TOP > 月例研究会 >  / Last update: 2008.1.1

1994年月例研究会報告

整理技術研究グループ


◎1994年1月例会
日 時:1月29日(土)14:10〜16:50
会 場:大谷学園帝塚山学舎
テーマ:目録法の蓄積と現代的課題−NCR92改訂まで
発表者:志保田務氏(桃山学院大学文学部)

出席者:12名
 日図研第35回研究大会においてグループ研究発表を行う研究テーマをまとめ、最終回としての検討を行った。
 目録規則の戦後の歴史をふまえ、今日のコンピュータ目録をも含めた規則はどうあるべきかを、NCR1987年版改訂の動向をも絡めて提起した。
 目録法研究の歴史的な経過が簡単ではないかとの指摘があり、それを受けて発表稿ではその点を配慮する旨回答があった。


◎第35回日本図書館研究会研究大会
グループ研究発表として下記の研究発表を行った。
日 時:2月28日(月)
会 場:兵庫県立労働センター
テーマ:目録法の蓄積と現代的課題−NCR92改訂まで
発表者:志保田務氏(桃山学院大学)

内容については下記論文を参照。
志保田務、北克一 目録法の蓄積と現代的課題−NCR1987年版の改訂案まで『図書館界』46巻2号 p.66-71, 1994.7


◎1994年3月例会
日 時:3月5日(土)14:10〜16:50
会 場:大阪市立弁天町市民学習センター
テーマ:パネルディスカッション『目録法と書誌情報』を巡って
パネラー:坂本 博氏(国立国会図書館)
      和中幹雄氏(国立国会図書館)
      山野美贊子氏(大阪府立大学総合情報センター)
      志保田務氏(桃山学院大学)

出席者:21名
 『目録法と書誌情報』の岩下康夫氏の書評(『図書館界』45(4):369-371, 1993)に対して、時を移さず和中幹雄氏の反論が次号(『図書館界』45(5):438-441, 1993)に掲載された。当研究会は執筆者グループの坂本博氏と和中幹雄氏を招いて問題提起の場を持つことにした。
1.まず志保田務氏が本書の成立経緯を時間的流れにおいてみると、情報化社会における図書館情報サービスの迅速性の要求が今日のコンピュータ目録の普及を促した一面があり、「NCR新版予備版」から「NCR1987年版」への改訂はそうした時代の変化を反映したものであろうと述べた。また、「第3回TP&Dフォーラム'93」で和中氏が「日本目録規則1987年版の歴史的位置」のテーマで目録法の主要な概念について論じたことを合わせて紹介し、本書に表れた目録思想には注目すべき点があろうと言及した。
2.次いで本書「第1部基礎編」の坂本博氏が、世界を広く巡り歩いて得られた目録法上の実例を具体的に解説した。坂本氏は、本書の「幻の11章」と称して「目録実務と目録法と専門職」(『整理技術研究』32:1-4, 1993)について触れ、氏が本書で著したかったことの結論であると紹介した。目録実務においては目録法のWhyを知った上で、自館の目的に沿った目録をつくることが真の専門家であると言及し、世界は広いと強調した。
3.「第2部応用編」の和中幹雄氏は、『目録法−その見方考え方』(国立国会図書館, 1989)が氏の目録法についての立脚点であると述べた。書誌単位についてはNCRの定義は一つの考え方ではあるが、データ要素ではない。データ要素の背後にあるものを考えたい、日本の目録規則は狭いと言及した。また本書(p.107)にも述べたとおり『日本全国書誌』の物理単位の分割記入は、“全国書誌作成機関である国立国会図書館が新版予備版を採用することによって完本記入を放棄した”ことによるとして批判した。
4.山野氏は、書誌ユーティリティに参加する共同目録作業時代の目録法について第6章でもっと具体的に展開して欲しかったと、この点については和中氏と同意見であった。
 書誌情報の共有という形態が広がり、電子媒体資料の出現によって書誌と目録を区別することが困難になる、あるいは区別する必要が減少していく傾向にあるとも考えられる。「所蔵」という概念自体も再検討する必要が生じるであろう。こういった点において目録法の基本原理に対する変化があるかもしれない。その意味で目録法と書誌情報の関係はまさに今日的な課題ともいえよう。
 基礎編については、「基本記入の標目邪魔論」が「きわめて乱暴な議論である」とする箇所(p.88)については、基本記入に対する過度の思い入れがあるように見受けられる。基本記入が現在でも有用であるとすれば、電子媒体資料等における著作の諸版の集中機能という今日的意味合いで論じて欲しかった。
 応用編では、使用される用語の種類、定義方法に問題があるのではなかろうか。なぜ「書誌単位」と「書誌的単位」を使い分けるのか。「著作」「出版物」「図書館資料」の定義については岩下康夫氏が「“著作単位”“書誌単位”と“書誌階層”:日本目録規則本版案批判試論」(『図書館界』38(3):148-154, 1986)で厳密かつ明晰に論じているように、「著作」という用語は多様な意味を帯びている。慎重な取扱いが望まれる。


