情報組織化研究グループ月例研究会報告(2014.4)
書誌コントロールに関する最近の動向:LOD時代の目録
渡邊隆弘(帝塚山学院大学)
- 日時:
- 2014年4月19日(土) 14:30〜17:00
- 会場:
- 大阪市立市民交流センターなにわ
- 発表者 :
- 渡邊隆弘氏(帝塚山学院大学)
- テーマ :
- 書誌コントロールに関する最近の動向:LOD時代の目録
- 出席者:
- 石田康博(名古屋大学)、稲葉洋子、井原英恵(神戸大学)、井村邦博(アイキューム)、江上敏哲(国際日本文化研究センター)、大西賢人(京都大学)、尾松謙一(奈良県立大学附属図書館)、蟹瀬智弘(IAAL)、川崎秀子、川瀬綾子、河手太士(静岡文化芸術大学図書館)、阪上宏一(枚方市立中央図書館)、佐藤久美子(国立国会図書館)、塩見橘子、篠田麻美(国立国会図書館)、田窪直規(近畿大学)、長坂和茂(京都大学 工・化学系図書館)、長瀬広和、中村健(大阪市立大学)、中村友美、平松晃一(神奈川新聞社)、堀池博巳、前川敦子(神戸大学附属図書館)、松井純子(大阪芸術大学)、松本尚子、水野翔彦(国立国会図書館)、村井正子(日本アスペクトコア)、山本宗由(愛知淑徳大学)、横谷弘美(大手前大学)、四井恵介(CR-ASSIST)、和中幹雄(大阪学院大学)、渡邊<32名>
発表者が毎年『図書館年鑑』に執筆している「整理技術と書誌情報(問題別概況)」をもとに、2012年後半以降の動向整理を行う発表であった。
1. 4年前(2010.5)に述べたこと(ふりかえり)
- RDA刊行直前の2010年5月に行った、今回と同趣旨の月例会発表をふりかえった。「次世代OPAC」の登場、LC(米国議会図書館)の報告書On the Recordをめぐる動き、NDL(国立国会図書館)の書誌データ作成・提供方針、NACSIS-CATの将来検討、「公共的書誌情報基盤」、国際目録原則、RDA、NCR改訂の動き、等が主なトピックであった。
2. LOD(Linked Open Data)と書誌コントロール
- 『図書館年鑑』の概況を振り返ると、最初にLODを話題としたのは2010年分であった。図書館界におけるLODへの注目は2008年ごろからで、Web APIやセマンティックウェブへの注目はもっと早く2000年代前半である。2010年分以降の概況では、国内外ともにLODに関わる動向が一定の比重を占めている。
3. 目録サービスの動向
- ここからは、2012年後半以降の動向を整理する。目録サービスについては、ディスカバリ・サービスが国内でもかなり普及し、日本語コンテンツの収録が問題となっている。その他、NDL(NDLサーチの正式公開やラボサーチ)やNII(CiNii Books)の検索システム、目録データの外部開放にも一定の動きがあるが、書誌コントロール政策や目録法の動向に比べると、やや動きが少ないように思われる。
4. 書誌コントロール政策、目録業務の動向
- 2013年2月にIFLAから「国際書誌コントロールに関する声明」(IFLA Professional Statement on UBC)が出された。UBCの重要性を再確認する短い文書だが、IFLAに「書誌コントロール」を冠する常置の組織がなくなっている中で、理事会直下のProfessional Committeeの承認のもとに発表されたことに意味がある。
- VIAF(バーチャル国際典拠ファイル)は2012年からOCLCの運営となり、順調に発展している。Wikipediaとの大規模連携なども注目される。
- 国内に目を移すと、NDLから「国立国会図書館の書誌データの作成・提供の新展開(2013)」が公表された。今後5年程度を見据えた新方針で、図書館資料と電子情報の両方を適切に扱えることをめざし、書誌フレームワークの構築、書誌データ作成基準の策定、典拠データ作成等の拡大、全国書誌の拡張(電子情報の収録)、書誌データの開放性の向上などを掲げている。その他NDLでは、全国書誌サービスの改善、書誌データの国際流通拡大(VIAFやWorldCatへの提供)の動きもある。
