情報組織化研究グループ月例研究会報告(2013.10)
NACSIS-CATにおけるRDA的要素:RDA実装の一例として
蟹瀬智弘(NPO法人大学図書館支援機構)
- 日時:
- 2013年10月26日(土) 14:30〜17:00
- 会場:
- 大阪学院大学
- 発表者 :
- 蟹瀬智弘氏(NPO法人大学図書館支援機構)
- テーマ :
- NACSIS-CATにおけるRDA的要素:RDA実装の一例として
- 出席者:
- 石田康博(名古屋大学)、井原英恵(神戸大学)、宇田隆幸(近畿大学工業高専)、宇田美知子、江上敏哲(国際日本文化研究センター)、大塚栄一(樹村房)、太田仁(福井大学)、大西賢人(京都大学)、尾松謙一(奈良県立大学附属図書館)、笠井美絵、川瀬綾子、河手太士(静岡文化芸術大学図書館)、古賀崇(天理大学)、忽那一代(京都大学)、坂本登代子(ナカバヤシ)、塩野真弓(京都大学)、杉山誠司(大阪大谷大学)、高野真理子(IAAL)、田窪直規(近畿大学)、田村俊明(紀伊國屋書店)、綱島由紀子、長瀬広和、中村友美、浜口敦子(京都大学)、日吉宏美(神戸大学)、堀池博巳、前川敦子(神戸大学図書館)、前川和子(大手前大学)、松井純子(大阪芸術大学)、松本尚子、村井正子(日本アスペクトコア)、村上幸二(奈良学園小学校)、南聡子、山上朋宏(京都大学)、和中幹雄(大阪学院大学)、蟹瀬<36名>
発表者の蟹瀬氏は、所属先のNPO法人(大学図書館支援機構:IAAL(アイアール))が主催・共催するRDA講習会の講師を務めている。本発表では、IAALの事業概要と、2012年〜2014年にかけて全国6か所で開催されているRDA講習会の状況を紹介された後、本題の発表に入った。まず1.でAACR2の後継の目録規則であるRDAについてFRBRモデルをベースにした書誌レコードの構造を説明し、2.でNACSIS-CATのレコード構造を分析した。最後に3.で両者の構造を比較し、共通点と違いを指摘した。
1.RDAの実体-関連
(1) 実体 RDAが定義する11の実体と属性の種類、および典拠形アクセスポイントについて説明した。
- RDAの実体には、目録の記述対象となる第1グループの4実体(著作・表現形・体現形・個別資料)、第2グループの3実体(個人・家族・団体)、第3グループの4実体(概念・物・出来事・場所)がある。
- 第2グループの実体は第1グループの実体を作成または所有したり、主題として扱われるという関係にあり、第3グループの実体は第1グループの実体において主題として表れるものである。
- 第1グループの4実体の属性(エレメント)の種類は、著作ではタイトル(選定タイトル(preferred title)と異形タイトル)、形式、日付、発生場所など、表現形ではコンテンツタイプや表現形の言語・日付など、体現形ではタイトル、責任表示、版表示、出版事項など、個別資料では所蔵歴や入手元など。
- 著作と表現形には、関連を表すための典拠形アクセスポイント(統一標目に相当)が定義されている。著作の典拠形アクセスポイントは「個人・家族・団体の選定名(preferred name)+著作の選定タイトル」の組み合わせで記録し、表現形の典拠形アクセスポイントは、著作の典拠形アクセスポイントに表現形の属性を組み合わせて記録する。
- 第2グループのうち個人の属性の種類は、氏名(選定名とその他の名称)、個人に関する日付、称号など。
- 第3グループの実体の属性に関する規則は未刊。
(2) 関連 実体間の関連の種類について説明した。
- RDAが定義する関連の種類は次の6種類である。
*第1グループの実体間の主要な関連(primary relationship)。すなわち著作と表現形、著作と体現形、表現形と体現形、体現形と個別資料それぞれの関連。これらは双方向で把握される。
*第1グループと第2グループの実体との(to)関連。
*第1グループと第3グループの実体との(to)関連。(ただし第3グループの関連に関する規則は未刊)
*第1グループの実体の間(between)の関連。すなわち著作と著作、表現形と表現形、体現形と体現形、個別資料と個別資料それぞれの関連。(ただしこれ以外の関連もある)。
*第2グループの実体の間(between)の関連。個人、家族、団体それぞれの関連。
*第3グループの実体の間(between)の関連(未刊)。
- 関連では、論理的に考えうるすべての組み合わせが列挙されている。
(3) 関連の記録方法
- 書誌レコードにおいて関連を記録する方法としては、以下の三つの方法がある。@すべての実体についてID(たとえば体現形のIDとしてISBNやISSN、個人のIDとしてLCCNなど)を記録する。A著作、表現形、個人・家族・団体について典拠形アクセスポイントを記録する。B第1グループの主要な関連や実体の間の関連を記述によって表現する。主要な関連の記録では、複合記述を用いることができる。
