情報組織化研究グループ月例研究会報告(2008.11)
NDC10版の作成作業
3類試案を中心として
大曲俊雄(日本図書館協会分類委員会)
- 日時:
- 2008年11月29日(土) 14:30〜17:00
- 会場:
- 大阪市立浪速人権文化センター
- 発表者 :
- 大曲俊雄氏(日本図書館協会分類委員会)
- テーマ :
- NDC10版の作成作業 : 3類試案を中心として
- 出席者:
- 上村孝子(大阪大学図書館)、川崎秀子(佛教大学)、故選義浩、塩見橘子(大阪市立大学大学院)、城下直之(エスオーファイリング研究所)、新谷祐香(千里文化財団)、末田真樹子(神戸大学図書館)、玉置さやか(大阪教育大学図書館)、藤倉恵一(文教大学越谷図書館)、堀池博巳(摂津市施設管理公社)、松川隆弘(大阪商業大学)、村井正子(日本アスペクトコア)、山野美贊子(帝塚山学院大学非常勤)、横谷弘美、吉田暁史(大手前大学)、渡邉勲(羽衣国際大学)、渡邊隆弘(帝塚山学院大学)、大曲<18名>
3類を皮切りに、日本十進分類法(NDC)10版の改訂内容が公にされはじめている。日本図書館協会分類委員会(以下、委員会)で3類を担当されている発表者より、3類試案の概要と全体的な作業状況等が発表された。
1.委員会における審議状況
- 金中利和委員長を中心とする現委員会体制の実質的な発足は、NDC9版刊行(1995)から7年を経た2002年であった。当初の委員は4名であったが、徐々に増強を重ね、現在は9名の委員会体制である(本務の事情等による委員の交代もあった)。毎月1回、3時間程度の委員会を開催している。2006年4月から、委員会記録をWWW上で公開している。
- まず9版の見直しを行い、2003年に正誤表を公表した。また、外部からの質疑に対する審議・回答は恒常的に行っている。その中で「モンゴリスムス(索引)」「癩(本表)」等の不適切な用語を変更もしくは削除する修正も実施している。
- 並行して、2003年から10版への改訂方針の審議を開始し、2004年4月には「改訂方針」を委員長名で『図書館雑誌』に公表した。類ごとに各委員が分担する体制をとっている(補助表、解説もそれぞれ担当者を決定)。担当委員が9版を精査し、改訂案や問題点を委員会に提出して審議する、という形を2004年以降続けている。その結果、2008年10月にまず3類の試案を公表するに至った(概要を『図書館雑誌』に、詳細をWWWに掲載)。
- 2008年4月、図書館調査の付帯調査として、分類に関わる全国調査を行った。集計が終わり次第、『図書館雑誌』等で結果を公表する予定である。
2.3類試案の概要
- 「改訂方針」に沿って、NDCの根幹に関わる体系(例えば、「経済」「産業」の分離の問題など)の変更は行っていない。出版点数の多い箇所は必要に応じて展開する。9版作成時には同一分類に「40冊」という目安が示されていたが、今回は特に目安の数は設けていない。その他、新主題の追加をはじめとして、全般にわたって必要な修正・追加等を行っている。
- その結果、現在の3類試案では、記号新設が22件、名辞や注記等の追加が149件、変更が98件となっている(以下の記録は特徴的な箇所のみ、全体像は試案を参照のこと)。
- NPO(335.89)、介護保険(364.48)、総合的学習(375.189)、大学院入試(377.8)などを新設した。また、入学試験(376.8)を学校種別で細分した。これらの新設は、図書の出版状況に基づいている。
- 犯罪被害者(326.3)、裁判員制度(327.67)、少子高齢化(334.3)、介護福祉(369)などについて、注記の追加によって扱いを明確化した。検討するうえでは、国会図書館等の分類実績も適宜参考にしている。
- 行政組織や法律関係については、最新の状況に合わせた新設・追加等を行った。行政組織(317.2)、会社法(325.2)が特に変更点の多い箇所である。
- 名辞の変更も広範囲に行っている。精神薄弱者→知的障害者(369.28等)、保母・保父→保育士(376.14)など法令等に根拠のあるもののほか、企業責任→企業の社会的責任(335.15)、登校拒否→不登校(371.42)など慣用の変化によるものもある。
- 上記のなかには、行政組織、NPOのように、9版補遺で示された内容を取り込んだものもある。
- その他、形式区分縮約項目の参照の追加、中間見出しの追加、なども若干行っている。
- 他に、発表者自身が課題と考えている点がいくつかある。法律の改廃・団体の変遷に伴う新・旧の扱い、外国の法律の別法、若干の個別主題の分類(社会主義、システム監査、数理社会学)、形式区分の縮約項目の参照、表記に関わるいくつかの問題、などである。
3.3類以外の試案
- 引き続き、2類・7類の順で『図書館雑誌』とWWWに試案を公表予定である。その後も順次公表し、半分以上の試案が公表となる2009年11月ごろに説明(検討)会を開催できればと考えている。
- 2類では、現代史・朝鮮史・中国史等に若干の項目新設等を行う。個人伝記(289)については各機関の分類実績を追認する形で「日本人」「東洋人」「西洋人およびその他」の三分法を新設する。日本考古学(210.025)については「地域は時代に優先する」という原則に従って注記を変更する。その他、市町村合併に伴う変更等も行う。
- 7類では、漫画・絵本・室内娯楽等に若干の項目新設を行う。美術品目録(703.8)と美術図集(708.7)の判断に迷う資料の増加に伴い、別法を設ける。その他、デジタルカメラ(742.52)、電子楽器(763.93)、スポーツ産業(780.9)等を新設する。
委員会における検討の様子や作業の大変さ、細部にわたる問題点の難しさなどが実感される発表であった。質疑では、改訂の基本方針、9版で削除された記号の扱い、団体・法令の旧名称の扱いなど、多岐にわたるやりとりがあった。
- 参考:
- 当日の配布資料(PDF 約340Kbyte)
ただし、「配布資料2」は以下の記事のコピーなので割愛します。
JLA分類委員会「日本十進分類法第10版試案の概要:その1「社会科学」の部」『図書館雑誌』102(10), 2008.10. p.734-737
(記録文責:渡邊隆弘)