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整理技術研究グループ月例研究会報告

ドキュメンテーション・整理技術とマークアップ言語

田窪直規(近畿大学)


日時:
2000年4月22日(土) 14:30〜17:00
会場:
法楽寺(大阪市東住吉区)
発表者 :
田窪直規氏(近畿大学)
テーマ :
ドキュメンテーション・整理技術とマークアップ言語
出席者:
光斎重治(愛知大学)、堀池博巳(京都大学大型計算機センター)、村井正子(システムズ・デザイン)、吉田憲一(天理大学)、倉橋英逸(関西大学)、笠井詠子(帝塚山学院大学)、渡辺隆弘(神戸大学図書館)、前川和子(堺女子短期大学)、蔭山久子(帝塚山大学図書館)、浜田行弘(関西学院大学図書館)、吉田暁史(帝塚山学院大学)、田窪直規

1.ドキュメンテーションと整理技術
 整理技術は、図書館資料組織化の技術であり、ドキュメンテーションは抄録・索引誌等作成の技術であり、実務レベルでは異なるように見える。しかし、実学・テクノロジーという学問的観点からすれば、前者は記録や資料自体の配列法・検索法に関する技術、後者は、記録の配列法・検索法に関する技術であり、同じものといえる。その上で整理技術およびドキュメンテーションとマークアップ言語の関係を考察する。

2.ドキュメンテーションの歴史とその定義内容の変化
 ドキュメンテーションの扱う対象と処理技術の変化からドキュメンテーションの定義の変遷(拡張)を考察する。
(1)オトレ(とラ・フォンテーヌ)の夢と現実
 オトレらがIIBを設立した時代にあっては、その構想の雄大さとは裏腹に、現実は出版物(せいぜい記録資料)の抄録・索引誌作成というレベルにとどまっていた。これに対応するドキュメンテーションの定義は、下記の定義1になる。
(2)記録資料と情報メディア
 博物館ドキュメンテーションも成立し、ドキュメンテーションの扱う対象が、記録資料(人の意志が介在)だけから、必ずしも人の意志の介在しない情報メディア一般へと拡大した。これに対応して定義は定義2のように拡張される。
(3)DBMSの登場
 DBMSが登場し、ドキュメンテーションの目的が、単に検索からオペレーション(操作)全般へと拡大した。検索、ソート、射影、結合といったDBMSにおけるさまざまな手法を利用できるようになり、対象となる記録資料等に対して、検索以外のさまざまな操作を施すことができるようになった。その結果定義は定義3のようになる。
(4)フルテキストDBMS
 まず、情報メディアを、その内容を表すメッセージと、内容を収録する容器としてのキャリヤーの2つに分けて考える。フルテキストDBMSの登場により、メディアのメッセージ(テキスト)成分を、あとから操作できるようになった。これによりドキュメンテーションの定義は、定義4のようになる。そして、この段階ではメッセージを操作するためにメッセージを構造化して記述するマークアップ言語(SGML、XMLなど)が必要となる。
(5)マルチメディアDBMS
 マルチメディアDBMSの段階になると、情報メディアのキャリヤー成分も含めて丸ごと操作の対象になる。たとえば古文書のイメージデータ(キャリヤー)を、その読み下し文(メッセージ)とを、一つ一つの文字との関連で研究したりするには、メッセージとキャリヤーを両方とも操作の対象としなければならず、そのためには両者を含めて構造記述するマークアップ言語が必要となる。この段階では定義5となる。

定義1 原形
 記録資料を対象とし、それに関する情報(データ)を構造化(パターン化)して記録し、あとから検索可能な形で蓄積する行為。
定義2 記録対象の拡張
 情報メディアを対象とし、それに関する情報(データ)を構造化(パターン化)して記録し、あとから検索可能な形で蓄積する行為。
 「対象が記録資料から情報メディアへ」
定義3 機能の拡張
 情報メディアを対象とし、それに関する情報(データ)を構造化(パターン化)して記録し、あとから操作可能な形(利用可能な形)で蓄積する行為。
 「検索から操作一般へ」
定義4 蓄積対象の拡張
 情報メディアを対象とし、そのメタ情報(データ)および/または、メッセージを構造化(パターン化)して記録し、あとから操作可能な形(利用可能な形)で蓄積する行為。
 「メタデータからメッセージそのものをも」
定義5 蓄積対象の再拡張
 情報メディアを対象とし、そのメタ情報(データ)および/または、情報メディア(メッセージおよび/またはキャリヤー)を構造化(パターン化)して記録し、あとから操作可能な形(利用可能な形)で蓄積する行為。
「メタデータから情報メディアそのものをも」

3.ドキュメンテーションと非ドキュメンテーション
 以上で述べたドキュメンテーションの定義のどの段階であっても、情報の組織化という操作が含まれていた。しかし、情報組織化を行わずに力業でデータを操作(検索)する、いわば非ドキュメンテーションの可能性が考えられる。

4.韓国の図書館情報学におけるマークアップ言語研究動向
 韓国においては、MARCがマークアップ言語の一形態であるのは自明のことであるという認識がある。そこでMARCが自然にメタデータへ結びつき拡張されて、研究されている。また全文データベースとマークアップ言語の研究も、図書館情報学対象領域の拡大として認識され、多くの研究や実際の全文データベースの作成も行われている。どうも韓国ではドキュメンテーション心とでもいうべきものが存在するようである。

 今回の発表内容の中心は、2のドキュメンテーションの定義部分であるが、これは下記の文献で論じられている。
田窪直規 ドキュメンテーションとファッション・ドキュメンテーション 『ファッションドキュメンテーション』8, 1999, p.4-17


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