◎1994年4月例会
日 時:4月30日(土)14:10〜16:50
会 場:大阪市立弁天町市民学習センター
テーマ:電子図書館における目次情報
発表者:谷口敏夫氏(光華女子大学)

 将来の電子図書館のデータ内容に関して、目次情報の重要性や意味付けを全文データと比較して論考した。


◎1994年5月例会
日 時:5月21日(土)14:10〜16:50
会 場:豊中市立岡町図書館
テーマ:刊行された『日本目録規則1987年版改訂版』を手にして
発表者:志保田務氏(桃山学院大学文学部)

はじめに
3.2 NCR1987年版の問題点
 NCR1987年版はこうした書誌レベルの面から見た欠点を解除するよう努めた。それが、1977年版における物理単位の記録方式を改めて、書誌単位での記録を導入したことに現れている。この「書誌単位」は「物理単位」に対応する範囲では「単行書誌単位」であるが、一記録の内部構造を階層化してその上位に集合単位、下位に構成単位を設定した。ここにこれらの書誌単位は階層構造を有するものとされているのである。しかし、ここにも問題があるのである。
3.2.1 書誌階層規定と、階層関係構造の蹉跌
 NCR1987年版が採った書誌階層規定は上下の関係付けを位置づけることで落着した。集合レベル、単行レベル、構成レベルという、大中小の構造である。ここに規定が躊躇された階層関係がある。それは水平関係のレベルづけである。ついに書誌階層的には規定化されなかった。この水平関係とは例えば、改題された集合単位の書誌階層的な関係づけである。
 逐次刊行物は、その刊行形式が一つの書誌単位と把握され、単行単位と列ぶ基礎書誌単位と規定された。それゆえ、単行単位の上位に位置する集合書誌単位及びその下位に位置する構成書誌単位を規定している。しかし、一逐次刊行物の総体をもって一書誌単位(逐次刊行単位)とする限りにおいて、その下位に構成単位を記すことは実際上は不可能なことである。これの構成単位の記録には物理単位(巻次等)を橋(中間の単位)とするのがよいのではなかろうか。
<表3>
 基 礎 単 位 −単行単位、逐次刊行単位−  集 合 単 位  [解題シリーズの水平関係]
 (集合単位)                 (単行単位)
 (構成単位)        [物理単位]    (構成単位)

3.2.2「記述の基盤」概念から見た問題
 逐次刊行物では、「記述の基盤」を規定している。これは、「どの巻を見て記録するか」という意味あいのことであり、「どの部分を見て記録するか」という「情報源」の規定ではない。この「情報源」に関する規定は非逐次刊行物(つまり「図書」等)に当然存する。しかし前者「記述の基盤」については、非逐次刊行物に関して規定されていない。規定されないその理由は、非逐次刊行物において記述の対象というものは「その資料」であるわけで、それぞれの「資料」のかさは逐次刊行物におけるように膨大でないから、「記述の基盤」などと改まって言わずとも目録作業できる、と考えられる所にるであろう。しかし、単行レベルにおいても多冊資料の記録では「どの巻を記述の基盤とするか」は問題点となる。さらに集合単位の記録では、「当の単行単位にともに記されている表示をそのまま記録することで本当によいのか」という疑問が出る。なぜなら、集合レベルの出力においては、その集合単位の総体がまとまって示されるのであり、各巻における形がことなると困難を来すのである。

