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インターネット時代において図書館目録の抱える問題と今後の見通しについて、主にここ数年の米国の文献を展望し(資料として、約80点の文献リストを提示)、問題点の整理を試みた。対象範囲は目録政策、目録業務、OPAC等で、目録規則や書誌・典拠データそのものを主テーマとする文献は対象外とした。
情報環境の変容に伴う目録の「危機」認識は、メタデータや目録規則をめぐる議論の中で1990年代から出てきているが、今世紀に入っていっそう明確となった。
LC副館長に就任したマーカム(Marcum)は、ネットワーク情報資源の伸張に伴う目録利用の減少と大規模デジタル化プロジェクトの進展という状況下において、従来の目録業務のコストを正当化できるのか、という問題を提起している。
一方、OPACの後進性も指摘されている。1984年にヒルドレシュ(Hildreth)は「OPAC世代論」を述べたが、そこでいう「第三世代」目録はいまだに実現していない。この間様々なアイデアはあったが提案倒れに終わり、後発の検索エンジンやオンライン書店に機能面で抜き去られてしまったという認識が、多くの文献で共有されている。
2005年末から2006年春にかけて、カリフォルニア大、インディアナ大、LCから相次いで研究図書館目録の見直しに関する報告書が出された。危機認識の強さ等に差はあるが、共通して、OPACの機能改善、目録業務のコスト削減(集中処理や出版流通との連携など)、メタデータスキーマの見直しなどが言及されている。
このうちLCの報告書は、コーネル大のカルホーンが委託されて執筆しており「カルホーンレポート(Calhoun report)」と通称される。本レポートは、悲観論の強調やビジネスモデルの適用などによって発表当初から強い注目を浴び、特にLC内部の「専門職組合」からの強い批判を呼んだ。専門職組合の批判は、研究図書館目録を対象とするレポートそのものから、次第にLCの目録政策全般へと向かっている。
OPACの機能改善については、実験もしくは実用システムがいくつか開発されている。新たな機能としてはまず、ランキングアウトプット、レレバンスフィードバック、誤りや「ゆれ」の吸収(スペルチェックなど)、提示情報の増強(目次、内容紹介、表紙画像など)といった、「第三世代」目録として提言されながらこれまで実装に移されなかった機能がある。これらの多くは、GoogleやAmazon.comが既に実現している機能でもある。また、分類・件名その他の情報を用いた「ファセット・ブラウジング」、FRBRの枠組みに沿った"FRBRization"(同一著作の集中表示など)も重要視されている機能である。その他では、利用記録情報による資料評価やソーシャルタギングなど、利用者による情報を活用しようという動きもある。
<参考> 関連文献等一覧(当日配布資料 PDF)(記録文責:渡邊隆弘)