」を日図研森耕一理事長名で提出した。整研が内容作成の実質を担った(『界』30(2), 1978.7)。これに対し国立国会図書館は副館長・酒井悌名で「国立国会図書館の目録サービスについて(回答)」を送付、充実化を約束した(『界』30(4), 1978.11)。整研は少しのちに「我が国における印刷カード事業の史的考察−今日的課題への文献レビュー的アプローチ」を『界』30(6), 1979.5で論じた。
 ところでNCR77には完成度の低い部分がある。図書以外の記述の条項と、排列に関する条項である。そこで主題目録の排列について、1978, 1979年の第19, 20回研究大会で藤井千年、志保田務が論述した。
 1978年は『日本十進分類法新訂8版』が出た年でもある。整研では1980年の第21回研究大会で野口恒雄、浅野十糸子が研究発表し、後の主題研究への基礎が築かれた。なお『NDC変換便覧』(8版対6,7版)を制作した。
 1980年からNCR77の構造的欠陥への批判が出始める。LA件の「ISBDから見たNCR新版予備版の問題点」(田口瑛子)等である。整研も、NCR77の批判を再開した。「NCR新版予備版適用上の問題点」としてこの年度をかけ検討し、第22回研究大会で山野美贊子等が追究した。また逐次刊行物(吉田暁史)、目録利用調査(吉田憲一)等の検討もこの時期に積まれた。
 1983年、丸山昭二郎JLA目録委員長のもと新目録規則の検討が始まる。整研は躍動場所をさらに探った。


◎1993年6月例会
日 時:7月3日(土)14時〜16:45
会 場:大阪市立天王寺図書館
テーマ:件名からみた複合主題と分類からみた複合主題
発表者:松井純子氏(大阪芸術大学)

出席者:10名
 「宗教と科学」などのように複数の主題が相互に関連した複合主題の分類についてNDCとNDLCそれぞれの場合における問題点を、いくつかの実例をもとに考察した。
 NDCやNDLCのような列挙型分類表では、複合主題に対応するための方策として、(1)複合主題の項目をあらかじめ表中に列挙する、(2)分類コードにより、複数の主題から主な主題を1つ選ぶ、(3)各主題ごとに記号を当てはめ、それらを合成する、の3通りがある。
 (1)について、NDCでは「316.2 国家と宗教」「374.6 家庭と学校との関係」「490.15 医学と倫理」「519.13 公害と社会」「699.8 放送と社会」などきわめて少数しかなく、NDLCでも「FA51 教育と社会」「K32 芸術と他の主題との関係」「M57 (科学と)他の主題との関係」「SC47 医学と他の主題との関係」「UC41 ジャーナリズムと社会」など20余りの項目が設けられているにすぎない。
 (2)については、選ばれなかった他の主題に対して分類重出が必要であるが、現状では重出されずに切り捨てられる傾向がある。
 (3)について、NDCでは形式区分04の注記に、「他主題との関連性及び特定の概念・テーマから取り扱われたもの(General special)も、ここに収めてよい」(NDC8版 p.333)との記述があり、他の主題との関係を表現できることになっている。しかし、本来内形式であるべきものが、外形式の04(論文集、雑著)と混在させられているという欠点がある。
 最後に、J-BISCから抽出された実例を見ながら、件名と分類との比較を行った。例えば同じ「宗教と医学」という件名をもつ2つの資料があり、一方は医学に、他方は宗教に分類されて、それぞれ分類重出は行われていない。すなわち、件名は主題間の優先関係を反映せず、比較・対照の場合と同様に並列的に表現されていることになる。


◎1993年7月例会
日 時:7月17日(土)14:10〜16:50
会 場:豊中市立岡町図書館
テーマ:『日本目録規則1987年版』の改訂動向と問題点
発表者:北 克一氏(大阪工大摂南大学)

