当グループは3年前から「LOD時代の書誌コントロール」というテーマで活動を続けている。そこで発表者は、これに関する英語文献のサーベイを行うことにした。"bibliographic control and linked data"というキーワードで LISTA(Library, Information Science and Technology Abstracts)を調べたところ、一番古い文献は2011年であった。そのため、この文献以降2014年末までの文献を収集することにした。収集文献のうち、5月月例研究会で2011年から2013年上期までの14文献を取り上げた。今回は、その続きの2013年下期から2014年末までの17文献を対象とした。
5月月例研究会では、様々なトピックに触れ、発表内容を逐一紹介すると膨大になるので、次の2点に絞ってこれの報告を記した。すなわち、1)目録イメージの変容(図書館の世界で閉じた目録のイメージからLOD空間で多様な関連データとリンクする目録のイメージへ)、2)書誌コントロールの変容(トップ・ダウンでデータ管理的な書誌コントロールからボトム・アップでセマンティクス管理的な書誌コントロールへ)。今回も5月月例研究会と同様、様々なトピックに触れた。それゆえ、それらを逐一紹介すると膨大になるので、以下、これまであまり紹介されることのなかったISNIに絞って報告する。
ISNI(International Standard Name Identifier)はISO27729として発行されたものであり、「国際標準名称識別子」などと訳されている。この識別子は、ユニークで、地球規模で、領域横断的で、標準的な永続識別子の必要性から制定されたという。
領域横断的ということから分かるように、これは様々な情報産業による合同イニシアチブによって管理されている。ただし、ISNIに中核的に関与しているのは図書館やその関係機関であり、OCLCがこれの中央データベースを運営している。
ISNIのレコードは、図書館の典拠コントロールの原則、理論、実践法に基づいており、英国図書館、フランス国立図書館、OCLCの典拠専門家からなるチームによって作成されている。
ISNIは、領域横断的なハブ識別子の機能を担うものとされている。すなわち、様々な分野の標準識別子や私的識別子をISNIにマップすることで、これ経由で様々な識別子を橋渡ししようとするものである。なお、ISNIはVIAFにも割り当てられている。
(文責: 田窪直規)