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整理技術研究グループ月例研究会報告

Subject World:

異なる概念体系の統合と可視化の試み

村上晴美、平田高志、上田洋


日時:
2005年5月21日(土) 14:30〜17:00
会場:
大阪市立浪速人権文化センター 4階会議室1
発表者 :
村上晴美氏(大阪市立大学)、平田高志氏(防衛庁)、上田洋氏(大阪市立大学)
テーマ :
Subject World:異なる概念体系の統合と可視化の試み
出席者:
石田禎(ユニチカ)、伊藤寿、蔭山久子、川崎秀子(佛教大)、川田修裕(パシフィックシステム)、佐藤毅彦(甲南女子大)、新谷裕香(千里文化財団)、谷卓司(成安造形大非常勤)、田村俊明(大阪市立大学術情報総合センター)、藤井(大阪成蹊大図書館)、藤井靖子(千里文化財団)、堀池博巳(京都大情報環境部)、松澤二郎(河内長野市立図書館)、村上幸二(奈良文化女子短大)、山野美贊子(帝塚山学院大非常勤)、山本昭(愛知大)、吉田暁史(帝塚山学院大)、渡邊隆弘(神戸大図書館)、村上 <19名>

1.連想と視覚化

・「日常生活における記憶の解明と構築」を主な研究課題としているが、"Subject World"は「個人の記憶」「集団の記憶」の上に立つ「社会の記憶」を扱うものである。
・多様な情報ユニットをゆるやかに結びつける「連想型情報表現」による視覚化手法をとる。連想型情報表現は、述語論理等の「強い」構造を持った知識表現に比して、人による生成・理解やコンピュータによる生成が容易であり、雑多で不均質な情報の統合に有効であると考えている。
・情報ユニットの結びつけ方には対応関係や方向性の有無において様々な手法がありうるが、今回は「有方向、1対1」を基本とする。

2.Subject World:主題の世界

・本研究は、図書館OPACを中心とする主題検索支援を目的とし、多様な概念群の動的視覚化とOPACを利用した概念統合を提案するものである。これまでに、基本件名標目表(BSH4)と日本十進分類法(NDC9)という2つの概念体系(いずれも日本図書館協会から電子データが頒布)と、蔵書検索(大阪市立大OPAC)・書籍検索(Amazon)等を組み合わせたOPAC視覚化システムを試作している。
・期待できる効果として、(1)関連語などの手がかりを提示してキーワード入力を支援すること、(2)件名や分類の理解を支援すること、(3)ブラウジング・情報整理などの創造的情報活動を支援すること、がある。
・利用者が入力した語を手がかりに、該当するBSH4件名標目またはNDC9分類項目を中心とする概念地図(上位語・下位語・関連語)を示す。この地図は固定化されたものではなく、利用者の操作による編集・移動・削除が可能であり、上位概念が下位概念の下方に移動されても概念間の関係を表現できるといった柔軟性を持つ。
・概念間の関係はノードとアーク(矢印)で示されるが、BSH4の表示方式については大学院生を被験者とする実験調査に基づいて決定した。NDC9についても類似の方式をとり、概念体系が異なっても共通的な操作ができる。なお、BSH4データの各件名標目に付与された分類記号を足がかりに、両概念体系を統合的に扱って相互参照されることもできる。
・概念を示す個々のノードに対して、当該概念が付与された書誌データを呼び出すことができる。また、書誌データに複数の概念(件名や分類)が付与されていれば、それぞれに関連する概念を同時に視覚化表示することもできる。
・外部情報として、OPAC搭載の書誌データ以外にAmazon和書データやWeb上の書籍関連情報なども呼び出すことができる。

3.モバイルSubject World

・BSH4とNDC9を用いた携帯電話用の主題検索システムを開発している。携帯画面の制約から視覚化は行わず、リスト表示を基本とする。また、Subject Worldでは概念と外部情報(書誌データ等)は別々に検索するが、モバイル版では同時に検索を行い「概念との一致」「蔵書との一致」結果を並べて表示する。

4.Subject Worldの課題と今後

・システムの全般的な問題としては、ノード数が多くなると見にくく、操作しにくくなるという視覚化システムの根本的な問題があり、インターフェースの改善が必要である。
・OPACの書誌データに付与された件名・分類は種類・版次が様々であるが、これらをどう扱えば全体として整合性ある動作ができるかも問題である。
・特に、NDC9は階層構造のあり方などデータ構造が複雑であり、扱い方になお考慮の余地がある。
・複数の概念体系を統合することには多少の無理はあるし、より厳密な構造を持った概念体系を目指すべしとの考え方もありうる。しかし本研究の基本的な設計思想は、様々な概念・情報をゆるやかに結びつけて視覚化された提示を行うことで、利用者の情報探索を援助することにある。
<参考URL>
http://www.media.osaka-cu.ac.jp/~harumi/research/SubjectWorld/

(記録文責:渡邊隆弘)