出席者:13名
 『図書館雑誌』86(11), (12)に掲載された改訂案概要および、1992年10月17日及び12月19日付の改訂案をもとに、規則構成上の問題点を中心にして、問題点の指摘、解決方法の示唆などの報告が行われた。
1.1987年版→1993年版への改訂における問題点
(1)規則構成上の問題点
1) 完全版という名称の問題
2) 8, 10, 11章は第1次案のまま。章の完成をどうするか。
3) 12, 13章が繰り上がっている点。点字資料が11章に変わっている点。これらの必然性について。
(2)条項個々での問題点
1)「1.9書誌階層」の大幅な改訂。条項の組み替えは、外形式の整合性を高めたが、集合書誌単位の階層性に対しては十分には視野に入っていない。
2) 複合媒体資料をめぐる混乱。セットとは何か。用語概念軸にくるいがみられる。
3) 上位−下位のレベルがある場合の記録の順序
 構成レベルの記録だけが、下位→上位となること。また構成単位の階層がある場合の区切り記号法は。
4) 記述の基盤と情報源、特に集合単位の場合
・記述の基盤が明確でないための問題点:先に刊行されたもの、あるいは第1巻か。
・情報源は「その図書から」は問題。
5) タイトル関連情報が本タイトルのほか、並列タイトルにもある場合の記録順序の問題。
6) 物理単位の規定
・物理単位の定義Aは問題がある。1.10.0 「・・・集合単位)を分割した・・・単位」は、単行単位でもある。
・簡略多段階記述様式は、物理単位の記録ではなく、多段階記述様式の簡略方式であるはず。
7) 図書の記述の精粗:第3水準も例示して示すこと。
8) 標目
・MARC関係の条項が削除されている。
・著者標目の選定基準で、87年版での別法が本則に変更された根拠は何か。
2.改訂されない問題点
(1)固有のタイトルの定義を明示せよ。
(2)構成レベルの記録の記述要素が不十分である。
3.オンライン目録時代における目録規則のあり方等
 オンライン目録の時代では、伝統的な標目概念とは異なるあり方が必要。ワード検索、漢字検索、ブール演算など時代の変化に対応した取り組みが行われていない。また、論文レベルでの検索ができるように、構成レベルでの記録を充実させるべきである。
 発表の後、次のような質疑が行われた。
(1)87年版を改訂する必要性は何か。なぜ「完全版」と呼ぶ必要があるのか。
(2)今回の改訂によりどのようなメリットがあるのか。
(3)物理単位について
(4)団体の付属機関の標目選定等について。


◎1993年9月例会
日 時:9月25日(土)14:10〜16:50
会 場:大阪市立弁天町市民学習センター
テーマ:『日本目録規則1987年版』による書誌データベースの展開:書誌階層規定を軸として
発表者:北 克一氏(大阪工大摂南大学)

出席者:16名
 本発表の主旨は、書誌階層規定を軸とした書誌データベースの論理設計を行うことにより、その機軸の有効性の検証と問題点の指摘・解決の模索を進め、「日本目録規則」1993年改訂案に対する提言を探ることにある。
 書誌データベースの論理構造を、非逐次刊行物と逐次刊行物とに二分したうえで論究が行われた。
1.非逐次刊行物
 縦軸に単行書誌単位を中心に、上・下にN階の集合書誌単位と構成書誌単位を配し、横軸に記述、著者典拠、主題索引を見る。内、著者典拠、主題索引については、GAREガイドラインやUNIMARC Authoritiesを引きながら典拠コントロールの領域とする。そして、この典拠が対象とする書誌的実体を、先の3つの書誌階層を縦軸として対峙させた。ここで次の3点が問題提起された。
(1)[出版]物理単位特有の書誌的事項の展開方法
(2)構成書誌単位の記述の基盤と目次等情報の位置づけ
(3)付属資料等を例示として、物理単位[物的単位]特有の書誌的事項の展開方法とアクセスポイント化
 さらに、記述対象資料のさまざまな多様性を「セット管理情報」−2つの“belongo to”の関係として、静的と動的(アプリオリ/アポストオリ)に区分し、「コンビネーション情報単位」という概念を展開した。この基盤の上に立って、書誌データベースの書誌の特性を「レイヤ」と「属性」に分化すべきとし、最もシンプルな枠組みで、最も複雑な構造の記述対象を収めることが正解ではないかと提示した。
2.逐次刊行物
 逐次刊行物については、その特有の書誌的事項である巻次・年次に関する事項の位置付けと、所蔵巻次・年次との書誌データベース上のリンク構造や、製本単位、巻次・年次との扱い、さらに構成書誌単位および目次情報の構造上の位置などが論理図式を用いて発表された。1
 『日本目録規則』1993年改訂案に基づく書誌データベースの論理的検証から出発し、記述目録法と典拠管理の範囲を超えたかもしれないところまでの展開は、刺激にとんだものであった。


◎1993年10月例会
日 時:10月23日(土)14:10〜16:50
会 場:大阪市立弁天町市民学習センター
テーマ:整理技術史と整理技術研究グループ その4:新版予備版から1987年版へのかかわり
発表者:志保田務氏(桃山学院大学)

