TOP > 月例研究会 > 2020 > / Last update: 2021.1.3
MLAの違いについて、各機関の専門職についても含めて説明された。また、本報告の骨子が語られた。
建築図面を対象とする保存について、先行する研究や実践が紹介された。建築図面と建築レコードの相互関係が示され、具体的な建築図面の目録作成法の事例として、王立英国建築家協会(RIBA(Royal Institute of British Architects))図書館におけるRIBA目録の記述項目やRIBA目録シリーズ刊行までの歩みが紹介され、目録のエディターを務めたジル・リバーの果たした役割が説明された。
次に、米ナショナル・ギャラリー・オブ・アートにおけるADAG (Architectural Drawings Advisory Group、建築図面アドバイザリー・グループ)というプロジェクトやFDA (Foundation for Documents of Architecture、建築ドキュメント・ファウンデーション)の実践が紹介された。ADAGは建築図面を対象に目録の電子化にともなう記述標準の検討を、FDAはADAGの成果を実践し、取りまとめることを目的としたものであった。リバーはADAGやFDAにも関与した。
さらに、コロンビア大学エイヴリー図書館の実践として、AVIADORが紹介された。これは建築図面の文字情報と画像とを機械可読化(MARC)して関係づけるプロジェクトであった。また、図面群を目録上でまとめて記載するために、コレクション、プロジェクト、セット、アイテムという考え方を残した。ただし、アーカイブズにおける記録群の単位である「シリーズ」とは異なる考え方とされる。
参考として、RIBA目録が検討された1960年代における米国の建築図面の所在調査の歴史が紹介された。本節のまとめとして、以下の成果と相互関係が示された。
まず、米国における背景が説明された。建築図面を対象とした目録作成法のデメリットとして、これまでの記述の実践は、基本単位としての個別の図面に注目していたが、大規模な設計記録群には不向きである。後者のような記録群を残していくために、1973年に建築レコード保存会が結成された。この活動が活性化した背景には、全米における建築レコードの重要性についての認識の高まりがあった。
続けて、建築レコード、スタンダード・シリーズ、DACS、MAD、RAD、ISAD(G)、カタログとガイドといった、アーカイブズ学の編成、記述、検索手段に関係する用語の説明があった。
アーキビストのナンシー・ローが作成した事業計画書の分析が示された。実施機関と経費、ねらいと全体像、用いられる技法が紹介された。また、編成、記述、検索手段に関する考察が示された。最後に日本の実践へ向けた目録作成のポイントとして、編成と記述、検索手段タイプのあり方が説明された。
まず京都大学研究資源アーカイブについての説明がなされた。「相談」「調査」「審査」という初めの三つのステップが示された。次に四つめの「整理」の方針と成果が紹介された。具体的には、「増田友也建築設計関係資料」のシリーズ構成案、各レベル(フォンド・レベル〜シリーズ・レベル)の整理方針、容器レベル、アイテム・レベル、プロジェクト索引の記述の例が示された。また、検索手段として、京都大学デジタルアーカイブシステムが説明された。最後に整理の進捗状況および今後の展望が語られた。
考察のまとめとして、以下が挙げられた。
以上の発表を受けて、司会者である今野創祐氏(京都大学図書系職員、京都大学工学研究科吉田建築系図書室勤務)と発表者である齋藤氏との対談が行われた。こうしたアーカイブズ学に基づく整理法によって作成された目録を図書館員は扱えるのかといった齋藤氏の問いかけに対し、今野氏の回答は、通常の図書館員は(一点ごとの資料に対する目録作成ではない)集合的な目録の作成法や、そうした目録の読み方・扱い方を習得しているわけではないため、真っ当に扱えるかどうかは難しいと予想されるといった内容であった。しかし、図書館員がアーカイブズの考え方を学習すればそうした目録の扱いも可能となり、利用者には、利用の際に図書館員が指導するといった問題の解決策が提案された。
さらに、参加者を交えた質疑応答があった。アーカイブズ学における資料タイトルの情報源──資料内から記述部分をどう選択するか──について、同資料のシリーズ名について、建築資料の利用者の主な目的について等の質疑があった。
(記録文責:今野創祐)