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整理技術研究グループ月例研究会報告

セマンティックWebと資料組織法:

概念体系管理の今後

渡邊隆弘(神戸大学図書館)


日時:
2005年12月17日(土) 14:30〜17:00
会場:
大阪市立難波市民学習センター第4研修室
発表者 :
渡邊隆弘氏(神戸大学図書館)
テーマ :
セマンティックWebと資料組織法:概念体系管理の今後
出席者:
足立潔(国立国会図書館)、蔭山久子、上綱秀治(国立国会図書館)、川崎秀子(佛教大)、河手太士(大阪樟蔭女子大図書館)、谷口美代子、田村俊明(大阪市立大術情報総合センター)、堀池博巳(京都大情報環境部)、村上幸二(奈良文化女子短大)、山野美贊子(帝塚山学院大非常勤)、山本千恵(京都大図書館)、吉田暁史(帝塚山学院大)、渡邊 <13名>

セマンティックWeb(特にオントロジ)と資料組織法の接点について、2005年度のまとめとしての発表を行った。

1.セマンティックWeb (略)

2.セマンティックWebと資料組織法−考えられる接点

 両者には本質的な親和性があり、米欧では典拠コントロール、主題アクセス、ポータル等との接点を論じた文献が既に10本以上発表されている。論調としては、「図書館の伝統がセマンティックWebに貢献できる可能性」を主張するものが多く、やや楽観的・発散的な印象がある。扱う情報の粒度など両者には無視しえない違いもあり、注意が必要である。

3.セマンティックWebにおけるオントロジ

 セマンティックWebでは「RDFスキーマ層」「オントロジ層」で意味情報の共有を扱い、異なるオントロジ間の相互運用性を確保するためのオントロジ記述言語OWL(Web Ontology Language)が標準化済みである。OWLではリソースをグルーピングした「クラス」と、クラス間に設定される様々な「プロパティ」を基本として、概念間の関係性によって対象世界を表現していく。
(OWLの詳細は省略。4月月例研究会報告を参照されたい。)

4.主題アクセス法とオントロジ

 図書館情報学の世界の主題アクセス法をオントロジの手法によって改善する可能性が、いくつかの視点から考えられる。スコープノート等の言葉による定義に頼らず、他概念との関係性による定義を追求することは、より機械処理になじむ概念管理といえる。また、プロパティの自由な設定により、等価・階層関係以外の関係構造表現(例えばシソーラスではRTという単一の記号で表現するしかない)の弱さを克服できる可能性がある。階層関係においても、クラス間の論理演算や分離クラスの表現を用いて、より精緻な表現が行えるかもしれない。これらを具体化していくには、ディシプリンごとに必要なクラス・プロパティを検討していく必要があろう。

*当発表内容をもとに、日本図書館研究会第47回研究大会(2006年2月)で研究発表が行われた。さらに『図書館界』58巻2号(2006.7)に論文が掲載される予定であるので、詳細はそちらを参照していただきたい。

(記録文責:渡邊隆弘)