3.2.3 書誌単位と物理単位との連携
 NCR1977年版が採った物理単位の見直しが一つには有力な手がかりとなる。
 構成書誌単位と物理単位との連携を考える。例えば、多冊資料(が単行単位を形成)の場合には物理単位(巻次)を経由せず構成書誌単位を記録することは困難ではないか。少なくとも、表示しないわけにも行くまい。
 これは非逐次刊行物を想定して記したが、逐次刊行物においてもしも「構成単位」を本当に記録しようとするならば、巻次ぬきでは全く意味をなさない表示となることは明かである。

3.2.4 目録規則諸条項の適用順序
 NCR1987年版は、多くのメディアに分けて記述の規定を有している。ところが、この「メディア」なるものは重複する。そこにおいては、条項間の優先適用順位の指示が必要であるがそれがない。


◎1994年6月例会
日 時:6月25日(土)14:10〜16:40
会 場:大阪市立阿倍野市民学習センター
テーマ:NDC改訂作業の最終段階を迎えて:補助表を中心に
発表者:古川肇氏(中央大学図書館)

 NDC9版の改訂作業は最終段階に入っている。あまり大きな変化のない9版ではあるが、補助表に関しては、地理記号表と言語記号表の独立という形式上の大きな改善がある。この補助表に関して改訂案の説明を行うと同時に、最新の改訂状況を概観した。
参考文献:JLA分類委員会 日本十進分類法第9版試案の概要 その11『図書館雑誌』87(4), 1993.4.


◎1994年7月例会
日 時:8月6日(土)14:10〜16:40
会 場:大阪市立阿倍野市民学習センター
テーマ:『現代の図書館』特集“整理組織の現在”を読んで
司会:志保田務氏(桃山学院大学)

 久しぶりに『現代の図書館』が整理技術に関する特集を組んだ。昨今では整理関係ツールの改訂動向が大きな話題となってきており、それに応じたものと考えらる。この特集号に掲載されている論文について、執筆者を交えて紹介と参加者による批評を行った。
参考文献:『現代の図書館』32(2), 1994.7.


◎1994年9月例会
日 時:9月3日(土)14:00〜17:00
会 場:大阪市立弁天町市民学習センター
テーマ:整理ツールの新時代
発表者:志保田務氏(桃山学院大学)

内容は『図書館界』47(3) p.112-121, 1995.11を参照。本例会は、日本図書館研究会研究例会との合同研究会である。


◎1994年10月例会
日 時:10月29日(土)14:10〜16:40
会 場:大阪市立阿倍野市民学習センター
テーマ:UDCからNDCを見る
発表者:浜田行弘氏(関西学院大学図書館)

 十進分類法のひとつであるUDC(国際十進分類法)は、図書の分類だけでなくドキュメンテーション等でも広く用いられている。UDCの概要と特徴を紹介し、ドキュメンテーションと情報検索における利用例を報告した。さらにUDCとの対比において、NDCの検討も若干行った。


◎1994年11月例会
日 時:11月26日(土)14:10〜16:50
会 場:大谷学園帝塚山学舎
テーマ:NDC9版刊行直前にあたって
発表者:吉田暁史氏(帝塚山学院大学)

 NDC9版も、いよいよ来春には刊行される。当研究グループはNDC改訂を機会として、主題検索に関わる諸問題について検討してきた。これらをまとめるにあたり 再度9版刊行までのいきさつを振り返りながら、9版の問題点等について整理した。同時に、オンライン環境下での分類の意義についても考察した。


◎1994年12月例会
日 時:12月17日(土)14:10〜16:50
会 場:大阪市立弁天町市民学習センター
テーマ:NDC8版を使用したOPACの主題検索支援システム構築の試み
発表者:渡邊隆弘氏(神戸大学付属図書館)

 NDC8版を使用したOPACの主題アクセス支援システムの実験的作成について報告した。とりわけ、検索支援ツールとしての諸機能実現に必要な分類表データベースの構造・内容についての論議があった。
参考文献:『図書館界』46(4), 1994.11, p.164-176

◎例会終了後、大阪駅前第3ビルで忘年会開催