索引は情報組織化の仕組みそのものといってよいほど重要なものなのに、これの基礎的研究はほとんど行われてこなかった。今回の発表では、このような問題意識から、基礎的研究として、これの構造解明・整理をおこなう。その後、索引構造にも言及して、情報組織化論の隘路について論じる。
索引は、基本的に、アクセス・ポイントの機能−アドレスの機能の組みからなるものと考えられる。ここで、アクセス・ポイントとは求める情報(を含むメディア)を探し出す手掛(鍵)となる情報を意味し、アドレスとは求める情報(を含むメディア)の所在情報を意味している。われわれはアクセス・ポイント経由でアドレスに導かれ、アドレスにより求める情報(を含むメディア)に案内される。上でアクセス・ポイントとアドレスの後に機能という語を付けたのは、これらは実体として2つある必要はなく、実体としては1つのものがこれらの両機能を果たす場合も考えられるからである。なお、目録のようにアクセス・ポイントとアドレスのほか、記述が付く場合もある。
アクセス・ポイント−アドレスの組みが複数連なる索引もある。例えば、CrossRefによるリンクをあげることができる。これは、電子雑誌の記事からこれで引用されている電子雑誌の記事に導くリンキング・システムである。この場合のアクセス・ポイントは、電子雑誌の記事に仕組まれているリンク元であり、これのアドレスはDOIである。一方、二つ目の索引としてDOIとこれのURLからなる索引テーブルが構成されており、この索引テーブルにはいつも最新のURLが登録されることになっている。CrossRefは、ここであげた二つの索引がDOIを橋渡しとして連なることで、求める情報資源(引用されている電子雑誌の記事)に導く仕組みを提供するものといえる。
上記から分かるように、索引は、アクセス・ポイントの機能−アドレスの機能の組みからなるタイプものと、このような組みが複数回繰り返されるタイプのものの2つに分類できる。なお、両タイプとも記述が付きうる。
索引の構成要素の内、アクセス・ポイントが重視されてきた。索引はアクセス・ポイントのあり様により分類されてきたし(例えば、事前結合索引、事後結合索引)、索引語の研究とは、アクセス・ポイントの研究を意味してきた。ただし、目録のように記述のある索引の場合、これも重視されてきた。
メディアを、何らかのメッセージを伝えるものと考えると、メディアはメッセージとこれに実体を与えるキャリヤーからなると考えられる。例えば図書というメディアの場合、その内容がメッセージにあたり、冊子体という実体がキャリヤーにあたる。
図書館のメディアの場合、メッセージのまとまりとキャリヤーのまとまりが1対1対応するとは限らず、1対n対応したり、n対1対応したり、ややこしい場合はn対m対応することがある。
情報組織化論、より焦点を絞れば目録法の世界では、メディアを1レコードで処理することが前提となっている。しかし、メッセージとキャリヤーのまとまりがずれる場合には、どのようにレコード作成単位を設定しても(著作単位であろうと、物理単位であろうと、単行単位であろうと)、1レコード処理では無理が生じる。
このような隘路の解決策として、1レコード処理をやめ、メッセージとキャリヤーについてそれぞれのレコードを作成し、両者を結合することが考えられる(つまり、1レコード処理から2レコード処理への転換)。これは、索引構造という観点からは、「アクセス・ポイント−記述−アドレス」という組みの2つ連なる索引が必要であることを意味している。
(記録文責 田窪直規)