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整理技術研究グループ月例研究会報告

図書館目録・メタデータの動向:

伝統の再構築と新たな胎動

永田治樹(筑波大学)


日時:
2003年11月15日(土) 14:30〜17:00
会場:
大阪市立大学医学部医療研修センター
発表者 :
永田治樹氏(筑波大学知的コミュニティ基盤研究センター・日本図書館協会目録委員長)
テーマ :
図書館目録・メタデータの動向:伝統の再構築と新たな胎動
出席者:
石井道悦(神戸大図書館)、井村徹(近畿大中央図書館)、江上敏哲(京都大図書館)、江崎紀行(名古屋工業大図書館)、尾松謙一(奈良県立図書館)、蔭山久子(帝塚山大図書館)、川崎秀子(佛教大学)、河手太士(大阪樟蔭女子大図書館)、久保恭子(神戸松蔭女子学院大)、光斎重治(愛知大)、佐久間禮義、慈道佐代子(京都大図書館)、申千恵(佛教大図書館)、進藤達郎(京都大物理工学系図書室)、杉本節子(大阪市立大修士課程)、高辻亜由美(奈良県立図書館)、田窪直規(近畿大)、田中美也子(大阪経済大図書館)、谷口美代子、多武典子(大阪市立中央図書館)、田村俊明(大阪市立大学学術情報総合センター)、呑海沙織(京都大学総合人間学部図書館)、難波朝子(アグレックス)、堀池博巳(京都大学学術情報メディアセンター)、前川和子(堺女子短大)、前畑典弘、柾川俊明(京都大図書館)、松田理恵(佛教大図書館)、松林正己(中部大)、宮下佐恵子(佛教大図書館)、村井正子(京都精華大図書館)、山野美贊子(大阪府立大総合情報センター)、吉田暁史(帝塚山学院大)、渡邊隆弘(神戸大図書館)、永田治樹

0.はじめに

ディジタル化・ネットワーク化にともない、ここ5年ほどの間に図書館目録・メタデータに関わる画期的な進展がいくつもあった。ウェブ技術を始めとして、ダブリンコア、XML、それに資源記述言語(RDF)の開発、あるいはリンキング技法やプロトコルなどの基盤技術である。また、図書館側でも、FRBRの最終報告書の刊行、MARC21やMODSの開発、ISBDや諸規則(AACR、NCR)改訂などの動きがあり、「国際目録規則」(ICC)プロジェクトも始まった。図書館目録・メタデータの将来を考える際のキーワードは、コミュニティを越えた情報のやり取りを考慮した「相互運用性」である。いまや図書館目録といえども図書館界だけで完結するのではなく、より大きな視野が求められる。

1.書誌レコード再考

書誌的実体とその関連を整理したFRBR(1998)は、図書館目録(書誌レコード)のあり方を利用者の関心から再考したものである。図書館目録は、FRBRにあてはめると、著作−表現形(Work-Expression)を統合しつつ、体現形(Manifestation)を記述するものである。しかし、この方式では、電子資料などの新しいメディアの増大により、コンテンツとキャリアのずれの問題が常態化する。また、名称について十分な配慮(典拠コントロールなど)ができていない点にも不足がある。
コンテンツとキャリアのずれは、資料種別(GMD)あるいは資料の特性の概念の混乱を表面化させ、ひいては規則構造の問題を引き起こしている。AACR改訂合同常任委員会などでも、多くの議論が重ねられてきた。その中で、Tom Delseyによる第1部再構成に関する最近の提案は興味深い。コンテンツ記述とキャリア記述とを分け、章立てを行うもので、コンテンツ記述には、「テキスト」「地図」「画像」「データ」等の10章を置き、それに続けて「印刷」「マイクロ」「デジタル」等のキャリアを記述するTechnical Descriptionに1章をあてている。また、刊行方式(完結か継続か)、刊行・非刊行、分出・多段階記述の三つのアスペクトからも、それぞれの章を配置する。
この問題についてNCRの歴史を振り返ると、1987年版は当初、書誌階層、刊行方式、資料種別、刊行・非刊行、複製というアスペクトが設定され、きわめて斬新なものだった。もっとも、その後曲折で現在のものに縮退しているが、次代のNCRでは、GMDや資料の特性問題の解決を含め、改めてこの問題に立ち向かうことになろう。

2.メタデータの進展

図書館目録はマニュアル作業を前提としていたため、アーキテクチャが未分化であったが、コンピュータを前提とする場合、目録を含めてメタデータを設計する上では、「構造」(要素の構成や順序等を決めるもの)、「構文」(要素の表記順序と形式)、「意味」(要素そのもの、いいかえれば情報資源の記述に本質的なもの)の各アーキテクチャを捉える必要がある(このうち「構造」は、「構文」「意味」の双方に関係する性格を持つ)。
「意味」の側面においては、ダブリンコア(DC)の存在がやはり大きい。DCは情報発見(のみ)を目的とするクロスドメインのメタデータである。15要素のシンプルDC(DCS)と、詳細化を加えたクオリファイドDC(DCQ)があり、さらに特定ドメインのアプリケーション・プロファイル(AP)による拡張も行われている。APの作成にあたっては、名前空間の参照によるタームの同定、ダムダウン原則の確保などによって、DCの枠組みの中での相互運用性が担保されることとなる。図書館AP(DC-Lib)の仕様はほぼ固まっており、15要素の他に「想定利用者」「版」「所属場所」を定義している。
「構文」の側面においては、機械処理が確実にできること(この点でISBD区切り記号は不適)、閉じられた世界の構文ではなくオープンな仕様であること(この点でMARCは不適)が重要である。LCがXMLベースで開発しているMODS(Metadata Object Description Schema)は、このような観点から注目に値するものである。

3.おわりに

「資源記述」のあり方は、作成側の視点ではなく、どのような利用があるのかという観点
から考え直すことが必要である。デジタル情報の流通がますます進展することからすると、
強い資源リンキング指向や知財管理の問題などを今後考慮していく必要があるだろう。
NCRの改訂は、継続資料(13章)と和漢古書(2-3章など)が進行中であるが、より広い
視野に立って「200X年版」への全体的な改訂準備も少しずつ進めている。いままでの枠組
みでいえば、とくに記述部の再構成と標目部の強化が求められよう。