- NII(国立情報学研究所)では、2012年に発表された「電子的学術情報資源を中心とする新たな基盤構築に向けた構想」において、NACSIS-CATのLOD対応等が今後の方向として示され、推進体制の整備も課題とされた。2013年度以降、NIIと大学図書館による「連携・協力推進会議」のもとに設置された「これからの学術情報システム構築検討委員会」がNACSIS-CATに関する検討を行う体制となり、2014年2月には「総合目録データベースのデータ公開方針」がパブリックコメント募集を経て公表された。
5. 目録法の動向(目録規則と書誌フレームワークを中心に)
- IFLA目録分科会では原則類の策定は一段落ついた状態であるが、ISBD利用調査や国際目録原則改訂検討などの動きがある。
- 2013年3月末から英語圏ではRDAの実運用が本格的にスタートされた。英語圏以外でもシンガポールやマレーシアの国立図書館で既に運用されているほか、欧州でもいくつかの国で導入計画がある。翻訳も進み、フランス語版・ドイツ語版が既にRDA Toolkitに搭載されたほか、スペイン語・中国語への翻訳も進んでいる。
- RDAについては、改訂サイクルの確立も注目される。夏までに受付けた提案を11月のJSC会議で審議し、決定事項は翌年前半に反映させるという手順である。軽微な修正事項や用語集の追加等は随時行われ、2012年以降で約10度のToolkit改訂が行われている。その他、エレメントや選択語彙リストのメタデータレジストリへの登録も進められている。
- MARCに替わる「書誌フレームワーク」として、BIBFRAMEの開発がLCで進められている。LODを強く意識したフレームワークで、Work, Instance, Authority, Annotationの4つを最上位の実体とするモデルが提案された。私見では、BIBFRAMEには多くの評価点があるが、FRBRとの関係や対象範囲の曖昧さなど、問題点も多いように思われる。
- RDAについては、国内でも注目が高まっている。そうした中で、JLA目録委員会では2010年以降、NCR(日本目録規則)の抜本改訂作業を進めてきたが、2013年5月にNDL収集書誌部から連携についての申し入れを受けて合意し、9月以降は両者の連携による改訂作業が行われている。連携開始にあたっての合意文書・方針文書では「RDAに対応」した規則(従来の目録委員会方針では「長所を個別に検討して取り込む」)をめざす等の留意事項とスケジュール、主な改訂内容を記している。新規則公開は2017年度をめざし、改訂内容については概ね従来の目録委員会方針を踏襲している。
- 2014年2月に開催されたNDL「書誌調整連絡会議」の記録・資料が公開され、新NCRの全体構成案や資料種別の部分の草案等が含まれている。全体構成案と資料種別草案については、従来の目録委員会方針からの変更がなされている。
- 主題目録法の領域については、NDC(日本十進分類法)新訂10版の刊行が最終局面に入っている。目録規則等に比べると、内外ともに動向は乏しい。
おわりに
- 発表者の私見では、今後(当面)の焦点は、国際レベルでは「書誌フレームワーク」だと思われる。RDAデータをどのような器で管理していくかという点が落ち着いた後で、再び目録サービスの今後に関する議論が生まれるのではないか。
- 国内では、NCR改訂の進行、NDLにおける書誌フレームワークの検討、NACSIS-CATのRDA対応、諸機関のデータの相互関係等が焦点であろう。これら多くの問題において、「LOD時代」が通底する問題認識となる。
発表後、メタデータレジストリにおけるエレメントと値語彙の位置づけ、RDA翻訳ではなく新NCRを作ることの意義、日本における書誌フレームワークの見通し、諸機関のデータをリンクさせるための要件等について、質疑応答があった。
(記録文責:渡邊隆弘)
- 当日の資料
- 配布資料(PDF)