出席者:13名
 グループ史研究の最終回であり、ほぼ1980年代を対象とする。この時期の研究活動の特徴を次のようにまとめる。
1)新版予備版における主題目録の排列規則が不十分であるとの認識から、主題検索についての学習
2)整理技術全国会議への関わりからNCR1987年版への関与
 前回発表の中心であった新版予備版に対する批判展開はこの時期も続けるが、その中から分類目録や、件名目録の排列に関心が向かった。そこで、山下栄による「分類目録の件名索引法」(『界』30(2),1978. 30(5),1979)の実証的検討を始める。この連鎖索引法検討から主題系の学習の必要性を痛感し、Faceted Classification, PRECIS, BC2, Thesaurus Construction 等、基本文献の講読を進めた(1983-1988)。これらの学習はNDCの体系検討からNDC9版案批判に、また図書館学シソーラスの試作からBSHのシソーラス化などに結びつく。
 整理技術全国会議はこの時期、第8回:非図書資料、第9回:NCR本版化について、第10回:NCR本版案、を中心議題として開催された。それぞれに代表を派遣し意見発表や提言を行った。NCR本版策定にあたっては、当グループもこれを重要テーマと位置づけて対応した(1984-1990)。
 NCR1987年版成立後、この規則に導入された新しい概念である書誌階層の普及にも貢献した。
 なお、1984年『界』200号特集「わが国における図書館・図書館学の発展:昭和50年代を中心に」中の目録と分類関係2論文の作成過程に、グループが事実上関わった。
 活動史を総括して、グループの活動の中心はやはり「目録」であったといえる。主題系の課題に対して、「分類」はNDC中心ではあるが、それなりに取り組んできた。しかし「件名」ではそれほどの実績がない。また、機械系についても同様に弱いとみる。しかし、グループを世代的に見渡し、創設期のメンバーを中心とする第1世代、図書館目録規則作成期のメンバーを中心とする第2世代、新版予備版以降に加わった第3世代、機械系に強い第4世代とするなら、弱点である分野へは今後、主題系への挑戦を始めた第3世代や、機械化を得意とする第4世代が活動を進展させてくれるだろう。


◎1993年11月例会
日 時:11月20日(土)14:10〜16:50
会 場:豊中市立岡町図書館
テーマ:韓国・梨花女子大学図書館とその目録システムについて
発表者:田窪直規氏(奈良国立博物館)

出席者:8名
 文部省科学研究費補助金による「日韓両国に所在する韓国仏教美術の共同調査研究」で、1992年9月14日〜24日の期間、韓国で情報管理システムの視察を行った際に訪れた梨花女子大学図書館、国立中央博物館附属図書館について、整理関係事情を中心にスライドを使って報告された。なお、内容を補強する意味で、花房征夫「韓国の図書館」(『図書館雑誌』79(1), 1985)等が報告の際に参考にされている。以下に簡単に内容を紹介する。
1.韓国の図書館事情
(1)目録法:韓国目録規則(KCR)は、現在は第3版(1983)の誤字脱字等を中心に改訂した3.1版が使用されている。これに、標目篇と配列篇を加えた規則とするための委員会が1988年に発足している。
 この第3版では、日本の場合のように、基本記入方式から記述ユニットカード方式に変わっており、区切り記号法としてISBD区切り記号法を採用している。
(2)分類法:一般的には、公共図書館を中心に韓国十進分類法(KDC)が広く用いられている。KDCは、DDCあるいはNDCと類の構成が少し異なる。
0:総記 1:哲学 2:宗教 3:社会科学 4:純粋科学 5:技術科学 6:芸術 7:語学 8:文学 9:歴史・地理 の構成となっている。
(3)MARC:韓国文献自動化目録法(KOMARC)が作成されている。1992年8月現在、全国の71の図書館に約20万枚のカード提供を行っており、データ件数は45万レコードに及ぶ。現時点では、単行書と学位論文のみを対象としているが、古書、非図書資料の規則が整備され始める時期のようである。フォーマットは、外形式がISO 2709準拠、内形式は、おおむねUS MARCに準拠する。AACR2の影響を受けているので、現場では基本記入制が重視され、基本記入フィールドを持っている。
(4)図書館ネットワーク:「5大国家機関電算網計画」があって、1983年からは、その内の「図書館情報電算網」計画がスタートしている。1991年から5カ年計画で、国立中央図書館をセンターとし、19の地域センターと161の公共・大学図書館を接続する電算網の策定が目指されている。
(5)大学図書館等で所蔵する外国関係資料の大半は日本語資料である。例えば国立中央図書館の所蔵する100万冊の半数以上は日本語資料である。したがって、図書館学校では日本語の修得が必修単位となっている。以前は日本語資料は日本語による整理を行っていたが、現在では、通常の利用者は日本語が分からないので、大学図書館における日本語資料の整理方法は、(1)日本語読み方式、(2)ハングル読み、(3)両者の混在、の3つのケースに分かれているようである。
(6)また図書館学校在籍学生の約8割は女性と、女性優位であるが、結婚退職を前提とする慣行があるようで、図書館には年輩の女性図書館員は少ないようである。
2.梨花女子大学図書館とその目録システム
(1)梨花女子大学は韓国発の女子大学であり、韓国で3番目に古い名門大学である。11学部3大学院からなるが、情報学・図書館学の大学院コースを持っている。
(2)図書館のスタッフは57名で、29名が専門職司書、26名が非専門職、2名がコンピュータ専門家であり、職場異動が激しいようである。
(3)この大学の図書館学科崔錫斗助教授によりELIS(業務管理)システムが開発されており、そのコンセプトは“Easy to Use”である。OPACでは、蔵書70万冊中、約半分の34万冊が検索できるようになっており、メニュー式とコマンド式の二様の検索方式を備えている。
 なお詳細は、「韓国梨花女子大学とその目録管理システム及びOPACについて」(『図書館界』44(6):310-313, 1992)を参照のこと。
3.国立中央博物館附属図書館
 図書役2万数千冊、雑誌百数十点を持つ小さな規模の図書館で、分類はKDCを使用している。職員は2名だけで、それも正職員かどうかは分からない。図書館は外部の人が自由に利用できるようになっており、平均1日10名程度の利用者がある。


