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整理技術研究グループ月例研究会報告

長期の改訂過程の中に立つ目録規則

古川肇(中央大学図書館)


日時:
2003年3月29日(土) 14:30〜17:00
会場:
大阪市立総合生涯学習センター
発表者 :
古川肇氏(中央大学図書館)
テーマ :
長期の改訂過程の中に立つ目録規則
出席者:
伊藤真理(愛知淑徳大)、尾松謙一(奈良県立図書館)、蔭山久子(帝塚山大図書館)、柏田雅明(帝塚山学院大図書館)、川崎秀子(佛教大図書館)、河手太士(大阪樟蔭大図書館)、小山玲子(梅花女子大図書館)、光斎重治(愛知大学)、佐久間禮義(桃山学院大学生)、田窪直規(近畿大学)、田村俊明(大阪市立大学術情報総合センター)、藤井絹一(産業技術短大図書館)、堀池博巳(京都大学学術情報メディアセンター)、前畑典弘、松林正己(中部大図書館)、山岸修一(佛教大図書館)、山野美贊子(大阪府立大総合情報センター)、吉田暁史(帝塚山学院大)、渡邊隆弘(神戸大図書館)、古川肇

A.AACR2の2002年の改訂と今後の動向

レジュメに加え次の文献(抜刷)が配布された。
 古川肇「『英米目録規則 第2版2002年版』の二つの章」『資料組織化研究』47, 2003.2. pp.15-24
(1)改訂の背景
・改訂作業の中核組織であるJSC(Joint Steering Committee for Revision of AACR) の委員長 Huthwaiteは、情報環境の変化の中で浮かび上がってきたAACR2の欠点として、
(a)複製物の記述の基盤を手元にある資料に置くという大原則(0.24)が、リモートアクセスされる電子資料では成り立たない。
(b)新しいメディアには複合的な性格のものが多く、資料種別(GMD)による区分が破綻している。
(c)現在の規則はある時点での状態をスナップショットとして表現するものであり、電子資料のように時間の経過とともに変化していく姿は十分表現できない。
(d)フォーマット変換が容易・頻繁に行われるようになり、現在の規則では記入の乱立を招くことになる。
といった諸点をあげており、目下、こうした問題などへの対応が図られつつある。その過程において2002年版で、第3章、第9章、第12章を中心に改訂が行われた。
・今後はルーズリーフ形式で、1年ごとに改訂される(ただし見送られる年もある)。
(参考)Huthwaite, Ann, "AACR2 and its Place in the Digital World: Near-Term Solutions and Long-Term Direction" <http//www.loc.gov/catdir/bibcontrol/huthwaite.html>
(2)第9章(電子資料)
・章名をComputer FileからElectronic Resourceに改め、全面改訂された(正しくは2001年に行われた)。主な改訂箇所は、
(a)電子資料の利用形態を「ダイレクトアクセス」と「リモートアクセス」に二分
(b)情報源はタイトル画面に限定せず、「記述対象自体」に
(c)第3エリアをFile Characteristics Areaから、Type and Extent of Resource Areaに
(d)リモートアクセス可能な資料はすべて刊行物と見なして出版事項を記述
(e)形態事項はリモートアクセス型資料では記述せず
(f)"Welcome to"などの導入語句で始まるタイトルは、次の部分から記録する(第1章)
などである。
・改訂がNCRの同章(2000年刊)と比べて遅れたのは、依拠すべきISBD(ER)(1997)に対して、LC等から数々の異論が出されたためである。記述の情報源を「記述対象自体」とした点(ISBDは内部情報源と規定)などがISBD(ER)との結果的な差異であるが、その他にも、第3エリアの除去、リモートアクセス型資料における形態記述の許容、といった根本的な部分での異論があった。最近になってISBD(ER)の改訂案が提示されたが、JSC側の意見に近づいた趣旨となっている。
・ISBD(ER)で詳細に取り上げられ、NCR第9章の改訂時にも苦慮した版表示に関する規定(後述)に、あまり変更がないのは物足りない。
(3)第12章(継続資料)
・単行資料と逐次刊行物との二分法では加除式資料・データベース等の「更新資料」が把握できないとの問題意識から、第12章の対象を「継続資料」と捉え直し、更新資料に関する条項を追加したものである。改訂過程では、逐次刊行物の取り扱いについても、記述の基盤を最新号とするなど大幅な変更の提案があったが、最終的にはそれほど大きな変更はない。
・逐次刊行物の定義が変更され、巻次・年月次表示のないものも含まれることになった。
・継続的でない更新資料も本章の範囲に含まれ、すべての更新資料が取り扱われている。
・各条項において、逐次刊行物と更新資料を分けて規定する方式が随所でとられており、これまでほとんど無視されてきた更新資料が正当な扱いを受けるようになったと見なせる。
・時間の経過に伴う変化を新記入作成の要不要により大小に二分し、逐次刊行物の本タイトルの変化(第21章)について、ISSNとの統一を意図し「小さな変化」と見なす範囲を拡大する方向で改訂された。更新資料については最新の状態に合致させることが、原則である。
(4)その他の主な改訂
・0.24は、複製物の諸側面を対等に記述する、との趣旨に改訂された。
・書誌的事項からの検索に備えて、責任表示中の形と同一の出版者名を簡略化しないこととなった。
・第3章に地図資料の複合化(電子資料などとの)に対応する規定が新設された。
(5)今後の改訂動向
・2002年9月のJSC会合記録によると、今後の主要な検討テーマは次の諸点である。
(a)フォーマットのバリエーションの取り扱い
(b)FRBRの用語との結合
(c)標目の選定に関する第21章と"Rule of three"(責任表示を3人まで記述しそれ以上は省略する、という規則の通称)の問題
(d)序論(Introduction)の改訂
(e)資料種別の見直し

