情報組織化研究グループ月例研究会報告(2008.4)
学術電子情報資源と図書館システム
−リンクリゾルバー,ERMS,図書館ポータル
増田豊(ユサコ株式会社)
- 日時:
- 2008年4月19日(土) 14:30〜17:00
- 会場:
- 大阪市立浪速人権文化センター
- 発表者 :
- 増田豊氏(ユサコ株式会社)
- テーマ :
- 学術電子情報資源と図書館システム−リンクリゾルバー,ERMS,図書館ポータル
- 出席者:
- 石定泰典(神戸大学図書館)、伊藤祥(科学技術振興機構)、稲葉洋子(大阪大学図書館)、江上敏哲(国際日本文化研究センター)、大場利康(国立国会図書館関西館)、大西賢人(京都大学)、奥田倫子(国立国会図書館関西館)、蔭山久子、門昇(大阪大学)、川崎秀子(佛教大学)、光斎重治(近畿大学)、佐藤毅彦(甲南女子大学)、塩見橘子(大阪市立大学大学院)、末田真樹子(神戸大学図書館)、杉本節子(相愛大学)、田窪直規(近畿大学)、田村俊明(大阪工業大学図書館)、中村健(大阪市立大学)、坂東慶太(名古屋学院大学)、堀池博巳(摂津市施設管理公社)、村井正子(日本アスペクトコア)、八木敬子(相愛大学)、山内暁、山本知子、吉川直樹、吉田暁史(大手前大学)、渡邊隆弘(帝塚山学院大学)、増田 <28名>
リンクリゾルバーを中心に、ERMS、図書館ポータルを含む学術電子情報資源管理・提供の動向について、デモも交えて発表された。
1.リンクリゾルバーの仕組み
- リンクリゾルバーとは、リンクソース(起点)とリンクターゲット(到達点)の間に介在し、電子情報資源のリンク先URLをResolve(解決)するシステムである。URLには流動性がつきまとうが、そのメンテナンスを個々のリンクソースに委ねるのではなく、一元的に管理する。Ex Libris社のS・F・Xなど、いくつかの製品が頒布されている。
- リンクソースから要求を受けたリゾルバーは、「情報基盤(Knowledge Base)」を参照して状況を判断し、利用者に最もふさわしい「適切コピー」へのリンクターゲットURLを創出する。また、利用者に様々な選択肢をメニューとして示すことも行われる。
- 情報基盤は「解決」の成否を左右する重要な情報源であり、グローバルな部分とローカルな部分から構成される。グローバルな部分とは、電子ジャーナル(有料・無料を問わず)・電子ブック・OPAC・抄録索引サービス等の様々な情報資源について、プラットフォーム・パッケージ情報・提供年限・エンバーゴ等の情報を各出版者等から採取したものである。一方ローカルな部分とは、購読情報・所蔵情報など利用機関固有の情報である。
- リンクソースからリゾルバーには何らかのメタデータが送られるが、その形式は標準化されている必要があり、OpenURLが広く用いられている。現在OpenURLに準拠しているリンクソースには、主な電子ジャーナルプラットフォームや抄録索引データベースに加えて、EndNoteなどの文献管理ツールやGoogle Scholarなどもある。
- リンクターゲットURLの創出手段には、URLの推定、APIの利用、CrossRef等の利用、がある
。
2.リンクリゾルバーの効果
- 特定のタイトル(学術雑誌など)が、様々なプラットフォームでそれぞれ異なる条件で提供されている場合が多いが、機関の購読条件等も勘案して、適切コピーへの誘導を行うことができる。
- オープンアクセス誌なども含め、機関内における入手可能性の確認フィルターとなる。
- OpenURLに対応した検索エンジン(Google Scholarなど)からも、利用者を機関の状況に応じた適切コピーに導くことができる。
- 文献管理ツールやILL申込などの他システムにメタデータを引き渡して連携することができる。
- 情報基盤をもとに、電子ジャーナルリストなども簡単に作成できる。
- リンクの集中管理によって、保守管理効率が向上する。
- メニューに載せることで、利用可能な有用サービスの紹介・活用がはかれる。
- 利用統計の解析によって利用者の動向調査が行え、メニューの見直しなどが可能となる。
- リゾルバーには様々な製品があるが、リンクメニューの表現力、情報基盤の網羅性や精度、他システムとの連携などの機能差があり、効果に影響を与える。
3.ERMS
- ERMSとは電子情報資源管理システム(Electronic Resource Management System)のことで、情報資源や情報サービスのライフサイクルを通した管理支援機能を提供する、図書館員のためのスタッフツールである。
- 電子図書館連合(Digital Library Federation)によるDLF-ERMIが標準化された機能要件を示しており、これに準拠したものが各ベンダーから提供されている。関連の規格として、利用レポート交換のためのSUSHI(Standardized Usage Statistics Harvesting Initiative)や、ライセンス情報交換のためのONIX for Publication Licensesが開発されている。
4.図書館ポータル
- Ex Libris社のPrimoなど、図書館を通じて提供される様々な情報資源を統合的に扱う「図書館ポータル」が注目されている。印刷媒体を中心に管理する図書館システム、電子情報資源を管理する情報基盤、機関リポジトリなど様々のソースからハーベストを行い、インデックスを生成して統合検索に役立てる。
- 単一の入口で広範囲の検索をカバーすること、シンプルで直感的なインターフェース、ファセットクラスタリング等による簡便な絞り込み機能、パーソナライズ機能、利用者の参加機能、などがトレンドである。
(記録文責:渡邊隆弘)