◎1993年12月例会 「整理技術研究グループ35周年記念の集い」
本例会は「整理技術研究グループ35周年記念の集い」の第1部として開催された。
日 時:12月11日(土)15時〜20時
会 場:なにわ会館

発起人:天満隆之輔、石塚栄二、拝田真紹、坂田摩耶子、塩見昇、前畑典弘、藤井千年、光斎重治、山下信、志保田務
実行委員:蔭山久子、野口恒雄、吉田憲一
出席者:秋田征矢雄、姉川宗夫、石塚栄二、泉谷嗣郎、伊藤順、岩猿敏生、遠藤栄三、小野泰昭、蔭山久子、柏田雅明、北克一、久保恭子、小西萬知子、坂田摩耶子、塩見昇、柴田正美、志保田 務、杉田健治、杉本節子、高橋慶男、高鷲忠美、田窪直規、武内隆恭、谷本達哉、田守チヨノ、槻本正行、辻本康博、天満隆之輔、戸田光昭、中村恵信、西田文男、西出浩二、野口恒雄、拝田真紹、馬場俊明、藤井収、藤井千年、古川肇、前川和子、前川理女、前畑典弘、松井純子、三浦整、水田登、向畑久仁、村岡和彦、山下信、山田伸枝、山野美贊子、吉田憲一、吉田暁史、渡辺信一 58名
 当グループは1957年(昭和32年)8月3日付けで故藤田善一氏、故森耕一氏を世話人として発足した。以来、日本の図書館整理技術の進展に寄与してきたと自負している。今回、35周年記念の集いには、この歴史を担われてきたメンバーが一堂に会する機会であるとともに、これからの新しい時代に飛躍していく契機として設定された。
〈第1部:記念講演と報告〉
記念講演:『目録編成規則』の成立前後 石塚栄二氏
報 告:資料から見た整研の活動史 志保田務氏
 石塚氏の講演は、整研の成立母胎となった目録排列法研究グループの活動を通して整研の成立に至る経過について話された。志保田氏は、今回の集いに備え、5回にわたり月例研究会で発表してきた整研の足跡を、戦後の整理技術研究の動向にてらし、年を追った形式で報告した。この報告は記念冊子「日本図書館研究会・整理技術研究グループ史」としてまとめられ、当日の出席者に配布された。
〈第2部:記念パーティ〉
 京阪神だけでなく、東は東京、西は岡山から元メンバーや整研の活動に関心を向けていただいていた方々ら51名が出席した。発起人を代表して天満隆之輔氏(日本図書館研究会理事長)は、1966年12月には10周年記念の講演とシンポジウムが開催されたが、それ以降このような機会をもてなかった。今回35周年を一つの節目に、整研を囲んだ図書館関係者が一堂に会し旧交をはかるとともに、整研のさらなる発展と研究の深化を期待したいと開催の挨拶をした。