情報組織化研究グループ月例研究会報告(2015.5)

LOD時代の書誌コントロール:英語文献調査:2011-2013上期

田窪直規(近畿大学)


日時:
2015年5月16日(土) 14:30〜17:00
会場:
大阪市立市民交流センターなにわ
発表者 :
田窪直規氏(近畿大学)
テーマ :
LOD時代の書誌コントロール:英語文献調査:2011-2013上期
共催:
書誌コントロール研究会(科学研究費基盤研究(C) 課題番号25330391 研究代表者:和中幹雄)
出席者:
岡田大輔(明石工業高等専門学校)、尾松謙一(奈良県立大学附属図書館)、川崎秀子、河手太士(静岡文化芸術大学図書館)、古賀崇(天理大学)、塩見橘子、堀池博巳、松井純子(大阪芸術大学)、宮崎幹子(奈良国立博物館)、山本貴由(南伊勢高等学校(度会校舎)図書館)、横谷弘美(大手前大学)、吉川佳代、和中幹雄(大阪学院大学)、田窪<14名>

・ はじめに

 当グループは3年前から「LOD時代の書誌コントロール」というテーマで活動を続けている。そこで発表者は、これに関する英語文献のサーベイを行うことにした。"bibliographic control and linked data"というキーワードで LISTA(Library, Information Science and Technology Abstracts)を調べたところ、一番古い文献は2011年であった。そのため、この文献以降2014年末までの文献を収集することにした。収集文献のうち、今回は2011年から2013年上期までの14文献を取り上げた。なお7月の月例研究会では、2013年下期以降2014年末までの文献を取り上げる予定である。

・ LODとセマンティック・ウェブ

 従来のウェブは人が読むためのもので、文書のウェブなどと呼ばれている。これに対して、2000年代中盤ころからデータのウェブが注目されだした。
 文書のウェブの世界では、文書(ウェブ・サイトやページ)はこれ用のマークアップ言語であるHTMLでマークアップされ、URIが与られ、互いにリンク付けられる。データのウェブも同様である。すなわち、データはこれ用のマークアップ言語であるRDFでマークアップされ、URIが与えられ、互いにリンク付けられる。このようなデータはLOD(Linked Open Data)と呼ばれている。
 文書のウェブでは、どのような意味関係でリンク付けられているか不明であるが、データのウェブの場合、RDFというマークアップ言語の構造上、どのような意味関係でリンク付けられているかが分かる。このようなリンクをセマンティック・リンクと呼び、これでつながった世界をセマンティック・ウェブと呼ぶ。したがって、LODはセマンティック・ウェブを形成するものといえる。

・ LODと書誌コントロール

 発表では今回取り上げた14文献の内容を様々な角度から紹介したが、発表内容を逐一紹介すると膨大になるので、この報告では2点に絞って述べる。
 1点目は、目録イメージの変化である。従来の目録は図書館という世界内のものというイメージでとらえられてきた。しかし目録データがLOD化されると、これはリンクによって様々な世界のデータとつながるので、目録には広大なLOD空間の一部というイメージが求められる。
 敷衍すれば、目録データはリンクによって博物館や文書館のデータともつながるし、書評のデータや著者の伝記データともつながるし、ウィキペディアのデータやその他様々なデータともつながり、その結果、目録はそのようなデータ・ネットワークの一部というイメージでとらえられる必要があるということである。当然、目録にはそのようなデータ・ネットワークを活かす発想が求められる。
 2点目は書誌コントロール観の変容である。従来の書誌コントロールはトップ・ダウン的であった。例えば、この場合にはこのデータ(この人名、この用語)を使用すると決められ、みながそれに従うという構造である。データの使用法が決められるという意味では、トップ・ダウン的な書誌コントロールはデータ管理的書誌コントロールといえる。
 これに対してLODの世界では、ボトム・アップ的な書誌コントロールが求められる。VIAF(Virtual International Authority Control)のように、各国の典拠形(国際レベルから見るとこれは"ボトム"の典拠系)を国際的な世界に上げて("アップ"して)使用するという発想である。そうなってくると、データの管理よりデータとデータの意味的対応関係の管理が重要になってくる。VIAFの場合、各国の典拠形とVIAFの設定した典拠形を登録する"場"との意味的対応関係が重要になる(つまり各国のある人物の典拠形をVIAFの設定したその人物の典拠形を登録する"場"と着実に対応付けるということ)。このようにボトム・アップ的書誌コントロールでは意味的対応関係が重要になるので、これはセマンティクス管理的書誌コントロールということもできる。

(文責: 田窪直規)

当日の資料
レジュメ