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整理技術研究グループ月例研究会報告

「国際目録法原則に関する声明」の検討:

「目録規則再構築の動向」勉強会から

渡邊隆弘(神戸大学図書館)


日時:
2004年6月19日(土) 14:30〜17:00
会場:
大阪市立総合生涯学習センター
発表者 :
橋詰秋子氏(国立国会図書館)
テーマ :
「国際目録法原則に関する声明」の検討−「目録規則再構築の動向」勉強会から
出席者:
江上敏哲(京都大図書館)、蔭山久子(帝塚山大図書館)、川崎秀子(佛教大)、河手太士(大阪樟蔭女子大図書館)、進藤達郎(京都大物理工学系図書室)、杉本節子、田窪直規(近畿大)、中村恵信(大阪府立大総合情報センター)、藤井絹一(産業技術短大図書館)、堀池博巳(京都大学術情報メディアセンター)、吉田暁史(帝塚山学院大)、渡邊隆弘<13名>

本年度のグループ研究テーマ「目録規則再構築の動向」の趣旨・勉強会内容を報告した後、IFLA「国際目録規則に関する専門家会合」(Frankfurut, 2003)で策定された声明について検討した。

1.「国際目録法原則」の動向

・「国際目録規則」の開発はIFLA目録セクションの重点目標とされ、2007年までに各大陸で専門家会合が行われる予定である。
・2003年のフランクフルト会合では欧州各国の目録規則の比較、5つのワーキンググループなどが行われるとともに、「国際目録法原則に関する声明」の草案が検討された。
・声明は現在「最終草案」の段階にあるが、2004年(ブエノスアイレス)以降の会合でさらに検討の予定である。

2.国際目録法原則の内容検討

・パリ原則(1961)を代替・拡張するとの位置づけである。OPACや図書以外の資料への拡張のほか、その守備範囲を書誌・典拠レコードの全側面に広げる(パリ原則は標目の選択と形式のみを扱う)こととしている。
・伝統的目録の蓄積に加え、FRBR、FRANARを大幅に採り入れようとしている。
・「2 実体、属性、関係」ではFRBRモデルをそのまま採り入れた枠組みが設定されており、書誌レコードでは著作・表現形・体現形・個別資料の4実体を、典拠レコードでは「個人」「団体」「概念」等を含む11実体を設定している。そのうえで、書誌レコードは体現形(Manifestation)を反映すべきとしている。
・「3 目録の機能」では発見・識別・選択・入手というFRBRのユーザタスクを採り入れて説明している(4タスクに加え「ナビゲート」を設定)。「発見」について更に説明があり、「一つの資源」を見つけ出すことと、条件に合致する「すべての資源」を見つけ出すこと、が挙げられる。特定図書検索と著作の集中を掲げたパリ原則と照応するが、パリ原則に比べるとやや明快さを欠く。なお、「同一体現形に属するすべての資源」の記述意図が不分明である。
・「4 書誌記述」はパリ原則では扱われなかった部分であるが、国際標準への準拠と記述の完全性のレベルが述べられているだけで、具体内容はほとんどない。
・「5 アクセスポイント」はパリ原則の中心的な部分であるが、パリ原則を継承した記述も多く、他の部分に比べ具体的で詳細な内容となっている。「典拠標目の形式」として個人名・家族名・団体名・統一タイトルについて記述されているが、主題標目については全く言及がない。
・「6 典拠レコード」では、典拠標目と参照を扱っているが、記述は簡略である。
・「7 探索能力の基礎」では、「探索デバイス」等を扱っている。書誌・典拠レコードについて「不可欠なアクセスポイント」「オプショナルなアクセスポイント」を列挙しているが、「目録の機能」「アクセスポイント」とも密接に関連する事項であり、原則全体の構造がややわかりにくい。また「不可欠」「オプショナル」の根拠は不明である。
・最後に「目録規則構築の目標」として、「目録利用者の便宜」等9項目があげられている。「経済性」以外はSvenoniusの論を下敷きにしているが、Svenoniusにはあった各項間の階層関係がなくなっておりわかりづらい。

3.国際目録法原則の評価

・4月月例研究会で古川肇氏が「未消化」と評価されたように、FRBRやSvenoniusを引き写した箇所が多く全体がすっきり通っていない。
・著作・表現形・体現形・個別資料というFRBRの枠組みを採用しているが、表現形レベルの記述も検討されている中で、書誌レコードは「体現形を反映すべき」と断言してよいのかは疑問である。
・パリ原則と比べ書誌記述、主題アクセス、典拠レコードなど新たに対象となった事項が多いが、まだほとんど中身がない状態である。これらが更に検討されてはじめて、総合的な目録原則となりうるであろう。
<「国際目録法原則」原文>
http://www.ddb.de/news/pdf/ime_icc_report_berlin.pdf

(記録文責:渡邊隆弘)