- 主要な関連および第1グループと第3グループの実体との関連以外の関連では、RDAの付録Jに示されている関連指示子(relationship designator)を用いて関連の中身を具体的に示すことができる。
(4) 想定されるレコード構成 [略]
2.NACSIS-CATのレコード構造
NACSIS-CATのレコード構造について、RDAとの比較のため、四つの観点から整理して説明した。
(1) レコード構成(データ構造)
- NCSIS-CATのデータは、書誌レコード、典拠レコード、所蔵レコード、参加組織レコードからなる。
(2) リンク関係
- NACSIS-CATには各種のリンク関係が設定されている。親書誌と子書誌のリンク(PTBL)、書誌と著者名典拠のリンク(AL)、書誌と統一書名典拠のリンク(UTL)、書誌と所蔵のリンク、さらには著者名典拠レコードや統一書名典拠レコード同士のリンク(SAF)がある。また、所蔵と参加組織レコードの間は「リンク」とは呼ばないが、所蔵レコードにFANO(参加組織レコードID)を記録することで、リンク関係を示していると言える。
(3) レコードの構造
- 書誌レコードは、コードブロック、記述ブロック、リンクブロック、主題ブロックの4ブロックからなり、それぞれに固有のフィールドが規定されている。
- このうち、コードブロックのVOL、ISBN、PRICE、XISBNの各フィールドには出版物理単位の情報を記録する。また記述ブロックには、TR以外にVT、CWなど各種のタイトルを記録するフィールドがある。VTには、資料中に表示されている原タイトル、翻訳タイトル、検索のためのその他のタイトルを記録できる。CWには構成単位の著作を記録できる。
- 著者名典拠レコードのTYPEフィールドには、団体・会議・個人の各属性コードを記録できる。
- 統一書名典拠レコードの記録には3パターンある。無著者名古典・聖典・作曲者不明の音楽作品は「タイトル」のみを記録し、著者名を有する古典作品は「タイトル(著者名)」の形で記録。作曲者名を有する音楽作品は「著者標目−タイトル」の形で記録する。
(4) リンクフィールドの記録方法
- ALフィールドには、「その他の情報」として「著」「編」「編纂」などの役割表示を記録できる。
- UTLフィールドには、やはり「その他の情報」として、言語や版の種類、刊行年などを記録できる。
3.NACSIS-CATのレコードとRDA
これまでに見てきたことがらをもとにNACSIS-CATとRDAを比較し、共通点や違いを指摘した。
(1) 実体とレコード
- NACSIS-CATの書誌レコードはRDAの体現形+表現形の組み合わせに相当し、所蔵レコードは個別資料に相当する。また参加組織レコードと著者名典拠レコードはいずれもRDAの第2グループの実体に対応し、統一書名典拠レコードがRDAの著作に対応する。RDAの第3グループに対応するNACSIS-CATのレコードはない。
- RDAで表現形の属性として記録される表現形の言語・日付・その他の特徴(版や役割表示など)は、NACSIS-CATではUTLフィールドに記録される。また表現形の内容記述のうち要約、録音(撮影)場所・日付、内容の言語、索引や書誌の有無などはNOTEフィールドに記録し、図・色・音・アスペクト比などの情報はPHYSフィールドに記録される。このようにNACSIS-CATでは、表現形の属性が体現形の中に埋め込まれるように記録され、表現形の独立したレコードは存在しない。
- RDAの個人・家族・団体は、NACSIS-CATでは著者名典拠レコードと参加組織レコードに分かれて記録される。「家族」はNACSIS-CATにはない。
(2) 関連とリンク
- RDAの主要な関連に相当するものは、NACSIS-CATでは著作−体現形−個別資料の関連のみ、リンクとして表現される。また、著作は統一書名典拠レコードに記録されるが、個人・家族・団体とのリンクはない(書誌レコードとのリンク、関連指示子はある)。体現形には、出版者としての個人・家族・団体とのリンクがない。
- 第1グループの実体間の関連については、著作−著作の関連と、体現形−体現形の関連のうち全体−部分関係(PTBL)のみリンクがある。関連指示子なし。第2グループの実体間の関連については、個人−個人、団体−団体の関連(著者名典拠レコードのSAF)のみ、リンクがある。
(3) その他
- AACR2の「記述の精粗」がなくなった一方、コアエレメントが定義された。RDAのエレメントは細分化されている。
4.質疑応答
NACSIS-CATのRDAへの対応はどうなるのか、NACSISはどういう方向に向かおうとしているのか、といった質問がフロアから出された。それに対し、RDAに対応する見通しである、また今のままでも不都合はないが、書誌的世界の再構築の動きに取り残されるおそれがある、という回答があった。
(記録文責:松井純子 大阪芸術大学)
- 当日の資料
- スライド資料(http://www.iaal.jp/rda/index.html)