整理技術研究グループ月例研究会報告
「国際目録原則」と東アジア:IME-ICC報告
渡邊隆弘(帝塚山学院大学)
- 日時:
- 2006年10月28日(土) 14:30〜17:00
- 会場:
- 大阪市立浪速人権文化センター
- 発表者 :
- 渡邊隆弘氏(帝塚山学院大学)
- テーマ :
- 「国際目録原則」と東アジア:IME-ICC報告
- 出席者:
- 江上敏哲(京都大情報学研究科図書室)、蔭山久子、川崎秀子(佛教大)、河手太士(大阪樟蔭女子大図書館)、倉橋英逸、佐藤毅彦(甲南女子大)、新谷裕香(千里文化財団)、田窪直規(近畿大)、堀池博巳、松井純子(大阪芸術大)、水元秀子(千里文化財団)、村井正子(日本アスペクトコア)、山野美贊子(帝塚山学院大非常勤)、渡邊 <14名>
「第4回国際目録規則のための専門家会合(IME-ICC4)」への参加を踏まえて、「国際目録原則(International Cataloguing Principles:ICP)」の現状や東アジア特有の問題点等について発表された。
1.「国際目録原則(ICP)」とIME-ICC
- IFLA目録分科会の重点政策として「国際目録規則(ICC)」計画が挙げられており、当面の活動はICPの策定作業である。2003年以降、順次各大陸で専門家会合(IME-ICC)が開かれ、「国際目録原則覚書」草案(以下、「ICP草案」)の検討などが行われている。4回目の今回は、IFLAソウル大会に合わせ、アジア地域を対象として開催された。2007年のダーバン会議(アフリカ地域を対象)が最終会議で、2008年には確定の見通しである。
2.ICP草案の概要
- いわゆる「パリ原則(1961)」を見直して、21世紀にふさわしい新たな原則を作ろうというものである。パリ原則は標目の選択と形式に特化していたが、ICPは目録のすべての局面に対象を拡張しようとしている。また、多様な資料を対象とすること、FRBRを大幅に採り入れていること、なども特徴である。
- 草案は毎年のIME-ICCで検討される。修正案が出た場合は、既に会議を終了した地域を含めて、世界各国による投票が行われ、修正が確定される。(草案の内容説明は省略
→2004年6月の発表)
3.IME-ICC4
- 2006年8月16〜18日の日程(実質は17日までの2日間)で、韓国国立中央図書館を会場として開催された。アジア12カ国の参加者にIFLA関係者を含めて約50名規模の会議であった。日本からは11名の参加があり、うち発表者を含む5名が日本図書館協会目録委員会委員である。
- 会議1日目は、ICP草案、ISBD、FRBR、VIAF(バーチャル国際典拠ファイル)の動向に関するプレゼンテーションの後、7カ国からカントリーレポートが発表された。
- 2日目は、「個人名」「団体名」「逐次性」「統一タイトル、GMD」「マルチボリューム/マルチパート構造」の5つのワーキンググループ(IME-ICC1以来一貫してこの5つのWGを設定)に分かれての議論が行われた。最後に各WGから提案・検討事項を整理・報告して閉幕した。
- ICP草案については、「7 探索能力の基盤」に示された「不可欠なアクセスポイント」を中心に、いくつかの提案が示された。最終的に修正案となって投票に付されるかどうかは現時点では不明である。
4.目録規則の標準化と東アジア(CJK)
- CJK各国の目録規則はいずれも非基本記入方式をとっているが、世界的に見れば依然として著者基本記入方式が多数派である。ICP草案ではパリ原則と異なり、どちらの方式も許容する表現となっている。しかし、今回の会議での議論でもCJK各国とAACRに準拠する国との間では話がすれ違うことも多く、今後「国際目録規則」を考えていくうえでは大きな問題である。
- 言語・文字に関わる問題もいくつかクローズアップされた。例えば、「ヨミ」に関する問題について日本から問題提起を行ったが、同じ漢字文化圏に属していても漢字形と表音文字との対応関係(どの程度一意性があるか)には差があり、「ヨミ」問題は日本の特殊事情と捉えられた面もある。一方、分かち書きの難しさはCJK各国に共通した問題で、ISBD(CR)における逐次刊行物タイトルの「重要な変化」の条件の一つ「冒頭5語以内」に対して、アジア言語への配慮に関する意見を述べることとなった。また、姓・名の区切り(日本ではカンマを用いるが、中韓では用いない)、同姓同名を識別することの困難性(特に中国・韓国)など、人名に関わる問題もいくつか出された。
参考:
http://www.nl.go.kr/icc/icc/main.php (IME-ICC4のサイト)
(記録文責:渡邊隆弘)