発表者は、私立大学図書館協会東地区部会の分類研究分科会の代表者として、「日本十進分類法」(以下、NDC)を理論・実務の面から検討を重ね、批評してこられた。また、2007年から日本図書館協会分類委員会(以下、JLA分類委員会)の委員として、NDC10版の改訂や編集作業に携わっておられる。 今回、JLA分類委員会の立場ではなく、分類研究分科会でのNDC10版試案の検討をもとに、以下の内容でご発表いただいた。
これまで分類研究分科会とJLA分類委員会はNDC批評を通じた関係であった。その後、分類研究分科会がJLA分類委員会へNDCについて第1次(2007年)から第4次(2014年)まで意見書を提出し、また第1次意見書提出後に分類研究分科会から1名(発表者)がJLA分類委員会に参加することとなり、支障のない範囲で相互の意見交換をする関係となっている。
2004年に発表されたNDC10版の改訂方針に関しては,NDC9版改訂方針を踏襲して、NDCの根幹にかかわる体系の変更はしないこと、ただし情報科学(007)と情報工学(548)については,統合の可能性を検討することとなった。課題として、補助表の構成、冊子体の構成、マニュアルの充実、MRDF(機械可読ファイル)の方向性などがあった。この方針に示された刊行予定からは大幅に遅れたが、現時点では2014年中の刊行を予定している。
NDC10版の改訂試案の詳細は、JLA分類委員会ホームページで確認できる。また、「日本十進分類法(NDC)新訂10版試案」関西説明会が開催される。 (発表者からJLA分類委員会が公表した試案の要点について、0類から9類まで順番に説明があった。)
分類研究分科会では、基本的にはJLA分類委員会がホームページで公開したNDC10版の試案を読み、NDC9版との差異を検討し、妥当性や問題点を確認した。(発表者から、分類研究分科会で検討した問題点について0類から9類まで順番に説明があった。)
NDC全体の問題点として、用語や注記のアップデート、生没年や活動期が複数の時代にまたがる作家の作品、伝記、研究書の分類をどの時代に収めるか等の「人」をめぐる問題、「人」の区分と分類番号が一貫しない問題、形式区分の複合使用の問題、分類番号の縮約の問題、注記の問題について分類研究分科会で検討した。
分類研究分科会では、NDCについて問題点を整理して、JLA分類委員会へ第1次(2007年)から第4次(2014年)まで意見書を提出した。(発表者から、その意見書と回答について、順番に説明があった。)
第1次意見書では、中間見出しの定義、補助表記号の付加方法、固有名があるときの体系、固有補助表のページ記載、相関索引の充実、マニュアルの整備について、意見を提出した。
第2次意見書では、2010年1月に総論として、補遺の漸次発行について、相関索引のデータベース化および関連する電子化に関して、縮約の見直しと形式区分の再検討、「人」の種類を扱う一般補助表、図書館と関連主題を扱うための固有補助表、007と548の統合について、意見を提出した。そして同年3月には各論として0類、2類、3類、7類試案に対して意見を提出した。
第3次意見書では、冊子構成の見直し、「解説」の改善、「人」に対する一般補助表の必要性、「人」を分類する際の規程、1類・5類試案、9版「解説」の問題点について、意見を提出した。
第4次意見書では、4類・6類・8類・9類・情報学試案、これまでの問題点の再整理、部分的完全改訂の可能性について、意見を提出する。
「『使いやすいNDC』は実現可能か」というテーマが2010〜2011年度の分類研究分科会のテーマだった。使いやすさとは「誰に対して使いやすいのか」、「なにをもって使いやすいのか」、「物理的に使いやすいNDCとはどのようなものか」を考えて、NDCを理論・実務の面から今後も検討を重ねたい。
(記録文責:尾松謙一 奈良県立大学附属図書館)