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整理技術研究グループ月例研究会報告

トピックマップによる主題に基づいた資料整理

内藤求(ナレッジ・シナジー)


日時:
2005年6月11日(土) 14:30〜17:00
会場:
大阪市立浪速人権文化センター
発表者 :
内藤求氏(ナレッジ・シナジー)
テーマ :
トピックマップによる主題に基づいた資料整理
共催:
情報知識学会関西部会
出席者:
池辺正典(関西大学大学院)、石田禎(ユニチカ)、江上敏哲(京都大情報学研究科図書室)、蔭山久子、川崎秀子(佛教大)、河手太士(大阪樟蔭女子大図書館)、新谷裕香(千里文化財団)、瀬戸川教彦(日立システムアンドサービス)、田窪直規(近畿大)、中川正己(松山大)、堀池博巳(京都大情報環境部)、村上晴美(大阪市立大)、山崎直樹(大阪外国語大)、山野美贊子(帝塚山学院大非常勤)、山本昭(愛知大)、山本隆彦(松村組)、吉田暁史(帝塚山学院大)、吉田博哉(関西大学大学院)、吉野敬子(三菱ウエルファーマ)、渡邊隆弘(神戸大図書館)、内藤 <21名>

利用者の持つ概念体系に合わせて情報を分類・整理する手法である「トピックマップ(Topic Maps)」の概要と実際について発表された。

1.はじめに

・情報洪水の中で必要な情報にアクセスするには、言語の意味を理解した処理や情報の体系化・組織化が必要である。主題に基づく分類方法としては、古くから階層的分類等いくつかの手法があるが、トピックマップは主題(トピック)と「関連」の集合を扱い、主題間の関係(関連)を自由に定義可能である等の特徴を持つ。

2.トピックマップの枠組み

・「トピック(topic)」「関連(association)」「出現(occurence)」の3要素から構成され、関連領域における主題、主題間の関係、及び情報リソースとの関係を表現する。として扱える。実世界の対象物について記述した情報リソース(Subject Indicator と呼ぶ)を用いて、実世界の対象物もトピック
・「トピック」は、主題(概念や実体等、すべてのものが主題になりうる)を記号として表現したものであり、コンピュータ上で主題をモデル化するものといえる。
・「出現」は、情報リソースとトピックとの間の関係を示すものであり、トピックに関連するリソース(ドキュメント等)に対するURI参照がその典型である。これを「外部出現」と呼ぶのに対して、トピックマップ中に格納し各種プロパティを表現する「内部出現」もある。
・「関連」はトピック間の関係を示すものであり、アプリケーション内で必要な型を自由に定義可能である。関連に含まれるトピックは一般的には2つであるが、1つや3つ以上の場合もある。関連は双方向のもので、方向性は持たない代わりに双方のトピックに「役割(Role)」が設定される。
・トピックの名前(basename)・出現・関連は、有効範囲(scope)を持つことができ、ある範囲で特定の観点を表現させること等が可能である。

3.トピックマップの関連技術

・トピックマップ(ISOで標準化)とRDF(W3Cで標準化)は共に意味的に構造化されたデータを取り扱うもので、多くの共通点を持つが、相違点もある。RDFが「主語・述語・目的語」という1種類の表明(assertion)であるのに対して、トピックマップはトピック・出現・関連という3種類の表明を持つ。
・トピックを同定可能にする仕組みにPublished Subjects(公開された主題)がある。主題にURIを割り当てて、トピックマップ同士の併合(マージ)を容易にするものであり、コンピュータ内の情報リソースと実世界の対象物の両方に適用できる。誰でも公開可能であり、よいものが最終的に生き残るという分権的発想である。
・ネットワーク上に存在するトピックマップへのアクセスやフラグメント交換を可能にするRemote Access Protocolの標準化が望まれるが、まだ標準化されていない。また、トピックマップの検索・更新言語も、Ontopia社のtologをベースとして作成途上にある。相互交換の仕組みができれば、主題に基づく知識・情報を統合・体系化するSeamless Knowledgeを目指す土台が整う。
・トピックマップの標準化活動はISO/IEC JTC1 SC34 WG3で行われている。2000年に、ISO/IEC 13250として標準化され、その後JIS化もされている。現在は、その改定が進められている。

4.トピックマップの適用事例

・トピックマップの適用事例は、出版、アプリケーション開発、eラーニング、Webポータル、電子取引など多分野にわたっている。ノルウェー、オランダ等ヨーロッパ諸国で特に浸透している。
・発表者作成のトピックマップについて、視覚化表示、併合、検索等のデモンストレーションがあった。

5.おわりに

・トピックマップは、情報実体とメタデータを分離して扱うため実体の変更なしに情報の組織化・体系化が可能なこと、Subject Indicatorにより主題の厳密な識別が可能なこと、直感的な馴染みやすさを持つこと、情報資源に対する多様な視点の設定や視点間のナビゲートが可能なこと、など多くのメリットがある。

プレゼンファイルをご覧ください

(記録文責:渡邊隆弘)