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情報組織化研究グループ月例研究会報告(2014.11)
アート・ディスカバリー・グループ目録(Art Discovery Group Catalogue)と美術書誌の現在
川口雅子(国立西洋美術館)
- 日時:
- 2014年11月15日(土) 14:30〜17:00
- 会場:
- 大阪学院大学
- 発表者 :
- 川口雅子氏(国立西洋美術館)
- テーマ :
- アート・ディスカバリー・グループ目録(Art Discovery Group Catalogue)と美術書誌の現在
- 出席者:
- 井岡里菜都(国立国際美術館)、井原英恵(神戸大学)、大塚栄一(樹村房)、川崎秀子、河手太士(静岡文化芸術大学図書館)、川畑卓也(奈良県立図書情報館)、田窪直規(近畿大学)、中村佳子(京都府立総合資料館)、橋田佐代子(奈良県立大学)、堀池博巳、松井純子(大阪芸術大学)、渡邊隆弘(帝塚山学院大学)、和中幹雄(大阪学院大学)、川口<14名>
国立西洋美術館 研究資料センターについて
- 国立西洋美術館の開館以降、作品調査研究や展覧会実施等の美術館活動に必要な資料を収集。
- 2002年3月から、職員のための専門図書館という基本的性格を変えずに、週3日・利用者登録制・要予約で外部に対して開室している。
- 2014年5月に、アート・ライブラリー・グループ目録に参加した。
アート・ディスカバリー成立の背景
- 美術分野の書誌で、最も活用されているのはBibliography of History of Art (BHA)とInternational Bibliography of Art (IBA)である。
- 書誌以外によく使われる文献検索リソースとしては、美術館・博物館への価格設定が破格に安いJSTORがある。
- 2007年に、米国ゲティ研究所はこれまで共同でIBAの編集を行ってきたフランス国立科学研究センター/科学情報センターとのパートナーシップを解消し、単独でIBAの編集事業を行ってきたが、財政危機のため2009年にこの事業を手放すことを表明した。これが、美術図書館界に大きな衝撃を与え「美術書誌の「危機」」と呼ばれるようになった。
- 2010年4月に、ゲティ研究所はニューヨークで「21世紀における美術書誌の未来」という国際会議を緊急開催した。
- この会議により、「美術書誌の未来」(FAB : Future of Art Bibliography)イニシアチブが結成された。
- FABは、美術史コミュニティの力で21世紀にふさわしい持続可能な書誌モデルを追及することを目的とし、委員会はヨーロッパとアメリカの関係者で構成されている。
- IBAはゲティ研究所からプロクエスト社に引き継がれることになった。
「美術書誌の未来」イニシアチブと横断検索システム
- 最初に注目されたのは、カールスルーエ工科大学のKVKの横断検索技術に基づいて構築された、ヨーロッパ主体の既存の横断検索システム「artlibraries.net」である。
- artlibraries.netが注目された理由は、充実した情報量を持ち、事業の持続性が期待できる共同運営体制であるため。
- 2013年6月から、アジアから東京国立近代美術館と国立西洋美術館が参加している。
- ターゲット数増加に比例したレスポンスの低下や今日的検索機能が欠如しているという限界を持つ。
アート・ディスカバリーの登場
- 2012年6月、OCLCのWorldCatをベースとする第一のプロトタイプが登場し、artlibraries.netのターゲットとなる。
- WorldCatでの地域連携のグループ目録の事例を、美術図書館という同一館種の枠組みに応用し、特定主題分野に特化したグループ目録を構築することが構想され、OCLCから2013年5月に第二のプロトタイプ公開の告知があった。
- 2013年8月、美術図書館コミュニティに対して参加機関応募の告知があり、国立西洋美術館も参加した。
今後の課題
- FABの活動により、「持続的な書誌モデルの探求」から美術分野でのディスカバリー・サービス(アート・ディスカバリー)が生まれた。
- アート・ディスカバリーは、美術史家の研究支援ツールとしてニーズに応えるものとなっている。
- OCLCセントラル・インデックスに、美術書誌であるBHA、RAA、RILAと売立目録(SCIPIO)を取り込み、拡充する動きがある。
- 一方、artlibraries.netは、アート・ディスカバリーが安定的運用段階に移行すれば、閉鎖することが検討されるだろう。
- 日本美術に関する文献情報を拡充させアート・ディスカバリーで検索可能にするため、『日本美術年鑑』等や美術図書館各館OPACの取組成果をOCLCセントラル・インデックスに取り込むようOCLCに働きかける必要がある。
(記録文責:河手太士 静岡文化芸術大学図書館)