情報組織化研究グループ月例研究会報告(2016.6)

分類/シソーラス/Indexing部会,300回の歴史から見えるものと2015年UDCセミナー(リスボン)で議論されたテーマ

山崎久道(元・中央大学,分類/シソーラス/Indexing部会コアパーソン)


日時:
2016年6月25日(土) 14:30〜17:00
会場:
大阪学院大学
発表者 :
山崎久道氏(元・中央大学,分類/シソーラス/Indexing部会コアパーソン)
テーマ :
分類/シソーラス/Indexing部会,300回の歴史から見えるものと2015年UDCセミナー(リスボン)で議論されたテーマ
出席者:
  川崎秀子、河手太士(静岡文化芸術大学)、佐藤久美子、高畑悦子(追手門学院大学)、田窪直規(近畿大学)、竹村誠(帝塚山大学)、田村俊明(紀伊国屋書店)、堀池博巳、松井純子(大阪芸術大学)、宮田怜(京都大学)、山本一治(一橋大学)、和中幹雄(大阪学院大学)、山崎<13名>

 発表者の山崎氏は,情報科学技術協会(INFOSTA)の専門部会の一つ「分類/シソーラス/Indexing部会」(以下,Indexing部会)のコアパーソンとして,1988年から28年にわたって部会を主催されてきた。この部会は「分類・シソーラス・件名標目などを別々に考えるのでなく,インデクシングを総合的にとらえる」という故・中村幸雄氏(元・INFOSTA会長)の考え方を受け継いで活動されてきたという。
 今回のご発表では,Indexing部会の活動と研究の歩みを振り返るとともに,2015年のUDCセミナーにおける発表と議論の概要をご紹介いただいた。それによってindexing や主題アクセスの現時点での状況や立ち位置を俯瞰するものとなった。

1.分類/シソーラス/Indexing部会の歴史

① 設立の経緯 Indexing部会は1988年4月に20名のメンバーで始まった。「中村塾」と呼ばれたindexingやシソーラス等を学ぶ勉強会の流れを汲んでいる(山崎久道[ほか]「座談会:分類/シソーラス /Indexing部会5年の歩み」『情報の科学と技術』43(9),1993.9,p.798-809)。原則として毎月研究会を開催し,2014年7月には300回を数えた。特定のテーマを決めて議論する合宿も,14 回開催された。

② 目的・趣旨 蓄積された情報を効率的・効果的に利用するには,内容を表現するindexを付与して検索に備える必要がある。indexingという作業はデータベースの検索性能に直接影響を与えるが,近年のインターネットによる情報発信はindexを欠いているものが多く,効果的な情報検索の実現が困難である。こうした問題意識からデータベース作成者,図書館員,サーチャー,研究者,情報産業従事者などが集い,各自の実務的経験や知識をもとに議論し,研究・勉強を進めている。

③ 主な活動と研究成果の発表 Bliss Bibliographic Classification の序文を皮切りに,ANSI/NISO Z39.19: Guidelines for the Construction, Format, and Management of Monolingual Thesauri や,Lancaster 著 Indexing & Abstracting in Theory & Practice などの海外文献の輪読,シソーラス評価基準の検討・作成,適合度順検索実験と全文検索システムの研究,インデクシングとサーチングのプロセス分析などを行った。以下は,主な成果論文である。

 • 井上孝[ほか].「現場におけるインデクシングの諸問題:討議記録からの問題抽出の試み」『情報の科学と技術』43(9),1993.9,p.810-815.

 • 光富健一[ほか].「情報組織化の基盤としてのファセット分類法:BC2を例として」『情報の科学と技術』43(9),1993.9,p.816-823.

 • 山崎久道[ほか].「ユーザーの視点からみたシソーラス評価の可能性」『情報の科学と技術』43(9),1993.9,p.824-842.

 • 分類/シソーラス/Indexing部会.「集中討論:統制語は生き残れるか」『情報の科学と技術』46(11),1996.11,p.632-640.

 • 山崎久道[ほか].「座談会:分類を考える」『情報の科学と技術』55(3),2005.3,p.132-140.

④ 発表者のコメントから

 • indexは索引,indexingは索引作業と訳されるが索引は本の巻末にある語彙のリストなので,個々の文献に「索引を付与する」という言い方はおかしい。indexにはindexesとindicesという二つの複数形があるが,後者のほうの意味,すなわち「指標」「目印」と訳すべきではないか。

 • indexingとは,単にテキストから言葉を抜き出すのではなく,その文献が何を情報として発信しているのかをインデクサーが解釈・判断してキーワードやディスクリプタを付与する知的生産行為。

 • 現在はgoogleが情報世界を席巻しているが,抽象的な概念で検索する時はgoogleの威力は発揮されず,分類や件名で探すことも困難である。

 • 文献に付加価値をもたらすindexing は,今の情報化社会に最も必要なものである。

2.UDCセミナー2015から

 UDCコンソーシアムが主催するUDCセミナー2015(2015.10.29-30,ポルトガル国立図書館)のテーマは「分類と典拠コントロール:情報資源探索(リソースディスカバリー)を拡張する」であった。セミナーの発表内容はUDCに限定されておらず,情報資源の組織化に関する様々なテーマの発表が,七つのセッションに分けて20以上行われた。その中から,基調講演「分類,リンク,文脈」(マイケル・バックランド)の内容を詳細に紹介いただいた。
 また「主題典拠コントロールにおける関連の側面:分類構造による貢献」「分類原則による機関名典拠データベースの設計」「医学分野における協力:UDCの改善に向けて」などの発表も紹介があった。

3.蛇足あるいは展望

 • UDCセミナーの過去3回分の発表テーマをグルーピングし,当該分野の傾向の把握を試みた。

 • 現代における情報流通の状況を分析し,インターネットが主な媒体になっている現代は,図書や雑誌が主であった時代と比較して,情報利用が一般人にまで拡大するとともに,情報組織化の方法も事実上「自由語」中心に行われている。

• したがってindexing も,分類や件名など専門家による組織化に加えて,タグクラウドなど利用者による自主選択の方向も出現している。いずれにしてもindexing は,単に資料内の字句を抽出するだけではなく,資料の置かれた文化的背景等にも配慮して行われることが求められる。

(記録文責:松井純子 大阪芸術大学)