B.NCRの改訂動向

(1)第9章(電子資料)
・2000年の改訂では、適用範囲をリモートアクセス資料に拡張し、章名を「コンピュータファイル」から「電子資料」と改めた。
・改訂の目的が、電子資料を別扱いせず利用者が他の資料と一元的に検索できることにある点を確認したい。
・AACR2に比べると、ISBD(ER)に忠実である。例えば、内部情報源の優先など。
・異なる版表示と見なす範囲を限定した。
(2)第13章(継続資料)
・AACR2改訂案を参考に、2000年以降検討を進めている。対象資料に更新資料を加え、章名を「継続資料」と改める方向である。なお、integrated resourcesの訳語として「統合資料」等も候補にあがったが、資料の特性をわかりやすく適切に表現する「更新資料」を選択した。
・記述の基盤は、逐次刊行物では従来通り初号、更新資料では最新号とする。
・「巻次・年月次に関する事項」は「順序表示に関する事項」に改め、ISBDとの整合性を図る。
(3)和古書・漢籍(第2,3章への組み込み)
・2002年より検討を開始した。NIIのコーディング・マニュアルを参考とする。
・記述対象をmanifestationではなくitemとすること、書誌的巻数をタイトルの次に記録すること、責任表示の補記の方針などが論点である。
(4)横断的問題
・各章内にとどまらない横断的問題への意識が強まり、2002年から記録管理を行うこととした。
・第9章改訂に際して、複数の章に関連する記述対象に関して適用章の優先順位を明記することも検討したが、時期尚早として見送った。また、版表示の範囲を限定した結果、既存の章との不統一が生まれた。
・第13章とその周辺にもいくつか問題点がある。定義の見直し(巻次・年月次を要件から除くなど)、複製に関わる用語の整理、「逐次刊行単位」の位置づけの矛盾(単行単位と同格か、集合単位と同格か)、などである。

◎研究会終了後「古川氏ご定年をねぎらう会」開く
日時:3月29日(土)17時半〜20時
会場:いわむら(大阪駅前第2ビル地下2階)
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