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上記科学研究費による韓国調査について、図書館系機関に絞って報告された。なお、この時には、文書館、博物館係機関をも調査している。
2005年8月17〜21日の日程で、文書館・アーカイブズ系、博物館系、図書館系の各中核機関を訪問調査した。発表者の興味は社会・文化情報資源の横断的なハンドリングにあり、今回は特に情報資源のデジタル化・ネットワーク化に焦点をあてた調査を行った。
日本で図書館情報学専攻学科を持つ大学は3校だが、韓国には専攻学科を持つ大学が30校以上、博士レベルでも10校以上ある。多数の学生が各方面に進出しており、文献情報学の社会浸透に大きな差がある。
例えば韓国では90年代後半のIMF危機に際してホワイトカラーの失業対策事業で情報資源のデータ入力が大規模に行われた。また、情報資源デジタル化を中核的に担当する「情報通信部」(「部」は「省」にあたる)が設置され、「知識情報資源管理法」に基づいてデジタル化やシステム構築に相当の補助金が注入されている。情報システム構築にあたってコンピュータ技術者や分野の専門家だけでなく文献情報学の専門家も中心的役割を果たすことも、日本との大きな違いである。韓国社会には情報(資源)を重視する土壌があり、単なるコンピュータシステムではなく、真の意味での情報システムが構築される傾向にある。
NLKは文化観光部の傘下にあって文字通り中央図書館(納本図書館)として機能しているが、2004年には国の図書館政策を担う機能も加わった。
図書館のワンフロアに「デジタル資料室」を設け、オフライン・オンライン媒体を共にサービスしている。また、1996年からWeb上の仮想図書館「国家電子図書館」事業を行い、関係機関の協力で資料デジタル化が進められた。2008年には「国立デジタル図書館(仮称)」の専用ビルが竣工し、デジタルコンテンツの作成・提供、ネットワーク情報源のアーカイビング、デジタル情報資源の納本受入等が行われる予定である。
一方、公共図書館に対するサポートも充実している。NLKの運営する書誌ユーティリティKOLIS-NETには公共図書館の約90%が参加しており、全国的な総合目録が構築されている。また、図書館情報管理システムKOLASUを公共図書館に配布しており、韓国の公共図書館は基本的に同一システムを用いている。さらに補助金等による公共図書館のデジタル資料室支援も行われており、国家電子図書館のコンテンツ提供やニーズの高い商用DBの一括購入による提供などの活性化策も打ち出されている。
その他、CIPセンターの設置や事後結合型の大規模な件名標目表作成等も注目すべき事業である。
KERISは教育人的資源部系の独立行政法人であり、教育(初等〜高等)情報及び学術情報に関する政策立案や支援事業を行っている。
研究・学術情報支援の分野では1998年からRISS(Research Information Service System)を運営しており、すべての四年制大学図書館が参加している。ILLを含む書誌ユーティリティ機能とフルテキストデータベース及び情報検索システムの提供を行っている。フルテキストDB構築では学位論文に重点が置かれているのが特色の一つである。その他、雑誌論文・学位論文等のメタ・データベースも構築されている。
(記録文責:渡邊隆弘)